食物繊維:健康効果の科学的解説【不足すると・・】

食物繊維が健康に良いのは誰でも知ってますが、より正確に、正しい情報をご存知でしょうか。

なぜ/どう健康に良いか。

腸内細菌にどう効果があるか。

摂りすぎても大丈夫か。

不足するとどうなるか。

この記事では、科学的根拠に基づきこれらを解説します。

科学的根拠を知って、日頃摂取する食物繊維の量を増やしましょう!

 

 

食物繊維の効果とは【機序】

食物繊維の効果とは【機序】

食物繊維=体内で分解されない炭水化物です。

分解されないので、そのまま排泄されます。

 

これが何故良いのかと言うと、以下のポイントによります:

・腸内に停滞することで砂糖やコレステロール、塩分を吸着し体内に取り込まれる量を減らす/ 吸収をゆっくりにする

 →これにより糖尿病、脂質異常症、高血圧といった生活習慣病を予防する効果が考えられます。

水分を腸内に引き込んで便を柔らかくする

 →便秘を予防します

腸内細菌、leaky gut症候群に良い影響を与えるかもしれません

 →絶賛研究中です

 

これらが機序となります。

 

ただ、実際「人を対象とした」疫学研究で示されていることが、より重要です。

みていきましょう!

 

*水溶性・不溶性という区別法も有名です。

特に水溶性が肥満予防、不溶性が便秘解消に重要です。

が、「食物繊維」として一緒くたに解析されている研究も多いです。

 

 

 

食物繊維に関する科学的根拠

食物繊維に関する科学的根拠

かなり信頼できる研究が2019年のLancetに出版されました(Lancet. 2019;393(10170):434–445.)。

世界中の185のコホート研究と58のランダム化試験のメタ解析です。

なんとサプリメントデータが100ページ以上ある大作です。

かなり信頼できる報告ですので、少し細かくみます。

 

観察研究のメタ解析

食物繊維を取れば摂るほど、死亡率・心血管疾患・2型糖尿病の発症・大腸癌の発症が抑制されることがわかりました。

 →1日25-29gとれば最大の健康効果が期待されます。

 

食物繊維と死亡率

Lancet. 2019;393(10170):434–445.

✅上の図の○はそれぞれのコホート研究の結果、○の大きさはその影響度合いを示しています。

 縦軸がリスク比、横軸が食物繊維の1日摂取量です。

死亡率・糖尿病・大腸癌は面白い程はっきりした予防効果が認められました(摂取量が多いほどリスクが低い)。

→心血管疾患については変な曲線になっていますが、よくみると大きい○だけを集めたら直線的な関係になりそうです

 (予防効果はやや弱いですが)

→グレーの幅は95%信頼区間を示しており、食物繊維の摂取量が多い部分は信頼区間が広い=効果がはっきり推定できていないといえます。

 

結論、食物繊維を1日25-29gとれば、死亡率・心血管疾患・2型糖尿病の発症・大腸癌の発症リスクの20-30%低下と関連すということです。

 

 

ランダム化試験のメタ解析

ランダム化試験はフォローアップ期間が少ないため、死亡率などを比較することはできませんが、コホートより信頼性の高い因果関係を示唆します。

食物繊維の摂取により体重・血中コレステロール・収縮期血圧の低下が認められました

 

これはコホート研究の結果に矛盾しない結果です

→つまり、食物繊維を食べることで死亡率や心血管疾患の予防につながるという因果関係が一貫して示されました。

 

 

他の研究

大腸憩室・憩室炎Nutrients. 2018;10(2):137.

・機能性便秘=何かの病気が原因でない便秘(Nutrients. 2019;11(1):91., J Pediatr (Rio J). 2018;94(5):460–470.)

・乳癌Ann Oncol. 2012;23(6):1394–1402.

の予防にも効果があることが示唆されています。

 

 

一番大事なことは、食物繊維を1日25g以上とれば死亡率低下を含む様々な良い効果が期待できるということです。

生活習慣病や大腸癌の予防など、様々な効果が期待されます。

 

*************

 

続いて、最近ホットな「腸内細菌」との関連性をみてみましょう!

 

 

食物繊維をとれば腸内環境は良くなるか

食物繊維をとれば腸内環境は良くなるか

腸内環境=腸内細菌。

健康に極めて重要だと考えられています。

栄養素を合成、化学反応を起こす役割、免疫系への作用があり、結果糖尿病の発症や心臓病に関連することが報告されています。

 

腸内細菌って、数兆個います。

どうやって、「良い腸内環境」を定義するのでしょう?

いくつか指標があります。

例えば、、

α-diversity:どれだけたくさん別の細菌がいるか(richness)とその数の割合(evenness)からなる指標。色々な疾患と関連性がある。

ビフィズス菌、ラクトバチルス属:これらは健康な人に多い

腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸(SCFA):免疫系を制御する

これらを用いて、「腸内環境が良い」と科学的に言うのです。

 

**********

聞いたことあるかもしれませんが、食物繊維が、腸内環境を整える作用があると注目されています。

何故かというと

食物繊維は吸収されず、(腸内細菌がいる)大腸まで届くからです。

 

ということで、「食物繊維の摂取が腸内環境を変えるか」という因果関係が調査されてきました。

ここでは、今までのランダム化試験をまとめた報告です(AJCN 2018 10.1093/ajcn/nqy041)。

 

 

どういう研究?

ランダム化試験のメタ解析です。

 

・対象は健康な方(肥満は含む)

・介入方法は、食物繊維を増やす指導(カウンセリング)、シリアルを追加するなどの食事介入、食物繊維のサプリ、のいずれか

・アウトカムはα-diversity, 「良い」腸内細菌の多さ、SCFAなど

 

結果、メタ解析の対象となったのは58個のRCTでした。

 

 

結果は・・・

* I2とはheterogeneityの指標で、高いとメタ解析の質が悪いことを意味します。

詳細はこちら

 

<α-diversity

ちょっと細かいですが、α-diversityにも色々な指標があります。

それぞれの結果を紹介すると、

✅Shannon diversity index(richnessとevennessを合わせた指標)

 …6研究のまとめ。I2=53%

 →食物繊維により変化なし(p=0.48)

✅operational taxonomic unitsの数(evennessの指標)

 …3研究のまとめ。I2=0%

 →食物繊維により変化なし(p=0.82)

 

<良い腸内細菌の多さ>

✅ビフィズス菌

 …51研究のまとめ。I2=85%

 →食物繊維により増えた!(p<0.00001)

✅ラクトバチルス属

 …23研究のまとめ。I2=49%

 →食物繊維により増えた!(p=0.02)

 

*他いくつかの菌が解析されていますが、有意な変化なしです。

 

<SCFA

✅SCFAの合計

 …13研究のまとめ。I2=0%

 →食物繊維により変化なし(p=0.19)

 

*SCFAの種類(酢酸塩など)も解析されています。

酪酸はぎりぎり有意差あり(p=0.05)でしたが、他は変化なしでした。

 

 

解釈は?

食物繊維の摂取によって、α-diversityという腸内細菌バランスの指標は変化しないが、特定の良い菌(乳酸菌の種類)は増やす

という結果でした。

 

解釈において重要なポイントは3つ。

✔数週間の介入によるランダム化試験がほとんどなので、長期的な影響はわからないということ

・α-diversityがどうなるか、というのが最も重要なポイントですが、それが食物繊維によって変わらなかったのは、単に介入期間が短いからかもしれません

→観察研究では、食物繊維を食べている人はα-diversityが大きい、というデータがあります

→長期のランダム化試験がないのでなんとも言えないですが、少なくとも短期の介入で良い菌が増えることを考えると、長期的に食物繊維を食べることでα-diversityが増える=腸内環境が改善することは期待されます。

 

✔全体的にheterogeneityが高いです

・これは、参加者の腸内環境の状態がかなりバラバラであること、介入の方法もバラバラであることによります

→heterogeneityが高い=メタ解析の信頼性が低い、という意味です

→これは、この種の研究上どうしようもないことです。

→が、ベースラインの腸内環境の状況や介入の方法(どういう食物繊維を使うか)はかなり重要だ、という認識は大事です。

 

✔上にまとめた以外のアウトカム(その他の菌種など)については、n数が足りず、「本当に関連性がないか」言えない状況です

→他にもたくさんの研究が行われ、それらを含むメタ解析が再度行われれば、「関連あり」との結論になるかもしれません

 

 

******

まとめると、「まだ研究途上だが、食物繊維で腸内環境がよくなることは十分期待される」となりそうです。

こんな簡単そうなことを言うために、果てしない努力が必要です。

 

なぜそんな努力が必要なんでしょう?

例えば、将来こんなことができるようになるかもしれません:

・便検査で「腸内環境の悪い人」を特定

→彼らに食物繊維のサプリを処方

→腸内環境が改善

→糖尿病や心臓病のリスクが低下

…これを保険診療の枠組みで行う

 

良さそうですね。

 

 

食物繊維、どれくらい摂ってる?

厚生労働省の報告によると、日本人成人は平均1日15gしか摂取していないようです。

推奨摂取量は20g程度と低いですが、これは「1日24g以上が理想だが、実際の1日15gとの間をとって20g」と定めたそうです。

摂りすぎても悪いことはないですが、意識しないと食物繊維20gは摂れません。

 

自分がどれだけ食物繊維を摂っているか計算が難しいことは大きな問題だと思います。

アプリもいくつか出てきていますが、何らかの方法で「普段どれだけ食物繊維を摂っているか」わかれば、行動変容に繋げられる気がします。

特に、健康意識の高い方は。

 

でも今の所難しいのです。

どう効率よく摂取するか、Tipsを提示したいと思います。

 

 

食物繊維の効果的な摂取法

どう食物繊維を摂取するか

バナナはとても良い食物繊維源

 

食物繊維をたくさん含む食物は、野菜果物全粒穀物豆類きのこです。

 

このブログで何度も書いていますが、ルーチンとして定期的に摂取しないと、健康効果は得られません

→一時期鬼のように食べても、その後食べなくなってしまっては駄目です。

 

定期的に摂取するためどうすればよいか、いくつかTipsを提示したいと思います。

 

<Tips>

主食を全粒穀物にする。白米しか食べない方は、50%玄米入れる。白い食パンを茶色い食パンにする。パスタやシリアルも同様。

 →これは毎日食べるので、影響が大きい。

フルーツジュースの代わりにフルーツを食べる

 →100%でもジュースにしてしまうと、食物繊維としての炭水化物が代謝される炭水化物(=砂糖)となってしまうので、良くない。

✅スナックや甘いお菓子をやめる

 →豆菓子(できれば甘くないもの)を食べる

野菜は生よりゆでたり炒めたりした方がたくさん取れる

✅自炊するときは、切り干し大根やほうれん草、かぼちゃ、納豆などの小皿をつける。

✅おかずにきのこ類を加える。

 →しいたけ、えのき、まいたけ、ぶなしめじ、何でも良い。

✅ちなみにあんこは、こしあんの方が粒あんより食物繊維が多い。

 

どうやるのがimplementationが高いかは人によると思います。

どうやって生活習慣を変容できるか、考えてみましょう。

 

 

摂りすぎても大丈夫?注意点

基本的にはたくさん摂取した方がよいです。

摂りすぎると機序的には下痢になる可能性がありますが、あまりそれで困っている方をみたことはありません。

むしろ集団として食物繊維の摂取量をいかに増やすかが大事です。

 

イレウスの場合は注意

腸の器質的な狭窄(=病気が原因で内腔が狭くなっていること)がある場合、食物繊維の摂取はイレウスの原因となってしまうので、避けるよう指示されます。

その原因となる疾患は機械性イレウス、大腸癌、クローン病、潰瘍性大腸炎など。

消化器内科の先生に聞いてみて下さい。

 

 

結論

野菜・果物・全粒穀物・豆類・きのこを食べて、1日25-29gの食物繊維を摂れば、死亡率・糖尿病罹患・大腸癌罹患リスクの低減につながる。

不足するとこの健康効果を享受できない。

摂りすぎても普通は大丈夫。

ではまた。

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