野菜が健康に良いことは誰でも知っています。でも中々食べないですよね。
健康な食事を意識するには、まず興味を持つ必要があります。
具体的に野菜の健康効果を知ることで、野菜を食べるモチベーションとなるはずです。
この記事では「野菜がなぜ健康によいと言えるか」、最新の科学的根拠を紹介します。
「にんにくは野菜?」「じゃがいもは?」といった事にもお答えします!
野菜は〇〇の栄養素を含むから健康に良い?

野菜は様々なビタミン、ミネラル、食物繊維が含まれています。トマトが含むリコピン、ニンジンのカロテンなどのファイトケミカルも、体へ良い影響を持つことが示唆されています。
しかし、単一の栄養素では野菜の健康効果を説明しきれません。「野菜は〇〇を含むから健康に良い」というのは、十分な理由になっていません(詳細こちら)。
野菜の効果は、野菜を食べた人と食べていない人を比較する研究から、直接示唆されます。
野菜の持つ健康効果の科学的根拠まとめ
野菜といっても色々ありますが、多くの疫学研究はひっくるめて「野菜」として評価しているものが多いです。また食物繊維源として、果物と併せて評価しているものも多数あります。
では最新の研究を見ていきましょう。
心血管病

Int J Epidemiol. 2017;46(3):1029–1056. Figure4を改変
✔2019年のコホート研究のメタ解析にて、野菜を200g多く食べるごとに、心血管病疾患リスクが10%、脳卒中リスクが13%低いことと関連する、と示唆されました(Int J Epidemiol. 2017;46(3):1029–1056.)。
→この関連性は直線的な関係で(図は心血管疾患リスクとの関連です)、食べれば食べるほどリスクが低い事が示唆されています。
✔2006年のメタ解析ですが、野菜又は果物を1日5回以上食べることで、1日3回以下に人と比べ、脳卒中のリスクが26%低いかもしれません(Lancet 2006 367 (9507), 320-6)。
→1日に食べる回数(serving size)でみても、沢山食べたほうが良いことを示唆しています。
癌

Int J Epidemiol. 2017;46(3):1029–1056. Figure5を改変
✔野菜を200g多く食べるごとに、癌罹患リスクが4%低いことと関連する、報告されています(Int J Epidemiol. 2017;46(3):1029–1056.)。
→心血管病ほど強力な予防効果はありませんが、図のようにほぼ直線的にリスク低下と関連します。
各癌についても紹介します。
・肺癌:喫煙者に限り、野菜を100g多く摂取することで、発症率を3%減らすことができそうです(Nutrients 2019 11 (8))。
・肝臓癌:野菜を100g多く摂取することで、発症率を4%減らすことができそうです(Food Funct 2019 10 (8), 4478-4485)。
→ただし、この効果は特に男性に認められ、女性での影響はそこまで大きくないかもしれません。
・大腸癌:野菜を100g多く摂取することで、発症率を2%減らすことができそうです(Ann Oncol 2017 28 (8), 1788-1802)。
・膵癌は関係なさそうです(Oncotarget 2017 9 (63), 32250-32261)。
◎癌となってからの生存率に関わる事が示されています(Adv Nutr. 2020 Nov 16;11(6):1569-1582.)。
・具体的には、頭頸部癌と卵巣癌患者において、野菜摂取量が多いと、低い死亡リスクに関連しました。
→そして「野菜+フルーツで1日600g程度」まで、増量することによる恩恵があると示されました
*今のガイドラインは合わせて400g(5 servings/day)。
その他
✔炎症性腸疾患:潰瘍性大腸炎、クローン病とも、野菜摂取による予防効果は結構期待できそうです(Adv Nutr. 2020 Nov 13:nmaa145.)。
✔メタボ:2019年のメタ解析では、野菜摂取量に比例したメタボリック症候群の予防効果は認められませんでした(Br J Nutr 2019 1-11)。
→ただし、この解析にはコホート研究も横断研究も含まれており、かつI2という指標で研究の均一性も低いことが示されており、あまり信頼できる結果でなさそうです。
✔うつ病:野菜を100g多く摂取することで、うつ病発症率を3%減らすことができそうです(Br J Nutr 2018 119 (10), 1087-1101)。
✔骨折:1日1回以上野菜を摂取することで骨折を予防できるかもしれませんが、メタ解析の質は低いです(PLoS One 2019 14 (5), e0217223)。
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以上まとめると、野菜は心血管疾患、特定の癌、炎症性腸疾患、うつ病などの予防効果が期待できそう、となります。
フルーツ+野菜で600gくらいまで増やすことにより最大の恩恵が得られるかもしれません。
結構な量!
ガーリックは野菜?
ガーリックはネギとともに、Allium vegetableとカテゴリーされます。
=Vegetableなので、野菜です。
ただ他の葉のものとは栄養素的に違う特徴があるため、Allium vegetableの健康効果として別に研究されることがあります。
✔Allium vegetableの健康効果についてのumbrella reviewを紹介します(Food Sci Nutr 2019 7 (8), 2451-2470)。
・ガーリックを食べることで、胃癌、食道癌、喉頭癌、前立腺癌に予防効果があるかもしれません(信頼性は低いです)。
・ガーリックのサプリメントは、高血圧・脂質異常症・糖尿病の改善に有効かもしれません(信頼性は低いです)。
→用量は600mg~900mg/日を12週間程度です。
信頼性が低いので今後変わるかもしれません。
しかし特段副作用ないし、生化学的には抗癌作用があることが示されています(Semin Cancer Biol. 2020 Dec 7:S1044-579X(20)30259-5.)。
よって、健康志向の方はガーリック食べて悪いことはないでしょう。
私は匂いが苦手であまり食べられません
じゃがいもは野菜でない?
ポテト(じゃがいも)は野菜に分類されません。
ポテトは炭水化物源として、全粒穀物や精製穀物と比較されることもあります。
→ちなみに、炭水化物源の中で最も健康に良いのは全粒穀物とされています。
ポテトに関する研究を紹介します。
✔最新のメタ解析では、ポテトと心臓病・癌による死亡率に有意な関連性は認められませんでした(Crit Rev Food Sci Nutr 2019 1-14)。
✔ポテトを3回/週多く食べるほど、2型糖尿病の発症が3.5%増えるかもしれません(Iran J Public Health 2018 47 (11), 1627-1635)。
✔ポテトフライは一番健康に悪いです。1日150gポテトフライを食べる量が増えると(これは日本人にとってはかなり多い量ですが)、2型糖尿病のリスクが1.66倍、高血圧症のリスクが1.37倍になります(Eur J Nutr 2019 58 (6), 2243-2251)。
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ポテトは野菜でないので、食べなくてよいです。
野菜を食べましょう。
その他重要なトピック
最近の重要な研究を紹介します。
✔野菜を食べたほうがよいのは間違いないので、「野菜を食べるよう行動変容させる介入」に効果があるか、注目されてきています。
・前立腺がんの患者478名を対象としたRCTです(JAMA. 2020 Jan 14;323(2):140-148.)。「電話によるカウンセリング」が介入方法で、前立腺がんの進行を抑制できるかがアウトカム。
→この介入により、コントロールと比較し、野菜摂取量はだいたい0.5 serving/day増えましたが、、
→前立腺がんの進行度合いは全く差がありませんでした(p=0.84)
これは直接的には「野菜を食べるよう行動変容させる介入」に癌抑制効果はない、という結論です。
しかし、そもそも「野菜には癌抑制効果がないかもしれない」ことを示唆します。
結局因果関係はランダム化研究でしか示せず、いくら観察研究で「野菜は低いがんリスクと関連がある!(相関関係)」と言っても、「野菜の摂取量を増やせば癌リスクが減る!(因果関係)」はなかなか言えないのです。
一方RCTにも限界があります。例えば、
・たった一つの因果関係しか言及することはできません。
・野菜の食べる量はランダム化できないので、「カウンセリング」が介入になるのですが、その効果はたかが知れています。
ここに疫学研究の難しさがあります。
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科学的に突き詰めると、このように因果関係は中々言えないのですが、だからといって野菜を食べなくてよい理由には全くなりません。
これはどちらかというと科学や政策の話です。
→具体的には、「政府が野菜を食わせる事業にどれくらい金を使うべきか」等に関連するもの。
個人レベルで考えれば、野菜はどう考えても健康に良いです。
野菜、食いまくりましょう。
結論
野菜は沢山食べればそれだけ健康効果が得られそうです。
ガーリック=野菜、いも≠野菜です。
野菜食おう。
ではまた。