「牛乳は骨に良い」の真相

「骨を強くするために、身長を高くするために、牛乳を飲まなくてはいけない。」「最近牛乳を飲んでいない、カルシウム不足だ。」こう思い込んでいませんか?これは、私達の幼少教育に端を発する完全な刷り込みです。これを正しく認識して真実を知ることが大事です。

この記事では、牛乳を始めとする乳製品の真実を追求します。この記事を読むことで、客観的に牛乳やカルシウムと骨の健康について判断できるようになります。牛乳と心臓病や癌との関係は、別記事で説明しています。

2020/1/23大幅に訂正・加筆

「牛乳は骨に良い」の真相

「牛乳は骨に良い」は幻想だと認識しよう

まず最初に言っておきますが、これに関してはまだ全会一致の結論が出ていない領域です。が、今までたくさんの研究が行われ、ある程度の知見は得られています。この記事では、2019年12月時点での科学的根拠とその解釈を紹介していきます。

そもそも、なんで私達は「牛乳は骨に良い」と思っているのでしょうか。思い返すと、「牛乳にはカルシウムがたくさん含まれており、骨はカルシウムでできているから」ではないでしょうか。それは本当だと思いますか・・・?だったら、カルシウムのサプリメントを飲めばよいのでは無いでしょうか。

そして、「骨に良い」って、なんでしょうか?骨がより固くなることでしょうか。もしそうなら、どうやって測るのでしょうか?

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1点目は、本ブログで繰り返し言っている、栄養素の観点で食事の栄養効果を語ってはいけない、という基本事項です。これはとても大事な事項ですので、知らない方がいらっしゃったら、この記事の前に確認ください。2点目は健康の定義の話です。骨に良いとはざっくり2通りの定義方法があり、「骨折が少ないこと」か「骨密度が高いこと」です。後者は、この記事で言及した健康のサロゲートマーカーと言えます。

つまり「牛乳が骨に良いか」という疑問は、「牛乳/カルシウム摂取により、骨折の減少または骨密度の増加につながるか」という事と本質的に同義だと考えられます。まずは、これらの疑問に直接答えた研究を紹介します。

カルシウム源としての牛乳

病気で低カルシウムとなり症状がでることはよくありますが(癌など)、ここでは健康な方について言及します。

どれくらいカルシウムを取れば十分なのでしょうか。実は決定的な見解はありません。最も信頼できそうな推奨は、米国のNIH(アメリカ国立衛生研究所)から出されています(NIH資料)。

・19-50歳は1日1000mg以上

・50歳以上は1日1200mg以上

・妊娠中、母乳育児中の女性は1日1000mg以上

 

これがどれくらいなのでしょう。食品に含まれるカルシウムの量を参考にしてみましょう。概算です。

・牛乳コップ1杯:500mg

・オレンジジュース1杯(カルシウム添加されているもの):350mg

・ヨーグルト1個:300mg

・チーズ1スライス:270mg

・ほうれん草1回分:250mg

・豆腐100g:200mg

 

こんなものです。1日の摂取量は、他全ての乳製品(バターやクリームを含むもの全て、カルシウム添加されているもの全て)が合計されます。パンやケーキやお菓子やシリアルやカレーやアップヌードルやポテトフライ、全てにカルシウムが含まれます。カタカナ表記されているほぼ全てのものが、カルシウムを含んでいます。

つまり「色々な食事はカルシウムを含んでいるが、その中でも牛乳は良いカルシウム源だ」と言えそうです。

牛乳が骨に良いか検証した世界の研究まとめ

牛乳が骨に良いか検証した研究まとめ

・カルシウム摂取と骨折の関連性をみた2015年のメタ解析です(BMJ. 2015;351:h4580.)。とても良い研究なので、少し詳細にみていきます。

1.まず食事由来のカルシウムと骨折について。牛乳と骨折については28個のうち25個の研究で関連性なしとされています。乳製品と骨折については、13個のうち11個の研究で関連性なしとされています。いわゆる統計的な検定はされていませんが、この事実で十分「食事由来のカルシウムと骨折の関連はない」事が示唆されます。

2.カルシウムのサプリと骨折について。サプリはランダム化試験が組めるので、より信頼性の高い根拠となります。この結果はとてもおもしろいです。まず、全体では骨折リスクを11%下げるという結果となっています。が、重要な股関節と腕の骨折に関しては影響ないといいます。様々な方法で、この結果はバイアスがある(positiveな結果が選択されて論文となっている)と判断されました。そして、このメタ解析に含まれている、一番大規模かつ信頼性の高いランダム化試験では、サプリによる骨折予防の効果はありませんでした。更に、このメタ解析に最も影響ある研究(サプリが骨折予防したという結果)は、食事からのカルシウム摂取が少なく血中ビタミンD濃度が低い女性集団を対象としていました(N Engl J Med. 1992; 327(23):1637-42.)。つまり、一般的には骨折予防にカルシウムサプリはあまり効果なく、カルシウム摂取が不足している女性には効果があるかもしれない、と示唆されました。

・2018年の北ヨーロッパを対象としたメタ解析では、乳糖不耐症は骨折リスクと関係ありませんでしたJ Intern Med. 2018;284(3):254–269.)。よって、牛乳摂取と骨折リスクが関係ないことが示唆されました(Mendelian randomizationという研究手法です。追って紹介します)。

・一方、2015年の子供を対象としたメタ解析では、「牛乳摂取は骨折リスクを少し下げるが、食事からのカルシウム摂取は骨折リスクと関係ない」という結果でした(Am J Clin Nutr. 2015;102(5):1182–1195.)。この解析は様々な点でバイアスがかかっていることが考えられ、信頼性が乏しいです。が、一応こういう結果の研究もあることを紹介してみました。

以上まとめると、「牛乳、乳製品、食事からのカルシウム摂取、カルシウムサプリメントが骨によいとは一概には言えない」となります。カルシウム摂取不足の人はカルシウム補給することで、骨に良いかもしれない、とは言えるかもしれません。これが世界の研究結果です。日本ではどうなのでしょうか?

牛乳と骨健康に関する日本の状況・研究

日本のカルシウム摂取状況はどうでしょうか。 平成29年度の国民健康栄養調査を参照します。 この対象集団が一般的な日本人を表しているかは置いておきます。

これによると、日本人成人の平均摂取量は1日509mgとなっています。推奨が1000mgとすると、結構低い!

カルシウム摂取量が少ないと、もちろん骨の健康に悪影響を来します。そして上記のように、牛乳はとても良いカルシウム源です。つまり牛乳の良い影響が期待されます。ここで、日本での研究を見ていきます。

・1500人程度のコホート研究ですが、高齢日本人男性を対象としたものでは、牛乳を多く飲むほど骨密度が高い傾向が得られ、これは牛乳によるカルシウム摂取の影響と考えられました(Osteoporos Int. 2015;26(5):1585–1594.)。

・少数のコホート研究ですが、学校の給食で牛乳を出すと骨の成長に寄与することが示唆されています(J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2016;62(5):303–309.など)。

すごく質の高いエビデンスはありませんが、摂取量が少ない状況を考えると、(牛乳による)カルシウム摂取は意義がありそうでした。

結局、牛乳を飲むべきか飲まないべきか

以上より、「牛乳は骨によい」ということは世界的に科学的根拠に乏しいが、日本においてはカルシウム摂取量が少ないので骨の健康に寄与するかもしれない、と言えそうです。なので日本人は、カルシウムを豊富に含む乳製品を摂取することは、骨の健康のため重要だと考えられます。乳製品の中でも、牛乳は非常に効率よくカルシウム摂取できるため、有用なオプションの一つと考えられます。

一方、牛乳より良さそうなオプションもあります。ヨーグルトです。ヨーグルトは発酵食品であり、発酵食品ならではの健康効果が期待されます。この記事で詳細を説明しています。つまり、骨を強くするため、牛乳でなければいけないわけではありません。

また、「どうやって骨を強くするか」は、カルシウム以外の観点も重要になります。例えば、運動による骨への物理的負荷が非常に有効であることが、過去の研究から示唆されています。これはこの記事で詳細を解説します。

結論

日本人は平均的にカルシウム摂取量が少ないため、カルシウム源として牛乳は有用そうです。一方、牛乳でなければいけない理由は特にありません。

ではまた。

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