ナッツは健康食品として位置づけられることが多いですが、カロリーも高いため、食べすぎは良くないともよく言われます。
実際どれくらい食べた方が良いのでしょうか。
この記事では、ナッツの健康効果について科学的見地から解説します。
「ナッツを食べすぎても大丈夫か」「ピーナッツバターでもOKか」「最高のナッツは何か」といった疑問にも科学的に答えます。
ナッツの科学的な健康効果を知り、食事に積極的に取り入れていきましょう。
*2020/12/17 更新しました。
Contents
ナッツの健康効果を栄養学的に解説!

ナッツは、不飽和脂肪酸を多く含んでいます。(シス)不飽和脂肪酸は、健康に良いことが証明されています(詳細こちら)。
特にクルミはオメガ3脂肪酸を含んでいます。オメガ3脂肪酸は、不飽和脂肪酸の中でも特に健康に良いことが示唆されています。
ナッツは質の良い脂肪源なのです。
この栄養素の観点で、ナッツを摂取する意味があります。
しかし、栄養素=食品ではありません。
良い栄養素を含んでいるから健康に良い、とは一概に言えません(詳細こちら)。これは大事なポイントです。
ナッツの健康効果は、ナッツの摂取量を調べた研究で証明されます。
みていきましょう!
*ピーナッツは正確には「Legume」という分類で「ナッツ」ではありませんが、含まれている成分が似ておりナッツ類として扱われる事が多いので、この記事に含んでいます。実際多くの研究で「木の実(いわゆるナッツ)」とピーナッツを分けて検証しています。
ナッツの健康効果に関する科学的エビデンス
ナッツに関する、最新の疫学研究を紹介していきます。
心血管病
2019年スペインで実施されたメタ解析です(Nutr Rev. 2019;77(10):691–709.)。
19のコホート研究がまとめられています。
それぞれの研究ごとの、「最もナッツを食べている群と最もナッツを食べていない群」を比較しています。
*フォローアップの期間は、4.3年〜28.7年とバラバラです。
結果、ナッツをたくさん食べている人は食べてない人と比べ、
・心血管病発症率が15%低かった
・心血管病で死亡する率は23%低かった
・脳梗塞による死亡率は17%低かった
→GRADEという指標で結果の信頼度で評価すると、「心血管病で死亡する率」は信頼できる結果でした。
他は必ずしも信頼できるとは限らない結果でした。
よってナッツをたくさん食べている人は食べない人と比較し、心血管病で死亡する率は低くなると言えそうです。
癌
2020年にメタ解析がUpdateされました(Adv Nutr. 2020 Dec 11:nmaa152.)。
43の癌発症をみた研究、9の癌死亡をみた研究が含まれています。
全ナッツ、木の実、ピーナッツに分けて、「たくさん食べている人 vs たくさん食べていない人」で検証しています。
結果はこちら:
<癌発症>
全ナッツ
・たくさん食べている人は、たくさん食べていない人に比べ、癌発症が14%リスク低い(p<0.001, I2=58%)
・1日5g摂取量が多いと癌発症が3%低い(p<0.01)
・部位別には、大腸がん、肺がん、膵臓がんの低リスクと関連した
木の実
・癌発症については、たくさん食べているとリスクが13%低い(I2=16%と全ナッツよりよい)
・Dose-dependentな関係性は有意でない
ピーナッツ
・ピーナッツバターは癌発症に関連し無さそう
・ピーナッツは全体でみると関連し無さそうだが、大腸がんはリスク減らすかもしれない
→ただRR 0.58 [0.34, 0.99]とかなり信頼区間が広いので、なんとも言えない
<癌死亡>
全ナッツ
・たくさん食べている人は、たくさん食べていない人に比べ、癌死亡が14%リスク低い(p<0.001, I2=23%)
・1日5g摂取量が多いと癌発症が4%低い(p<0.001)
他
・木の実、ピーナッツも、癌死亡リスク低下と関連した
・しかしピーナッツはDose-dependentに死亡リスクとは関連しなかった
ナッツの総摂取量、特に木の実(ピーナッツ以外のナッツ)の摂取量が多いと、癌リスクが減る可能性が示唆されました。
*ただし全体的にheterogeneityが高く、すごく信頼できるとは言えません。
2型糖尿病
同じ、2015年にアメリカのメイヨークリニックで実施された研究です(Nutr Rev. 2015;73(7):409–425.)。5つの研究が糖尿病についてみています。
結果はリスク比0.98で、糖尿病発生に対して有意な効果はありませんでした。
ナッツ食べすぎは注意か?

ナッツは多くのカロリーを含んでいます。食べすぎると太るのはreasonableの気がします。
でも、ナッツでお腹いっぱいになれば他の食事摂取量も減はずです。
科学的にナッツは肥満に寄与するのでしょうか?
これについては、2020年に55のランダム化研究のメタ解析が出版されています(Adv Nutr. 2020 Sep 18:nmaa113.)
これは信頼性の高いエビデンスで、面白い結果となっております。
結果は以下のようでした。
<〇〇の代わりにナッツ(or コントロール)を食べる、という指示の研究>
・体重は変化なし:-0.01% [-0.11, +0.09], I2=0%
・当然BMIも変化なし
・胴回りも変化なし:+0.01% [-0.11, 0.13], I2=0%
・体脂肪率がやや減少:-0.32% [-0.61, -0.03], I2=35%
*論文では「〇〇の代わりに・・」という指示のないものも見ており、同様の結果です。
ただし、この指示がある研究の方が質が高いです。
これはランダム化研究のメタ解析なので、ナッツ摂取を原因として体重が増える、ということは無いと言えそうです。
なので安心して食べて大丈夫です。
体脂肪率が下がるという結果は面白いですが、5つの研究しか対象となっていないこと、ややheterogeneityがあることから、決定的とは言えません。
最高のナッツとは?
どのナッツが一番健康に良いのでしょうか?
3つ研究を紹介します。
心血管疾患
2017年のハーバードのコホート研究です(J Am Coll Cardiol. 2017;70(20):2519–2532.)。
20万人以上を20年以上フォローした、質のよいコホート。
「ナッツを週2回以上食べる人」と「ナッツをほとんど食べない人」の、心血管疾患罹患リスクを比較しています。
結果、
✔ピーナッツでは13%のリスク低下
✔木の実(いわゆるナッツ)では15%のリスク低下
✔くるみでは19%のリスク低下
→よって、くるみが最高に健康に良いナッツかもしれないと示唆されました。
が、それぞれ直接比較しているわけでないのでわかりません。
血圧
木の実、ピーナッツ、大豆の血圧低下効果を比較した、ランダム化研究のメタ解析です(Am J Clin Nutr. 2015;101(5):966–982.)。
結果、
✔ナッツは糖尿病でない人の収縮期血圧を下げる効果がありました。
✔ピスタチオが特に強い効果が見られました。
ピスタチオが良いのかもしれませんが、
効果といっても血圧3mmHg程度の変化なので、大した影響ではなさそうです。
脂質
色んな種類のナッツの脂肪への影響を比較した、RCTのネットワークメタ解析です(Am J Clin Nutr. 2020 Jan 1;111(1):219-227.)
結果、
✔LDL、総コレステロール、中性脂肪についてピスタチオが最も効果ありでした
→LDLは6.5mg/dl, 中性脂肪は11.5mg/dlの減少でした(コントロールと比較)
✔総コレステロール、中性脂肪についての2番目はくるみでした。
✔LDLについての2番目はアーモンドでした。
✔ヘーゼルナッツはコントロールと比較し中性脂肪を11.5mg/dl増加させる結果となりました
ピスタチオ、くるみ、アーモンドあたりが良いという結果でした。
ヘーゼルナッツはあまり良くなさそう。
*ただしネットワークメタ解析の結果は、基がRCTであっても、RCTとして解釈することはできません。
→つまり決定的とは言えないということです
*****
以上より、くるみやピスタチオがよさそう、と言えそうです。
ピーナッツバターは健康的か?
ナッツは食べないけどピーナッツバターは食べる、という人は結構いるかもしれません。
もしピーナッツバターでナッツが代用できたら、楽ですね。
科学的根拠はあるのでしょうか?
・上述のハーバードの研究によると(J Am Coll Cardiol. 2017;70(20):2519–2532.)、ピーナッツバターの消費は心血管病発生と関係がありませんでした。
・2015年のコホート研究のメタ解析では、ピーナッツバターは死亡率と関係ありませんでした(Int J Epidemiol. 2015;44(3):1038–1049.)。
・癌発症とも関連がありませんでした(Adv Nutr. 2020 Dec 11:nmaa152.)
よって、残念ながら、ピーナッツバターは健康に良いとは言えません。
*欧米では日本のようにピーナッツバターに砂糖が入っておらず、甘くないです。それでこの結果。
日本のピーナッツバターは、砂糖が入っている分より健康によくありませんね(砂糖に関してはこちら)。
結論
ナッツの健康効果はかなりはっきりしています。
食べても、基本的には太ることを気にしなくて良いです。
良いのは木の実(特にくるみやピスタチオ)。ピーナッツは微妙です。
是非おやつにナッツを。
ではまた。