あなたの骨を強くする4+αのストラテジー【科学的根拠】

‘骨を強くしたい。’多くの人が思っていることだと思います。多くの人が、骨を強くするために牛乳を飲んでいます。が、それは誤った(科学的根拠に基づいていない)行為です。。

この記事では、科学的根拠のある骨を強くするためのストラテジーを紹介します。この記事を読むことで、正しい方法で、骨を強くすることができるようになります。

ちなみに、骨を強くするという定義はこの記事で解説しています。だいたいは骨密度か骨折の頻度の比較です。

1. 骨に負荷のかかる運動を習慣的に行う

骨に負荷のかかる運動を習慣的に行う

これはもはや常識かもしれませんが、最も効果的な方法です。運動で骨に負荷をかけると、骨細胞が負荷に反応し、骨密度を上げて骨が強くなります。骨に負荷がかかる運動とは、歩行、ランニング、ボールやラケットを用いたスポーツ全般、筋トレ、ダンスなどを言います。

水泳は骨に負荷がかかるスポーツとは言えません。水泳は心血管疾患予防のための運動としては非常に有効ですが、骨は強くなりにくいです。

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・2016年のメタ解析は、impact exercise with resistance trainingが女性にとって一番良い運動であることを示しました(Sports Med. 2016;46(8):1165–1182.)。なぜ女性かというと、閉経後かなりの割合で骨粗鬆症となるからです。impact exerciseとは骨に負荷のかかる運動(コンタクトスポーツでなくともOK)で、resistance trainingとは筋トレです。骨密度は若い時の運動が重要で、学校ベースの体育プログラムが効果的です。

・アブトロニクスのようなvibration trainingは、そこまで効果的ではなさそうです(Biomed Res Int. 2018;2018:5178284.)。骨密度が低い一部の層には効果があるかもしれませんが。

生涯にわたって運動することが極めて重要です。癌罹患後に行うimpact exerciseは、そこまで強い効果がなさそうです(Osteoporos Int. 2018;29(2):287–303.)。12個のランダム化試験のメタ解析です。つまり病気になってからでは遅いかも、ということです。

ちなみに、運動で筋肉量を上げることも本質的に重要です。というのは、骨が弱いと折れやすくなりますが、筋肉があれば骨折するような状況(転倒など)を避けることができるからです。骨を強くしなくとも、転倒しなければ骨折しないのです。

2. 十分なカルシウムを取る

十分なカルシウムを取る

以降の記述は栄養素の観点で考える骨の健康です。以前の記事で「栄養素の観点で語る食事と健康は当てにならない」と書きました。ですが、「バイオロジカルに〇〇が必要。だから〇〇が不足してはいけない」という論調はOKです。大事なのは、それが必要だと分かっている上で、本当に不足になりやすいのか考える視点と、より効率的な摂取方法です。

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例え骨代謝にカルシウムは必須です。だから、カルシウムを摂取することは、当然必要です。しかし、だから牛乳を飲んだほうが良いとはならないということです。カルシウム摂取したいならカルシウムサプリが一番効果的なわけです。

しかも、現代はカルシウム摂取は非常に簡単にでき、普通に生活すればカルシウム不足になる状況は極めて限定的です(病気が原因の場合を除いて)。詳細はこの記事で説明しています。

そして、たくさんカルシウムを取ったからと言って、骨が余分に強くなるわけではありません。2007年のメタ解析では、カルシウム摂取(食品からもしくはサプリからどちらも)と股関節骨折の関連性はありませんでした(Am J Clin Nutr. 2007;86(6):1780–1790.)。しかも、ビタミンDを併用せずカルシウムサプリを摂取すると、骨折リスクが増えるかもしれませんでした。

つまり、普通で生活していればカルシウム不足になることは非常に稀であり、余分にとっても意味ないので、カルシウム摂取は特に意識する必要のないこととだと言えます。

3. 十分なビタミンDを取る

十分なビタミンDを取る

骨の代謝にはカルシウムとビタミンDが必要で、カルシウム同様ビタミンDも不足してはいけません。

ビタミンDは日光を浴びると皮膚で合成されるので、外によく出ていれば大丈夫です。が、そうでない場合、ビタミンDを不足することがあります。ビタミンDが不足している場合、ビタミンDのサプリで補給するのが一番効果的な方法です。

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・ランダム化試験のメタ解析で、だいたい65歳以上の高齢者にカルシウム+800IUのビタミンDを投与することで、全ての骨折リスクが15%低減したことが示されました(Osteoporos Int. 2016;27(1):367–376.)。

・ガイドライン(International Osteoporosis Foundation、US Endocrine Society)で、ビタミンD不足か骨折リスクが高い高齢者に対し、連日800-1000IUのビタミンDサプリの投与が推奨されています(Osteoporos Int. 2010;21(7):1151–1154., J Clin Endocrinol Metab. 2011;96(7):1911–1930.)。

・ビタミンD投与のカットオフを50歳以上と下げると、効果があるかは議論の余地があります(Z Gerontol Geriatr. 2019;52(5):428–432.)。

高齢でビタミンD不足か骨折リスクが高い方は、骨折予防のためビタミンDサプリの摂取が推奨されるということです。

ビタミンDは牛乳や発酵食品にも含まれています。が、牛乳の飲む頻度と骨折リスクには関連性がないのです(参照)。ビタミンD欠乏が疑われる場合は、ビタミンDのサプリです。

ちなみに2019年のUmbrella reviewにより、カルシウムとビタミンDのサプリを併用すると脳卒中のリスクが高まることが、割とエビデンスの高い事項だとされました(Ann Intern Med. 2019;171(3):190–198.)。カルシウムとビタミンDはどちらも骨の代謝に必要ですが、盲目的に2つとも内用するのは良くないということです。「不足していたら補う」ことに意味があります。

4. 十分なビタミンKをとる

十分なビタミンKをとる

ビタミンKも、カルシウムや骨の代謝に重要な役割を持ちます。ですので、不足してはいけません。

・2012年のランダム化試験のメタ解析では、ビタミンKのサプリにより骨代謝が少しだけ増えるという結論になりました(J Bone Miner Metab. 2012;30(1):60–68.)。が、メタ解析の質は低く、すごく信頼できる結果ではありません。

・一方、ハーバードのコホート研究(一番信頼できるコホート研究と考えられます。ハーバードだからではなく、コホートが良いのです)では、1日110μg以上のビタミンKを摂取していると、それ以下の人と比べて股関節骨折の割合が30%低いことが示されました(Am J Clin Nutr. 1999; 69:74–79.)。

・ビタミンDやカルシウムと同様、取りすぎる利益は限定的ですが、不足すると悪いのです(Nutrition. 2001; 17:880–87.)。男女とも150μg以上が推奨です。

ビタミンKは何に含まれているかというと、主に「葉のもの」の野菜です。ブロッコリー、ほうれん草、小松菜、レタス、ケールなどです。ちなみに納豆には非常に多く含まれており、1パックで240μgもあるそうです。納豆1日1パックで十分ということです。

5. その他(ビタミンA、タンパク質、カフェイン、コーラ)

その他(ビタミンA、タンパク質、カフェイン、コーラ)

最重要ではありませんが、その他、考えても良いことを説明します。

ビタミンAは、不足していると股関節骨折のリスクとなります(Int J Environ Res Public Health. 2017;14(9):1043.)。これはビタミンAも骨代謝に役割を持っているからです。が、ビタミンAサプリを摂取すればOKという話でもなさそうです。取りすぎると逆に骨折リスクが上がることも示唆されています。なので、不足にならない程度に食事から取ることが推奨されます。かぼちゃ、にんじん、さつまいも、ケール、ほうれん草。

タンパク質はバイオロジカルに骨形成に必要です。が、2019年のメタ解析では、タンパク質摂取を増やすことで骨密度への影響は認められませんでした(Osteoporos Int. 2019;30(4):741–761.)。が、まだ議論の余地がある領域です。

コーヒーを飲みすぎると股関節骨折のリスクが高まるというコホート研究の報告がいくつかあります。2015年の先進国を対象としたメタ解析では、明らかな関連性は認められませんでした(Nutr J. 2015;14:38.)。2014年のメタ解析では、コーヒーは男性の骨折を予防し、女性の骨折リスクを助長すると報告されましたが、信頼性は低いでしょう(Bone. 2014;63:20–28.)。おそらくコーヒーはそこまで影響することはないですが、すごく気になる人は、あえて飲まなくても良いでしょう

コーラはリンを含みます。コホート研究で、毎日コーラを飲む人は、ほとんど飲まない人と比較し、骨密度が低いと報告されています(Am J Clin Nutr. 2006;84(4):936–942.)。すごく信頼性できる情報ではありませんが、コーラはそもそも砂糖入り飲料のため健康に悪いので、避けたほうが良いです。骨を気にする方は、なおさら避けましょう。

結論

骨に負荷のかかる運動をし、ビタミンDが欠乏気味ならサプリで補充することが最重要です。

葉のものの野菜を摂取し、ビタミンK、ビタミンD、ビタミンAなどを不足しないようにしましょう。

カルシウムは不足してはだめですが、あまり気にしなくて良いでしょう。

そしてコーラを避けましょう。

ではまた。

理想のBMIとBMIの限界【体重の科学】

BMI (body mass index)とは、体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で表される指標です。BMIで18.5未満がやせ、18.5〜25が正常、25以上がやや肥満、30以上が肥満、とされます。

「太っている方が健康によい」と聞いたことがあるかもしれません。これはobesity paradoxと言われ、体重やBMIが孕む問題の一つです。本当に理想のBMIとはどの程度なんでしょうか?

この記事は、誰しも気になる「体重」の疑問を、科学的見地から明らかにします。この記事を読むことで、BMI・体重に関する正しい知識を身につけることができます。

理想のBMI

N Engl J Med, 2010. 363(23): p. 2211-9.

決定的な研究論文がNew England Journal of Medicineという医学で最も権威のある雑誌に、2010年に掲載されました(N Engl J Med, 2010. 363(23): p. 2211-9.)。150万人の白人を10年間追跡し、死亡率を比較した研究です。BMIが22.5〜24.9を基準とした時に、それから増えれば増えるほど、もしくは減れば減るほど、死亡率が上昇しました。上のグラフは、女性におけるBMIと死亡率の関連性です(男性もほぼ同じです)。喫煙者が別に示されている理由は後述します。

また2016年に、4大陸の100万人を対象とした解析が、Lancetというこれまた権威の高い医学雑誌に発表されました(Lancet 2016 388 (10046), 776-86)。結果はほぼ変わらず、BMIが20〜25の時に、死亡率が最も低い結果でした。

よって、BMIが20〜25が、理想のBMIだろうと考えられるようになりました。

日本人の理想のBMI

日本人の理想のBMI

一方、人種間で最適なBMIは異なることが示唆されてきました。アメリカの7万人の看護師を対象としたコホート研究では、BMIが同じであればアジア人は白人より2倍の糖尿病罹患リスクがあり、またアジア人は体重増加による糖尿病罹患リスクが他のどの人種より高かったのです(Diabetes Care. 2006;29:1585-90.)。確かに、日本人でアメリカ人並の肥満だと(見た目が)、かなり健康が心配になりますよね。

つまり、アジア人は体重増加による悪影響が、アメリカ人より顕著にみられるのです。これはアジア人が筋肉量が少ないこと、より脂肪(内臓脂肪)がつきやすかったり、インスリン抵抗性(2型糖尿病の原因)が生じやすかったりすることが原因と考えられています(Nutrition. 2004;20:482-91.)。その他、住んでいる環境の影響も重要だと考えられています(Diabetes Care. 2011;34:1014-8.など)。

これらの研究を受け、アジア人の適正BMIはより低くするべきでないか、と議論されてきました(Ann Acad Med Singapore. 2009;38:66-9.等)。一方、日本人に対する疫学研究では、男性は40-60歳はBMI 23程度, 60-80歳はBMI 25程度、女性は40-70歳がBMI 23程度、70歳-80歳はBMI 24程度が、最も死亡率が低い結果となりました(Obesity 2008 16 (10), 2348-55)。年齢で違う理由は後述します。

結果的に、日本人の現在の推奨は以下の通り、幅を持たせることとなりました(日本人の食事摂取基準 2015年版)。上限は変えず、下限を低くしたわけです。

18-49歳:理想BMIは18.5〜24.9

50-69歳:理想BMIは20〜24.9

70歳-:理想BMIは21.5〜24.9

これは的を得た推奨だと思います。

BMIが低ければ太った方が良いのか

BMIが低ければ太った方が良いのか

痩せマッチョでBMI23の人と、脂肪だらけのBMI23の人、健康度合いはかなり違うと思いませんか?ここに、BMIの限界があります。

実際に健康に関わるのは、体重でなく、体組成です。BMIは体重と身長から体組成を大まかに示す、サロゲートマーカーに過ぎません。ただ、優秀なサロゲートマーカーなので、多くの人に適用でき、上述した研究のようにはっきりした結果(死亡率との関連)が認められるのです。

「BMIが低いから太ったほうが良いのか。」そんなわけありません。なぜなら、一般の「太る」とは「皮下脂肪、内臓脂肪を増やす」という認識なので、そんな事をすれば死亡率上昇に関わるに決まっています(病的に脂肪が少ない状態の方を除いて)。つまり、BMIを単独の「体組成のパラメーター」と用いることに、ある程度限界がある、ということです。

高齢になるとBMIが高いほうが良いのか

高齢になるとBMIが高いほうが良いのか

高齢者は、「BMIが低いから死亡率が高いのか」「死亡率が高い状況だから(具合が悪いから)BMIが低いのか」どっちも考えられます。つまり、低いBMIが原因なのか、結果なのか、わからないということ。タバコも同じです。喫煙していれば、肺気腫となって具合が悪いからBMIが低いのかもしれません。BMIが低いことが結果だと、BMIをどうすればよいのかという判断の参考になりません(こう判断する場合、BMIが原因である前提です)。

これをはっきり理解できないと、「BMIが高いから死亡率が低い」という一方向の誤った解釈しかできません(Obesity paradoxといいます)。低いBMIが実は結果なのに原因と考えてしまうこの問題を、reverse causationと言います。reverse causationをなくさないと、「BMIをどうすればよいか」判断することはできません。reverse causationを無くすには、具合が悪い(or 死亡率が高い)人を最初から除外する必要がありますが、高齢者=概して死亡率が高いため、完全にreverse causationを無くすことはできません。

よって、「平均すると、BMIが比較的高い高齢者が死亡率が低い」となるのですが(Obesity 2008 16 (10), 2348-55)、だから「BMIを増やしたほうがよい」とはなりません。「平均すると、BMIが25あたりとなっている高齢者の死亡率が低い。なぜなら具合が悪くてBMIが低い人もふくまれているから」というのが正解です。

そもそもアジア人は、太っている(BMIが高い)ことで病気になりやすい人種です。なので、「太ったほうが良い」状況はほとんどありません。こういう情報は、疫学研究の結果を誤って解釈した、不正確な情報です。

結論

日本の推奨である理想BMIは20〜24.9、というのは良い感じです。結局BMIは「体組成」を示すだいたいの指標なので、「BMI 22を目指す」みたいに、ピンポイントの理想の数値は結局わかりません。だいたい、20〜24.9であれば、肥満による健康障害(糖尿病や心筋梗塞など)が少ないだろう、という話です。積極的に太った方が良い事はありません。

ではまた。