Intermittent fasting (間欠的断食)の科学的解説【2020年流行る】

2019年の年末、New England Journal of Medicineという最も権威の高い医学誌に、Intermittent fasting (間欠的断食)のreview articleが掲載されました(N Engl J Med. 2019;381(26):2541–2551.)。Intermittent fastingは近年非常に注目されている食事法で、体重減少や長期的な健康に寄与するものと期待されています。そして、よくある癌患者に対するインチキ医療で、時々癌サイズが縮小したという報告は、一部Intermittent fastingで説明がつきます

この雑誌に掲載されたということは、医学界で最も注目されている方法だということを意味します。学問的にも商業的にも、2020年間違いなく流行ることが見込まれます。

この記事では、Intermittent fastingとは何か、Intermittent fastingの方法と効果について、この論文内容から概説します。この記事を読むことで、Intermittent fastingの基本と最新の知見が得られます。

Intermittent fastingとは何か?

Intermittent fastingとは何か?

間欠的に断食をすることで、細胞のエネルギー源を糖や脂質からケトン体に変えることです。総摂取カロリーを少なくするだけでなく、代謝経路が変わること(metabolic switching)自体が健康に寄与するというのです。背景としては、人間は8-12時間絶食にすると血中ケトン体濃度が上昇し、metabolic switchingが起こることにあります(N Engl J Med. 1970;282(12):668–675.)。定期的にそれくらい長く断食すると、人間の健康状態によい影響をもたらすだろう、ということです。

具体的には、インスリン抵抗性の改善、血圧低下、脂肪減少、運動の健康効果増加などが報告されています。人で試されている方法は3種類あります。

・1日ごとの断食(alternate-day fasting)

・1週間に2日の断食(5:2 intermittent fasting)

・1日の中で時間を決めた断食(daily time-restricted feeding)

これらをどう実践するかは後述します。

Intermittent fastingは、人間本来のあるべき形

今でこそ1日3食が主流ですが、昔はそうでありませんでした。ヒトは狩猟民族で、安定して食物を確保できていませんでした。多くの臓器は、断食に耐えてホメオスタシスを保つことのできるよう設計されているのです。細胞はintermittent fastingに対し、抗酸化作用の発言、DNA復元、蛋白のquality control、オートファジー、炎症反応の沈静化などで反応します。これによりストレスにうまく順応するわけです。

より細かいメカニズムもありますが、大事なのは人間での疫学研究です。いくら良いメカニズムがあっても、疫学研究で証明されなければ意味がありません。人間にはどういう効果があるのでしょうか。

Intermittent fastingの効果

ここに疫学研究による科学的な根拠を紹介します。

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・50人の健康な成人を対象にした研究です(Cell Metab. 2018;27(4):805–815.e4.)。2年間のIntermittent fastingにより、肥満・インスリン抵抗性・脂質異常・高血圧・炎症が改善されました。

・肥満女性100人で単なるカロリー制限とintermittent fastingを比較した試験です。6ヶ月後、体重減少は同程度でしたが、intermittent fasting群でより大きなインスリン抵抗性の改善と胴囲の減少(=腹部脂肪の減少)が得られました(Br J Nutr. 2013;110(8):1534–1547.

・4:3 intermittent fasting(1日断食を1週間に3日)により、境界糖尿病・糖尿病患者のインスリン抵抗性が改善した(=糖尿病のレベルでなくなった)という報告もあります(Cell Metab. 2018;27(6):1212–1221.e3.)。一方、1年のalternate-day fastingでインスリン抵抗性が改善しなかったという報告もあり、さらなる研究が必要です(JAMA Intern Med. 2017;177(7):930–938.)。

高血圧・脂質異常症・糖尿病に対し良い影響が認められることは、その他多くの研究で確かめられています。

・Case seriesでエビデンスレベルは低いですが、神経膠芽腫の患者がintermittent fastingにより癌進展が遅くなり生存率が上昇したという報告があります(Nat Rev Cancer. 2018;18(11):707–719.)。現在、多くのトライアルが進行中です。胡散臭い「代替医療」が一部の癌患者に効果があった理由となるかもしれません。

・高齢者で言語記憶能力、作業記憶が改善しました(Proc Natl Acad Sci U S A. 2009;106(4):1255–1260., CNS Spectr. 2019;1–7.

・その他、認知症、喘息、多発性硬化症、関節リウマチ、外傷による組織破壊を予防・改善させることが期待されています。これらはまだコホート研究では確認されておらず、case seriesや動物実験で示唆されています。

心血管疾患の頻度をみる程、大規模かつ長期間フォローされたランダム化研究は、今の所ありません。が、このNew England Journal of Medicineの論文こそが、「Intermittent fastingの大規模ランダム化試験やりますよ〜〜!」と言っているようなもの(だと思います)。

Intermittent fastingの対象・方法

本質的には、8-12時間以上断食し、metabolic switchingを生じさせることにあります。

今の所、医療としてのIntermittent fastingの対象は、肥満・糖尿病。心血管疾患・癌患者だそうです(N Engl J Med. 1970;282(12):668–675.)。そして、しっかり必要な栄養を食事から摂ることが前提にあります。

本論文では、5:2 intermittent fastingとtime-restricted feedingの具体的な方法が解説されています。

<5:2 intermittent fasting>

1ヶ月目:1週間に1日、カロリー摂取を1000kcalとする

2ヶ月目:1週間に2日、カロリー摂取を1000kcalとする

3ヶ月目:1週間に2日、カロリー摂取を750kcalとする

4ヶ月目:1週間に2日、カロリー摂取を500kcalとする(これがゴール)

<time-restricted feeding>

1ヶ月目:1週間に5日、1日14時間の断食を行う

2ヶ月目:1週間に5日、1日16時間の断食を行う

3ヶ月目:1週間に5日、1日18時間の断食を行う

4ヶ月目:毎日、1日18時間の断食を行う(これがゴール)

※断食のときには、お茶やコーヒーは飲んで良いですが、牛乳はだめです。

論文では医師が行う処方としてのintermittent fastingを念頭に置いていますが、これにならって自分で実践するのもよいと思います。食べるときはしっかり食べて、栄養素不足にならないよう注意しましょう。食事が1日1回か2回になるので、十分な栄養素を自分で摂取できることが前提です。

Intermittent fastingの問題

Intermittent fastingは健康に良いだろうと考えられていますが、実際行うにあたり、いくつか問題点があります。

・先進国においては、どこでも食事が手に入り、しかも企業のマーケティングが激しい為、食べたくなってしまう。fastingを継続することが難しい。

医師がintermittent fastingの効用を知らない。知らないから勧められない。

最初の1ヶ月間は、断食期間がつらい。おなかすいたり集中できなかったりイライラしたりする。ただ、1ヶ月過ぎると問題なくなる(Br J Nutr. 2013;110(8):1534–1547.など)

栄養バランスを考えないと、特定の栄養素不足となるかもしれない。

一人でやるのは、なかなか精神的に難しく、長続きしません。まさに、ビジネス的にも今後の発展が見込まれる領域です。

結論

今後必ず、さらなる(良い)エビデンスが出て来ます。そして最終的にはintermittent fastingが肥満・心血管疾患・癌にとどまらず、全ての生活習慣病に対する一つの治療戦略となるでしょう。

更には、intermittent fastingを補助するデバイス・方法の開発は、企業にとってかなり期待できるものとなるでしょう。

ではまた。

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