本当に塩分制限したほうが健康に良いのか?

「塩分摂りすぎてはいけません。」知っていますが、どこまで気をつけていますか?実際どの程度病気と関係しているのか知っていますか?高血圧と関連することは知っていても、降圧薬を飲めばよいのではないの?

この記事では、塩分摂取過多が原因と考えられている病気を網羅的に紹介し、塩分制限の意義を考察します。降圧薬が普通に手に入る現代、塩分摂取による健康への影響は、実際少なくなってきています。この記事を読むことで、どの程度の本気で塩分摂取を控えたほうが良いか、判断できるようになります。

塩分摂取を原因とする病気一覧

塩分摂取を原因とする病気一覧

一番有名なのは高血圧ですが、高血圧というのは心血管疾患のサロゲートマーカーに過ぎません。一番重要なのは死亡率、次に心血管疾患や癌の発症です。

ちなみに、ナトリウム100mgは、塩250mgに相当します

死亡・心血管疾患

・高血圧は間違いのない心血管疾患(心筋梗塞や脳卒中)の原因です。

・しかしメタ解析では、食塩摂取が高い群と低い群を比べると、死亡・心筋梗塞等のリスクに有意差は認められませんでしたBMJ. 2013;346:f1326.)。脳卒中は、食塩摂取により24%程度リスクが増加しました。これは、高血圧患者には降圧薬が投与されるため、それにより著名なリスク低下が得られたことを示唆します。

・少し細かいことですが、食塩摂取量を減らすことで血圧が下がっても、心血管疾患を予防できるかは、実はcontroversialです(Dietary Reference Intakes for Sodium and Potassium 2019)。背景には、食塩による悪影響の感受性の高い人と低い人がいることが示唆されています。

・2015年のメタ解析ですが、食塩摂取を5g増やすごとに12%胃癌のリスクが上がるとされています(Eur J Cancer. 2015;51(18):2820–2832.)。

・大豆製品は概して健康によいのですが、味噌汁だけは1日3回飲むと胃癌の発生率が増えてしまうという日本の報告があります(Sci Rep. 2017;7(1):4048.)。理由は、大豆製品の中でも味噌は高い塩分濃度をもつからと考えられます。これの解釈は注意すべきですが(ここ参照)。

血圧

・食塩摂取は高血圧の間違いない原因です。例えば2013年のメタ解析では、食塩1日5g未満は5g以上と比較して収縮期血圧3.4mmHg低い結果となりました(BMJ. 2013;346:f1326.)。

・2019年のメタ解析では、2.3gのナトリウム(5.75gの食塩、ティースプーン1杯)を減らすことで、収縮期血圧131mmHg以上の人は7.7mmHgの血圧低下、131mmHg以下の人は1.5mmHgの血圧低下が見込まれました(Am J Clin Nutr. 2019;109(5):1273–1278.)。

その他

慢性腎臓病:2014年のメタ解析ですが、食塩11.5g以上とたくさん摂取すると、それ以下と比べ慢性腎臓病のリスクが増加します(Am J Hypertens. 2014;27(10):1277–1284.)。しかし、それ以下に関しては明らかな関連性は認められませんでした。これも上記同様、食塩への感受性が人によって違うだろうと示唆されています。

骨粗鬆症:おそらく食事からの塩分摂取量が多いと骨粗鬆症のリスクが上昇します(J Am Coll Nutr. 2018;37(6):522–532.)。

意外に病気と関連していない!?

意外に病気と関連していない!?

砂糖赤肉と比較して、塩分と病気の関連性は弱いように思えませんか?そう、弱いのです。そして、これはひとえに降圧薬のおかげです。

世界中で高血圧のスクリーニングがなされるようになり、ふつうに降圧薬が処方されます。降圧薬には、ARBやACE阻害薬といって腎保護作用をもつものもあります。これが著明に心血管疾患や腎疾患罹患リスクを下げているのです。だから、現代において、‘世界中の人を平均すると食塩摂取がやや多いくらいだと、深刻な病気のリスクが著明に上がる可能性は少ないと言えます(しっかり降圧薬を飲めば)。

では塩分をとっても大丈夫?

大丈夫、とはならないです、残念ながら。次のような理由です。

・まず、人によって塩分への感受性が異なります。心血管疾患のような重要なアウトカムと食塩摂取量の関係は、コホート研究でしか証明できないのですが、コホート研究ではその‘感受性’という因子で調整できません(感受性が何かわかっていないから)。もっと簡単に言うと、塩分を摂取する人で健康に悪い効果がかなり出やすい人がおそらくいるということです。

・塩分摂取量に応じて、心臓への負荷は間違いなく変わります。心不全患者の診療をすればわかりますが、経験上、いくら薬を飲んでいても塩分摂取量が増えると心不全で入院するリスクが増えます。2019年のliterature reviewではcontroversialとなっていますが(Am J Med. 2020;133(1):32–38.)。経験上因果関係がはっきりしていても、コホート研究で因果関係を言うにはある程度限界があるのです(もちろん私の経験が一般的でないのかもしれません)。話が逸れました。健常者にとっては、心臓に少し負荷がかかっても全然影響はないです。

・降圧薬を一生飲みたいですか、という話があります。お金もかかるし(自分も国も)、飲みたい人はいません。

胃癌については、血圧とは関係ない食塩の効果だと考えられます。日本人は胃癌が多いですが、これは食塩摂取量が多いことが主要な原因だと考えられます。

塩分摂取量を減らす具体的な戦略に関しては、この記事を参照下さい。

結論

降圧薬が非常に優秀なので、高血圧による心血管疾患や死亡のリスクは抑えられます。しっかり飲めば。

が、それでも減塩は健康のために必須です。日本人は食塩摂取量が多すぎます。

ではまた。