因果関係と相関関係、迷うことありませんか?

因果関係と相関関係の区別は、簡単なようで迷うこともあるかもしれません。この記事では、どう考えればはっきりとこの2つを区別できるか、わかりやすく解説します。因果関係と相関関係をはっきりさせない(詐欺)情報は、世の中に腐るほどはこびっています。信頼できる情報を自分で選択できるようになるため、必須のヘルスリテラシーです。

結論を言ってしまうと、2つの集団のフェアな比較かどうかが肝です

因果関係と相関関係の決定的な違い

因果関係と相関関係の決定的な違い

お酒を飲む人は死亡率が高い」は相関関係。

お酒を飲むと死亡率が高くなる」が因果関係。

だいたい、ほとんどの主張は、「〇〇が☓☓に関連するか(の原因となるか)」というスタイルです。疫学や因果推論では〇〇を暴露因子(exposure)、☓☓を結果(outcome)といいます。

因果関係と相関関係の決定的な違いは、相関関係は「その情報に原因・結果という意味を含んでいない」ことにあります

だから、相関関係は、あんまり情報として意味がありません。じゃあどうすればよいか(酒を飲まないほうがよいのか)、と言えないからです。

例えば相関関係の場合、「実はお酒を飲む人はタバコをよく吸うから、タバコによって死亡率が高い」のかもしれません。そう考えると、お酒を控えても死亡率には影響しないわけです。だから、その情報はあんまり意味がない。

因果関係であれば、お酒が死亡の原因であるわけだから、お酒を控えたらよい、ということになります。

因果関係を証明する根本的な考え方

酒が死亡の原因だというためには、あなたが2人いたとして、1人は酒を飲む、1人は酒を飲まないとしたとします。もし、酒を飲んでいるあなたが10年後には死亡していて、酒を飲まないあなたが生きていたとしたら、酒が原因で死亡した、と言えます。因果関係が言及できた、というわけです。

でもあなたは2人いません。どうすればよいのでしょうか。

最も簡単かつ強力な方法は、ランダム化試験です。10000人くらい集めて、コインの表がでたら10年間酒を飲む、裏がでたら10年間酒を飲まない、と決めます。すると、5000人くらいずつの2集団ができます。もしお酒を飲む集団の方が死亡率が高ければ、酒が原因で死亡率が上がった、ということができるでしょう。因果関係が言えました。

なぜランダム化試験で因果関係が言えたのでしょうか。それは、比較する集団がだいたい(平均して)同じ特性を持っているからです。あなたは2人いませんが、10000人くらい集めれば、飲酒グループと禁酒グループの性質はだいたい同じくらいになります。すると、違いは飲酒の有無だけということになります。

大事なので繰り返すと、比較する集団がだいたい同じなら(フェアな比較なら)、暴露因子とアウトカムの因果関係が言えます

こういうのは全部嘘の因果関係(相関関係に過ぎない)

因果関係を追求することは、ランダム化試験を行ったり、色々と手間がかかります。なので、因果関係が分かっている事象というものは、概して少ないのです

例えば、こういうのは全部相関関係です。

にちゃんねるが出てきてからネット関連の犯罪が増えた」:にちゃんねるがある前と後で、世の中の状況は違います。フェアな比較でありません。

〇〇塾は東大合格500人!〇〇塾にいけば東大に受かる」:〇〇塾に行っている人が、行っていない人と比較して、ただ賢いだけかもしれません。フェアな比較でありません。

チョコレートを食べると糖尿病になる」:あなたの周りの糖尿病の方がチョコレートを食べているからといって、チョコレートが原因とは言えません。チョコレートを食べながら糖尿病でない人もいます。実際、チョコレートは糖尿病の罹患リスクを下げるかもしれません(Nutrients. 2017;9(7):688.)。

他にも良い例があったら教えて下さい。

結論

比較する集団の性質が同じくらいであれば、相関関係=因果関係となります。それ以外の場合は、因果関係を言えません。

どんな広告も因果関係を強調していますので、気をつけましょう。

ではまた。

疫学研究の方法、誰でも分かる解説【健康情報を判断するために】

「エビデンス」とか「疫学研究」とか聞いて、鳥肌が立つ人もいると思います。ですが残念ながら、自分の健康を守るため、これらをベースとしたヘルスリテラシーの獲得は、このご時世必要なことなのです。

この記事では、好きな人はほとんどいないであろう「疫学研究」の手法について、かなりわかりやすく解説します。この記事を読むことで、「メタ解析」「コホート研究」「エビデンス」といった言葉に慣れ、より抵抗なく様々な信頼できる情報を理解することができるようになります。

疫学研究の手法をまとめると、こうだ

疫学研究の手法をまとめると、こうだ

「疫学研究の手法により、エビデンスレベル(詳細ここ)が異なる」とされています。この文章の意味がわからなくても、全然大丈夫です。つまり、信頼できる結果を生み出す疫学研究も、それだけでは信頼できない結果(仮説)を生み出す疫学研究もある、ということです。

めちゃくちゃ単純化すると、疫学研究は信頼度の高い順にこのようになります。

Umbrella review>メタ解析>ランダム化研究>コホート研究>症例対照研究>ケースシリーズ>症例研究>エキスパートオピニオン

これらがどのようなものなのか、説明するのが、本記事の目的です。信頼性が低いものから順に、いきましょう。

エキスパートオピニオンとは

エキスパートオピニオンとは

エビデンスに基づいていない権威のある人の意見です。エビデンスに基づいていないとは、症例対照研究以上のエビデンスが無いことを意味します(おそらく)。権威のある人とは、大抵教授のレベルですそれでもはっきりいって参考にならないので、論文にもなりません。

しかし、医者の診療上は、エビデンスが無い細かいことというのはたくさんあります。そういうのは大抵、今までの経験や上司の経験を参考にdecision makingします。これを、エキスパートオピニオンに基づいたdecision makingと言います。これが正しいかはわかりませんが、今まで問題なかったから問題ない可能性が高いというふうに考えます。

ただし、より疫学的な問題は(例えば健康な人を対象とした事項)、エキスパートオピニオンは参考になりません。例えば、「コーヒーは抗酸化作用があるから健康に良い」というのは、参考にならないエキスパートオピニオンです。なぜなら、この文章で人間に対する健康効果を示唆していないからです。コーヒーの人間に対する効果は、何万人の人を研究しないとわかりません。つまり、コーヒーによって例えば心筋梗塞が予防されたかどうかは、大規模なコホート研究でないとわからない情報だということです。抗酸化作用があっても、実際の疾病予防に関連しないものは山程あります

エキスパートオピニオンは、診療では参考になることがありますが、疫学的な事項は参考になりません。信じてはいけません

ケースシリーズと症例研究とは

ケースシリーズと症例研究とは

症例研究は「〇〇と〇〇の関連性が示唆された特徴的な症例」、ケースシリーズはそういう症例を数人〜数十人まとめた報告です。これは、診療上ちょっとだけ参考になることがありますが、疫学的な事項は参考になりません。

例えば私の症例研究・ケースシリーズを紹介します(J Med Case Rep. 2015;9:111.)。患者さんは35歳男性で、肉じゃがをフライパンで熱したまま10時間寝てしまい、起きたら部屋中が煙だらけで呼吸困難となっていたため救急要請されました。重症の肺水腫という診断でICU管理となりましたが、速やかに回復しました。この肺水腫の原因が、フライパンのPTFEコーティングが熱せられて生じた毒性ガスだと考えられたのですが、そのような報告は稀でした(症例研究)。今まで報告されていたPTFEによる肺水腫を10例弱reviewした所、特徴的な肺CT所見と、比較的予後が良いことがわかりました(ケースシリーズ)。この報告は、PTFEによる肺水腫というのが非常に稀なので、そういう症例を経験した際には参考になるかもしれない程度のエビデンスです。

一方、例えば「コーヒーを1日5杯飲み続けた人が110歳まで生きました」という症例報告があったとします。でもそれで「そうか、コーヒーを飲めば長生きできるのか」とはなりませんよね。その人が様々な健康的な要素があったからこそ、110歳まで長生きできたわけで、コーヒーを飲みまくって70歳で亡くなってしまう人ももちろんいるわけです。なので、「コーヒーと健康」のような疫学的な事項については、参考にはなりません。

症例対照研究とは(略)

これは、コホート研究の一部のデータを使った解析です。稀なアウトカム(膵癌)などに対する研究手法です。が、そんなに大事でないので(比較的に)、ここでは省きます。コホート研究を理解しましょう。

コホート研究とは

コホート研究とは

赤肉の摂取と死亡率の関連を調べた、ハーバードの研究があります(BMJ 2019;365:l2110)。コホートとは、その研究の対象者を追ったデータを意味します。どういう事かというと、まず10万人の参加者を募ります。ある人は1980年にエントリー、違う人は1981年にエントリー、という感じで、数万人集めます。そしてエントリーした全ての人に、1年間でどのような食事を平均してとっているかのアンケート調査を2年ごと、運動習慣のアンケートを2年ごと、血液検査をエントリー時に一回、みたいに行います。また、1年間に一回、参加者が病気にかかったかのアンケート調査を行い、いつ死亡したり、癌にかかったりしたかの情報収集を行います。すると、参加者10万人の1980年から2019年までの情報が蓄積されます。ここまでがその「コホート」の管理者が、莫大なお金をかけて行う事です。

その貴重なデータを使って、疫学者が研究(コホート研究)を行います。この研究では、8年越しに赤肉の摂取量が増えたか減ったかが、その後の死亡率に関わるか、ということを調べています。全ての参加者で、アンケートを元とした1986年と1994年の赤肉摂取量(1日何回食べるか)を比較して、増えた人、変わらない人、減った人、と群わけします。そして、1994年から2010年の死亡率を、群毎に比べるわけです。

一つの大事な注意点があります。赤肉摂取量が増えた人は、赤肉摂取量が減った人と比較して、他の食事摂取も変化しているし、運動習慣も悪いかもしません。なので、単純に赤肉摂取量の違いが死亡率の変化に繋がった、とは言えないわけです。ではどうするのかというと、回帰モデルを使って、「年齢、性別、他の食事摂取、運動量、喫煙、BMIなどが同じとして、赤肉摂取量の変化だけが群間で違う時に、死亡率に差があるか」ということを調べるわけです。もしその解析で「赤肉摂取量が増えた人が死亡率が高い」という結果になれば、おそらく赤肉摂取量が増えたせいで死亡率が高まったのだろう、と推測されます。

が、しかし、「〇〇が同じとして」という〇〇を、全て調整することは不可能です。例えば、細かい内服薬が違うかもしれないし、健康意識が違うかもしれません。職業も違うかもしれません。なので、実は赤肉摂取量の変化でなく、この「〇〇」に入れていない因子が死亡率に寄与しているのかもしれないわけです。この可能性が常に拭いきれないので(バイアスが取り切れていない可能性がある)、コホート研究はエビデンスレベルが低いとされています。

ランダム化研究とは

ランダム化研究とは

ビタミンDのサプリが癌・心血管疾患予防に有効かを研究した、有名な論文を解説します(N Engl J Med 2019;380:33-44.)。これは、2万人の参加者をランダムにビタミンDかプラセボ(偽薬)を与え、その2群の癌発症率などを比較したものです。結果、ビタミンDの群はプラセボ群と比較して、明らかに癌発生率が低かった、ということはなかったのです。

なぜこれが(コホート研究より)強力な手法なのでしょうか?それは、ビタミンDを飲む群とプラセボの群が、ほとんど同じ集団だと仮定できるからです(ランダムに決まっているから)。例えば、健康意識の高さについても、健康意識が高い人も低い人もランダムにビタミンDか偽薬に分類されるので、その頻度は同じくらいになります。同様に、何についても、ランダム化すれば2群は同じくらいの出現頻度となります。コホート研究の場合、「健康意識の高さ」という具体的な評価項目が無いと、2群を同じ条件にして解析することができません。「2群が同じ条件」ということは、「ビタミンDが癌発症に寄与する」という因果関係を言うために必要です。先程説明したように、コホート研究では、死亡率の差が赤肉摂取量を原因とするかもしれないし、調整していない他の因子を原因とするかもしれません。が、ランダム化研究では、癌発症率の差はビタミンDサプリの摂取有無を原因とする、と結論できるのです。よって、因果関係をより信頼性高く言及することができるという点で、ランダム化研究が優れています。

しかし、ランダム化研究にも質があります。例えば10人をランダムにビタミンDか偽薬に振り分けたとしましょう。すると、確率的に、タバコを吸う人は4人:6人かもしれないし、運動しない人は3人:7人となってしまうかもしれません。すると、この2群は「同じくらいの特徴を持つ集団」とはとても言えません。よって、因果関係を言及することはできません。

また、ランダム化試験がロシア人のみを対象としたものかもしれません。すると、その結果を日本人に応用できるかはわかりません。例えばビタミンDは日光を浴びることで産生できるのですが、ロシアは日照時間が少ないため、十分なビタミンDを体内産生できていない人が多いかもしれません。すると、ビタミンDのサプリはとても効果があるかもしれません。一方、日本人は日光浴だけで十分なビタミンDを体内合成できているので、サプリでさらに摂取しても健康効果はないかもしれません。

こういったlimitationが、ランダム化試験でもいくつかあります。こういう事も考えて、ランダム化試験の結果の理解をする必要があります。

メタ解析とは

メタ解析とは

メタ解析とは、例えばビタミンDと癌の関係をみたたくさんのランダム化試験の結果を、まとめて解析する手法です。先述のように、ランダム化試験でもlimitationがありますが、20個の同じ目的のランダム化試験を全部まとめて解析することで、より信頼性の高い情報を提供できるかもしれません。単純に対象人数が増えるため、2群がフェアな比較となる可能性が上がるし、ロシアの研究と日本の研究をあわせることで、世界中の人に適用できる結果を出すこともできます。

が、メタ解析は様々な情報を失うことに注意が必要です。例えば、ビタミンDはロシア人には効くけど日本人には効かない、という情報は極めて重要なわけです。が、メタ解析とするとその情報が失われてしまいます。「どういうサブグループで違う効果があるか」というのは、疫学上effect modificationと言われますが、メタ解析でeffect modificationを調べることはできません。これが重要なポイントです。

その他にも、メタ解析にlimitationがあります。詳細はこちらを参照下さい。

Umbrella reviewとは

Umbrella reviewとは

最近出てきた手法です。これは、メタ解析のメタ解析と言われます。どうやるのかというと、例えば「コーヒーの健康効果」を網羅的に調べる、ということです(BMJ 2017;359:j5024)。

健康効果、とは様々な定義があります(こちら参照)。死亡率、心筋梗塞、〇〇癌、肝硬変、糖尿病、認知症、、、たくさんあります。そして、メタ解析とは、「コーヒーと心筋梗塞の10論文の解析」「コーヒーと肝硬変の7論文の解析」などを指します。心筋梗塞のメタ解析、肝硬変のメタ解析、糖尿病のメタ解析、、、などを全てひっくるめて解析する手法が、Umbrella reviewといいます。

どういうことかというと、「メタ解析はコーヒーにより心筋梗塞を10%予防する結果となっているが、それはどれくらい信頼できるのか」ということを、延々と全てのアウトカムについて評価するわけです。メタ解析にも質があるので、メタ解析で結果が出ても、信頼性が低いかもしれないということです。Umbrella reviewは最終的に、「コーヒーにより〇〇と▲▲は予防できるが、☓☓は予防できない。□□はむしろ発症率を増やしてしまう。結局、1日▽杯なら安全で健康効果も期待できる」という結論を出すことができます。この結論が、その論文出版時点で、最も信頼できる結論に近い、と考えられるわけです。

結論

ここまで読んで頂ければ、間違いなくあなたのヘルスリテラシーは上がりました。

コホート研究、ランダム化試験、メタ解析、Umbrella reviewがどのようなものか、知っておくと、このブログで紹介している情報がどういうものか、イメージがつき、批判的に情報を解釈することができます。

ではまた。

「健康」とは何か?定義しよう。

コーヒーは健康に良い」「運動は健康に良い」「喫煙は健康に悪い」。私達はよく「健康に良い/悪い」という表現を頻用します。が、健康の定義は人によって異なります。風邪を引かないのが健康かもしれないし、体重が減るのが健康かもしれないし、内臓脂肪が下がることが健康かもしれません。定義がバラバラだと、「健康に良い」という記述は非常に主観的で、信頼できません

この記事では、どういう「健康」の定義が信頼にあたるのか、わかりやすく解説します。この記事を読むことで、〇〇の健康効果について、より科学的に(客観的に)議論できるようになります。逆に、これを知らずして健康を語ることは、何となくの感想や主張の域を越えません(情報を疑うポイントはこちら)。

健康の定義(WHO

健康の定義(WHO)

“Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.”

“健康とは、身体的・精神的・社会的に良い状態であることをいい、単に病気や虚弱でないことをいうわけではない”

WHO憲章です。その後一度改定案が出ましたが、大きくは意味が変わらないので、世界的には健康はこのように考えられています。

これが目指すべき健康です。が、疫学研究ではどうしても「病気や虚弱となること」がアウトカム(不健康の定義)となってしまいます。なぜなら、精神的・社会的に良い状態であるということが、なかなか定量化できないからです。最近となってようやく「幸福度と健康の関係」などが研究されるようになってきました(ハーバードハピネスセンター)。が、今までの科学論文での健康の定義は、基本的に「病気や虚弱となること」です。これをどうはっきり定義するのか、がポイントです。

例えば、「赤ワインを毎日飲むと幸福度が上がる」ことは、本当かもしれませんが、それに関して調べることは容易でなく、そういう信頼できる研究は今の所ありません(私の知る限り。もしあったら教えて下さい)。あくまで2019年時点で。今後、「幸福」をより数値化して定義できるようになれば、はっきりと論じられるようになるでしょう。現時点で最も強力な健康の定義は、「病気や虚弱となること」なのです。

以下に紹介する順に、重要な「(不)健康の定義」です。より重要な定義についてはっきりしている原因(食事、運動など)が、避ける(or 摂取する)べきもの、と言うことができます。「赤肉摂取と死亡についてはかなりはっきりしている。だから赤肉を取るべきでない」というのが、科学的な議論です。

最も強力な健康の定義

最も強力な健康の定義

👉全死亡率、心血管疾患による死亡率、癌による死亡率。

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「病気や虚弱となること」を最も密接に示す定義が「死亡率」です。では、死亡率が下がる、とはどういうことなのでしょうか。例えば、私は一生に一回しか死なないですが、その死亡の原因が〇〇だったと(例えば野菜をほとんど食べなかったことだと)、どのように証明できるのでしょうか

詳細は追って説明しますが、例えば「年齢、性別など様々な条件が同じと仮定した時に、平均で今後30年間で死亡する確率」が、いわゆる死亡率の定義となるわけです。野菜を食べることで死亡率が下がるとは、「その他条件が同じと仮定したときに、野菜をたくさん食べているか食べていないかという違いしかない2人を比較すると、野菜をたくさん食べている人が食べていない人より、平均して今後30年間の死亡率が2%低い」という意味です。

死亡が最も強力ですが、心筋梗塞で死亡した場合と癌で死亡した場合は全然コンテクストが異なります。なので、心血管疾患(心筋梗塞か脳梗塞)による死亡率癌による死亡率、をわけて評価することもよくあります。例えば、運動を毎日30分以上行うことは、今後30年間の全死亡、心血管疾患による死亡率を下げるが、癌死亡率は下げなかった、という言い方となります。

死亡率について語るときに、「今後〇〇年間の」という表現は極めて重要です。というのも、「今後100年間で」の死亡率は、運動しているかしていないかに関わらず、ほとんどみんなが100%となってしまうからです。一方、「今後1年間で」の死亡率は、野菜を食べたことで下がるとは到底思えません。大体の疫学研究は5年〜10年程度のフォローアップ期間で比較するものが多く、20〜30年程度フォローアップしたものはとても質が良い疫学研究とされています。疫学研究のデザインについてはこちら

まあまあ強力な健康の定義

まあまあ強力な健康の定義

👉心筋梗塞の発症、心血管疾患の発症、〇〇癌の発症

糖尿病、認知症など、その他重要な疾患の発症(これらは少し弱い)

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死亡に関わらない場合、すごく強力な定義とはいえません。が、心筋梗塞の発症、〇〇癌の発症、というものは、ものすごく死亡に関わるものです。よってこれらは、まあまあ強力な(不)健康の定義となります。「禁煙による肺癌予防効果」「赤肉摂取と心筋梗塞の関係」などが、この定義を使った研究の例です。

少し専門的な話ですが(詳細は別記事で解説します)、心筋梗塞の発症を考える時、「死亡した人はそれ以降心筋梗塞を発症し得ないこと」を考える必要が出てきます(competing risk)。このCompeting riskは選択バイアスにつながるため、適切に対処する必要がありますが、ほとんどの研究では十分な対応がとられていません(Epidemiology. 2008;19(3):448–450.)。

例えば、「今後10年間の癌発症率」が(不)健康の定義となり得ます。また、「今後10年間の心筋梗塞発症又は心臓病による死亡率」というのが、coronary heart disease (CHD)としてよく用いられる定義です。

糖尿病やうつ病、認知症の発症というのはどうでしょうか。これらも、きちんとしたエンドポイントと考えられます。ただし、発症時期がはっきりしないことも多いため、解析の際には注意が必要です。

健康のサロゲートマーカーは少し弱い定義

健康のサロゲートマーカーは少し弱い定義

👉血液検査の結果、血圧、BMIなどの数値

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BMI、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)、血圧、HbA1cなどは、サロゲートマーカー(例えば心血管疾患のリスク因子)として使えます。これらはいつでも計測することができるので、ランダム化試験のエンドポイントとしてよく用いられます(長期間フォローするランダム化試験は莫大なコストがかかるため)。具体的には、「赤肉を摂取することで、心血管疾患のリスク因子が、短期的にどう変化するか」という研究があります(Am J Clin Nutr. 2017;105(1):57–69.)。これは24個のランダム化試験のメタ解析で、ランダムに肉をたくさん食べる人と食べない人にわけ、血圧やコレステロールの変化をみたものです。もしコレステロール値が上がれば、心血管疾患のリスクも上がるだろうという推定の下、こういう研究が実施されます。

食事のランダム化研究は大変難しいので、長期間のフォローアップはできません(赤肉を食うな、と言われて10年間食わないことは難しいし、それを強要することは倫理的でない)。よって、ランダム化研究により、「赤肉と心筋梗塞の因果関係」は調べることができません。強力な健康定義に関する食事の影響はの全てのエビデンスは、コホート研究から示されてきています。ただし、コホート研究で因果関係を言うことはかなり難しいのです(赤肉を食べたせいで死亡率が上がった、ということは非常に難しい)。サロゲートマーカーはランダム化研究で調べることができるので、因果関係を言うことができます(赤肉を食べたせいで、LDLコレステロールが上がった、ということはできる)。サロゲートマーカーは健康の定義としては弱いですが、そういう点で有用なのです。

ここ注意!! 例えばランダム化研究により赤肉摂取によりLDLコレステロールが上昇したからといって、それ自体は健康に悪いことを示唆するものの、実際にそのLDLコレステロール上昇が心筋梗塞や脳卒中の原因となるかは不明です。めちゃめちゃLDLコレステロールが上昇したらおそらく今後悪影響をきたすだろうと考えられますが、そんなに顕著に悪くなることは、そうそうありません。なので、「ランダム化研究によって血圧上昇効果が立証された」と聞くと「かなり悪いんだろうな」と印象を持つかもしれませんが、どれくらい上がったのか、どの程度疾患発症に寄与するのか、自分で確かめる必要があります。

よく企業が行うランダム化研究のアウトカムは、この「健康のサロゲートマーカー」です。信頼度としては低いエンドポイントですが、企業は大々的に宣伝します。解釈に気をつけましょう。

弱い健康の定義

弱い健康の定義

👉発症がやや主観的な病気、症状

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主観的な要素が入ってしまうエンドポイントは、健康の定義として弱いと考えられます。例えば「かぜの発症」。ランダム化研究でしっかりと参加者に定義を説明してやらないと、信頼できるアウトカムとはなりえません。つまり、コホート研究で風邪の予防法を調べることは、非常に信頼性が弱い研究となります。ただ、ランダム化研究は、様々な方法で信頼性の高いデータを集めるよう頑張るので、研究になります(エビデンスの質は高くないですが)。実際、例えばビタミンDによる風邪の予防効果について多くの研究が行われ、2019年のメタ解析にて有効性が示唆されています(Health Technol Assess. 2019;23(2):1–44.)。これは25個のランダム化試験のメタ解析です。

弱い健康の定義の他の例は、症状です。例えば「頭痛」「腹痛」「吐き気」。これらは主観的なものなので、様々な外的要因に影響を受けえます。疫学研究の際は半定量的に評価する方法を用いますが、それでも定義としては弱いです。上記と同じように、コホート研究では信頼できるエビデンスを作ることはかなり難しく、ランダム化研究が必須です。そしてランダム化試験でも、結果の信頼性は強くないのです。

信頼できない健康の定義

信頼できない健康の定義

👉血管年齢、腸内細菌フローラ、血がサラサラ、などたくさん

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巷には信頼できない健康情報がはこびっています。もし、「〇〇は血管年齢を若くする」「〇〇は腸内細菌フローラを良くする」のような記述をみつけたら、ほぼ信頼できません。なぜかと言うと、血管年齢や腸内細菌フローラは、健康のサロゲートマーカー(上述)として確立していないからです。確立していなければ、それが良くなっても健康がよくなるかはわかりませんよね。

「血がサラサラになる」もそうです。そもそも血がサラサラになることを、どのように定量化するのか決まっていません。「納豆は血をサラサラにするから健康に良い」、間違っています。本当は、「納豆(大豆製品)を食べることで糖尿病のリスクが減るという研究があるから(Diabetes Res Clin Pract. 2018;137:190–199.)、健康によさそう」です。ちなみに、大豆製品による死亡率抑制効果は立証されていません(詳細こちら)。

結論

質の高い疫学研究以外、ほとんどの研究は弱い健康の定義を使用しており、結果の解釈に慎重になる必要があります。具体例は、追って説明します。注意しましょう。

ではまた。

「〇〇は健康にいい」という情報を疑おう

巷でよく「〇〇は健康に良い、悪い」と言われています。が、それは本当ですか?

そういった発言の根拠、発言をした意味は何なのでしょう?

ヘルスリテラシーを獲得するためには、そういう情報を疑い、「これは正しいだろう」という情報を選択していかねばなりません。この記事では、めちゃくちゃ具体的なエピソードを使って、健康情報を疑うポイントを解説します。これを読むことで、情報の批判的吟味ができるようになり、自分で情報の質が評価できるようになります。健康情報を自分で取捨選択できるようになることこそ、高いヘルスリテラシーと言えます。

「〇〇は健康にいい」という情報を疑おう

「〇〇は健康にいい」という情報を疑おう

仕事中同僚が、「チョコは毎日食べたほうが良いよ。カカオが健康にいいんだから」と言って、チョコを勧めてきたとします。あなたは「ありがとう」と言って、チョコを受け取り、食べました。さあ、このチョコは健康に良かったのでしょうか?

そんなわけ無いじゃん、と思う方が多いと思います。1回チョコを食べただけで健康がよくなるならみんな食べますよ、と。では、その同僚のアドバイスに従い、その日から「おやつにチョコレートを1枚毎日食べる習慣」となったとします。これは健康に影響するでしょうか?

毎日甘いものをそんなに食べていたら糖尿病になるよ、とおっしゃるかもしれません。一理あります。では同僚の「カカオが健康に良いからチョコは毎日食べたほうが良い」発言は、全くの誤りだったのでしょうか?

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あなたは年末年始の休暇、実家に帰省しました。母親に普段何食べているの?と聞かれ、「コンビニ弁当だよ」と答えました。母が「そんなの健康に悪いじゃない。自炊しなさいよ」と言ってきたので、少し反論したくなり「自炊したって結局ご飯とおかずを食べることには変わりないでしょ」と言ってみました。すると母は「でも味噌汁が体にいいのよ。大豆がいいっていうでしょ」。確かに大豆は体に良いとよく聞きます。やっぱり味噌汁は飲んだほうが良いのかな?でも議論の余地がありそうにも思えます。

こういう話は日常会話でよくあります。でもほとんどの方は、それが本当に正しい情報か、調べようとしません。しかしよく考えると、これらはとても大事な情報で、自分の毎日の行動に関わります。本当はどうなのか?こう疑ってみる事が、ヘルスリテラシー獲得のために大事な一歩目のステップです。

巷にあふれる「健康にいい」根拠

巷にあふれる「健康にいい」根拠

気になったあなたは、Googleで「チョコ 健康」と調べてみました。すると、明治製菓のHPで「チョコを食べると血圧やコレステロールが低下した」という報告をみつけました。更に、「チョコが含有するポリフェノールは抗酸化作用があるから体に良い」という記述も見つけました。そして「チョコは低GI食品だから、食後急激に血糖値を上昇させない」ことも分かりました。なるほど、チョコは健康に良いんだな、と思いました。

次に「味噌汁 健康」と調べました。すると「味噌汁はそんなに塩分を含んでない」「発酵食品であるので、腸内環境を整える善玉菌をもつ」「出汁がミネラル豊富であり、栄養失調に効果的」であることがわかりました。母の言うことは正しかった、と思いました。

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しかしここで止まってはいけません。本当にそれらの根拠は信頼に足るのでしょうか。答えは、残念ながら、ノーです。全部、根拠になっていません。

健康にいい根拠とは?

健康にいい根拠とは

そもそも「健康に良い」とはどういう定義なのでしょうか?癌にならない、心筋梗塞にならない、死亡率が低下する、これらはまず健康に良いという定義に合致します。血圧が低下する、コレステロールが低下する、血糖値が低下する、これらも健康に良い気がします。腸内環境がよくなる、はどうでしょうか。よく実感できませんね(詳細はこちらで解説)。

「チョコが健康に良いか」「味噌汁が健康に良いか」ということは、誰もが知りたい、公衆衛生的に重要なトピックであり、実は世界中の栄養学者が研究しているのです。研究分野は「疫学」。例えば、味噌汁を毎日飲んでいる人とほとんど飲んでいない人を比較し、死亡率や癌の発生率などを比較しています。鋭い方はこうおっしゃります。「味噌汁の飲む人と飲まない人はそもそも全然違うから、フェアな比較にならない」と。そのとおり。実は味噌汁飲まない人の方が喫煙率が高いかもしれません。そうすると、喫煙のせいで、味噌汁を飲まない人は肺がんの発生率が高くなってしまいます。そういうことを避けるのが、疫学者の仕事なわけです。「その他が同じ条件であったと仮定したときに、味噌汁の違いが癌発生率に関係有るか」ということを調べています。

彼らの研究結果、エビデンス、というものが、健康に良い根拠です。エビデンスを鵜呑みにするのは良くないという指摘がありますが、そもそもエビデンスを知らずして健康を語るのはナンセンスなわけです。ですので、どういうエビデンスがあるのか知ることが、ヘルスリテラシー獲得のため重要な事項です。

こういう話は信じていけない

へーそういう事が調べられているんだ。すると、チョコの「カカオの抗酸化作用」「低GI食品」、味噌汁の「腸内環境を整える」「ミネラルが豊富」という記述は、エビデンスでは無いんですね?

そのとおりです。そして、こういう話は、もっともらしいけど信じていけない情報です。食事に関しては、「栄養素の健康効果を語る情報」は信じていけません。

では、明治製菓の実施した研究結果はどうでしょうか?エビデンスらしい記述です。が、これも信用するには足りない情報です。企業が提示する研究情報は、信頼性の低い情報の一つです。

なぜそう言えるのでしょうか?それは、実際の疫学研究をみてみれば一発でわかります。

チョコの本当の健康効果

チョコと健康効果の最新のメタ解析を紹介します(Nutrients. 2017;9(7):688. )。このメタ解析は、今までのコホート研究のまとめです。計50万人、5年〜16年の追跡期間で、冠動脈疾患、脳卒中、糖尿病の発症とチョコレートの摂取量の関係を検討しています。すると、チョコレートを最も多く食べている人は、最も食べていない人と比較し、冠動脈疾患が10%低下、脳卒中が16%低下、糖尿病が18%低下しました。しかし、チョコレートの量と糖尿病の発生率を比較すると、週2回食べる人が最も低い糖尿病発症率であり、それ以上食べると徐々に糖尿病リスクが上がりました。

よって、冠動脈疾患と脳卒中は、チョコを食べれば食べるほどリスクが減り、糖尿病は、チョコを食べすぎるとリスクが増えることが分かりました。

味噌汁の本当の健康効果

大豆と胃癌について検証した最新のメタ解析を紹介します(Medicine (Baltimore). 2017;96(33):e7802.)。計50万人の研究です。大豆の消費量が一番多い群は、最も少ない群と比較し、胃癌発症が22%低い結果となりました。が、味噌汁を1日1杯/3杯/5杯飲むと、胃癌発生がそれぞれ14%/ 29%/ 34%高い結果でした。味噌汁と他の大豆製品の違いは塩分含有量にあるので、味噌汁による胃癌発生は塩分摂取過多による可能性が高いと考えられました。

実はこの研究結果は、私は、「因果関係として解釈するに足る」結果ではないと思っています(詳細はこちら)。が、エビデンスとしては、味噌汁は胃癌のリスクを増やす可能性が示唆されているのです。

なぜ不確実な健康情報を流すか

現時点で信頼できる情報は、「チョコは心筋梗塞や脳卒中を減らすかもしれないが、食べ過ぎは糖尿病のリスクにつながるかもしれない」、「味噌汁はたくさん飲むと塩分摂取過多となり胃癌の発生率を増やすかもしれない」ということでした。最初に提示したどの情報も信頼性が低いことが分かったと思います。

栄養素の観点で考えても、これらの結論は絶対に出せません栄養素は、食事の健康影響を説明する方法の一つであり、それ自体が直接健康影響を示すことはまれです。何十万人を対象とした疫学研究が必要なわけです。そして疫学研究の情報は、ほとんどの「栄養素を語る人」は知りません。だから、信じていけないわけです。

企業の研究は、HPにある通り300人程度、数週間のフォローアップの研究です。これでは健康効果はわかりません。上に紹介した研究はメタ解析ですが、メタ解析の元論文も数万〜数十万人を年々もフォローアップした研究です。ですから、300人程度の研究は信頼に足らないし、事実論文出版することは難しいレベルです(もし論文出版できたらそれを明記しています)。仮に論文出版できたとしても、その論文の質(ジャーナルの質)は概して低いです。

では、なぜ不確実な健康情報を流すのでしょうか?企業のモチベーションは明らかで、その商品(チョコ)を売りたいがためです。栄養素を語る方については、自分のプレゼンスを高めたいことがモチベーションになっていることが多いです。ただ、一番の理由は、本当の情報を知らないからでしょう。私はたまたま疫学や予防医学に詳しいので一次情報である論文を読めますが、普通読めません。

いずれにせよ、信頼できない情報を大々的に流す行為は、実際に食べる人の健康影響は全く配慮していません。無責任極まりないわけです。やめてください。

結論

こういう不確実な健康情報に騙されないことが、個人にとっては大事です。「栄養素の情報」「企業の研究結果」は信頼性に乏しいので、そもそもシャットアウトしても良いくらいです。シャットアウトしない場合は、その情報の信憑性を疑えるようになりましょう。

ではどこで信頼できる情報を得られるのでしょう?論文を読まねばならないのですが、多くの非専門の方は難しいです。このブログでは論文を紹介し、現時点で信頼できる健康情報を提供しますので、一つの参考にしていただけると嬉しいです。

ではまた。

エビデンスレベルとは?誰でも分かる解説

エビデンスレベルとは、あまり聞き慣れない言葉かもしれません。これは情報の信頼度を表す階層で、とても重要な概念です。「コーヒーが心血管病を予防する」のはどのくらいのエビデンスレベルか?みたいに利用します。

この記事では、エビデンスレベルとは何か、その注意点は何か、についてわかりやすく解説します。この記事を読むことで、「エビデンス」という言葉への嫌悪感が減り、私達の実生活に活かせる有用な情報をどのように収集できるか、知ることができます。難しくありません。是非一読下さい。

エビデンスレベルとは?

エビデンスレベルとは

「エビデンス」とは、その事項(コーヒーが心血管病を予防する、など)がどれくらい信頼できるか、という指標です。つまり「エビデンスレベル」とは、その事項がどれくらい信頼できるか、半定量化したもの、ということになります。

エビデンスは研究を基に定められるので、研究の信頼性=エビデンス、ということになります。

国や学会毎にエビデンスレベルの定義が異なりますが、大抵こんな感じです。

メタ解析>ランダム化研究>コホート研究>症例対照研究>ケースシリーズ>エキスパートオピニオン

より詳細には(Plast Reconstr Surg. 2011; 128(1): 305–310.)、大体次のような感じです(参考までに具体例もつけてみました)。

<予後への影響を調べた研究>

Level 1: 高品質かつ大規模な前向きコホート研究、またはそれらのメタ解析
👉例えば、コーヒーと心血管病の関係を調べた、日本とアメリカとスペインと、、の大規模コホート研究を総合して解析した研究。もしくは、数十万人規模のアメリカのコホート研究。

Level 2: やや質の劣る前向きコホート、後ろ向きコホート、ランダム化研究の非治療群、それらのメタ解析
👉例えば、十万人程度の日本のコホート研究。

Level 3: 症例対照研究、そのメタ解析
👉例えば、その日本のコホート研究の中で行った2000人規模の症例対照研究。

Level 4: ケースシリーズ
👉コーヒーと心血管病の関連が強く疑われた5人の報告。

Level 5: エキスパートオピニオン
👉「コーヒーは抗酸化作用があるから健康に良い」という教授の意見。

<治療の効果について調べた研究>

Level 1A: ランダム化研究のメタ解析(で研究間の均質性が保たれている場合)
👉例えば、心血管病に対するビタミンCとプラセボの大規模二重盲検試験(ランダム化研究)20研究を総合して解析した研究。

Level 1B: 質の良いランダム化研究
👉20万人規模で20年間全員をフォローアップした、心血管病に対するビタミンCとプラセボの大規模二重盲検試験。

Level 1C: All or none study
👉ビタミンCという治療法が開発され、その後劇的に心血管病が減ったという報告。

Level 2A: コホート研究のメタ解析(で研究間の均質性が保たれている場合)
👉ビタミンCと心血管病の関係を調べた、日本とアメリカとスペインと、、の大規模コホート研究を総合して解析した研究。

Level 2B: ランダム化研究
👉2万人規模で5年間フォローアップした、心血管病に対するビタミンCとプラセボの大規模二重盲検試験。

Level 2C: アウトカム研究、エコロジカル研究
👉ビタミンCサプリをたくさん使用するマサチューセッツ州の方が、ほとんど使用しないミネソタ州よりも、心血管病発生率が少ない、という研究。

Level 3A: 症例対照研究のメタ解析
👉上述した2万人規模のコホートの一部で行った2000人規模の研究、のような研究をまとめた解析。

Level 3B: 症例対照研究
👉2万人規模のコホートの一部で行った2000人規模の研究。

Level 4: ケースシリーズ、質の低いコホート研究や症例対照研究
👉明らかにビタミンCサプリによる心血管病抑制効果が認められた5人の報告。

Level 5: エキスパートオピニオン
👉「ビタミンCは抗酸化作用があるから健康に良い」という医者の意見。

上に行くほど、信頼できる情報ということです。

お気付きの通り、ネットにあり簡単に入手できる情報は、ほぼ全てがエキスパート以下なのです。つまり信頼性がめちゃめちゃ低い。

次に、念の為それぞれの研究について説明します。

メタ解析:今まで全ての研究結果をまとめて解析する手法
ランダム化研究:ランダムにある治療法を使う人と使わない人を決め、その効果を比較する研究
コホート研究:治療法の使用はランダムに決まっていないが、その他の因子(年齢、性別など)を調整することで、同じような集団でのその治療法の比較をする手法
症例対照研究:コホート研究の一部を使い行う研究(詳細略)
All or none study:それまで致死的だった疾患が、ある治療薬により劇的に生存率が向上した事象を示す研究。知らなくて良いです。
エコロジカル研究:人でなく’地域’などをサンプルとした研究。知らなくて良いです。
ケースシリーズ:特徴的な症例のまとめ
エキスパートオピニオン:権威の高い人の意見

研究手法についてもっと気になる方は、この記事を御覧ください。

エビデンスヒエラルキー

エビデンスヒエラルキー
Wikipediaより

このように階層をビジュアル化したものを「エビデンスヒエラルキー」といいます。
繰り返しになりますが、「メタ解析>ランダム化研究>コホート研究>症例対照研究>ケースシリーズ>症例研究」、という階層を示すことが多いです。

単純に、その順にエビデンスレベルが高い、ということを図示しているのですが、、これがそうとは言えない、ということは研究者の中では常識になっています(次に説明します)。

エビデンスレベルへの批判

エビデンスレベルへの批判

エビデンス=情報の信頼度というものはそんなに単純でなく、エビデンスレベルのように単純化して「研究手法=情報の質」とまとめてしまっては、色々なものが失われます。当たり前ですが、悪いメタ解析もあるし、良いコホート研究もあります。

特にメタ解析=最強のエビデンス、と短絡的に考えるのは良くないと考える専門家が多いです。論文にて批判をする人も多く、例えば次のようなものがあります。
・エビデンスヒエラルキーでなく、研究手法のヒエラルキーだ。メタ解析は、大規模な研究にウェイトを置き、個々の人に適用できる結果でなくなってしまう(Perspect Biol Med. 2005;48(4):535–547.)。
質の高いコホート研究が十分に評価されない(Eval Health Prof. 2013;36(1):3–43.)。
・メタ解析は手法によって結論が変わりうるから、メタ解析=信頼できる、というのは短絡的過ぎる(Stud Hist Philos Biol Biomed Sci. 2011;42(4):497–507.)。

他にも色々ありますが、「メタ解析だから信頼できる」と言っちゃうのは危ないよ、ということです。

私達はどのように情報収集すべきか

私達はどのように情報収集すべきか

最低でもメタ解析、可能ならそれぞれのコホート研究やランダム化研究を参照して、事の真偽を確かめる能力が重要なのは言うまでもありません。でもそもそもの問題は、私達の多くはエビデンスを知らないため、人から聞いたことやネット上の情報を信じてしまうことにあります。しかしそういうものは、エビデンスレベルとしてはエキスパートオピニオン以下です。全く信頼できません

エビデンスレベルが如何に単純化されていようとも、メタ解析の論文とその結果を知っていれば、現状ヘルスリテラシーが高いと評価されえます(ヘルスリテラシーについてはこちら)。つまり、メタ解析に狙い撃ちして情報収集することは、間違った方法とは言えません(むしろ専門外の方には推奨します)。

また一方、事の真偽を実際の論文まで調べて解釈することは、多くの方にとって容易でありません。そういう場合はどうすべきか?信頼できる情報源、専門家を頼りにする他はないのかもしれません

Googleもこの問題を重要視しており、健康に関するトピックについてはE-A-T (Expertise-Authoritativeness-Trustworthiness)が重視されています。このブログは、一次情報(論文)をベースとした信頼できる医療情報を紹介しています。この問題解決のためにブログをやっていると言っても過言でありません(私のモチベーションはこちら)。参考にして頂ければ嬉しいです。

結論

エビデンスレベルには様々な批判があるものの、情報の信頼度として参考にはなります。エキスパートオピニオンに騙されないように、「その情報はエビデンスがあるのか」批判的になれるようになりましょう。

ではまた。

ヘルスリテラシーを身につけるには?【超重要】

現代、様々な健康(を謳う)情報が氾濫しています。時々ニュースになりますが、「トンデモ医療」に騙される方は、医療の宣伝方法がアップデートされるにつれ(SNSなど)、年々増えている印象です。怪しい情報を看破し、医学の恩恵を受けるためには「ヘルスリテラシー」が欠かせません。ヘルスリテラシーは、情報社会を生きていくために必須のスキルです。しかし、ヘルスリテラシーを十分身につけている非医療従事者は、残念ながらあまりいません。

この記事では、ヘルスリテラシーとは何か、どうすれば身につけることができるか説明します。この記事を読むことで、ヘルスリテラシーの重要性がはっきりわかります。

このブログは正しい健康情報を全ての人に伝えることを目標としています。より広義に言えば、皆様のヘルスリテラシー向上に貢献したいと考えています。

ヘルスリテラシーとは

ヘルスリテラシーとは

社会行動学的に様々研究されています。定義は大体以下の通りです。アメリカのCDC (Center for disease control and prevention)からの引用です

<医療情報、サービスを受ける側のヘルスリテラシー>

・情報とサービスを見つけられる

・自身のニーズや嗜好を伝えられる。情報やサービスに反応できる

・その情報やサービスの意味を理解し有用性を評価できる

・その情報やサービスの背景、その選択についてやどういう結果が生じうるか、理解できる

・どの情報とサービスが自分のニーズや嗜好にマッチするのか決め、行動に移せる

<医療情報、サービスを供給する側のヘルスリテラシー>

・人々が情報とサービスを見つけられるよう助ける事ができる

・健康、ヘルスケアについて対話できる

・人々が表立って何を求めているか、心の中では何を求めているか、理解することができる

・有用な情報やサービスをどう提供できるか理解している

・人それぞれの状況で、どの情報やサービスが適切か決められ、行動に移せる

これらは人々が適切な医療情報を理解し、医療サービスを受けるために必須のスキルとされます。

インターネットの普及とともに、最初の「情報を見つける」事はできても「情報に反応し」「評価する」事が極めて難しくなってきています。さらに悪いことに、ヘルスリテラシーを身に着けていない医療者が増えてきています(顕在化してきています)。なので、非医療者個人が自らの努力でヘルスリテラシーを向上させる必要があるのです。

ヘルスリテラシーを身につけている方は圧倒的に少ない

ヘルスリテラシーを身につけている方は圧倒的に少ない

やや古いですが、2006年ではアメリカ成人の12%しか十分なヘルスリテラシーを持っていないと報告されています(JAMA. 2015;314(12):1225-6.)。日本に関して調べた研究は見つけられませんでしたが、そこまで多くないと思います。

日本の場合、医療サービスの内容が実質的に医師によって決められる場合が多いです。医師が高い権威を持っているのも背景にありますが、非医療従事者が十分なヘルスリテラシーを持ってないことも影響しています。その医師が十分なヘルスリテラシーを持っていればよいのですが、もちろんそうでない場合もあります。特に自由診療に手を出している医者に対しては、かなり気をつけた方が良いです。なので繰り返しますが、個人の努力でヘルスリテラシーを向上させる必要があります

ヘルスリテラシーを身につけるには

ヘルスリテラシーを身につけるには

一方、非医療従事者が医療のことを理解するのは、極めて難しくなってきています。有用な一つの方法は、信頼できる医師の友達に聞くことですが、誰しもできるわけではありません。しかも、医師は自分の専門以外は結構知りません(それを専門とする医者の友達に聞くことはできますが)。ではどうすればよいか?

どういう情報が信頼できるが、判断できるようになることが大事です。信頼できる情報は、一般的には「質の高いエビデンスのある情報」だと考えられます。エビデンスは科学論文で検証され、その質も基準があります(詳細はこちら)。一方、専門外の方が論文にて信憑性を確かめることは容易でありません。すると、科学論文から得た正しい知識(一次情報)を持った人なりソースを持っておくことが重要ということとなります。ちなみに、ほとんどのインターネットの情報は二次情報(誰かが言っていた情報)であり、信頼できる情報ではありません。

以下に、誤っている(正しいと言えない)健康情報、正しい健康情報の例を出します。どのような表現が正しいと言えるか知り、情報を判断する材料としてみてください。また、こういう情報を疑うポイントは、この記事でより詳細に解説しています

誤っている健康情報の例

誤っている健康情報の例

食事に関して、栄養素の観点で健康影響を判断している文章は怪しいです(詳細ここ)。

「ナッツはカロリーが高いから食べすぎないほうが良い」

ナッツを食べることで他の食事量が減る影響を考慮していません。逆に、エビデンスレベルは低いですが、ナッツを多く食べる人は肥満が少ないという研究があります(PLoS One 2014 9 (1), e85133)。ナッツに関しては詳細をここで解説しています。

「コーヒーは抗酸化作用があるから健康に良い」

抗酸化作用は健康に良さそうですが、それを証明することは非常に困難です。抗酸化作用を持つ薬剤とプラセボを用いたランダム化試験が必要となります。コーヒーの健康への効果は、‘コーヒーを暴露因子とした’コホート研究で証明されています(例えばCirculation. 2014;129(6):643–659.)。詳細はこちら

同様に、薬の効果を薬理学的に解説しているのも、それで健康に良いとは到底言えません。それを確かめるために臨床試験があります。薬理学的に良さそうと思われる薬剤は多量に開発され、臨床試験まで到達するのはごくわずか。すなわち、全ての薬は「健康に良さそう」と思われる機序を持っているわけです。しかし臨床試験で「効果がない」と判断され、販売に至らない薬がほとんどです。

実は販売されているものでも、エビデンスに裏打ちされていないものがかなり多く存在します。例えば「風邪の鼻水に対する抗ヒスタミン剤」。抗ヒスタミン剤は花粉症に使われる、アレルギー性鼻炎に効果がある薬です。メカニズム的には効きそうですが、これは2016年のメタ解析で、風邪に対する効果はほとんどないだろうとされています(Cochrane Database Syst Rev. 2016;10(10):CD009612.)。しかし、風邪診療のエビデンスを十分に調べている医者は少なく、ルーチンに処方される(意味のない)薬となっています。風邪の予防治療に関してはこちら。

正しい健康情報の例

正しい健康情報の例

疫学研究、臨床研究を参照してなにかを結論している場合は、著者がその分野に詳しい可能性が高いので、その情報も正しい可能性が高いです。できれば良質なメタ解析やランダム化研究が引用されていることを見抜ければ一番良いです。が、トピックによってそういう研究が無いケースもあります。なかなか研究の質を評価することは難しいので、せめて数本の研究論文を引用していれば、ある程度(他の情報より)信頼できる可能性が高い、といえるでしょう。

例えばこういう記述です。

・「ビタミンDをサプリとして利用することは、最近の大規模ランダム化試験で癌発症率が下がることが示されなかったので(N Engl J Med 2019;380:33-44.)、推奨されない」

…実はその後のメタ解析では効果がありそうだ、という結論に達していますが(J Steroid Biochem Mol Biol. 2019;198:105522.)、この大規模ランダム化試験の主要エンドポイントで有意差がなかったのは事実です。この試験を知っているだけ、この文章の著者はこの分野について新しい情報を知っているということです(真偽はいかんとして)。なので、信頼できる情報の可能性が高いです。実は、ビタミンDのサプリに関しては、結局議論の余地がある点でもあります。サプリについて詳細はこちら。

・「コーヒーを毎日飲むことは、全く飲まない人と比較し心血管病発症率が低いことが最近のメタ解析で示されたので、推奨される」

…そのメタ解析の引用していてくれればよりよいです(Circulation. 2014;129(6):643–659.)。が、引用先まで調べる人は中々いません。この文章をかけるということは、最低限そのメタ解析があったことをを知っているということでしょう。もしかしたら研究結果の解釈を自分でする能力はないかもしれませんが、それができる人を知っているということなので、信頼できる情報である可能性があります。コーヒーの健康効果について詳細はこちら。

結論

紹介した観点でネットにある情報をみてみると、ほとんどが信頼できないことに気づくと思います。そうなのです、ほとんどの情報は、筆者の意見のレベルです。鵜呑みにしてはいけません。ヘルスリテラシー向上のためには、信頼できる情報を自力で集める必要があります

このブログには、(執筆時点で)信頼のおけるであろう医療情報を紹介しています。皆様のヘルスリテラシー向上に貢献することが、私の目的だと言っても過言でありません(私のモチベーションはこちら)。一つの参考にして下さい。

ではまた。