人工甘味料の危険性を悪戯に煽るな:科学的根拠に基づく健康への影響

「人工甘味料は危険だ・太る」と悪影響を煽る記事をよく見かけます。

ただ、それらは概して科学的根拠に基づいていません。

実は人工甘味料の健康への影響については、かなりの研究で多くのことがわかっています。

この記事では現時点でのエビデンス=科学的根拠をまとめました。

現時点で科学的に妥当と考える事を知り、悪戯に不安を煽る記事に見分けをつけ、自分の判断で「賢く」人工甘味料を使用できるようになりましょう。

*2021/8/30 エビデンスをupdateしました。

 

 

人工甘味料とは?

人工甘味料とは?

 

人工甘味料とは、砂糖より数百〜数万倍甘いため、砂糖と同じ甘さを出すために必要な量が少ない、人工的に合成された物質です。

人工甘味料自体はカロリーを少し含むものもありますが、極微量で甘くなるので、カロリーフリーが謳われます

 

「砂糖不使用」「カロリーゼロ」「カロリーオフ」と表記してある甘い食べ物には、例外なく人工甘味料が使用されています。

 

人工甘味料にはたくさん種類があります。

メジャーな人工甘味料は:アスパルテーム、アセスルファムK、サッカリン、スクラロース、ネオテーム、アドバンテームです。

 

人工甘味料は健康を害する可能性が示唆されていることは、多くの方が知っていることかもしれません。

以下に人工甘味料に関する研究を紹介していきます。

現状科学的にはどのような立ち位置なのか、知っておきましょう。

 

 

糖アルコールは別物

なお、人工甘味料に似たものに、糖アルコールというものがあります。

糖アルコールは、砂糖の25%〜100%くらいの甘さですが、カロリーは低い、自然に存在する成分です。

 →砂糖と異なり、糖アルコールは虫歯や血糖値に急激な上昇を来しません。

お菓子だけでなく、歯磨き粉や医薬品にも使われます。

 

代表的な糖アルコールは:ソルビトール、キシリトール、ラクチトール、マンニトール、エリスリトール、マルチトールです。

 

糖アルコールは、人間が摂取して健康に影響することはないとされています。

人工甘味料に関する情報をみるとき、糖アルコールとごっちゃにしないよう、気をつけましょう。

 

*例外は、キシリトールなどを摂取し過ぎた時に生じる腹痛や下痢です(Int J Dent. 2016;2016:5967907.)。

...これは糖アルコールの吸収が遅いため、小腸に多量の水分が引き込まれてしまう事が原因と考えられています。

   この症状は一過性で、かつ摂取し続けると症状が起きにくくなります。なお、エリスリトールはこの副作用がありません。

 

 

人工甘味料の危険性は?[エビデンスを紹介]  

人工甘味料の危険性は?[エビデンスを紹介]  

はじめに言っておきますが、2021年時点で結論ははっきりとしていません

しかし、今までの研究から言えることはたくさんあります。

これらをみていきましょう!

 

人工甘味料は血糖値を上昇させることはなさそうです

2020年にupdateされたランダム化試験のメタ解析によります(Am J Clin Nutr. 2020;112(4):1002-1014.)。多くはアスパルテームかサッカリンに関するものです。

→人工甘味料摂取後血糖値は上昇せず、時間経過とともに下がっていく傾向がみられました

→インスリンの分泌量が増えることもなさそうでした

※血糖値を上昇させない事と、糖尿病のリスクを上げない事は、意味が異なるので注意。

 

糖尿病を増やすかどうか、結論が出ていませんが、リスクはそれほど高くなさそうです

・一番最新のsystematic reviewでは「はっきりとした結論がついていない」です(Diabetes Res Clin Pract. 2019;155:107786.

・2017年のランダム化試験のメタ解析では、水と比べ、人工甘味料入り飲料に有意なリスク上昇は認められませんでしたが、試験の数が少なく(1〜5個)、観察期間も6ヶ月ほどと短く、信頼性は低いです(CMAJ. 2017;189(28):E929–E939.)。

・コホート研究のメタ解析では、人工甘味料入り飲料を1日1本飲むごとに、2型糖尿病のリスクが25%上がると報告されています(Br J Sports Med. 2016;50(8):496-504.)。砂糖入り飲料のリスク上昇は、1日1本飲むごとに18%でした。

→ただし、コホート研究の結果はreverse causationである可能性が非常に高く信頼できる結果とは言えません

→つまり、太ってきて糖尿病リスクが高い人が、気にして人工甘味料入り飲料を選んでいるということです。

*糖尿病の発症は、人工甘味料が原因でない可能性を裏付ける研究もあります(Am J Clin Nutr. 2011;93(6):1321–1327.)。

 

体重増加への関連性も不明ですが、リスクは高くなさそうです。

・短期のランダム化試験のメタ解析では、砂糖を人工甘味料に置換することで、体重が下がる可能性が示唆されました( Obes Rev. 2020;21(7):e13020.

・最新のUmbrella reviewでは、「ほとんどの健康アウトカムに対しはっきりとしたエビデンスはなし」となっています(BMJ. 2019;364:k4718.)。

  →ただし、肥満の小児においては、砂糖より人工甘味料の方が少しだけ体重増加に寄与することが示唆されました。

 

※一方、長期的な体重増加に寄与することを示唆するコホート研究もあります。

この機序は、以下のように(一応)説明されます:

・人間の脳は甘いものに反応し、さらに甘いものを食べたり飲んだりする欲求が生まれるように設計されています

→砂糖に比べ、サッカロースは満腹中枢を刺激しにくい(満腹感を得にくい)ことがMRIで示されています(Neuroimage. 2008;39(4):1559-69.)。

→よって、人工甘味料により違う甘いものを食べる衝動が生じるため、体重増加に寄与する可能性が示唆されています。

 

心疾患による死亡リスクは摂取し過ぎると増えるかもしれません。

最新のメタ解析です(Adv Nutr. 2021;12(2):374-383.

→人工甘味料入りの飲料について、全く飲まない人と比較し、

 ・1日1.5杯では7%

 ・1日2杯では15%

 ・1日2.5杯以上では25%

の心疾患による死亡リスクの上昇が認められました。

ただしこの関連性の信頼性は高くないです。

・RCTでは、コレステロールや血圧への強い影響は示されていません(BMJ. 2019;364:k4718.

 

✔癌についても不明

・膀胱がん、血液癌についての観察研究が発表されていますが、メタ解析すると関連性はありませんでした(BMJ. 2019;364:k4718.

 

*******

 

まとめると、人工甘味料は血糖値の急激な上昇には寄与せず、健康への影響は未知数、といえそうです。

ただ、短期的な悪影響はなく、長期的にも「常習的に飲まない限り」すごく悪い影響は認められておりません

「糖尿病が増える」「太る」といったものも、一部の研究で認められても、他の研究では認められなかったりして一貫性がありません。

 

概して、時々飲む分にはそこまでリスクの高い食べ物だとは言えません

 

 

超加工食品

なお、まだエビデンスがはっきりあるわけではないですが、Ultra-processed food(超加工食品)には人工甘味料が含まれていることが多く、Ultra-processed foodが健康に悪いことが示唆されてきています(Nutr Res Rev. 2020;1-24.)。

Ultra-processed foodとは、いわゆる保存料や添加物を使いまくっている食品のことで、スナック、ピザ、クッキーなどなど一般的に体に悪そうなものを指します。

つまり人工甘味料自体の影響ではなくとも、「砂糖を減らすために人工甘味料を摂取する(砂糖を人工甘味料に置換する)」という中で、体に悪いもの(=Ultra-processed food)の消費を増やしてしまう危険性が言われているのです。

 

砂糖は減らすべきで、人工甘味料はそれほど健康に悪くないとしても、「人工甘味料を含む何を代わりに摂取するか」気に掛ける必要がありますね。

 

 

どのような状況で人工甘味料を摂取すべきか

じゃあどうしたら良いの?水飲んで。

 

2018年にアメリカ心臓学会とアメリカ糖尿病学会が声明を出しています(Circulation. 2018;138(9):e126-40.)。

これによると・・・

 

砂糖入り飲料は避けたほうがよく水を替わりに飲むのが一番良い

 フレーバー入りでもOK。砂糖や人工甘味料入りはだめ。

 

✅でもどうしても甘いものを飲みたい人は、人工甘味料入り飲料を一時的に飲んでもよい

 だが、完全に砂糖入り飲料を人工甘味料入り飲料に置換する行為は止めておいたほうが良い。

 →なぜなら、他のお菓子や飲み物を飲み、結果的にカロリー摂取過多となってしまう事態を引き起こし得ないから。

 

✅健康への悪影響が示唆されている以上、影響されやすい小児は飲むべきでない

 

まだエビデンスがはっきりしていない、つまり健康に悪い可能性も十分ありうるためでしょう。

これは2018年のややconservativeな意見です。

ただし、上述したように「常習的に飲まない限りは」リスクはそれほど高いとは言えません。

 

 

私の見解

以上の科学的根拠に基づいた私の見解は以下の通りです。

参考までにどうぞ:

 

✔スポーツ中にスポドリとして人工甘味料入り飲料を飲むことは理にかなっていない

→そもそも水でなくスポドリが必要な状況は限られており、かつスポドリによる運動パフォーマンスの上昇は炭水化物(砂糖)がどれくらい飲料中に入っているかが重要なのです(詳細こちら)。

→基本は水、消耗する運動をする時はスポーツドリンクを飲む。

 

✔コカコーラゼロを飲むんだったら、スパークリングウォーター(フレーバーあり)を飲んだほうが良い。

 

✔どうしても甘いものが飲みたいときは、人工甘味料入り飲料を飲むのはOK。

お菓子を同時に食べないように注意する)

 

✔︎人工甘味料入り飲料を常習的に飲むのは避ける。

 

✔Ultra-processed foodは避ける

 

いかがでしょうか。割と実践的だと思います。

 

 

腸内細菌への影響について

人工甘味料の腸内細菌への影響を調べた研究も非常に多くあります。

ここで紹介できないほどあり、悪影響を示唆するものも、影響がないことを示唆するものもあります。

ただ、たとえ「腸内細菌に悪い」からといって、それは「人工甘味料の健康効果」の一つの側面にすぎないことを認識する必要があります。

 

一番重要なのは「死亡率」「がん発症率」などのアウトカムであり、

その次に重要なのが「バイオマーカー」や「糖尿病発症」「体重増加」といったもの。

それらのエビデンスを上に紹介し、そこまでリスクが高くないことを示しました。

 

その上で「腸内細菌に悪い」ということが分かったとして、なんなのか。

インパクトは少ないですね。

「腸内細菌に悪いなら健康にも悪いはずだ」というのは一見論理的に見えますが、真実ではありません(単純化しすぎです)。

一つの機序で食事の健康効果を説明するのは不可能です(詳細こちら

 

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当然今後の研究でよりわかってくるでしょうが、現状のエビデンスに基づけば、悪戯に人工甘味料を恐れることはありません。

よくネット記事に不安を煽るようなものがありますが、それは科学的な議論ではありません。

 

もちろん健康に良いものではないので、避けられるなら避けた方がベターですが、上述の通りうまく使うのがよい方法です。

 

 

結論

人工甘味料は、「常習的に飲まない限りは」そこまで悪い危険性は立証されていません。

糖アルコールは健康に問題なし。

いたずらに恐れず、砂糖入り飲料の良い代替として使いましょう。

でも、結局水やスパークリングウォーターが良いので、そちらに移行していきましょう。

ではまた。

-食事

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