塩分は本当に健康に悪いのか【エビデンス】

「塩分摂りすぎてはいけません」

誰でも知っていますが、降圧薬が発達した現在、本当に健康に悪いのでしょうか。

この記事では、塩分摂取過多が原因と考えられている健康への悪影響を、エビデンスの観点から解説していきます。

後半では、具体的に塩分摂取量を減らす戦略にも言及します。

これを機に「習慣的に摂取している塩分」について、考えてみましょう。

 

 

塩分は本当に健康に悪いのか【エビデンス】

塩分は本当に健康に悪いのか【エビデンス】

一番有名なのは高血圧ですが、高血圧というのは心血管疾患のサロゲートマーカーに過ぎません。

一番重要なのは死亡率、次に心血管疾患や癌の発症です。

 

なお、ナトリウム100mgは、塩250mgに相当します

 

 

血圧

食塩摂取は高血圧の間違いない原因です。

 →2020年のランダム化試験のメタ解析にて、減塩による血圧低下効果は間違いないだろう、とされています(BMJ 2020;368:m315

・2019年のメタ解析では、2.3gのナトリウム(5.75gの食塩、ティースプーン1杯)を減らすことで、収縮期血圧131mmHg以上の人は7.7mmHgの血圧低下、131mmHg以下の人は1.5mmHgの血圧低下が見込まれました(Am J Clin Nutr. 2019;109(5):1273–1278.)。

 

 

死亡・心血管疾患

2021年に発表されたcluster RCTが重要ですN Engl J Med 2021; 385:1067-1077)。

・中国の田舎600の村で行われました

・村ごとに普通の食塩(100% NaCl)か減塩された食塩(75% NaCl + 25% KCl)にランダム化

平均65歳、88%が高血圧持ちで73%が脳卒中の既往

・4.7年フォローされ、脳卒中発症が14%低下、死亡が12%低下した

・有害事象として高カリウム血症は差がなかった

というもの。

 

これは、脳卒中ハイリスクの高齢者+田舎住まいの人にとって、食塩は脳卒中のリスクであることを直接的に示しています

 

*注意点は、中国の田舎はかなり田舎だ、ということ。

日本の田舎とは全然異なり、外食するような店はほとんどありません。よって食塩は自炊に使う食塩からです。

食塩は脳卒中の原因であることは強く示唆しますが、「減塩された食塩を使う」というアプローチが世界中で有用かは??です。

 

 

✅一方、以前の「観察研究のメタ解析」では、食塩摂取が高い群と低い群を比べると、死亡・心筋梗塞等のリスクに有意差は認められませんでしたBMJ. 2013;346:f1326.)。

→なお、脳卒中は、食塩摂取により24%程度リスクが増加しました。

 

✅食塩摂取量を減らすことで血圧が下がっても、(脳卒中を除く)心血管疾患を予防できるかは、実はcontroversialです(Dietary Reference Intakes for Sodium and Potassium 2019)。

→背景には、食塩による悪影響の感受性の高い人と低い人がいることが示唆されています。

 

 

2015年のメタ解析ですが、食塩摂取を5g増やすごとに12%胃癌のリスクが上がるとされています(Eur J Cancer. 2015;51(18):2820–2832.)。

 

大豆製品は概して健康によいのですが、味噌汁だけは1日3回飲むと胃癌の発生率が増えてしまうという日本の報告があります(Sci Rep. 2017;7(1):4048.)。

→理由は、大豆製品の中でも味噌は高い塩分濃度をもつからと考えられます。

→ただ、これを因果関係として捉えるのは難しそうです(ここ参照)。

 

 

その他

✅慢性腎臓病:2014年のメタ解析ですが、食塩11.5g以上とたくさん摂取すると、それ以下と比べ慢性腎臓病のリスクが増加します(Am J Hypertens. 2014;27(10):1277–1284.)。

→しかし、それ以下に関しては明らかな関連性は認められませんでした。

→これも上記同様、食塩への感受性が人によって違うだろうと示唆されています。

 

✅骨粗鬆症:おそらく食事からの塩分摂取量が多いと骨粗鬆症のリスクが上昇します(J Am Coll Nutr. 2018;37(6):522–532.)。

 

 

意外に病気と関連していない!?!?

意外に病気と関連していない!?

 

まとめるとこうなります:

・塩分摂取は高血圧、脳卒中の原因になる

・塩分摂取は胃癌の原因になりそう

・心筋梗塞や死亡の原因となるかは微妙

 

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砂糖赤肉と比較して、塩分と病気の関連性は弱いように思えませんか?

これはひとえに降圧薬のおかげです。

 

世界中で高血圧のスクリーニングがなされるようになり、ふつうに降圧薬が処方されます。

降圧薬には、ARBやACE阻害薬といって腎保護作用をもつものもあります。

→これが著明に心血管疾患や腎疾患罹患リスクを下げているのです。

 

 

では塩分をとっても大丈夫?

大丈夫、とはなりません

次のような理由です。

 

脳卒中リスクが高まります。

 

人によって塩分への感受性が異なります

 →塩分を摂取する人で健康に悪い効果がかなり出やすい人がおそらくいるということです。

 →「誰が・・」とはまだはっきりしていませんが、そのうちわかってくるでしょう。

 

✅塩分摂取量に応じて、(心不全患者での)心臓への負荷は間違いなく変わります。

 →心不全患者の診療をすればわかりますが、経験上、いくら薬を飲んでいても塩分摂取量が増えると心不全で入院するリスクが増えます。

 →なお、2019年のliterature reviewではcontroversialとなっていますが(Am J Med. 2020;133(1):32–38.)、これはあくまで「平均」の話。

 →個別の患者レベルでは、間違いなく塩分摂取が原因で心不全入院をする人がいます。これはエビデンスでは語れない所。

 

降圧薬を一生飲みたいわけないですね。

 

日本人は胃癌が多いので、リスクはできるだけ下げたい所です。

 

ということで、塩分はできるだけ減らしましょう。

 

 

塩分摂取を減らすための基本

塩分摂取を減らすための基本

まず基本事項です!

 

・1日に必要な量は、ナトリウムで500mg(食塩1.25g)です。

・日本人が推奨されている1日量は、男性が食塩8g以下、女性7g以下です。高血圧患者は6g以下(欧米では4g以下)です。

・日本では、年々一人あたりの食塩消費量は減少してきています。

 →今だいたい平均食塩摂取量は1日10gくらいです。

 →しかし、これは世界的にかなり多いレベルです。

・小さい頃からしょっぱい食事に慣れてしまうと、それを変えるのはかなり難しくなってしまいます。

 →小さい頃から、高血圧への道が始まっています。

 

これを基本とし、次から4つの基本戦略を紹介します。

 

 

戦略1:加工食品を避ける

加工食品とは、

加工肉(ハムやソーセージ)、ピザ、クラッカー、チーズ、缶詰め、シリアル、パン、サンドイッチ、お菓子、レストランでの食事など

を指します。

これらは、しょっぱくなくても塩分がたくさん含まれています。

*当然、ソースやドレッシングにも塩分が多量に含まれます。

 

特に、食パンに注意しましょう。

私が普段食べる食パンは、一枚190mgのナトリウム(0.5g弱の食塩)が含まれています。

→3枚食べれば、それだけで1日に必要な食塩量に達してしまいます。

 

加工肉を避けることは非常に理にかなっています。

不健康との関連がかなりはっきりしており、発がん性物質Group1(最も確実)です。

食塩の量も半端ないです。

 

コンビニで弁当を買うときは、少し塩分量を気にしてみましょう。

ポテチを控えましょう。

ビールのおつまみに注意しましょう。

 

 

戦略2:しょっぱいものは、習慣的に食べる量を減らす

つけもの、味噌汁、醤油やソースのことです。

これらは習慣なので、量を減らすことはできないか、考えてみましょう。

 

味噌汁は1杯1.5-2.2gの塩分が含まれます。

醤油の小皿にはだいたい5-10mlの醤油が入ります。

*醤油は15-18%の塩分濃度です(10ml中1.5-1.8gの塩分が入っています)。

 

例えば、お通し出でてくる漬物を食べないようにする。

味噌汁は1日1-2回にしておく。

寿司につける醤油の量を少なめにする、とんかつのソースの量を減らす、餃子の醤油の量を減らす

などなど。

 

これらは習慣です。

変えることができれば、非常に効果的に塩分含有量を減らすことができます。

 

 

戦略3:減塩醤油、減塩味噌を使う

最初に示したランダム化試験は「代替塩分」で、これが有用だったのでした。

減塩醤油や減塩味噌も、塩分量を減らすアプローチとして有用です。

 

減塩醤油は、9%以下(100ml中9g以下)の塩分濃度の醤油に表記されるようです。

味噌の食塩濃度は10-13%で、減塩味噌は8-10%程度のようです。

 

塩分が30%減っても、人間の舌は味の変化を感知できないとも言われています。

個人的にも、減塩醤油を使っても全然問題を感じたことはありません。

 

子供にとっても、幼少期から塩分のすくない食事に慣れたほうが良いです。

濃い食事に慣れてしまうと、将来減塩するのが大変になります。

 

 

戦略4:自炊する

結局自炊がベストです。

できる方は、自分で塩分摂取量をコントロールするのがよいです。

 

自炊に慣れると、レストランでの食事がしょっぱく感じるようになります。

それほど多量な塩が使われています。

 

 

結論

塩分摂取は脳卒中(や胃癌)の原因になる。

降圧薬が非常に優秀なので、しっかり飲めば高血圧による心血管疾患や死亡のリスクは抑えられます。

ただし、それでも減塩は健康のために必須です。日本人は食塩摂取量が多すぎます。

加工食品を避け、しょっぱいものの絶対摂取量を減らし、減塩〇〇を使い、自炊する。

ではまた。

-食事

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