「牛乳は骨に良い」は幻想だと認識しよう

「骨を強くするために、身長を高くするために、牛乳を飲まなくてはいけない。」「最近牛乳を飲んでいない、カルシウム不足だ。」こう思い込んでいませんか?これは、私達の幼少教育に端を発する完全な刷り込みで、誤った認識、幻想なのです。

牛乳が骨に良い事が幻想なんて思うこと、難しいですよね。それほど強く、私達の頭の中に刷り込まれています。これを正しく認識して真実を知ることが大事です。幸いにもインターネットの発達により、このような情報に簡単に触れることができます。

この記事では、牛乳を始めとする乳製品の真実を語ります。この記事を読むことで、乳製品に対する正しい見方ができるようになり、刷り込みされた情報から逃れ、自分で自分の身を守ることができるようになります。牛乳と心臓病や癌との関係は、別記事で説明しています。

「牛乳は骨に良い」は幻想だと認識しよう

「牛乳は骨に良い」は幻想だと認識しよう

まず最初に言っておきますが、これに関してはまだ全会一致の結論が出ていない領域です。が、今までたくさんの研究が行われ、ある程度の知見は得られています。この記事では、2019年12月時点での科学的根拠とその解釈を紹介していきます。

そもそも、なんで私達は「牛乳は骨に良い」と思っているのでしょうか。思い返すと、「牛乳にはカルシウムがたくさん含まれており、骨はカルシウムでできているから」ではないでしょうか。それは本当だと思いますか・・・?だったら、カルシウムのサプリメントを飲めばよいのでは無いでしょうか。

そして、「骨に良い」って、なんでしょうか?骨がより固くなることでしょうか。もしそうなら、どうやって測るのでしょうか?

******

1点目は、本ブログで繰り返し言っている、栄養素の観点で食事の栄養効果を語ってはいけない、という基本事項です。これはとても大事な事項ですので、知らない方がいらっしゃったら、この記事の前に確認ください。2点目は健康の定義の話です。骨に良いとはざっくり2通りの定義方法があり、「骨折が少ないこと」か「骨密度が高いこと」です。後者は、この記事で言及した健康のサロゲートマーカーと言えます。

つまり「牛乳が骨に良いか」という疑問は、「牛乳/カルシウム摂取により、骨折の減少または骨密度の増加につながるか」という事と本質的に同義だと考えられます。まずは、これらの疑問に直接答えた研究を紹介します。

牛乳が骨に良いか検証した研究まとめ

牛乳が骨に良いか検証した研究まとめ

・カルシウム摂取と骨折の関連性をみた2015年のメタ解析です(BMJ. 2015;351:h4580.)。とても良い研究なので、少し詳細にみていきます。

1.まず食事由来のカルシウムと骨折について。牛乳と骨折については28個のうち25個の研究で関連性なしとされています。乳製品と骨折については、13個のうち11個の研究で関連性なしとされています。いわゆる統計的な検定はされていませんが、この事実で十分「食事由来のカルシウムと骨折の関連はない」事が示唆されます。

2.カルシウムのサプリと骨折について。サプリはランダム化試験が組めるので、より信頼性の高い根拠となります。この結果はとてもおもしろいです。まず、全体では骨折リスクを11%下げるという結果となっています。が、重要な股関節と腕の骨折に関しては影響ないといいます。様々な方法で、この結果はバイアスがある(positiveな結果が選択されて論文となっている)と判断されました。そして、このメタ解析に含まれている、一番大規模かつ信頼性の高いランダム化試験では、サプリによる骨折予防の効果はありませんでした。更に、このメタ解析に最も影響ある研究(サプリが骨折予防したという結果)は、食事からのカルシウム摂取が少なく血中ビタミンD濃度が低い女性集団を対象としていました(N Engl J Med. 1992; 327(23):1637-42.)。つまり、一般的には骨折予防にカルシウムサプリは効果なく、カルシウム摂取が不足している女性には効果があるかもしれない、と示唆されました。

・2018年の北ヨーロッパを対象としたメタ解析では、乳糖不耐症は骨折リスクと関係ありませんでしたJ Intern Med. 2018;284(3):254–269.)。よって、牛乳摂取と骨折リスクが関係ないことが示唆されました(Mendelian randomizationという研究手法です。追って紹介します)。

・一方、2015年の子供を対象としたメタ解析では、「牛乳摂取は骨折リスクを少し下げるが、食事からのカルシウム摂取は骨折リスクと関係ない」という結果でした(Am J Clin Nutr. 2015;102(5):1182–1195.)。この解析は様々な点でバイアスがかかっていることが考えられ、信頼性が乏しいです。が、一応こういう結果の研究もあることを紹介してみました。

以上まとめると、「牛乳、乳製品、食事からのカルシウム摂取、カルシウムサプリメントが骨によいとは一般的に言えない」となります。カルシウム摂取不足の人に、カルシウム補給することで、骨に良いかもしれない、とは言えるかもしれません。では、私達はカルシウム不足なのか?、という問題となってきます。

私達はカルシウム不足なのか

私達はカルシウム不足なのか

「カルシウムが不足していそう」みたいな感覚になることはありませんか?あんまりなる人はいないかもしれませんが、なる人は、ほとんど幻想です。病気で低カルシウムとなり症状がでることはよくありますが(癌など)、ここでは健康な方について言及しています。

どれくらいカルシウムを取れば十分なのでしょうか。実は決定的な見解はありません。最も信頼できそうな推奨は、米国のNIH(アメリカ国立衛生研究所)から出されています(NIH資料)。

・19-50歳は1日1000mg以上

・50歳以上は1日1200mg以上

・妊娠中、母乳育児中の女性は1日1000mg以上

これがどれくらいなのでしょう。食品に含まれるカルシウムの量を参考にしてみましょう。概算です。

・牛乳コップ1杯:500mg

・オレンジジュース1杯(カルシウム添加されているもの):350mg

・ヨーグルト1個:300mg

・チーズ1スライス:270mg

・ほうれん草1回分:250mg

・豆腐100g:200mg

こんなものです。1日の摂取量は、他全ての乳製品(バターやクリームを含むもの全て、カルシウム添加されているもの全て)が合計されます。パンやケーキやお菓子やシリアルやカレーやアップヌードルやポテトフライ、全てにカルシウムが含まれます。カタカナ表記されているほぼ全てのものが、カルシウムを含んでいます。明らかに、普通に生活していれば、日本でこの推奨を下回ることはありません。

ふつう健康な方は、カルシウム摂取不足になることはありません。

じゃあ、牛乳は飲まないほうが良いのか

以上より、「牛乳は骨によい」ということは科学的根拠に乏しいことがわかりました。だから、「骨を強くするために牛乳を飲む」ことは、科学的に誤った行為であることが言えそうです。

じゃあ牛乳は飲まないほうが良いのか、というのは、別の議論です。これを検証するには、「牛乳などの乳製品摂取と死亡率の関係」を調べる必要があります。これは実は関連性がなさそうなので(一部の癌発生を増やすかもしれません)、結論どっちでもよい、となりますが。この記事で説明しています。

また、「どうやって骨を強くするか」というのも別の議論です。例えば、運動による骨への物理的負荷が非常に有効であることが、過去の研究から示唆されています。これも追って解説します。

結論

牛乳は骨によいとは、科学的根拠に乏しい、単なる刷り込みです。

現代時はカルシウム不足にほとんどなりません。気にしないで下さい。

ではまた。

エナジードリンクを毎日飲むのは科学的に止めといた方が良い

エナジードリンクは健康に悪い、というのが定説です。が、疲れたときにはつい飲んでしまいます。私達が知りたいのは、「エナジードリンクは歯を溶かす」「エナジードリンクを飲みすぎると死ぬ」といたずらに恐怖を煽る話でなく、「エナジードリンクを飲むリスクは具体的にどの程度なのか」という真実の情報です。しかし実際科学的に調べてみると、やはりあまり勧められる飲み物ではなさそうです・・

この記事では、エナジードリンクの健康への影響に関する最新の科学的エビデンスを、わかりやすく紹介します。この記事を読むことで、本当かどうかわからないような情報に惑わされず、エナジードリンクの真実の利益とリスクを知ることができます。これらを知った上で、どの程度飲むか自分で判断して決めましょう。

エナジードリンクとは何か、はっきりさせておく

エナジードリンクとは何か、はっきりさせておく

エナジードリンクは、レッドブルやモンスターなどの「砂糖入り飲料(清涼飲料水)」をいい、スポーツドリンクとは異なる性質をもつものです。エナジードリンクは、「注意力やエネルギーを高めるための飲料」というコンセプトです。成分としては、カフェイン、砂糖、ビタミンB群、タウリン(日本ではアルギニン)などを含みます。ちなみに、リポビタンD、ユンケル、オルナミンC等は、日本では「栄養ドリンク」という括りですが、栄養学的にはエナジードリンクです。日本の分類は「タウリンを含むかどうか」で決まっているようです。

後述しますが、エナジードリンクの過剰摂取が世界的に問題となっています。その点で、日本で販売される「栄養ドリンク」の容量が少ない(普通100ml程度)事は、過剰摂取を予防する非常に良いアプローチだと思います。一方、規制の少ない「日本のエナジードリンク」は、消費量が多く、注意が必要です。

繰り返しますが、世界的には、日本の栄養ドリンクもエナジードリンクも「エナジードリンク」というカテゴリーです。

エナジードリンクによる良い影響

エナジードリンクによる良い影響

私も臨床で疲れた時に、数分でレッドブルを飲んで、救急外来に戻る、ということをよくやっていました。当直中や当直明けはほぼ必ず飲んでいたし、木曜や金曜は疲れて集中力が途切れやすかったので、1日複数本飲むこともありました。実際飲むと、集中力が回復したり、疲れが飛んだ感覚があります。これは科学研究でも検証されています。

・メタ解析で、エナジードリンクは様々な運動能力を短期的に向上させる効果があると結論されました(Eur J Nutr. 2017; 56(1):13-27.)。

・ランダム化試験で、レッドブルはプラセボと比較し、reaction time、記憶力、運動耐容能、主観的な集中力が向上しました(Amino Acids. 2001; 21(2):139-50.)。

・ランダム化試験で、レッドブルはプラセボと比較し、運動後のreaction time、集中力が向上し、主観的疲労度が低い結果となりました(Exp Clin Psychopharmacol. 2010; 18(6):553-61.)。

・アスリートのパフォーマンスを向上させるという結果も、いくつかあります(Amino Acids. 2014; 46(5):1333-41.など)。

自分の感覚は科学研究で支持されていました。運動に効果がありそうなので、大事な試合前には飲むと良いかもしれません

が、ネガティブな効果が大量に報告されていることも知りましょう・・・(次)。

エナジードリンクの害

エナジードリンクの害

エナジードリンクを原因として救急外来を受診する患者の数は、年々増加傾向にあります。少し前の報告ですが、12-17歳に限っても、1年で1500人程度が米国の救急外来を受診しています(CDC報告)。

科学論文で報告されている健康被害は、次のようなものです(だいたいコホート研究のレベルのエビデンスです)。

危険行動を惹起しますJ Addict Med. 2014; 8(1):6-13., Eur J Pediatr. 2017; 176(5):599-605.)。青少年が酒、タバコ、麻薬に手を出したり、喧嘩や不登校につながります。ちなみに、エナジードリンクを飲むことでアルコール摂取量も増えますHum Psychopharmacol. 2016;31(1):2–10.)。

精神的に不安定になりますPrev Med. 2014; 62:54-9., Nutr J. 2016; 15(1):87., J Caffeine Res. 2016; 6(2):49-63.)。ストレス、不安、うつ、自殺計画や実際の自殺と関連します。

血圧上昇しますEur J Nutr. 2014; 53(7):1561-71.)。これはランダム化試験の結果で、短期的な影響です。が、飲み続けると「血圧を上げる薬」を飲んでいることと同じです。

心電図でQT延長が認められます(J Am Heart Assoc. 2019;8(11):e011318.)。QT延長は、突然死を引き起こす“心室細動”という不整脈の原因です。これもランダム化試験の結果です。

肥満、2型糖尿病のリスクが上がります。これは砂糖入り飲料の研究結果です(詳細こちら)。繰り返しますが、「エナジードリンク=砂糖入り飲料」です。

虫歯が増えます(Am J Clin Nutr. 2003; 78(4):881S-892S.)。

・糖の中でもフルクトースが、腎機能障害に関連します(Am J Physiol Renal Physiol. 2007; 293(4):F1256-61.)。

睡眠障害、疲労感、頭痛、腹痛も引き起こします(Eur J Pediatr. 2017; 176(5):599-605., Pediatr Emerg Care. 2016; 32(11):751-755.)。結局飲みすぎていると、効果がなくなるどころか、疲労感が増幅してしまいます。

これらは、ほぼ間違いない健康への害と言ってよいと思います(エナジードリンクを原因として健康被害が起きている、ということ)。なぜなら、エナジードリンクと健康被害に関して、あまり強い交絡は無いと考えられるからです(交絡に関しては追って説明します)。

エナジードリンクのもっと怖い話(症例報告)

エナジードリンクのもっと怖い話(症例報告)

「こういう人がいました」というレベルの話は、エビデンスレベルとしては弱いです(エナジードリンクを飲むとそうなる、とは中々言えません)。なので聞き流してもらって構わない話です。が、参考程度に、「エナジードリンク怖っ」と思うことのできる報告を紹介します。

・(有名ですが、)日本の20代前半の男性が、エナジードリンク摂取が原因と考えられるカフェイン中毒で死亡した(Nihon Arukoru Yakubutsu Igakkai Zasshi. 2016;51(3):228–233.)。

・レッドブルを1日1-2L飲んでいた26歳女性が、心臓がほとんど動かなくなり、人工心肺装置が挿入された(Can J Cardiol. 2019;S0828-282X(19)31267-X.)。エナジードリンクによる拡張型心筋症と診断された。

・レッドブルを12L飲んだ30代男性が、急性腎不全と幻覚を発症し、緊急透析をうけた(Case Rep Psychiatry. 2019;2019:3954161)。

・32歳男性が、レッドブルを1日5本飲んでから5時間後、超重症な急性心筋梗塞を発症した(Int J Cardiol. 2015;179:66–67.)。

他にもたくさんあります。が、こういうのは誰しも当てはまる因果関係でないので、話半分で聞いておいてください。無駄に恐怖に煽られる必要はありません。

特に中高生、大学生は注意が必要

体格が小さいから体への影響が大きい、ということだけが問題ではありません。脳が発達過程であり、衝動をコントロールする能力が未発達であることが問題です(J Public Policy Mark (2005) 24(2):202–21)。長期的な健康影響を考えて行動選択することが難しく(誰しも経験あると思います)、そのためエナジードリンクが習慣化してしまう危険性が極めて高いのです。また、エナジードリンクを原因として危険行動をする可能性が高い。

エナジードリンクは、実は世界的な大問題に発展しています(Paediatr Child Health. 2017;22(7):406-410.)。明らかに健康に悪いのに、広告規制がなされていないことが問題なのです。軽い麻薬のようなものです(短期的な効果がある点で)。この記事を読んだ方は、エナジードリンクの健康被害のエビデンスを知った上で、どう飲むか、どう家族に飲ませるか決めましょう。普段は飲まず、ここぞという重要な時に飲むのが、お勧めです。

「エナジードリンクを毎日飲んでみた」みたいな自己実験は止めとけ

「エナジードリンクを毎日飲んでみた」みたいな自己実験は止めとけ

これが一番言いたいことかもしれません。

ブログやYoutubeでよくみますが、止めといたほうが良いです。もう健康に悪いことはいくらでも科学的に証明されているし、「飲み過ぎたらめちゃくちゃヤバかった」人は論文の症例報告になっています。健康をどの程度害すかは、確率的な問題です。あなたの自己実験がそれほどのインパクトをもつ可能性は低いから面白くないし、それでいて何らかの形で健康を害します。実験する必要ありません。

あと、おそらく今後のGoogleのアップデートで、「明らかに健康を害するような報告」「健康に関する個人的な経験」は、表示順位が低下することが予想されます。健康情報に関してはGoogle(Youtube含む)は大変問題視しており、今後信頼できる情報以外優先順位が間違いなく下がります。個人的な経験は信頼性が非常に低いので、優先されません。Public Healthに害となると判断されたもの(エナジードリンクの自己実験など)も、かなり下がります。アクセス数を稼ぐという意味でも、やる価値のない分野になります。

結論

エナジードリンクは、特に若者に大きい健康被害を引き起こします。

一旦毎日飲み始めると、止めるのが大変です。しかも、ここぞという時に飲むほうが効果的です。

こういう科学的に正しい知識を持ち、その上で自分で判断することが重要です。

ではまた。

人工甘味料は本当に危険か、科学的に分析する

〇〇ゼロ、ノンカロリー〇〇、ダイエットコークなど、人工甘味料入りドリンクが大変ポピュラーになっています。これらは、砂糖入り飲料(清涼飲料水)が体に悪いという事実に基づき、市民の健康意識の高まりとともに普及された経緯があります。が一方、「人工甘味料は逆に糖尿病のリスクを高める!」といって敬遠されることもよくあります。本当なのでしょうか?仮にそうだとしても、そのリスクは「砂糖入り飲料」より高いのでしょうか?

この記事では、2019年12月時点での人工甘味料の危険性をまとめ、実際にどう考えて飲むべきか、科学的根拠に基づいたガイドを提示します。この記事を読むことで、甘いものに関して自分の選択に自信が持てるようになるでしょう。

人工甘味料とは?

人工甘味料とは?

人工甘味料とは、砂糖より数百〜数万倍甘いため、砂糖と同じ甘さを出すために必要な量が少ない、人工的に合成された物質です。人工甘味料自体はカロリーを少し含むものもありますが、極微量で甘くなるので、カロリーフリーが謳われます。「砂糖不使用」「カロリーゼロ」「カロリーオフ」と表記してある甘い食べ物には、例外なく人工甘味料が使用されています。

人工甘味料にはたくさん種類がありますが、メジャーなものは次の6つ:アスパルテーム、アセスルファムK、サッカリン、スクラロース、ネオテーム、アドバンテームです。

※糖アルコール

人工甘味料に似たものに、糖アルコールというものがあります。糖アルコールは、砂糖の25%〜100%くらいの甘さですが、カロリーは低い、自然に存在する成分です。砂糖と異なり、糖アルコールは虫歯や血糖値に急激な上昇を来しません。お菓子だけでなく、歯磨き粉や医薬品にも使われます。

代表的には次の6つ:ソルビトール、キシリトール、ラクチトール、マンニトール、エリスリトール、マルチトールです。

糖アルコールは、人間が摂取して健康に影響することはないとされています。例外は、キシリトールなどを摂取し過ぎた時に生じる腹痛や下痢です(Int J Dent. 2016;2016:5967907.)。これは糖アルコールの吸収が遅いため、小腸に多量の水分が引き込まれてしまう事が原因と考えられています。この症状は一過性で、かつ摂取し続けると症状が起きにくくなります。ちなみに、エリスリトールはこの副作用がありません。

以下の情報は、糖アルコールを含まない、人工甘味料に関するものです。糖アルコールは危険ではありません。

人工甘味料の危険性は?

人工甘味料の危険性は?

はじめに言っておきますが、結論ははっきりとしていません。健康に悪影響する可能性も十分にあります。以下に、人工甘味料入り飲料に関する最新の研究を紹介します。

人工甘味料は血糖値を上昇させることはなさそうです(Eur J Clin Nutr. 2018;72(6):796–804.)。29個のランダム化試験のメタ解析で、多くはアスパルテームかサッカリンに関するものです。具体的には、人工甘味料摂取後血糖値は上昇せず、時間経過とともに下がっていく傾向がみられました。

糖尿病を増やすかどうか、結論が出ていません砂糖入り飲料よりリスクが高い可能性はあります。ランダム化試験のメタ解析では、水と比べ、人工甘味料入り飲料に有意なリスク上昇は認められませんでしたが、試験の数が少なく(1〜5個)、観察期間も6ヶ月ほどと短く、信頼性は低いです(CMAJ. 2017;189(28):E929–E939.)。一方、コホート研究のメタ解析では、人工甘味料入り飲料を1日1本飲むごとに、2型糖尿病のリスクが25%上がると報告されています(Br J Sports Med. 2016;50(8):496-504.)。砂糖入り飲料のリスク上昇は、1日1本飲むごとに18%でした。

※しかし、これはreverse causationである可能性が非常に高く、信頼できる結果とは言えません。つまり、太ってきて糖尿病リスクが高い人が、気にして人工甘味料入り飲料を選んでいるということです。糖尿病の発症は、人工甘味料が原因でない可能性を裏付ける研究もあります(Am J Clin Nutr. 2011;93(6):1321–1327.)。

長期的な体重増加には寄与する可能性があります。短期のランダム化試験のメタ解析では、水と比べ、体重への影響はなさそうでした(CMAJ. 2017;189(28):E929–E939.)。が、コホート研究のメタ解析では、体重、BMI、肥満の頻度が上昇することが示されています(同論文)。糖尿病と同様、これはreverse causationの可能性がありますが、バイオロジカルにも説明されます:人間の脳は甘いものに反応し、さらに甘いものを食べたり飲んだりする欲求が生まれるように設計されているということです。砂糖に比べ、サッカロースは満腹中枢を刺激しにくい(満腹感を得にくい)ことがMRIで示されています(Neuroimage. 2008;39(4):1559-69.)。ホットな研究分野で、まだ結論は出ていませんが、違うものを食べることにより体重増加に寄与する可能性が示唆されています。

・その他、脳卒中や心筋梗塞のリスクを少し上昇するというコホート研究の結果がありますが、確定的な結果とは言えません(CMAJ. 2017;189(28):E929–E939.)。

癌についてはヒトの報告はほとんどありません。アスパルテームはネズミでは癌発症に関係ない(Arch Environ Occup Health. 2015;70(3):133–141.)という論文はあります。

まとめると、砂糖入り飲料と比較しカロリーが少ないので、血糖値の急激な上昇には寄与しません。が、食欲を刺激して他のものを摂取することで肥満や糖尿病につながることは否定できない、というのが2019年12月現在の結論です。

じゃあどうしたら良いの?水飲んで。

じゃあどうしたら良いの?水飲んで。

2018年にアメリカ心臓学会とアメリカ糖尿病学会が声明を出しています(Circulation. 2018;138(9):e126-40.)。これによると・・・

砂糖入り飲料は避けたほうがよく水を替わりに飲むのが一番良い。フレーバー入りでもOK。砂糖や人工甘味料入りはだめ。

・でもどうしても甘いものを飲みたい人は、人工甘味料入り飲料を一時的に飲んでもよい。だが、完全に砂糖入り飲料を人工甘味料入り飲料に置換する行為は止めておいたほうが良い。なぜなら、他のお菓子や飲み物を飲み、結果的にカロリー摂取過多となってしまう事態を引き起こし得ないから。

・健康への悪影響が示唆されている以上、影響されやすい小児は飲むべきでない

ということです。

上述の科学的根拠を基とした私の日本人への見解は、以下のとおりです。

スポーツ中にスポドリとして人工甘味料入り飲料を飲むことは理にかなっていない。そもそも水でなくスポドリが必要な状況は限られており、かつスポドリによる運動パフォーマンスの上昇は炭水化物(砂糖)がどれくらい飲料中に入っているかが重要だから(詳細こちら)。

コカコーラゼロを飲むんだったら、スパークリングウォーター(フレーバーあり)を飲んだほうが良い。

・どうしても甘いものが飲みたいときは、人工甘味料入り飲料を飲む。ただしお菓子を同時に食べないように注意する。

いかがでしょうか。割と実践的だと思います。

結論

人工甘味料は、そこまで悪い危険性は立証されていません。研究中です。

いたずらに恐れず、砂糖入り飲料の良いalternativeとして使いましょう。が、結局水やスパークリングウォーターが良いので、そちらに移行していきましょう。

ではまた。

熱い飲み物は「発がん性物質」である【私達が知るべきこと】

あっついコーヒーは目を覚ますのにとても良いですよね。でも、熱い飲み物は、何となく喉に悪いそうな気がしませんか?実はこういうことも研究されていて、IARC(国際がん研究機関)は「とても熱い飲み物(Very hot beverage)」発ガン性物質 Group 2A(おそらくヒトに癌を生じさせる)に分類しています。じゃあ、熱いお茶は飲まないほうが良いのでしょうか?お茶は健康に良いのに? — こういう疑問が湧いてきます。

「発ガン性物質」とは、私達の不安を過度に煽る表現です。この記事では、熱い飲み物が「発ガン性物質」となった背景、どう解釈したら良いかを解説します。「発ガン性物質」に関するヘルスリテラシーが向上し、ご自身の行動変容を考えるきっかけになれば幸いです。

熱い飲み物は「発がん性物質」である

熱い飲み物は「発がん性物質」である

WHOは2016年、熱い飲み物は「発がん性物質」である、という公式な表明をしました(WHO文書)。ヒトでの研究により、熱い飲み物は食道癌のリスクになるという判断です。これを受け、IARCが熱い飲み物をGroup 2Aの発ガン性物質と分類しました(Wikipedia)。Group 2Aには、ヒトパピローマウイルス31型と33型、紫外線、肝吸虫感染(肝臓に寄生する寄生虫)などが含まれており、発ガン性物質の分類としてはGroup 1に次いて信頼性の高い分類です。今もこの分類は変わっておらず、熱い飲み物は「発がん性物質」なのです。

知っていましたか?これを聞くと、怖くありませんか?この記事でこの経緯をしっかり知り、「発ガン性物質」に対して適切に対応できるようになりましょう。

ちなみに、コーヒーにも発ガン性物質が入っていますよ・・(詳細こちら

熱い飲み物が「発がん性物質」となった根拠

熱い飲み物が「発がん性物質」となった根拠

ではどういう研究が根拠となったのでしょう?根拠がLancet Oncologyという権威高い雑誌に公表されています(Lancet Oncol. 2016;17(7):877-878.)。これによると、最も重大な科学的根拠は、南米のコホートでマテ茶と食道扁平上皮癌の関連を調べた、2014年の症例対照研究によります(Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 2014; 23: 107–16.)。

マテ茶とは、南米の伝統的な飲み物で、マテの葉や枝にお湯を注ぎ、慣習的にはストローで飲む飲料です。マテ茶は伝統的には65℃以上と高温で飲むものですが、最近ではぬるくしたり冷やしたりして飲むこともあるそうです。高温のマテ茶をストローで飲むと、とても喉や食道に悪そうです。1991年に、「熱いマテ茶は食道癌と関連があり、熱くないマテ茶は関連がない」という報告がなされており(IARC Monogr Eval Carcinog Risks Hum 1991;51: 1–513)、これをよりしっかり調べたのが2014年の研究です。

結果、1991年の研究と同じような結果でした。マテ茶の消費と食道癌の関係はあったのですが、warmのマテ茶には有意な関連は認められず、hotかvery hotのマテ茶に関連が見られ、very hotが最もリスクの高い飲料と結論されました。

他、2009年に紅茶でも同様の結果が確認されました(BMJ 2009;338: b929.)。これも比較的小規模な症例対照研究ですが、ぬるい〜温かい紅茶(60℃未満)と比較し、hot tea(60-65℃)は2.1倍、very hot tea(65℃以上)は8.2倍の食道癌リスクが認められました。さらに、お湯を注いで4分後の紅茶と比較し、2-3分後の紅茶は2.5倍、2分未満は5.4倍の食道癌リスクが認められました。

熱い飲み物は物理的に咽頭〜食道を刺激し、細胞にダメージを与えるので、発がん作用があるのは辻褄が合います。過去に動物モデルでは、この関連性は明確に示されていました(例えば. Exp Mol Pathol. 2016;100(2):325–331.)。加え、複数のヒトでの研究で「熱い飲み物と食道癌の関係」が確認されたので、熱い飲み物は「発ガン性物質だ」と結論されたのでした(エビデンスレベルは低いですが)。2019年12月時点でこれを覆す論文は出ておりません。

どうやって温度を測ったのか?

どうやって温度を測ったのか?

IARCでは65℃以上の熱い飲み物が発ガン性がある、と警告しています。これらの根拠となった研究では、どのように温度を測定していたのでしょうか?論文をみると、「普段どれくらいの温度で飲んでいるか:ぬるい、温かい、熱い、超熱い」という4択の質問をして計測したそうです(BMJ 2009;338: b929.)。そしてそれぞれの参加者に実際に紅茶を作って、「これはどれくらい熱い?」と聞いて、この4段階の評価が妥当か評価しました。合致度はまあまあくらいでした(以下の表参照)。

  実際の温度
  <65°C65-69°C≥70°C
参加者の評価ぬるい〜温かい32 4143749467
熱い538542461757
超熱い3748421

つまり、WHOの65℃という基準は、だいたいです。厳密に考える必要はないですが、これを目安にすると良いかも、ということです。「66℃はだめ、64℃はOK」ということでは全然ありません。熱ければ熱いほどリスクになることは間違いなく、〇〇℃というカットオフを定めることは、あまり科学的ではありません。つまり、「65℃以下を目安とした、ほどほどの熱さで飲みましょう」ということがWHOのメッセージです。

私達にとって、良い感じの温度

WHOの発表後も研究は続き、例えば2019年にあるLiterature reviewが出版されました(J Food Sci. 2019;84(8):2011–2014.)。この論文では、消費者に最も好まれる温かい飲み物の温度を検証しています。結果、57.8℃〜71.4℃が好まれる、と結論しています。「あつっ」となって軽く火傷してしまうのが82℃程度とのことです。

スターバックスのbeverage resource manual(ログインが必要)によると、ホットコーヒーは66〜77℃で販売されるそうです。スタバのコーヒーは割と「あちっ」てなる人が多いと思います。科学的根拠によると、この熱さはvery hotであり、食道癌のリスクが高い、ということになります。

でも熱いお茶やコーヒーが好きだ。どうしたらよい?

でも熱いお茶やコーヒーが好きだ。どうしたらよい?

これらをどう判断するかは、私達次第です。

日本人は自販機でHOTをよく飲みますが、あれは「very hot」のレベルです。これに慣れているので、少し冷めていると物足りなさを感じる人が多いと思います。けれど本気で食道癌のリスクを減らしたいのであれば、より熱くない形態に慣れるしかありません。なんでも、習慣を変えることはとても難しいですよね。

おそらくまず重要なことは、「より関連性がはっきりしているもの(とくにアルコール度数の高い酒とタバコ)を避け、体に良い食事を取り、運動する」事にあると思います。変えるのが難しい習慣の中で何を先に変えたほうが良いかと言えば、熱い飲み物よりも「酒タバコ食物運動」なのは間違いありません。これにより、食道癌だけでなく、あらゆる癌や心血管疾患のリスクをかなり下げることができます。これらができてその上で、徐々に「very hot」から「hot」に体を慣らしていくのが良いでしょう。結局、熱い飲み物と関連性が示唆されているのは食道癌だけですし、エビデンスもそこまで強くありません。

食道癌の治療は本当に大変なのでなりたくない疾患であることには間違いありません。が、「食道癌の発生率がvery hot tea(65℃以上)で8.2倍増える!」といっても、食道癌の発生率自体は非常に低いわけです。2016年の食道癌罹患は2万6千人(罹患率0.02%)です(厚生労働省)。1%の人がなる病気が8倍だと8%の人が罹患する大問題ですが、0.02%の8倍は0.16%です。非喫煙者だったらもっと少ないわけです。過度に怖がることはありません。発生率・罹患率を知ることは、「〇〇のリスクが5倍になる!」という表現を正しく解釈するために必須です。詳細は追って説明します。

結論

「飲み物は熱すぎると良くない」事は知っていなければいけません。私達が普段飲む熱さは、食道癌のリスクとなる熱さではあります。

が、恐れるほど怖いものでもありません。喫煙などまず他の生活習慣を変えることを優先し、気になる方は、普段よりちょっとぬるくした飲み物に慣れていけば良いと思います。

ではまた。

砂糖が健康に悪いのは知っている。どうすれば良いのか教えてくれ!

クリスマスや年末年始、甘いものを食べないことは難しいですよね。砂糖が健康に悪いことを知っていながら。科学的に「砂糖は健康に悪い。1日小さじ6杯以下にしよう(WHOガイドライン)」と言われても、無理です。ケーキ食べたらアウト。じゃあどうすればよいのでしょうか?

この記事では、砂糖と健康の科学的な関連性を紹介し、実際問題どう考えて行動したら良いかを考察します。この記事を読むことで、砂糖に関するより客観的な知見が得られ、自分の行動変容に繋げられると思います。

砂糖に関するとても重要な基礎知識

砂糖に関するとても重要な基礎知識

これは誰しも知っておくべき基礎知識。勘違いしている方は、ここで意識を改めましょう。

砂糖は形態によらず、同じように代謝されます。白い砂糖も、茶色い砂糖も、はちみつも、全部同じです。砂糖の成分に関する健康効果は一緒。

スクロース、グルコース、フルクトース、デクスト―ス、マルトース、ブラウンシュガー、コーンシロップ、濃縮されたフルーツジュース、糖蜜、蜂蜜、メープルシロップ、シロップ、水あめ。黒糖、さとうきび。何が良いとか悪いとかでなく、全部砂糖です

小さじ1杯=砂糖4g、ガイドラインで1日小さじ6杯以下(24g以下)が推奨されていますWHO2015ガイドライン)。

砂糖から得られる栄養学的な恩恵はありません。砂糖はカロリーが多く、以下に示すような有害作用を持つので、「必要のないものを摂取して体を害しているだけ」であることは間違いありません。

砂糖はどの程度健康に悪いか

砂糖はどの程度健康に悪いか

砂糖を健康に良い食べ物だと思っている人はほとんどいないと思います。実際悪いのです。が、どの程度健康に悪いのか知っておくのは、とても重要なことです。最新の科学的知見を紹介します。

糖尿病> 砂糖の摂取は糖尿病のリスクどころでなく原因だと考えられています。Glycemic loadという基準で判断された砂糖摂取は、糖尿病の原因です(Am J Clin Nutr. 2013;97:584-96.)。ちなみに、糖尿病は心血管疾患、網膜症、糖尿病性腎症の大きな原因です。

心血管疾患> 糖尿病でなくとも血糖が高めだと心血管疾患のリスクとなります(Arch Intern Med. 2004;164(19):2147–2155.)。

> 糖尿病や血糖が高めの状態は肝臓がんのリスクです(Oncotarget. 2017;8(30):50164–50173.)。砂糖を食べるほど大腸癌のリスクが高まります(Nutr Hosp. 2013;28 Suppl 4:95–105.)。

肥満> 砂糖をたくさん食べれば体重が増えるし、あまり食べなければ体重が減ります。砂糖による影響は、平均すると0.8kg程度のようです(BMJ. 2012;346:e7492.)。空腹時血糖が75mg/dlの人と比較し、110mg/dlの人は心血管疾患リスクが34%高いです(Diabetes Care. 1999;22(2):233–240.)。

虫歯> 砂糖を食べると虫歯が増えます(J Dent Res. 2014;93(1):8–18.)。これはかなり信頼性の高いエビデンスです。経験ないでしょうか?

肝臓病> 砂糖を食べると脂肪肝や他の肝臓病(NAFLD等)のリスクが高まります(J Clin Gastroenterol. 2002; 34(3):255-62.)。

認知症> 砂糖を食べると認知症のリスクが高まります(J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2010; 65(8):809-14.)。

<清涼飲料水に限定すると> 糖分入り飲料は、心筋梗塞の発症(Circulation. 2012;125(14):1735-41.)、体重増加(Physiology & behavior. 2010;100(1):47-54.)、2型糖尿病の発症(Diabetes care. 2010;33(11):2477-83.)、痛風(JAMA. 2010;304(20):2270-8.)などと関連します。詳細は別記事にまとめています。

まとめます。一番重大なのは2型糖尿病の原因となり、糖尿病は様々な疾患と関連する。砂糖摂取自体は、体重増加、癌、虫歯、肝臓病、認知症などのリスク因子となる、ということです。

反論もあるが・・・

反論もあるが・・・

上述した「いろんな病気が砂糖の原因“説”」に反対する科学者もいます(栄養専門でないことがほとんどですが)。例えば2016年のこの論文(Nutrients. 2016; 8(11): 697.)。ここでは次のような論理展開をしています。

・糖尿病のエビデンスはコホート研究がメインだ。ランダム化試験でないから、信頼性が低い

・ランダム化試験をメタ解析すると、そんなに悪い影響は認められない

・砂糖が原因なのでなく、砂糖による摂取エネルギーの増加が原因の可能性もある

フルクトースが2型糖尿病の原因でなかったとする最近のメタ解析もある(Mayo Clin Proc. 2015; 90(3):372-81.)

それぞれ言っていることは正しいかもしれませんが、栄養疫学の専門家からすると、「ああまたこういう人ですね」という感じです。栄養疫学はかなり歴史のある、実は難しい学問で、「ランダム化試験のメタ解析が一番エビデンスレベルが高いから信頼できる」という単純な話でないのです。これは追って解説します。栄養素の観点から語る健康情報は信頼できないという話とも関わってきます。エネルギーが原因という話は、「砂糖摂取しても摂取エネルギーは変わらない」という研究結果があれば妥当ですが、sugarを語る際はふつう「added sugar」として語られ、研究されます。プラスアルファの摂取ということです。

残念ながら、砂糖や血糖値の上昇が健康に悪いのは間違いありません。

ではどうすればよいか?

ではどうすればよいか?

ここが重要なトピックです。悪いものと分かっていても、クリスマスにケーキや、正月におしるこを食べないのは難しいでしょう。美味しいし。

ポイントは、「総炭水化物量で調整すること」「歯磨きをきちんとすること」にあります。

・砂糖は炭水化物源としてカウントされます。そして上述したように、砂糖でなく総エネルギー摂取が健康への悪影響の原因と考えている人もいます(実際砂糖の悪い側面の一つです)。ですので、砂糖を食べ過ぎた日や食べることが予定されている日は、炭水化物の総摂取量を減らせば、ある程度その悪栄養をカウンターできます

そうはいっても、栄養疫学の専門家は、砂糖自体が健康へ悪影響を及ぼすと考えており、これはおそらく正しいです。ですので、避けられれば避けたほうが良いのは間違いありません。特に肥満の方、糖尿病の家族がいる方、定期的な運動をしていない方などは、悪影響を被りやすいと考えられます。糖尿病になってみたらわかりますが、かなり厳しい生活指導が入ります。自分が糖尿病のリスクと考える方は、砂糖は予め避けましょう。摂る必要ありません

・虫歯は心血管疾患にも関わる、極めて予防する価値の高い疾患です(例えばSci Rep. 2019;9(1):10491.)。そして、虫歯は歯磨き+フロスでかなり防げます。1日1回と言わず、甘いものを食べた後は歯磨きをしましょう。

ちなみに、砂糖には中毒性があるとされています(Br J Sports Med. 2018;52(14):910–913.)。なんとなく経験ある方もいるかと思います。そもそもあまり食べなければ、食べたい欲求も減ります。ベースラインの摂取量を減らしましょう。ルーチンで砂糖、摂っていませんか?

結論

残念ながら、砂糖は食べるべきではありません。

食べてしまったら、総炭水化物量を減らし、歯磨きを徹底しましょう。

ではまた。

スポドリを飲むべきは〇〇だけ【砂糖入り飲料の根拠】

ポカリ、アクエリアス、ダカラ、アミノバリュー、バーム、ゲータレード。スポーツドリンクは、日本で「健康な飲料」として普及しています。運動した後、喉が乾いた時、手にとってしまうと思います。が、スポドリは健康に悪いというのが栄養学の常識です。一方、だからといって「スポドリは健康に悪い。飲むな!」というのは、実際に飲む人の気持ちを考えていない、ただの押し付けがましい話です。

この記事では、スポドリの効果とスポドリを飲むべきシチュエーションを、科学的根拠をもとに解説します。この記事を読むことで、水でなくスポドリを飲むべき状況を自分で判断できるようになります。

スポドリ=砂糖入り飲料(清涼飲料水)

スポドリ=砂糖入り飲料(清涼飲料水)

スポーツドリンクというネーミングは、素晴らしいマーケティングだと思います。砂糖入り飲料の添加物を変えることで、「健康に悪いが美味しい砂糖入り飲料」から、「健康に良くて美味しいスポーツドリンク」というトランジションを行ったわけです。が、実質は砂糖入り飲料なのは、変わりありません。

スポドリにはどのような添加物が含まれているのでしょうか?グルコース(砂糖)、水、電解質(ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム)、ビタミンB、Cなどです(Pediatrics 2011;127(6):1182–9.)。砂糖を源とする炭水化物が、だいたい240mlに5g-14g含まれているという報告があります(Food Advertising to Children and Teens Score, 2014:)。500mlのペットボトルに10-30gくらいということです。

ちなみに、アクエリアスゼロなどは、グルコースが人工甘味料に置換されています。人工甘味料の健康への影響については、この記事で解説しています。

米国の研究ですが、スポドリは青少年の砂糖入り飲料摂取の26%を占めると言われています(Obesity (Silver Spring, Md). 2014;22(10):2238–2243.)。感覚ですが、割合は日本の方が高いと思います。高校生は皆ポカリスエットを飲んでいるイメージです。

スポドリがスポーツに良いという根拠は?

スポドリがスポーツに良いという根拠は?

企業からすると、スポドリがスポーツのパフォーマンスを上げることを売りにしたいです。よって、たくさんの研究が(企業支援のもと)行われています。研究参加者は少数ですが、ランダム化試験を行いやすい分野であるため、ある程度信頼性の高い科学的根拠と言えます(企業スポンサーという点を除いて;後述)。

・14名の被検者の‘ドリンク摂取して90分運動後の胃内排泄遅延’を調べた研究があります(Int J Sport Nutr 1999;9(3):263–74.)。炭水化物が8%以上(砂糖が100mlあたり8g以上)含まれるスポーツ飲料は、胃内排泄が遅延することが示されました。胃内排泄遅延とは、胃の中に飲んだものが停滞しており、ゆっくり水分が吸収される、ということを示します。これは、概してスポーツをする時に良いと考えられます。ちなみに、4-8%の炭水化物含有量のもの(ほとんどのスポドリ)は、この胃内排泄遅延効果が認められませんでした。

炭水化物の摂取は、運動耐容能に重要です(Sports Med. 2011;41(9):773–792.)。

タンパク質も追加して摂取すると運動耐容能が上がるかもしれませんが、これは摂取カロリーが増えるから(タンパク質固有の作用でない)かもしれません(J Strength Cond Res. 2010;24(8):2192–2202.)。

マグネシウム補給は、筋肉の機能(握力やベンチプレスなど色々)に効果がありませんでしたMagnes Res. 2017;30(4):120–132.)。ただ、アルコール常飲者やお年寄りなど、Mg欠乏している方には効果があるかもしれません。

一定の水分摂取をしないと、長時間サイクリングのパフォーマンスが低下します(Sports Med. 2017;47(11):2269–2284.)。が、水分の形態には言及してません。

ちなみに、スポドリとは関係ありませんが、カフェインとタウリンも重要そうです(エナジードリンクの成分です)。

カフェイン摂取(3-6mg/kg: 60kgの人で180-360mg)は、アスリートのジャンプの高さ、スプリントのスピード、走行距離などに、パフォーマンスの向上が認められました(Res Sports Med. 2019;27(2):238–256.)。向上具合は少しですが。

・エナジードリンク(スポーツドリンクでありません)に含まれるタウリンが、パフォーマンス向上に関連することが示されています(Eur J Nutr. 2017;56(1):13–27.)。

以上より、砂糖がある程度濃いスポドリは、スポーツのパフォーマンスを向上させる効果があることが示唆されていることがわかります。その他の添加物は、メタ解析で示されている効能はありませんが、個々のランダム化試験では良いとする報告もあり、スポドリの形態は妥当だと考えられます。

水分補給にスポドリが推奨される唯一の状況

水分補給にスポドリが推奨される唯一の状況

一方、水分補給としてスポドリが推奨される状況は、非常に限定的です。つまり、脱水防止に水よりスポドリがベターな状況は限定的ということです(そもそも運動により脱水を来すことは稀です)。

特に青少年向けですが、「激しい運動を60分以上持続して行う場合、運動中にスポドリによる水分補給が推奨されていますカナダ小児科学会HP)。また、運動後は水による水分補給を十分行うよう推奨されています。

それ以下の運動は、水による水分補給で十分です。

唯一の状況と書きましたが、激しい60分以上の運動は、運動部だったら結構普通にあると思います。更に、日本の夏はめちゃめちゃ暑いので、水分喪失が激しく、60分以下でも脱水のリスクが高いと考えられます。よって、夏に野外で運動する時や、部活動をする時には、スポドリは良いツールだと思います

スポドリが健康に悪いという根拠は?

スポドリが健康に悪いという根拠は?

スポドリが健康に悪い根拠は、残念ながらたくさんあります。

まず、スポドリ=砂糖入り飲料(精製飲料水)だ、という認識が重要です(人工甘味料については別記事で解説します)。砂糖入り飲料は、間違いなく不健康に寄与します。

・今後20年間の心筋梗塞の発症は、1日1本飲む人は飲まない人に比べ、男性は20%、女性は40%リスクが高いです(Circulation. 2012;125(14):1735-41., Am J Clin Nutr. 2009;89(4):1037–1042.)。ハーバードのコホート研究です。

・当たり前ですが、カロリー摂取過多、肥満と関連します(Physiology & behavior. 2010;100(1):47-54.)。2017年のメタ解析では、砂糖入り飲料を飲む人は飲まない人に比べ肥満のリスクが18%上がると報告されています(QJM. 2017;110(8):513–520.)。ちなみにこの研究では、人工甘味料が添加された飲料は59%のリスク上昇に関与していました。

・そして重要なことに、飲料からのカロリーを1日100kcal減らすたび、6ヶ月で0.25kg体重減少が認められる、というランダム化試験があります(Am J Clin Nutr. 2009;89(5):1299–1306.)。

2型糖尿病のリスクは、1日1-2杯飲むことで、飲まない人と比較し、26%増加します(Diabetes care. 2010;33(11):2477-83.)。

痛風の発症は、1日1本飲む人は飲まない人に比べ、男性は45%、女性は75%リスクが高いです(JAMA. 2010;304(20):2270-8., BMJ. 2008;336(7639):309-12.)。

虫歯が増えます(J Dent Res 2014;93(1):8–18.)。

スポドリは特に青少年のissueである

スポドリは特に青少年のissueである

スポドリが問題になるのは、特に青少年です。青少年の水分摂取のメインがスポドリとなってしまう傾向が一部で見られるからです。

・清涼飲料水でなくスポドリに限定した研究があります。1日1本のスポドリを飲む小学生は、飲まない人と比較し、その後2-3年で0.3のBMI上昇を認めました(Obesity. 2014;22(10):2238–2243.)。その悪影響は特に男の子に強く認められました。

・そして、一般的な青少年の運動による水分補給に、スポドリは不要です(Paediatr Child Health. 2017 Oct;22(7):406-410.)。

運動=スポドリとなってしまっているので、青少年の肥満に寄与していることが、社会的な問題というわけです。水分補給は、ふつう水でOKです。

さらに残念:企業スポンサーによるバイアス

さらに残念:企業スポンサーによるバイアス

興味深いことに、「企業がスポンサーしている研究は、砂糖入り飲料について悪い影響を示したものが少ない」というメタ解析が発表されています(Public Health Nutr. 2018;21(12):2345–2350.)。企業は「この飲料は体に良い(悪くない)」と科学的に言いたいのです。そしてほとんどのランダム化試験は、企業の支援のもと行われます。つまり、上記に紹介したようなメタ解析の結論は、やや悪影響をunderestimateしていると考えられます。さらに、都合の悪い結果の研究が出版されていない可能性も、当たり前のように考えられます(あなたがその企業にいたらどうしますか?)。つまり、スポドリは研究結果よりもっと健康に悪いだろう、ということが示唆されます。

言わずもがな、企業のWebsiteにあるような、企業主導の研究の信頼性は概して低いと考えられます。

結論

スポドリは「砂糖入り飲料」の一つで、青少年の肥満や糖尿病に寄与するものです。その他色々悪いこともおきえます。

一方、アスリート、部活動する青少年、日本の夏に運動する状況には、推奨される水分補給法と言えます。

健康には水の方がベターという事を意識しつつ、水分喪失により脱水が生じ得る状況には適宜スポドリを使っていきましょう。

ではまた。

疫学研究の方法、誰でも分かる解説【健康情報を判断するために】

「エビデンス」とか「疫学研究」とか聞いて、鳥肌が立つ人もいると思います。ですが残念ながら、自分の健康を守るため、これらをベースとしたヘルスリテラシーの獲得は、このご時世必要なことなのです。

この記事では、好きな人はほとんどいないであろう「疫学研究」の手法について、かなりわかりやすく解説します。この記事を読むことで、「メタ解析」「コホート研究」「エビデンス」といった言葉に慣れ、より抵抗なく様々な信頼できる情報を理解することができるようになります。

疫学研究の手法をまとめると、こうだ

疫学研究の手法をまとめると、こうだ

「疫学研究の手法により、エビデンスレベル(詳細ここ)が異なる」とされています。この文章の意味がわからなくても、全然大丈夫です。つまり、信頼できる結果を生み出す疫学研究も、それだけでは信頼できない結果(仮説)を生み出す疫学研究もある、ということです。

めちゃくちゃ単純化すると、疫学研究は信頼度の高い順にこのようになります。

Umbrella review>メタ解析>ランダム化研究>コホート研究>症例対照研究>ケースシリーズ>症例研究>エキスパートオピニオン

これらがどのようなものなのか、説明するのが、本記事の目的です。信頼性が低いものから順に、いきましょう。

エキスパートオピニオンとは

エキスパートオピニオンとは

エビデンスに基づいていない権威のある人の意見です。エビデンスに基づいていないとは、症例対照研究以上のエビデンスが無いことを意味します(おそらく)。権威のある人とは、大抵教授のレベルですそれでもはっきりいって参考にならないので、論文にもなりません。

しかし、医者の診療上は、エビデンスが無い細かいことというのはたくさんあります。そういうのは大抵、今までの経験や上司の経験を参考にdecision makingします。これを、エキスパートオピニオンに基づいたdecision makingと言います。これが正しいかはわかりませんが、今まで問題なかったから問題ない可能性が高いというふうに考えます。

ただし、より疫学的な問題は(例えば健康な人を対象とした事項)、エキスパートオピニオンは参考になりません。例えば、「コーヒーは抗酸化作用があるから健康に良い」というのは、参考にならないエキスパートオピニオンです。なぜなら、この文章で人間に対する健康効果を示唆していないからです。コーヒーの人間に対する効果は、何万人の人を研究しないとわかりません。つまり、コーヒーによって例えば心筋梗塞が予防されたかどうかは、大規模なコホート研究でないとわからない情報だということです。抗酸化作用があっても、実際の疾病予防に関連しないものは山程あります

エキスパートオピニオンは、診療では参考になることがありますが、疫学的な事項は参考になりません。信じてはいけません

ケースシリーズと症例研究とは

ケースシリーズと症例研究とは

症例研究は「〇〇と〇〇の関連性が示唆された特徴的な症例」、ケースシリーズはそういう症例を数人〜数十人まとめた報告です。これは、診療上ちょっとだけ参考になることがありますが、疫学的な事項は参考になりません。

例えば私の症例研究・ケースシリーズを紹介します(J Med Case Rep. 2015;9:111.)。患者さんは35歳男性で、肉じゃがをフライパンで熱したまま10時間寝てしまい、起きたら部屋中が煙だらけで呼吸困難となっていたため救急要請されました。重症の肺水腫という診断でICU管理となりましたが、速やかに回復しました。この肺水腫の原因が、フライパンのPTFEコーティングが熱せられて生じた毒性ガスだと考えられたのですが、そのような報告は稀でした(症例研究)。今まで報告されていたPTFEによる肺水腫を10例弱reviewした所、特徴的な肺CT所見と、比較的予後が良いことがわかりました(ケースシリーズ)。この報告は、PTFEによる肺水腫というのが非常に稀なので、そういう症例を経験した際には参考になるかもしれない程度のエビデンスです。

一方、例えば「コーヒーを1日5杯飲み続けた人が110歳まで生きました」という症例報告があったとします。でもそれで「そうか、コーヒーを飲めば長生きできるのか」とはなりませんよね。その人が様々な健康的な要素があったからこそ、110歳まで長生きできたわけで、コーヒーを飲みまくって70歳で亡くなってしまう人ももちろんいるわけです。なので、「コーヒーと健康」のような疫学的な事項については、参考にはなりません。

症例対照研究とは(略)

これは、コホート研究の一部のデータを使った解析です。稀なアウトカム(膵癌)などに対する研究手法です。が、そんなに大事でないので(比較的に)、ここでは省きます。コホート研究を理解しましょう。

コホート研究とは

コホート研究とは

赤肉の摂取と死亡率の関連を調べた、ハーバードの研究があります(BMJ 2019;365:l2110)。コホートとは、その研究の対象者を追ったデータを意味します。どういう事かというと、まず10万人の参加者を募ります。ある人は1980年にエントリー、違う人は1981年にエントリー、という感じで、数万人集めます。そしてエントリーした全ての人に、1年間でどのような食事を平均してとっているかのアンケート調査を2年ごと、運動習慣のアンケートを2年ごと、血液検査をエントリー時に一回、みたいに行います。また、1年間に一回、参加者が病気にかかったかのアンケート調査を行い、いつ死亡したり、癌にかかったりしたかの情報収集を行います。すると、参加者10万人の1980年から2019年までの情報が蓄積されます。ここまでがその「コホート」の管理者が、莫大なお金をかけて行う事です。

その貴重なデータを使って、疫学者が研究(コホート研究)を行います。この研究では、8年越しに赤肉の摂取量が増えたか減ったかが、その後の死亡率に関わるか、ということを調べています。全ての参加者で、アンケートを元とした1986年と1994年の赤肉摂取量(1日何回食べるか)を比較して、増えた人、変わらない人、減った人、と群わけします。そして、1994年から2010年の死亡率を、群毎に比べるわけです。

一つの大事な注意点があります。赤肉摂取量が増えた人は、赤肉摂取量が減った人と比較して、他の食事摂取も変化しているし、運動習慣も悪いかもしません。なので、単純に赤肉摂取量の違いが死亡率の変化に繋がった、とは言えないわけです。ではどうするのかというと、回帰モデルを使って、「年齢、性別、他の食事摂取、運動量、喫煙、BMIなどが同じとして、赤肉摂取量の変化だけが群間で違う時に、死亡率に差があるか」ということを調べるわけです。もしその解析で「赤肉摂取量が増えた人が死亡率が高い」という結果になれば、おそらく赤肉摂取量が増えたせいで死亡率が高まったのだろう、と推測されます。

が、しかし、「〇〇が同じとして」という〇〇を、全て調整することは不可能です。例えば、細かい内服薬が違うかもしれないし、健康意識が違うかもしれません。職業も違うかもしれません。なので、実は赤肉摂取量の変化でなく、この「〇〇」に入れていない因子が死亡率に寄与しているのかもしれないわけです。この可能性が常に拭いきれないので(バイアスが取り切れていない可能性がある)、コホート研究はエビデンスレベルが低いとされています。

ランダム化研究とは

ランダム化研究とは

ビタミンDのサプリが癌・心血管疾患予防に有効かを研究した、有名な論文を解説します(N Engl J Med 2019;380:33-44.)。これは、2万人の参加者をランダムにビタミンDかプラセボ(偽薬)を与え、その2群の癌発症率などを比較したものです。結果、ビタミンDの群はプラセボ群と比較して、明らかに癌発生率が低かった、ということはなかったのです。

なぜこれが(コホート研究より)強力な手法なのでしょうか?それは、ビタミンDを飲む群とプラセボの群が、ほとんど同じ集団だと仮定できるからです(ランダムに決まっているから)。例えば、健康意識の高さについても、健康意識が高い人も低い人もランダムにビタミンDか偽薬に分類されるので、その頻度は同じくらいになります。同様に、何についても、ランダム化すれば2群は同じくらいの出現頻度となります。コホート研究の場合、「健康意識の高さ」という具体的な評価項目が無いと、2群を同じ条件にして解析することができません。「2群が同じ条件」ということは、「ビタミンDが癌発症に寄与する」という因果関係を言うために必要です。先程説明したように、コホート研究では、死亡率の差が赤肉摂取量を原因とするかもしれないし、調整していない他の因子を原因とするかもしれません。が、ランダム化研究では、癌発症率の差はビタミンDサプリの摂取有無を原因とする、と結論できるのです。よって、因果関係をより信頼性高く言及することができるという点で、ランダム化研究が優れています。

しかし、ランダム化研究にも質があります。例えば10人をランダムにビタミンDか偽薬に振り分けたとしましょう。すると、確率的に、タバコを吸う人は4人:6人かもしれないし、運動しない人は3人:7人となってしまうかもしれません。すると、この2群は「同じくらいの特徴を持つ集団」とはとても言えません。よって、因果関係を言及することはできません。

また、ランダム化試験がロシア人のみを対象としたものかもしれません。すると、その結果を日本人に応用できるかはわかりません。例えばビタミンDは日光を浴びることで産生できるのですが、ロシアは日照時間が少ないため、十分なビタミンDを体内産生できていない人が多いかもしれません。すると、ビタミンDのサプリはとても効果があるかもしれません。一方、日本人は日光浴だけで十分なビタミンDを体内合成できているので、サプリでさらに摂取しても健康効果はないかもしれません。

こういったlimitationが、ランダム化試験でもいくつかあります。こういう事も考えて、ランダム化試験の結果の理解をする必要があります。

メタ解析とは

メタ解析とは

メタ解析とは、例えばビタミンDと癌の関係をみたたくさんのランダム化試験の結果を、まとめて解析する手法です。先述のように、ランダム化試験でもlimitationがありますが、20個の同じ目的のランダム化試験を全部まとめて解析することで、より信頼性の高い情報を提供できるかもしれません。単純に対象人数が増えるため、2群がフェアな比較となる可能性が上がるし、ロシアの研究と日本の研究をあわせることで、世界中の人に適用できる結果を出すこともできます。

が、メタ解析は様々な情報を失うことに注意が必要です。例えば、ビタミンDはロシア人には効くけど日本人には効かない、という情報は極めて重要なわけです。が、メタ解析とするとその情報が失われてしまいます。「どういうサブグループで違う効果があるか」というのは、疫学上effect modificationと言われますが、メタ解析でeffect modificationを調べることはできません。これが重要なポイントです。

その他にも、メタ解析にlimitationがあります。詳細はこちらを参照下さい。

Umbrella reviewとは

Umbrella reviewとは

最近出てきた手法です。これは、メタ解析のメタ解析と言われます。どうやるのかというと、例えば「コーヒーの健康効果」を網羅的に調べる、ということです(BMJ 2017;359:j5024)。

健康効果、とは様々な定義があります(こちら参照)。死亡率、心筋梗塞、〇〇癌、肝硬変、糖尿病、認知症、、、たくさんあります。そして、メタ解析とは、「コーヒーと心筋梗塞の10論文の解析」「コーヒーと肝硬変の7論文の解析」などを指します。心筋梗塞のメタ解析、肝硬変のメタ解析、糖尿病のメタ解析、、、などを全てひっくるめて解析する手法が、Umbrella reviewといいます。

どういうことかというと、「メタ解析はコーヒーにより心筋梗塞を10%予防する結果となっているが、それはどれくらい信頼できるのか」ということを、延々と全てのアウトカムについて評価するわけです。メタ解析にも質があるので、メタ解析で結果が出ても、信頼性が低いかもしれないということです。Umbrella reviewは最終的に、「コーヒーにより〇〇と▲▲は予防できるが、☓☓は予防できない。□□はむしろ発症率を増やしてしまう。結局、1日▽杯なら安全で健康効果も期待できる」という結論を出すことができます。この結論が、その論文出版時点で、最も信頼できる結論に近い、と考えられるわけです。

結論

ここまで読んで頂ければ、間違いなくあなたのヘルスリテラシーは上がりました。

コホート研究、ランダム化試験、メタ解析、Umbrella reviewがどのようなものか、知っておくと、このブログで紹介している情報がどういうものか、イメージがつき、批判的に情報を解釈することができます。

ではまた。

理想のBMIとBMIの限界【体重の科学】

BMI (body mass index)とは、体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で表される指標です。BMIで18.5未満がやせ、18.5〜25が正常、25以上がやや肥満、30以上が肥満、とされます。

「太っている方が健康によい」と聞いたことがあるかもしれません。これはobesity paradoxと言われ、体重やBMIが孕む問題の一つです。本当に理想のBMIとはどの程度なんでしょうか?

この記事は、誰しも気になる「体重」の疑問を、科学的見地から明らかにします。この記事を読むことで、BMI・体重に関する正しい知識を身につけることができます。

理想のBMI

N Engl J Med, 2010. 363(23): p. 2211-9.

決定的な研究論文がNew England Journal of Medicineという医学で最も権威のある雑誌に、2010年に掲載されました(N Engl J Med, 2010. 363(23): p. 2211-9.)。150万人の白人を10年間追跡し、死亡率を比較した研究です。BMIが22.5〜24.9を基準とした時に、それから増えれば増えるほど、もしくは減れば減るほど、死亡率が上昇しました。上のグラフは、女性におけるBMIと死亡率の関連性です(男性もほぼ同じです)。喫煙者が別に示されている理由は後述します。

また2016年に、4大陸の100万人を対象とした解析が、Lancetというこれまた権威の高い医学雑誌に発表されました(Lancet 2016 388 (10046), 776-86)。結果はほぼ変わらず、BMIが20〜25の時に、死亡率が最も低い結果でした。

よって、BMIが20〜25が、理想のBMIだろうと考えられるようになりました。

日本人の理想のBMI

日本人の理想のBMI

一方、人種間で最適なBMIは異なることが示唆されてきました。アメリカの7万人の看護師を対象としたコホート研究では、BMIが同じであればアジア人は白人より2倍の糖尿病罹患リスクがあり、またアジア人は体重増加による糖尿病罹患リスクが他のどの人種より高かったのです(Diabetes Care. 2006;29:1585-90.)。確かに、日本人でアメリカ人並の肥満だと(見た目が)、かなり健康が心配になりますよね。

つまり、アジア人は体重増加による悪影響が、アメリカ人より顕著にみられるのです。これはアジア人が筋肉量が少ないこと、より脂肪(内臓脂肪)がつきやすかったり、インスリン抵抗性(2型糖尿病の原因)が生じやすかったりすることが原因と考えられています(Nutrition. 2004;20:482-91.)。その他、住んでいる環境の影響も重要だと考えられています(Diabetes Care. 2011;34:1014-8.など)。

これらの研究を受け、アジア人の適正BMIはより低くするべきでないか、と議論されてきました(Ann Acad Med Singapore. 2009;38:66-9.等)。一方、日本人に対する疫学研究では、男性は40-60歳はBMI 23程度, 60-80歳はBMI 25程度、女性は40-70歳がBMI 23程度、70歳-80歳はBMI 24程度が、最も死亡率が低い結果となりました(Obesity 2008 16 (10), 2348-55)。年齢で違う理由は後述します。

結果的に、日本人の現在の推奨は以下の通り、幅を持たせることとなりました(日本人の食事摂取基準 2015年版)。上限は変えず、下限を低くしたわけです。

18-49歳:理想BMIは18.5〜24.9

50-69歳:理想BMIは20〜24.9

70歳-:理想BMIは21.5〜24.9

これは的を得た推奨だと思います。

BMIが低ければ太った方が良いのか

BMIが低ければ太った方が良いのか

痩せマッチョでBMI23の人と、脂肪だらけのBMI23の人、健康度合いはかなり違うと思いませんか?ここに、BMIの限界があります。

実際に健康に関わるのは、体重でなく、体組成です。BMIは体重と身長から体組成を大まかに示す、サロゲートマーカーに過ぎません。ただ、優秀なサロゲートマーカーなので、多くの人に適用でき、上述した研究のようにはっきりした結果(死亡率との関連)が認められるのです。

「BMIが低いから太ったほうが良いのか。」そんなわけありません。なぜなら、一般の「太る」とは「皮下脂肪、内臓脂肪を増やす」という認識なので、そんな事をすれば死亡率上昇に関わるに決まっています(病的に脂肪が少ない状態の方を除いて)。つまり、BMIを単独の「体組成のパラメーター」と用いることに、ある程度限界がある、ということです。

高齢になるとBMIが高いほうが良いのか

高齢になるとBMIが高いほうが良いのか

高齢者は、「BMIが低いから死亡率が高いのか」「死亡率が高い状況だから(具合が悪いから)BMIが低いのか」どっちも考えられます。つまり、低いBMIが原因なのか、結果なのか、わからないということ。タバコも同じです。喫煙していれば、肺気腫となって具合が悪いからBMIが低いのかもしれません。BMIが低いことが結果だと、BMIをどうすればよいのかという判断の参考になりません(こう判断する場合、BMIが原因である前提です)。

これをはっきり理解できないと、「BMIが高いから死亡率が低い」という一方向の誤った解釈しかできません(Obesity paradoxといいます)。低いBMIが実は結果なのに原因と考えてしまうこの問題を、reverse causationと言います。reverse causationをなくさないと、「BMIをどうすればよいか」判断することはできません。reverse causationを無くすには、具合が悪い(or 死亡率が高い)人を最初から除外する必要がありますが、高齢者=概して死亡率が高いため、完全にreverse causationを無くすことはできません。

よって、「平均すると、BMIが比較的高い高齢者が死亡率が低い」となるのですが(Obesity 2008 16 (10), 2348-55)、だから「BMIを増やしたほうがよい」とはなりません。「平均すると、BMIが25あたりとなっている高齢者の死亡率が低い。なぜなら具合が悪くてBMIが低い人もふくまれているから」というのが正解です。

そもそもアジア人は、太っている(BMIが高い)ことで病気になりやすい人種です。なので、「太ったほうが良い」状況はほとんどありません。こういう情報は、疫学研究の結果を誤って解釈した、不正確な情報です。

結論

日本の推奨である理想BMIは20〜24.9、というのは良い感じです。結局BMIは「体組成」を示すだいたいの指標なので、「BMI 22を目指す」みたいに、ピンポイントの理想の数値は結局わかりません。だいたい、20〜24.9であれば、肥満による健康障害(糖尿病や心筋梗塞など)が少ないだろう、という話です。積極的に太った方が良い事はありません。

ではまた。

緑茶が日本人の健康の要!科学的な真実を知ろう

世界的長寿、日本人の健康の要は、間違いなく緑茶でしょう。昔ほどではありませんが、今でもほとんどの日本人が毎日緑茶を飲みます。自動販売機が普及しているおかげもあり、水のかわりにお茶を飲みます。こんな国ありません。そして幸運なことに、疫学研究は緑茶の健康効果を証明しています

緑茶が体に良いとはよく言われますが、信頼できる情報はほとんどありません。そして、「緑茶パックは健康に悪い」だの、「緑茶を長時間放っておいて茶色くなると健康に悪い」だの、様々な説が飛び交っています(紅茶も同様)。この記事では、緑茶の健康効果をはっきりさせ、巷で言われている緑茶に関わる噂を科学的に検証します。この記事を読むことで、緑茶に関わる正しい知識が身につき、あなたのヘルスリテラシーが向上します。

ちなみに、コーヒー紅茶は、違う記事でその健康効果を解説しています。紅茶、コーヒー、緑茶は、健康に良いことが証明されている飲料です(ストレートで飲んだ場合)。

緑茶の健康効果まとめ

緑茶の健康効果まとめ

網羅的に、緑茶の健康効果を紹介します。緑茶は日本の飲み物なので、日本人のエビデンスが豊富です。

<死亡率、心血管病>

信頼性の高い、日本人の研究がありますEur J Epidemiol. 2019;34(10):917–926.)。これは、10個のコホートのメタ解析ですが、それぞれのコホート全ての参加者のデータを合わせた、individual-level meta-analysis (pooled analysis)という、かなり信頼度の高いメタ解析です。結果、日本人30万人を17年間追跡したコホート研究です。緑茶をほとんど飲まない人と比較し、1日5杯以上の飲む人は、全死亡率、心血管疾患による死亡率、脳卒中による死亡率が10-25%程度減りました。緑茶のこの効果は、特に女性に強く認められました。肺疾患(肺炎や肺気腫)による死亡率は、緑茶をたくさん飲む人が顕著に低い(30%以上低い)結果となりました。癌による死亡率は、女性にのみ有意に低くなる傾向が見られました。コホート研究が内包するlimitationはありますが、この結果は非常に信頼するに足る、日本人のデータです。

・心血管疾患による死亡率を比較した日本人の8万人のコホート研究ですが、緑茶と比べ烏龍茶も同じくらいの効果がありそうです(J Epidemiol Community Health. 2011;65:230-40.)。

日本人の脳卒中予防にも効果がありそうです(Stroke. 2013;44(5):1369-74.)。1日2-3杯以上で効果ありです。

・緑茶又は烏龍茶を1日120ml以上を1年間以上飲むことで、高血圧症発症が抑制されそうです(Stroke. 2009;40:1786-92.)。

<炎症、脂質>

緑茶に抗炎症作用があるのか、という問いに直接的に答えた研究があります(Phytother Res. 2019;33(9):2274–2287.)。緑茶は抗炎症作用が無い(炎症のマーカーを下げない)、という結論です。これは17個のランダム化試験のメタ解析で、研究デザインとしては信頼性が高いです。が、結局解析対象の人数は少ないことと、緑茶による介入の期間が2-12週間とバラバラなこと、研究間のheterogeneityが高いことなど、メタ解析の信頼性はやや低いかもしれません。

・緑茶はおそらくLDLコレステロール(悪玉コレステロール)と血圧を低下させる機能がありそうです(Mol Nutr Food Res. 2018;62(1):10., Cochrane Database Syst Rev. 2013;(6):CD009934)。これらのサロゲートマーカーへの作用は、心血管疾患抑制効果を仲介する大きなものだと考えられます。

<癌>

・2019年のUmbrella review[メタ解析のメタ解析]によると、Teaにより胃癌、口腔がん、肺癌、胆管がん、甲状腺がん、卵巣がん、白血病、グリオーマの予防効果が(信頼度高く)ありそうです(Eur J Epidemiol. 2015;30(2):103–113.)。緑茶は更に子宮体がんと食道癌の予防効果がありそうです。

・胃癌の抑制効果は、1日6杯以上、もしくは25年以上とたくさん緑茶を飲むことが必要そうです(Public Health Nutr. 2017;20(17):3183–3192.)。

・乳がんを減らすかもしれませんが、メタ解析の質は低いです(Medicine (Baltimore). 2019;98(27):e16147.)。

・1日7杯以上飲めば前立腺癌発症低下に関連するかもしれませんが、メタ解析の質は低いです(Medicine (Baltimore). 2017;96(13):e6426.)。

・肝臓がんのリスク低下にも寄与するかもしれません(Nutr Cancer. 2017;69(2):211–220.)。

<その他>

・空腹時血糖を抑えるかもしれません(Nutrients. 2018;11(1):48.)。特に、55歳以下のアジア人にこの効果が顕著でした。

・骨粗鬆症、骨折リスクを低下させるかもしれません(Medicine (Baltimore). 2017;96(12):e6437.

・緑茶は尿酸値上昇と関連するというメタ解析もありますが、かなり信頼性は低いです(BMC Musculoskelet Disord. 2017;18(1):95.

緑茶に関する様々な噂を検証する

緑茶に関する様々な噂を検証する

参考にして下さい。

「緑茶パックは健康に悪い」

→何の根拠か不明。緑茶パックだって緑茶です。健康に良いです。

「ペットボトル入りの緑茶は危険」

→酸化防止のために添加されている(合成)ビタミンCが発がん性があると主張します。合成であろうがなかろうがビタミンCはビタミンCで、ビタミンCに発がん性があるなんて馬鹿げています。ビタミンCのサプリでがん予防効果があるかがたくさん試験されているくらいですKorean J Fam Med. 2015;36(6):278–285.)。結局予防効果はなさそうですが。発がん性があるなら倫理的にこんな研究はされないわけです(し、そもそも売り出されているサプリメントが発売禁止になるに決まっています)。緑茶は緑茶。論外です。

「緑茶を長時間放っておいて茶色くなると健康に悪い」

→緑茶の成分であるカテキンなどが酸化するため、緑茶を作ってしばらくすると茶色くなります。味も渋くなり、ちょっと不味くなります。だから、味の面では、作ってすぐに飲んだほうが良いです。が、健康効果はアンケートを用いた疫学研究で確かめられますが、「週何回酸化した緑茶を飲んでいますか」みたいなアンケートはされません。なので、酸化した緑茶の健康効果を確かめることはできません。が、「緑茶を週何回飲んでいますか」という質問への回答には、酸化した緑茶もカウントされています。酸化した緑茶を含めて、’緑茶’として健康効果が確かめられているので、別に気にしなくて良いです。

そもそも、数十回〜数百回酸化した緑茶を飲んでも、健康に影響することはまずありません。定期的に長期間、たくさん飲むことで、ようやく健康効果というものは認められます。栄養素的な観点で言えば、カテキンが酸化する前に飲んだほうが良いのは間違いないですが、そんな些細な違いで健康効果には影響しない、ということです。

「お茶のタンニンが鉄吸収を阻害する」

→タンニンが鉄吸収を阻害する、ということは正しいようです。が、ヒトの疫学研究でタンニン摂取による鉄プロファイルの変化は立証されていません(Curr Dev Nutr. 2017;1(2):1–12.)。鉄プロファイルとは、血清鉄、貯蔵鉄、鉄結合能の値を意味します。長期間フォローした動物実験でも、タンニンと鉄の関係は立証されていません。なので、仮に影響があるとしても、全く無視できるほど些細な問題ということが言えます。

が、鉄欠乏性貧血の方が無理してお茶を飲む必要はないとも言えます。ストリクトに避ける必要もありません。普段どおりでOKです。鉄欠乏性貧血の方がすべきことは、鉄剤の摂取です。

結論

緑茶は飲めば飲むほど健康に良い、ピリオド。

ではまた。

紅茶の健康効果について、様々な噂を科学的に検証した

「夏は紅茶が最強の健康ドリンクだ!」とか、「紅茶とコーヒーは、紅茶の方が健康に良い!」とか、「紅茶は1日3杯までならOK!」とか、「紅茶は実は健康に悪い!」とか聞きますが、よくそう適当な事が言えるものですね。もっともらしく議論されていますが、全部適当です。紅茶だから見過ごされていますが、こういうの良くないです。

この記事では、紅茶の正しい健康情報を解説して、適当な噂を論破します。この記事を読んで、紅茶について適当なことをうそぶく人を一刀両断してください。そして、ネット上にある情報を取捨選択できるようになりましょう。

ちなみに、コーヒー緑茶は、違う記事でその健康効果を解説しています。健康に良いことが証明されている飲料は、コーヒー、紅茶や緑茶などの茶(全てストレートで飲んだ場合)、水です。

紅茶の健康効果について、適当な事を言わないで下さい

紅茶の健康効果について、適当な事を言わないで下さい

「紅茶 健康」とググってみてください。出てきた記事は、どれほど一次文献(論文)に基づいているでしょうか。ほとんど全部基づいていません。ほとんど全部、個人の感想か、誰かから聞いた話です(どういう記事が信用ならないか)。本当は、引用している文献の信頼性を議論することが、その記事が信頼に足るのかという議論なのですが、そこまで全然至っていません。

残念ながら、英語ではそんなことはありません。「tea health」と検索すると、半分くらいの記事が、論文の情報を基にしています(その論文の信頼性は置いておいて)。英語が苦手だと、ヘルスリテラシーにも影響します。こういう日本の現状に危機感を覚えた事が、このブログを開始したきっかけでもあります。

紅茶の健康効果

紅茶の健康効果

疫学研究の結果を紹介します。「紅茶(black tea)」として解析されたものより、「茶(tea)」として解析されたものが多いです。Teaには緑茶(green tea)も含んでいますが、欧米の研究はほぼtea=black teaを意図しています。この記事ではteaまたはblack teaに関する一次情報を紹介します。Green teaに関する情報は別記事で紹介します。

<死亡率、心血管病>

・Teaは死亡率を減らす効果がありそうです(Eur J Epidemiol. 2015;30(2):103–113.)。1日3杯増やすと24%の死亡率低下と関連します。これはめちゃくちゃ強い効果です。心血管疾患(心筋梗塞など)、心血管疾患による死亡率等も同様に抑制します。

・紅茶はおそらくLDLコレステロール(悪玉コレステロール)と血圧を低下させる機能がありそうです(Cochrane Database Syst Rev. 2013;(6):CD009934., Clin Nutr. 2015;34(4):612–619.)。これらは心血管疾患のサロゲートマーカーです。つまり、こういう作用を介して心血管疾患抑制効果があるのではないか、ということです。

・スウェーデンのコホート研究ですが、紅茶は脳卒中のリスクを下げそうです(Ann Epidemiol. 2013;23:157-60.)。この研究では、飲めば飲むほどよいということではなく、1日4-5杯飲めば十分という結論でした。メタ解析でもTeaの脳卒中リスク低下が示されています(Eur J Epidemiol. 2015;30(2):103–113.)。

<癌>

・2019年のUmbrella review[メタ解析のメタ解析]によると、Teaにより胃癌、口腔がん、肺癌、胆管がん、甲状腺がん、卵巣がん、白血病、グリオーマの予防効果がありそうです(Eur J Epidemiol. 2015;30(2):103–113.)。

<その他>

・Teaは糖尿病発生抑制効果がありそうです(Br J Nutr. 2014;111(8):1329–1339.)。1日2杯で5%、4杯以上で15%のリスク低下です。

・Teaは炎症性腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎)のリスクを減らすかもしれませんが、メタ解析の質は低いです(Medicine (Baltimore). 2019;98(21):e15795., Medicine (Baltimore). 2017;96(49):e9070.)。

・Teaはうつ病のリスクを減らすかもしれません(Eur J Clin Nutr. 2018;72(11):1506–1516.

・Teaは骨粗鬆症のリスクを減らすかもしれませんが、メタ解析の質は低いです(Medicine (Baltimore). 2017;96(49):e9034.

・Teaは認知機能低下を予防する効果がありそうです(PLoS One. 2016;11(11):e0165861.)。細かい話で、heterogeneityは高いですが、point estimateがかなり低いので、おそらく効果があると思います。

巷の適当な紅茶説を論破してみる

巷の適当な紅茶説を論破してみる

「夏は紅茶が最強の健康ドリンクだ!」: 夏の食欲低下、夏バテ、効果的な水分補給ができるという理由のようです。

→まず食欲低下に関して。紅茶に含まれるファイトケミカルによる食欲への効果はinconclusive(はっきりしない)です(Nutrients. 2019;11(9):2238.)。

→夏バテと水分補給について、日本でのランダム化試験があります(J Occup Health. 2010;52(4):209–215.)。30℃の暑さの中外で働く153人を対象に、水分補給をORS(経口補水液:OS-1など)でする日と自分の好きな飲料(TeaとCoffeeがほとんどであった)する日をランダムに設定し、労働終了後の疲労度(VASというスケール)を比較する、という研究です。結果、明らかにORSの方が疲労度が少なかったのです。夏バテ防止・効果的な水分補給に有効なのは、紅茶でなく経口補水液です

「紅茶とコーヒーは、紅茶の方が健康に良い!」

→疫学研究としてこの比較をすることは困難です。「紅茶の健康効果」なら、’他の条件(コーヒーも含む)が同じ集団’ で、紅茶をほぼ飲まない人 vs 1日2-3杯紅茶を飲む人、と比較可能です。ですが、紅茶を飲む人 vs コーヒーを飲む人、とはどう定義するか難しいです(できないことはないですが)。実際、直接比較した研究は、自分の知る限りありませんし(知っている方いれば教えて下さい)、比較しても差は出ないと思います。なぜならどちらも健康に良いからです。繰り返しますが、どちらも健康に良いので、好きな方を選んで下さい

「紅茶は1日3杯までならOK!」

→まるで根拠なし。むしろ4-5杯飲まないと十分な効果が認められないという研究はいくつかあります。カフェインに感受性が高い方は多量には飲めないですが、その場合は無理して飲む必要ないです。カフェインの感受性のせいで「飲めるか飲めないか」ということと、「健康に良いか」ということは全然違う議論です(カフェインに関してはこちら)。カフェインによる短期的な副作用は、ふつう長期的な健康には影響しません(カフェイン中毒となれば死亡の危険がありますが、非常に稀ですし、ほとんどがエナジードリンクを原因としています)。

「紅茶は実は健康に悪い!」:腎結石、歯や骨をもろくする等

→何を根拠にしているのか知りたい所です。2015年のメタ解析では、effect sizeは少ないながらTeaによる腎結石予防効果があるかも、という結論です(Medicine (Baltimore). 2015;94(27):e1042.)。

→また、上述のようにTeaは骨粗鬆症のリスクを減らすかもしれません(Medicine (Baltimore). 2017;96(49):e9034.

※おそらくこの説は、これらのメタ解析の中に含まれる、逆の結果を示した一つのコホート研究結果を根拠としているのだともいます(腎結石: Beijing Da Xue Xue Bao 2013; 45:971–974., 骨粗鬆症:Pract Prev Med 2012;19:671–3.)。が、そういう信頼性の低い研究を含め、全ての研究を同時に評価し、真実を推察する方法がメタ解析なわけです(エビデンスレベルについてこちら)。

結論

紅茶は健康に良いので飲むべきです。たくさん飲めば、それだけ効果が期待されます。コーヒーとどちらが良いか比較するのはあまり意味はなく、好きな方を飲めばよいです。夏の水分補給には最適とはいえません。

ではまた。