熱い飲み物は「発がん性物質」である【エビデンスの解釈】

熱いコーヒーは目を覚ますのにとても良いですよね。でも、熱い飲み物は、何となく喉に悪いそうな気がしませんか?

実はこういうことも研究されていて、IARC(国際がん研究機関)は「とても熱い飲み物(Very hot beverage)」を発ガン性物質 Group 2Aに分類しています。

じゃあ、熱いお茶は飲まないほうが良いのでしょうか?お茶は健康に良いのに??

 

「発ガン性物質」とは、私達の不安を過度に煽ります。この記事では、熱い飲み物が「発ガン性物質」となった背景、この事実をどう解釈したら良いか解説します。

 

熱い飲み物は「発がん性物質」である

熱い飲み物は「発がん性物質」である

WHOは2016年、熱い飲み物は「発がん性物質」である、という公式な表明をしました(WHO文書)。ヒトでの研究により、熱い飲み物は食道癌のリスクになるという判断です。

これを受け、IARCが熱い飲み物をGroup 2Aの発ガン性物質と分類しました(Wikipedia)。

*Group 2Aには、ヒトパピローマウイルス31型と33型、紫外線、肝吸虫感染(肝臓に寄生する寄生虫)などが含まれており、発ガン性物質の分類としてはGroup 1に次いて信頼性の高い分類です。

 

今もこの分類は変わっておらず、熱い飲み物は事実「発がん性物質」なのです。

 

知っていましたか?これを聞くと、怖くありませんか?

この背景と解釈を知る必要がありそうです。以下に解説していきます。

 

*ちなみに、コーヒーにも発ガン性物質が入っていますよ・・(詳細こちら

 

 

熱い飲み物が「発がん性物質」となった根拠

熱い飲み物が「発がん性物質」となった根拠

 

どういう研究が根拠となったか、Lancet Oncologyという権威高い雑誌に公表されています(Lancet Oncol. 2016;17(7):877-878.)。

これによると、最も重大な科学的根拠は、南米のコホートでマテ茶と食道扁平上皮癌の関連を調べた、2014年の症例対照研究によります(Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 2014; 23: 107–16.)。

 

・マテ茶とは、南米の伝統的な飲み物で、マテの葉や枝にお湯を注ぎ、慣習的にはストローで飲む飲料です。マテ茶は伝統的には65℃以上と高温で飲むものですが、最近ではぬるくしたり冷やしたりして飲むこともあるそうです。高温のマテ茶をストローで飲むと、とても喉や食道に悪そうです。

・1991年に、「熱いマテ茶は食道癌と関連があり、熱くないマテ茶は関連がない」という報告がなされており(IARC Monogr Eval Carcinog Risks Hum 1991;51: 1–513)、これをよりしっかり調べたのが2014年の研究です。

・結果、1991年の研究と同じような結果でした。マテ茶の消費と食道癌の関係はあったのですが、warmのマテ茶には有意な関連は認められず、hotかvery hotのマテ茶に関連が見られ、very hotが最もリスクの高い飲料と結論されました。

 

2009年に紅茶でも同様の結果が確認されました(BMJ 2009;338: b929.)。

これも比較的小規模な症例対照研究ですが、ぬるい〜温かい紅茶(60℃未満)と比較し、hot tea(60-65℃)は2.1倍、very hot tea(65℃以上)は8.2倍の食道癌リスクが認められました。

さらに、お湯を注いで4分後の紅茶と比較し、2-3分後の紅茶は2.5倍、2分未満は5.4倍の食道癌リスクが認められました。

 

*熱い飲み物は物理的に咽頭〜食道を刺激し、細胞にダメージを与えるので、発がん作用があるのは辻褄が合います。

過去に動物モデルでは、この関連性は明確に示されていました(例えば. Exp Mol Pathol. 2016;100(2):325–331.)。

 

上記の複数のヒトでの研究で「熱い飲み物と食道癌の関係」が確認されたので、熱い飲み物は「発ガン性物質だ」と結論されたのでした。

 

 

どうやって温度を測ったのか?

IARCでは65℃以上の熱い飲み物が発ガン性がある、と警告しています。

これらの根拠となった研究では、どのように温度を測定していたのでしょうか?

 

論文をみると、「普段どれくらいの温度で飲んでいるか:ぬるい、温かい、熱い、超熱い」という4択の質問をして計測したそうです(BMJ 2009;338: b929.)。

→<65℃/65-70℃/70℃以上のお茶を飲ませ、「これはどれくらい熱い?」と聞いて、この4段階の評価が妥当か評価しました。

→合致度はまあまあくらいでした(論文参照)。

 

つまり、WHOの65℃という基準は、だいたいです

「66℃はだめ、64℃はOK」ということでは全然ありません。

熱ければ熱いほどリスクになることは間違いなく、〇〇℃というカットオフを定めることは、あまり科学的ではありません。

 

65℃以下を目安とした、ほどほどの熱さで飲みましょう」ということがWHOのメッセージです。

 

 

私達にとって、良い感じの温度

WHOの発表後も研究は続きます。

2019年には、消費者に最も好まれる温かい飲み物の温度を検証したLiterature reviewが出版されました(J Food Sci. 2019;84(8):2011–2014.)。

この論文では、57.8℃〜71.4℃が好まれる、と結論されました。

「あつっ」となって軽く火傷してしまうのが82℃程度とのことです。

 

スターバックスのbeverage resource manual(ログインが必要)によると、ホットコーヒーは66〜77℃で販売されるそうです。

スタバのコーヒーは割と「あちっ」てなる人が多いと思います。

科学的根拠によると、この熱さはvery hotのため食道癌のリスクが高まる、ということになります。

 

 

でも熱いお茶やコーヒーが好きだ。どうしたらよい?

でも熱いお茶やコーヒーが好きだ。どうしたらよい?

上述の科学的根拠をどう解釈すべきでしょうか。

 

日本人は自販機でHOTをよく飲みますが、あれは「very hot」のレベルです。

これに慣れていると、少し冷めていると物足りなさを感じる人が多いと思います。

けれど本気で食道癌のリスクを減らしたいのであれば、より熱くない形態に慣れるしかありません。

 

発がん性物質というワードに惑わされず、より重要なことにフォーカスしましょう。

食道がん予防には、「より関連性がはっきりしているもの(とくにアルコール度数の高い酒とタバコ)を避け、体に良い食事を取り、運動する」事につきます。

 

変えるのが難しい習慣の中で何を先に変えたほうが良いかと言えば、熱い飲み物よりも「酒タバコ食物運動」なのは間違いありません。

これにより、食道癌だけでなく、あらゆる癌や心血管疾患のリスクをかなり下げることができます。

これらができてその上で、熱い飲み物のリスクを考えれば良いです。

結局、熱い飲み物と関連性が示唆されているのは食道癌だけですし、エビデンスもそこまで強くありません。

 

*食道癌の治療は本当に大変なのでなりたくない疾患であることには間違いありません。

一方「食道癌の発生率がvery hot tea(65℃以上)で8.2倍増える!」といっても、食道癌の発生率自体は非常に低い事は知っておきましょう。

2016年の食道癌罹患は2万6千人(罹患率0.02%)です(厚生労働省)。

→1%の人がなる病気が8倍だと8%の人が罹患する大問題ですが、0.02%の8倍は0.16%です。非喫煙者だったらもっと少ないわけです。

過度に怖がることはありません。

 

 

結論

「飲み物は熱すぎると良くない」事は知っていなければいけません。私達が普段飲む熱さは、食道癌のリスクとなる熱さではあります。

しかし過度に気にするほどの事実でもないでしょう。

喫煙など他の生活習慣を変えることを優先し、気になる方は、普段よりちょっとぬるくした飲み物に慣れていけば良いと思います。

ではまた。

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