ビオチンは最近注目されている(と思われる)栄養素で、たくさんのサプリが市販されています。
よくある宣伝文句は、「髪、爪に良い」。
でもサプリを飲むことで効果が得られるのでしょうか?そもそもどれだけの人が不足しているのでしょう?
この記事では、ビオチンの効果と摂取の注意点について、科学的根拠をまとめました。
ビオチンの効果
ビオチンはビタミンHやビタミンB7とも言われますが、一般的には「ビオチン」です。
水溶性ビタミンです。
摂取不足による害、過剰摂取による害、推奨範囲内で多めに摂る健康効果を分けて考えましょう。水溶性ビタミンですが、サプリの過剰摂取による害が報告されています。
ちなみに、単位はµgです。1日の推奨摂取量は、成人で30µgです。
摂取不足による害
かなり稀です。
重度の欠乏症は、通常の食事をしている成人からの報告はありません(Encyclopedia of Dietary Supplements. 2nd ed. London and New York: Informa Healthcare; 2010:43-51.)
欠乏すると髪が薄くなる、皮疹、結膜炎などの症状が起きます。
タンパク質製剤のみで育てられていた日本の1人の赤ちゃんが欠乏症を発症、ビオチンで治療されたという症例報告があります(J Dermatol. 2005;32(4):256-261.)。
そんな事普通ありえませんよね。そうです、欠乏症は日本では普通ありえません。
過剰摂取による害
ビオチン自体による健康被害はあまり知られていません。
しかし、いくつか血液検査の値が大きく変わってしまう現象が指摘されており、誤った診断につながりえます。
その検査とは:
・トロポニン:心筋梗塞のマーカーです。この値が低く出てしまい、「心筋梗塞でない」と誤って診断され得ます。これは極めて危険であり、2017年にFDAが警告を出しています(FDA)。
・甲状腺ホルモン関連:TSHが低く、甲状腺ホルモンが高く出てしまい、誤ってバセドウ病と診断されるケースが報告されています(N Engl J Med 2016;375:704-6, JAMA Intern Med 2017;177:571-2.)
・NT-proBNP:心不全のマーカーで、これが低く出て心不全の診断が見逃される可能性が示唆されています(JAMA. 2017;318(12):1150-1160.)
紹介した文献は小規模の研究が多いですが、血液検査の値が変わってしまう現象は無視できません。
結果FDAの警告に至っています。
推奨範囲内で多めに摂る健康効果
一番期待されているのは髪、爪、肌に対する良い効果で、これをうたって多くのサプリが販売されています。
しかしエビデンスは弱く、ほぼ無いと言えます。
・Brittle nails(脆弱爪)の治療効果を検証した数十人規模の小規模研究では、爪の厚さが増えたという結果でした(J Am Acad Dermatol 1990;23:1127-32., Z Hautkr 1989;64:41-8.)。が、どちらの研究もかなり古く、片方はドイツ語の文献です。信頼できるエビデンスとは言えません。
・髪に関しては症例報告しかなく、しかも小児のものです。「櫛でとかせない毛髪症候群」というめちゃくちゃ稀な疾患の患者35人を対象としたものが報告されています(Cutis 1993;51:303-5.)。しかも観察研究。
つまり、ビオチンサプリが髪や爪に良いという科学的根拠はありません。
検証されていないというのが事実ですが、はっきり言って期待されません。
ビオチンを摂取するには?
野菜、果物、乳製品、卵、ナッツ、油に含まれています。
特に意識しなくても、不足して問題になることは普通ありません。
結論
健康な成人において、ビオチンが髪や爪に良いというエビデンスはない。
ビオチンサプリを飲む必要はない。
ではまた。