結局牛乳は健康にいいのか悪いのか【乳製品の科学的根拠】

最近、「牛乳、実は健康に悪い説」を時々聞きます。ちょっと前、テレビ番組で2児の母の松嶋尚美さんが「子供に牛乳を飲ませない」という発言をしたことが話題となりました。経緯を調べると、あまり科学的な議論はなされていなかったようですが、この「牛乳有害説」は一定の層に支持されている見解です。

以前の記事で、「牛乳が骨を強くする」ことに科学的根拠がないことを示しました。この記事では、より重要な疾患(癌や心血管疾患)と、牛乳を含む乳製品との関連性について紹介します。この記事を読むことで、牛乳有害説をご自身で科学的に判断できるようになります。

結局乳製品は健康にいいのか、悪いのか

結局乳製品は健康にいいのか、悪いのか

この議論をする上で欠かせないことは、「健康によい」定義をしっかりとすることです。この記事に詳細がありますが、「健康に良い」最も強力な定義は「全死亡率が低くなる」ことで、次に「癌死亡率や心血管疾患死亡率が低くなること」、ついで「癌罹患率や心血管疾患罹患率が低下すること」を言います。牛乳を飲むことでこれらの指標にどう影響するか。この記事では、この観点で最新の科学論文をみていきます。

先に結論。牛乳は健康には影響なし、ヨーグルトは良さそう

先に重要なことを言うと、同じ乳製品でも、牛乳とヨーグルトの健康効果は異なります。ざっくりいうと、「牛乳は健康に影響なさそう」「ヨーグルトはおそらく健康に良い」という違いがあります。ヨーグルトは発酵食品であり、栄養成分が牛乳とまったく異なります一つの栄養素の観点で栄養効果を説明することはできません。ヨーグルトはおそらく、様々なバクテリアが健康に寄与すると考えられています。牛乳とヨーグルトが共通に含むカルシウムによる健康への影響は限定的です(ほとんどありません)。

科学的根拠の紹介

健康の定義でも触れましたが、最も重要なのは死亡率への寄与、その次に心血管疾患や癌の罹患率です。

<死亡率>

・最も信頼性が高いのは2017年のメタ解析でしょう(Eur J Epidemiol. 2017;32(4):269–287.)。29個のコホート研究のメタ解析ですが、牛乳摂取と全死亡率・心血管疾患による死亡率との関連性は認められませんでした発行された乳製品(ヨーグルトやチーズ)は20g摂取増えるごとに2%の死亡率低下が認められました。が、大規模なスウェーデンの研究を除いて解析すると、関連性は認められませんでした(一貫性のない結果となりました)。よって、乳製品と死亡率・心血管疾患による死亡率には強い関連性が無いことが示唆されました。

<癌>

・61研究のメタ解析により、発酵された乳製品、特にヨーグルトは癌罹患リスクを低減することが示唆されています(Int J Cancer. 2019;144(9):2099–2108.)。全体の癌リスクを13%低減し、特に膀胱癌・大腸癌の予防に効果的であるようです。おそらく、それなりに信頼できるメタ解析と考えられます。

・牛乳は乳癌発生に寄与するかもと噂されています。最も新しいメタ解析は2019年で、牛乳やヨーグルトと乳癌の関連性は認められませんでしたMedicine (Baltimore). 2019;98(12):e14900.)。解析対象とされた15個の研究をみてみると、牛乳が乳癌を増やすと結論した研究はフィンランドのもの一つだけ(J Clin Epidemiol 1999;52:429–39)で、減らすと結論したものはアメリカ(J Natl Cancer Inst 2002;94:1301–11)とノルウェー(Int J Cancer 2001;93:888–93.)の研究のみ。おそらく、関係ないと言えるでしょう。日本の研究でも関連なしです(Breast Cancer. 2017;24(1):152–160.)。

・しかしながら、牛乳は特定の種類の乳がんの発症と関連するかもしれません(Curr Dev Nutr. 2017;1(3):e000422.)。比較的小規模の症例対照研究ですが、牛乳はある種の(エストロゲンレセプターが陽性の)乳癌は増やすが、ある種の乳癌は減らすかもしれないということです。この疫学研究の結果は、関連性がバイオロジカルに説明可能となるので、これが真実かもしれない、と考えるわけです。

<心血管疾患>

乳製品と心血管疾患罹患、脳卒中罹患、2型糖尿病罹患についてほとんど関連性がないことが示されています(Curr Nutr Rep. 2018;7(4):171–182.)。しかし、この研究は同時に「1日200gの牛乳摂取により8%の脳卒中罹患リスク低減につながる」ともいっています。論理に一貫性がありません。専門的になりますが、明らかなpublication biasとheterogeneityが原因と考えられます。つまり、ほとんど関連性がないという結果がもっともらしい結果だということです。

<心血管疾患のサロゲートマーカー>

・ヨーグルトにより体重・コレステロール・血糖値がどう影響するか調べたランダム化試験が多数あり、そのメタ解析が2019年に発表されています(J Dairy Sci. 2019;102(10):8587–8603.)。9個のランダム化試験のメタ解析なので信頼性が高い研究です。ヨーグルトvs プラセボで、8-16週間後の検査値を比較しています。ヨーグルトにより体重が0.9kg減少、空腹時血糖値が22減少、総コレステロールが13減少しました。研究間の違い(例えば対象とした人:糖尿病患者なのか、健康な人なのかなど)がかなりあり、それがlimitationとなっていますが、おそらくヨーグルトは心血管疾患のサロゲートマーカーに良い影響を及ぼすことが示唆されました。

まとめると、次のようになります。

乳製品全体としては健康への影響はなさそう。というか、乳製品全体を比較対象にすることは、あまり理にかなっていない。なぜなら、乳製品の中で健康に良いものも悪いものもあるから。

牛乳と心血管疾患は関連性がなさそうです。

牛乳と癌もあまり関係がなさそうです。が、特定の乳癌のリスクを増やす可能性は示唆されています。

ヨーグルトは心血管疾患を予防するかもしれませんが、その効果は限定的です。生活習慣病はある程度予防するかもしれません。

ヨーグルトは癌の罹患リスクを下げるかもしれません。

じゃあどうすればよいか

じゃあどうすればよいか

これらの結果をもとに、どうすべきか自分で決めましょう。

おそらく牛乳を飲んでも飲まなくても、そんなにすごく健康に影響することはなさそうです。しかし飲まないといけないものでもありません。牛乳が好きならば飲んでもよいし、そうでもなければ飲む必要はありません。

もし乳癌のリスクをすごく気にするなら、飲まないというのも一手でしょう。そこまで強い科学的根拠はありませんが。

一方、ヨーグルトは、健康食品として一役買えそうです。発酵食品のベネフィットがあるので、牛乳とは健康効果が全然違います。むしろ、食べて良い影響があるかもしれません。ただし、砂糖で甘くしてしまっては、やはり駄目なのです。甘くないヨーグルトを定期的に食べると、様々な疾患予防につながるかもしれません。

結論

乳製品と一言にまとめて健康効果を検証するのは、あまり理にかなっていません。

牛乳は飲んでも飲まなくても、あまり健康に影響しません。ヨーグルトは健康に良さそうです。

ではまた。