理想のBMIとBMIの限界【体重の科学】

BMI (body mass index)とは、体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で表される指標です。BMIで18.5未満がやせ、18.5〜25が正常、25以上がやや肥満、30以上が肥満、とされます。

「太っている方が健康によい」と聞いたことがあるかもしれません。これはobesity paradoxと言われ、体重やBMIが孕む問題の一つです。本当に理想のBMIとはどの程度なんでしょうか?

この記事は、誰しも気になる「体重」の疑問を、科学的見地から明らかにします。この記事を読むことで、BMI・体重に関する正しい知識を身につけることができます。

理想のBMI

N Engl J Med, 2010. 363(23): p. 2211-9.

 

決定的な研究論文がNew England Journal of Medicineという医学で最も権威のある雑誌に、2010年に掲載されました(N Engl J Med, 2010. 363(23): p. 2211-9.)。150万人の白人を10年間追跡し、死亡率を比較した研究です。BMIが22.5〜24.9を基準とした時に、それから増えれば増えるほど、もしくは減れば減るほど、死亡率が上昇しました。上のグラフは、女性におけるBMIと死亡率の関連性です(男性もほぼ同じです)。喫煙者が別に示されている理由は後述します。

また2016年に、4大陸の100万人を対象とした解析が、Lancetというこれまた権威の高い医学雑誌に発表されました(Lancet 2016 388 (10046), 776-86)。結果はほぼ変わらず、BMIが20〜25の時に、死亡率が最も低い結果でした。

よって、BMIが20〜25が、理想のBMIだろうと考えられるようになりました。

日本人の理想のBMI

日本人の理想のBMI

一方、人種間で最適なBMIは異なることが示唆されてきました。アメリカの7万人の看護師を対象としたコホート研究では、BMIが同じであればアジア人は白人より2倍の糖尿病罹患リスクがあり、またアジア人は体重増加による糖尿病罹患リスクが他のどの人種より高かったのです(Diabetes Care. 2006;29:1585-90.)。確かに、日本人でアメリカ人並の肥満だと(見た目が)、かなり健康が心配になりますよね。

つまり、アジア人は体重増加による悪影響が、アメリカ人より顕著にみられるのです。これはアジア人が筋肉量が少ないこと、より脂肪(内臓脂肪)がつきやすかったり、インスリン抵抗性(2型糖尿病の原因)が生じやすかったりすることが原因と考えられています(Nutrition. 2004;20:482-91.)。その他、住んでいる環境の影響も重要だと考えられています(Diabetes Care. 2011;34:1014-8.など)。

これらの研究を受け、アジア人の適正BMIはより低くするべきでないか、と議論されてきました(Ann Acad Med Singapore. 2009;38:66-9.等)。一方、日本人に対する疫学研究では、男性は40-60歳はBMI 23程度, 60-80歳はBMI 25程度、女性は40-70歳がBMI 23程度、70歳-80歳はBMI 24程度が、最も死亡率が低い結果となりました(Obesity 2008 16 (10), 2348-55)。年齢で違う理由は後述します。

結果的に、日本人の現在の推奨は以下の通り、幅を持たせることとなりました(日本人の食事摂取基準 2015年版)。上限は変えず、下限を低くしたわけです。

18-49歳:理想BMIは18.5〜24.9

50-69歳:理想BMIは20〜24.9

70歳-:理想BMIは21.5〜24.9

これは的を得た推奨だと思います。

BMIが低ければ太った方が良いのか

痩せマッチョでBMI23の人と、脂肪だらけのBMI23の人、健康度合いはかなり違うと思いませんか?ここに、BMIの限界があります。

実際に健康に関わるのは、体重でなく、体組成です。BMIは体重と身長から体組成を大まかに示す、サロゲートマーカーに過ぎません。ただ、優秀なサロゲートマーカーなので、多くの人に適用でき、上述した研究のようにはっきりした結果(死亡率との関連)が認められるのです。

「BMIが低いから太ったほうが良いのか。」そんなわけありません。なぜなら、一般の「太る」とは「皮下脂肪、内臓脂肪を増やす」という認識なので、そんな事をすれば死亡率上昇に関わるに決まっています(病的に脂肪が少ない状態の方を除いて)。つまり、BMIを単独の「体組成のパラメーター」と用いることに、ある程度限界がある、ということです。

高齢になるとBMIが高いほうが良いのか

高齢になるとBMIが高いほうが良いのか

高齢者は、「BMIが低いから死亡率が高いのか」「死亡率が高い状況だから(具合が悪いから)BMIが低いのか」どっちも考えられます。つまり、低いBMIが原因なのか、結果なのか、わからないということ。タバコも同じです。喫煙していれば、肺気腫となって具合が悪いからBMIが低いのかもしれません。BMIが低いことが結果だと、BMIをどうすればよいのかという判断の参考になりません(こう判断する場合、BMIが原因である前提です)。

これをはっきり理解できないと、「BMIが高いから死亡率が低い」という一方向の誤った解釈しかできません(Obesity paradoxといいます)。低いBMIが実は結果なのに原因と考えてしまうこの問題を、reverse causationと言います。reverse causationをなくさないと、「BMIをどうすればよいか」判断することはできません。reverse causationを無くすには、具合が悪い(or 死亡率が高い)人を最初から除外する必要がありますが、高齢者=概して死亡率が高いため、完全にreverse causationを無くすことはできません。

よって、「平均すると、BMIが比較的高い高齢者が死亡率が低い」となるのですが(Obesity 2008 16 (10), 2348-55)、だから「BMIを増やしたほうがよい」とはなりません。「平均すると、BMIが25あたりとなっている高齢者の死亡率が低い。なぜなら具合が悪くてBMIが低い人もふくまれているから」というのが正解です。

そもそもアジア人は、太っている(BMIが高い)ことで病気になりやすい人種です。なので、「太ったほうが良い」状況はほとんどありません。こういう情報は、疫学研究の結果を誤って解釈した、不正確な情報です。

結論

日本の推奨である理想BMIは20〜24.9、というのは良い感じです。結局BMIは「体組成」を示すだいたいの指標なので、「BMI 22を目指す」みたいに、ピンポイントの理想の数値は結局わかりません。だいたい、20〜24.9であれば、肥満による健康障害(糖尿病や心筋梗塞など)が少ないだろう、という話です。積極的に太った方が良い事はありません。

ではまた。

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