今日からビタミン・ミネラルシリーズが開始です。最初はビタミンA。眼の健康に関係することは広く知られています。
この記事では、ビタミンAの効果、摂取の注意点について、科学的見地から重要な点に絞って解説します。この記事を読むことで、ビタミンAにまつわる様々な疑問がとけ、食事やサプリに関して自分で判断できるようになると思います。
Contents
ビタミンAの効果

摂取不足による害、推奨範囲内で多めに摂る健康効果、過剰摂取による害、と3つに分けて考えましょう。
ビタミンAが欠乏すると・・
夜盲症が有名です。が、日本ではまず見ません。
早産児と嚢胞性線維症患者では注意が必要ですが、ふつう医療機関の介入があります。
発展途上国ではビタミンA欠乏症が問題となっています。
ビタミンAを過剰摂取すると・・
ビタミンA=脂溶性レチノイド(レチノールなど)です。脂溶性なので体内に蓄積するため、過剰症による副作用がでやすいです。
実際、欠乏症より過剰摂取による害の方が多いです。
・吐き気、皮膚乾燥、光線過敏、骨痛など、具合が悪くなります。
・喫煙者は、サプリによる過剰摂取により肺癌のリスクが増えるとされます(Cochrane Database Syst Rev. 2012;10:CD002141.)
ビタミンAを推奨範囲内で多めに摂る健康効果
結論から言うと、ビタミンA摂取による病気の予防効果は、あまりありません。
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・ビタミンAは細胞の色々な活動に必要です(どのビタミンも同じですが)
・ビタミンA摂取量と死亡率・心血管疾患の関連性はありません(Ann Intern Med. 2019;171(3):190–198.)
・ビタミンAによる癌予防効果も立証されていません(US preventive service)。例えば、前立腺癌発症を予防すると報告したランダム化試験もありますが(Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2009;18(8):2202–2206.)、前立腺癌による死亡を予防しない(むしろ増やす)と報告したランダム化試験もあり(Cancer Res. 2009;69(9):3833–3841.)、一貫していません。
・加齢黄斑変性(50歳以上の急激な視力低下)の予防に、ビタミンA前駆体であるルテインとゼアキサンチンは効果があるかもしれません(Arch Ophthalmol. 2001;119(10):1417–1436., JAMA. 2013;309(19):2005–2015.)。βカロテンは効果が認められませんでした。この目的でビタミンA(前駆体)の摂取を検討する場合は、医者の指示の下行います。
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つまり現在の所、自主的に健康のためにビタミンAやβカロテンを+αで摂取する意味はないだろう、ということです。
ビタミンAの摂取量の目安

単位は、‘レチノール活性当量(μg RAE)’です。
全米アカデミー医学研究所が定める1日の推奨摂取量は以下のとおりです(14歳以上)。
男性:900μg RAE
女性:700μg RAE
妊娠期・授乳期は、これよりやや高いです。
摂取上限(これ以上で害を及ぼしうる量)は、男女とも3000μg RAEです。割と幅が狭く設定されています。
ただこんなことを知らなくても、日本ではほとんど問題になっていないわけだから、別に知る必要すらないとも言えます。
日本人は平均摂取量が推奨摂取量より低いですが、そんなの関係なし。欠乏症はほぼ(全く)起きていないのだから。
βカロテンからのビタミンAは過剰にならない
βカロテンからビタミンAは体内で必要な分だけ合成されるので、βカロテンのとりすぎは注意する必要ありません(J Nutr. 2010;140(12):2268S–2285S.)。過剰摂取の問題となるのは、ビタミンAを含むサプリです。
ちなみに、マルチビタミンのサプリが含有するビタミンAの量は減らされているそうです。じゃあなんでビタミンAのサプリ売ってるんだって感じですね。
どうやって食事から摂るか
ビタミンAに関しては、過剰摂取が問題なわけです。なので、その心配のないβカロテンを摂るのが一番よいです。
βカロテンは、人参、かぼちゃ、のり、しそ等に含まれています。100gに10〜40μgRAEくらいです。これらはいくら食べても大丈夫。
ちなみに、レチノールは豚肉、魚介、レバー、うなぎなどに含まれます。だいたい100gに5〜15μgRAEくらいです。他、野菜・果物・赤肉・乳製品・豆など、何でもビタミンAを含みます。たいした量でないので、食事だけで過剰摂取は基本的に心配いりません。
結論
健康な方はビタミンA摂取を意識する必要なし。
気になる方は人参、かぼちゃ、のり、しそを食べればOK。
サプリは飲まないほうが良い。
ではまた。