大豆のもつ健康効果は本当に信頼できるか?【科学的根拠】

大豆は健康食品として名高いですが、実際に何の健康に良いのか知っていますか?イソフラボンが活性酸素を抑えるのがいいんだよ、と言う人がいますが、それは「イソフラボンの動物での効果」であり、「大豆の人間に対する効果」とは言えません(栄養素の観点で健康を語ってはいけません)。もしそうだったとしても、活性酸素を抑えたら本当に健康に良いのでしょうか?(健康に良いとは?)ここまで知らないと、大豆による健康は語れません。実際、味噌汁は体に悪いのかもしれないという報告もありますよ。。

この記事では、信頼できる大豆の健康効果をわかりやすく概説します。直感に反することもあります。そして、単に論文の結果を紹介するだけでなく、どう解釈・理解したら良いか、私なりの見解を示します。

豆は健康と誰が言っている

豆は健康と誰が言っている

豆は健康に良いと聞いたことがあるかと思います。が、誰が言っているのでしょう。

Googleで「豆 健康」と調べてみると、面白いことに、上位半分以上が企業のページです。豆を売る企業が、「豆は健康に良い」と言っているのです。当然バイアスがかかっているでしょう。

私達が豆は健康に良いと思っているのは、「親から言われていたから」「豆は野菜だと思っているから」「テレビやネットで豆は健康に良いと見たことがあるから」というような理由がほとんどだと思います。つまり、本当に豆は健康に良いのか、(信頼できるソースを)調べたことがない人がほとんどだと思います。この記事では、ほとんどの方にとって初めての、信頼できる「(現在の所)本当の豆情報」を共有します。

ちなみに、どういうものが信頼できるソースなのか、非常に重要です。例えば、「イソフラボンが活性酸素を抑えるから大豆は健康に良い」というのはナンセンスです。もしそうなら、イソフラボンをサプリとして飲むことで健康効果が認められるはずです(健康効果の定義についてはこちら)。が、例えばランダム化試験のメタ解析で、イソフラボン摂取による脂質のマーカーに対する効果はないだろうとされています(J Clin Lipidol. 2018;12(1):16–24., Br J Nutr. 2015;114(6):831–843.)。イソフラボンの効果=豆の効果、ではありません。食事の健康効果を、栄養素の観点で説明している文章は、このように信頼性が低いと考えられます。

豆の種類をおさらい

豆、といっても色々あります。疫学研究では、豆を大まかに分類して健康効果を検証することが多いです。具体的には、次のような分類です。

・Soy:大豆

・Legume:マメ科の植物

・Nuts:ナッツ

ナッツは別カテゴリーとして検証されます(詳細はこちら)。この記事では、Soy(大豆)の健康効果について紹介します。

大豆の栄養

Soy(大豆)の栄養

大豆はタンパク質源として重要な食べ物です。ビタミン、ミネラル、イソフラボンなど色々他にも含んでいますが、最も重要なのは「植物由来の良いタンパク質」を含んでいる事です。先進国においてタンパク質は量でなく質が重要です(Public Health Nutr. 2016;19(8):1358–1367., JAMA Intern Med. 2019;179(11):1509–1518.詳細はこちら)。

ちなみに栄養素は、その食事の特徴を示す重要な観点ですが、特定の栄養素自体による健康効果を示すことは難しく、ほとんどの栄養素単独では健康効果が得られません(詳細こちら)。

大豆の健康効果

大豆は様々な健康効果が期待できますが、一番大事な健康効果(死亡率の低下)は立証されていません。以下に、最近のメタ解析のエビデンスを紹介します。

<健康効果が期待できるもの>

・痛風のリスクを低下させるかもしれませんが、信頼性は低いです(Asia Pac J Clin Nutr. 2018;27(6):1344–1356.)。

・前立腺癌のリスクは減らすようです(Nutrients. 2018;10(1):40.)。

・2型糖尿病のリスクも減らすかもしれません(Diabetes Res Clin Pract. 2018;137:190–199.)。

・胃癌のリスクを減らすかもしれません(Sci Rep. 2017;7(1):4048.)。が、大豆製品の中でも味噌汁だけは、胃癌のリスクが高くなる事が報告されています(詳細は下に説明します)。

・閉経後の女性に対し、血圧低下効果があるかもしれません(Food Funct. 2017;8(8):2663–2671.)。

・大豆でなく大豆イソフラボンのサプリにより、閉経後のホットフラッシュを抑制する効果があるかもしれません(J Med Food. 2019;22(2):127–139.

<健康効果が期待できないもの>

・死亡率、心血管疾患による死亡率、癌による死亡率は、Soy摂取により抑制されません(Food Funct. 2018;9(5):2576–2588.)。この3つのアウトカムは、健康の定義として最も重要で、これを予防しないということ=強い健康効果は無い、ということです(詳細こちら)。

・心血管疾患、脳卒中、心筋梗塞とも関係がなさそうです(Eur J Prev Cardiol. 2017;24(7):735–747.)。これらも重要なアウトカムです。もし糖尿病予防効果が強ければ、これらの疾患もしっかり予防するはずです。

・閉経後の性機能不全には効果がないようです(Climacteric. 2018;21(5):437–445.)。

・大豆のタンパク質が、その他のタンパク質(乳製品や肉)と比較して、筋トレ後の筋肉量/強度の増加に有利に寄与する、ということはなさそうです(Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2018;28(6):674–685.)。

味噌汁は避けたほうが良いか?

味噌汁は避けたほうが良いか?

Soyと胃癌のメタ解析の中で、特に男性は味噌汁摂取が多いと胃がんリスクが高いという報告がなされています(Sci Rep. 2017;7(1):4048.)。これは、その他の大豆製品が胃癌に対して予防的であることを考えると、驚くべき結果です。本文のDiscussionでは、味噌汁の塩分が胃癌発症に寄与しているかも、と書かれています。が、おそらくこの関連性は因果関係ではなく、交絡が取り切れていない(residual confoundingがある)と考えられます。つまり、味噌汁をたくさん飲むと胃癌のリスクが高まる、というわけではないと思います。2つ理由を考えました

①まず、日本人は胃癌が多く、味噌汁をよく飲みます。よって、日本人の研究はこの関連が強く、他の人種の研究は弱い事が考えられます。メタ解析では研究間のHeterogeneityを考慮しますが、日本人という因子で調整することはできません(それをするには、各研究のオリジナルデータを集める必要があります)。つまり、「日本人である」という強い交絡因子が調整されていません。

②胃癌はほとんどがピロリ菌感染で発症することが分かっています。つまり、胃癌の原因はピロリ菌感染です。そして、ピロリ菌感染の原因が味噌汁摂取であるとは、普通に考えて変です。よく味噌汁を飲む人は、トラディショナルな日本人が多い印象です(農業に従事する比較的高齢男性など)。彼らはピロリ菌感染に関して比較的無頓着と考えられるので、味噌汁とピロリ菌感染の関連性が裏に隠れていると考えられます。

研究手法と背景を知っていると、それがメタ解析であっても、情報が信頼できるか批判的に検討することができます。これが正しいかは検証しようがないですが。メタ解析=絶対に信頼できる情報というわけではない、という視点は重要です(ここに詳細)。

おそらく、味噌汁を飲んでも問題ありません。気になる方は、減塩味噌を使えばOKだと思います。

結論

大豆は、痛風、前立腺癌、胃癌、糖尿病のリスクを減らすかもしれません。が、肝心の死亡率、心血管病による死亡率、癌死亡率には影響しなさそうです。

味噌汁を飲む人は胃癌の発生率が高いですが、おそらく因果関係ではありません。

総じて、大豆はまあまあ健康に良い、ということが言えそうです。

ではまた。

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