カロリーゼロ、ノンカロリー、ダイエット〇〇などの人工甘味料、砂糖より健康に良いと思っていませんか?
実は健康に悪いというエビデンスも結構あります。
この記事では、2020年7月時点での科学的根拠をまとめました。
真実を知った上で、実際にどう考えて飲むべきか考えましょう。
*2020/7/16 エビデンスをupdateしました。
人工甘味料とは?

人工甘味料とは、砂糖より数百〜数万倍甘いため、砂糖と同じ甘さを出すために必要な量が少ない、人工的に合成された物質です。
人工甘味料自体はカロリーを少し含むものもありますが、極微量で甘くなるので、カロリーフリーが謳われます。
「砂糖不使用」「カロリーゼロ」「カロリーオフ」と表記してある甘い食べ物には、例外なく人工甘味料が使用されています。
人工甘味料にはたくさん種類があります。
メジャーなものは:アスパルテーム、アセスルファムK、サッカリン、スクラロース、ネオテーム、アドバンテームです。
人工甘味料に似たものに、糖アルコールというものがあります。
糖アルコールは、砂糖の25%〜100%くらいの甘さですが、カロリーは低い、自然に存在する成分です。砂糖と異なり、糖アルコールは虫歯や血糖値に急激な上昇を来しません。
お菓子だけでなく、歯磨き粉や医薬品にも使われます。
代表的には糖アルコールは:ソルビトール、キシリトール、ラクチトール、マンニトール、エリスリトール、マルチトールです。
✔糖アルコールは、人間が摂取して健康に影響することはないとされています。
*例外は、キシリトールなどを摂取し過ぎた時に生じる腹痛や下痢です(Int J Dent. 2016;2016:5967907.)。
...これは糖アルコールの吸収が遅いため、小腸に多量の水分が引き込まれてしまう事が原因と考えられています。この症状は一過性で、かつ摂取し続けると症状が起きにくくなります。ちなみに、エリスリトールはこの副作用がありません。
実は、人工甘味料は健康を害する可能性が示唆されています。
以下に紹介する研究は、人工甘味料に関するものです。
人工甘味料の危険性は?
はじめに言っておきますが、結論ははっきりとしていません。
科学的根拠を紹介します。
✔人工甘味料は血糖値を上昇させることはなさそうです
29個のランダム化試験のメタ解析によります(Eur J Clin Nutr. 2018;72(6):796–804.)。多くはアスパルテームかサッカリンに関するものです。
人工甘味料摂取後血糖値は上昇せず、時間経過とともに下がっていく傾向がみられました。
※血糖値を上昇させない事と、糖尿病のリスクを上げない事は、意味が異なるので注意。
✔糖尿病を増やすかどうか、結論が出ていません。
・一番最新のsystematic reviewでは「はっきりとした結論がついていない」です(Diabetes Res Clin Pract. 2019;155:107786.)
・2017年のランダム化試験のメタ解析では、水と比べ、人工甘味料入り飲料に有意なリスク上昇は認められませんでしたが、試験の数が少なく(1〜5個)、観察期間も6ヶ月ほどと短く、信頼性は低いです(CMAJ. 2017;189(28):E929–E939.)。
・コホート研究のメタ解析では、人工甘味料入り飲料を1日1本飲むごとに、2型糖尿病のリスクが25%上がると報告されています(Br J Sports Med. 2016;50(8):496-504.)。砂糖入り飲料のリスク上昇は、1日1本飲むごとに18%でした。
※コホート研究の結果はreverse causationである可能性が非常に高く、信頼できる結果とは言えません。
→つまり、太ってきて糖尿病リスクが高い人が、気にして人工甘味料入り飲料を選んでいるということです。糖尿病の発症は、人工甘味料が原因でない可能性を裏付ける研究もあります(Am J Clin Nutr. 2011;93(6):1321–1327.)。
✔体重増加への関連性も不明です
・短期のランダム化試験のメタ解析では、砂糖入り飲料を人工甘味料入り飲料に置換することで、体重が下がる可能性が示唆されました( Obes Rev. 2020;21(7):e13020.)
・最新のUmbrella reviewでは、「ほとんどの健康アウトカムに対しはっきりとしたエビデンスはなし」となっています(BMJ. 2019;364:k4718.)。
→ただし、肥満の小児においては、砂糖より人工甘味料の方が少しだけ体重増加に寄与することが示唆されました。
※一方、長期的な体重増加に寄与することを示唆するコホート研究もあります。このように(一応)説明されます:
→人間の脳は甘いものに反応し、さらに甘いものを食べたり飲んだりする欲求が生まれるように設計されています
→砂糖に比べ、サッカロースは満腹中枢を刺激しにくい(満腹感を得にくい)ことがMRIで示されています(Neuroimage. 2008;39(4):1559-69.)。
→よって、人工甘味料により違う甘いものを食べる衝動が生じるため、体重増加に寄与する可能性が示唆されています。
✔脳卒中や心筋梗塞についても不明。
・リスクを少し上昇するというコホート研究の結果がありますが、確定的とは言えません(CMAJ. 2017;189(28):E929–E939.)
・RCTでは、コレステロールや血圧への強い影響は示されていません(BMJ. 2019;364:k4718.)
✔癌についても不明
・膀胱がん、血液癌についての観察研究が発表されていますが、メタ解析すると関連性はありませんでした(BMJ. 2019;364:k4718.)
まとめると、人工甘味料は血糖値の急激な上昇には寄与せず、健康への影響は未知数、といえそうです。
どのような状況で人工甘味料を摂取すべきか

2018年にアメリカ心臓学会とアメリカ糖尿病学会が声明を出しています(Circulation. 2018;138(9):e126-40.)。
これによると・・・
・砂糖入り飲料は避けたほうがよく、水を替わりに飲むのが一番良い。フレーバー入りでもOK。砂糖や人工甘味料入りはだめ。
・でもどうしても甘いものを飲みたい人は、人工甘味料入り飲料を一時的に飲んでもよい。だが、完全に砂糖入り飲料を人工甘味料入り飲料に置換する行為は止めておいたほうが良い。なぜなら、他のお菓子や飲み物を飲み、結果的にカロリー摂取過多となってしまう事態を引き起こし得ないから。
・健康への悪影響が示唆されている以上、影響されやすい小児は飲むべきでない。
まだエビデンスがはっきりしていない、つまり健康に悪い可能性も十分ありうるためでしょう。
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以上の科学的根拠に基づいた私の見解は以下の通りです:
✔スポーツ中にスポドリとして人工甘味料入り飲料を飲むことは理にかなっていない。
→そもそも水でなくスポドリが必要な状況は限られており、かつスポドリによる運動パフォーマンスの上昇は炭水化物(砂糖)がどれくらい飲料中に入っているかが重要なのです(詳細こちら)。
→基本は水、消耗する運動をする時はスポーツドリンクを飲む。
✔コカコーラゼロを飲むんだったら、スパークリングウォーター(フレーバーあり)を飲んだほうが良い。
✔どうしても甘いものが飲みたいときは、人工甘味料入り飲料を飲む。
(お菓子を同時に食べないように注意する)
いかがでしょうか。割と実践的だと思います。
結論
人工甘味料は、そこまで悪い危険性は立証されていません。研究中です。
いたずらに恐れず、砂糖入り飲料の良い代替として使いましょう。
でも、結局水やスパークリングウォーターが良いので、そちらに移行していきましょう。
ではまた。