ビタミンDについてお話します。あまりメジャーなビタミンではないかもしれませんが、実はかなり重要です。多くの人がサプリの摂取を考えるべき、唯一のビタミンとも言えるかもしれません。特に風邪(新型コロナウイルス感染含む)予防に・・。
この記事では、ビタミンD摂取と健康の関連性、サプリの効果、摂取における注意点を、科学的根拠を基に解説します。
これを期にビタミンDについて理解し、適宜サプリを用いて健康効果を享受しましょう。
Contents
ビタミンDの効果

摂取不足による害、推奨範囲内で多めに摂る健康効果、過剰摂取による害、と3つに分けて考えましょう。
ちなみに、単位はIUかμg。1IU=0.025μgです。
摂取不足による害(欠乏症)
ビタミンDはカルシウムと共に骨の代謝に関わるので、摂取不足→欠乏症となると骨の健康に関わります。
✔ビタミンDが足りないと、カルシウムも足りなくなってしまいます(吸収できないため)。
→そのため骨からカルシウムが血中にリリースされてしまい、長期的に骨粗鬆症のリスクが高まります(二次性副甲状腺機能亢進症)。
✔更にビタミンDの不足が顕著となると、もっと骨が悪くなります。
→小児ではくる病、成人では骨軟化症と言われます。骨粗鬆症による骨折リスク増加だけでなく、骨痛や筋肉痛も認められます。
カルシウムについてはこちら。
過剰摂取による害(過剰症)
ビタミンDは脂溶性ビタミンですが、疫学研究によるとそこまで心配いらなそうです。
✔過剰症はサプリによってのみ生じますが、ほとんどの報告は1日10000IU以上の摂取です。4000IUを数年摂取し続けると過剰症となりうるとも言われています(Front Endocrinol (Lausanne). 2018;9:550.)。
※ちなみにほとんどのサプリは1000IU以下です
✔ビタミンD中毒となった場合、高カルシウム血症に準じた症状がでます(食思不振、倦怠感、多尿、重症だと心室性不整脈)。
※カルシウムとビタミンDのサプリを一緒に飲むと、脳梗塞の(Ann Intern Med. 2019;171(3):190–198.)や腎結石(N Engl J Med. 2006;354(7):669–683.)のリスクを上げることが示唆されています。ビタミンDサプリ単独では、あまり報告されていません。
推奨範囲内で多めに摂る健康効果(ここが大事)
様々な健康効果がたくさんの研究で検証されています。まず、2014年のUmbrella review(エビデンスの総まとめ)を紹介します(BMJ. 2014;348:g2035.)。
→Umbrella reviewとは、「あるメタ解析で〇〇と結論された」情報がどれくらい信頼できるか、評価するものです。つまり、2014年時点で最も信頼できる情報です。
※この論文では信頼度合いを「Convincing – Probable – Suggestive – No conclusion – Substantial effect unlikely」と格付けしています。No conclusion以下のものはたくさんあるので、上3つだけ紹介します。
つまり、血中ビタミンDが高い or ビタミンDのサプリを飲んでいることによる、健康への効果についてのまとめです。
<良い影響>
Convincing:なし
Probable:子供の虫歯(減る)、新生児の出生体重(増える)
Suggestive:大腸癌、脊椎骨以外の骨折、心血管疾患、高血圧、脳梗塞、脳卒中(=脳梗塞と脳出血)、認知機能、うつ病、BMI、メタボリック症候群、2型糖尿病、低出生体重児、妊娠糖尿病、骨密度、筋肉量
<悪い影響>
Convincing:なし
Probable:なし
Suggestive:転倒、慢性腎臓病患者の高カルシウム血症
わかりやすいですね。ビタミンDを摂ることで良い健康効果が色々期待されます(後述しますが、最新のエビデンスでは心血管疾患は予防できなそうです)。
この中で、特に重要な骨と筋肉、癌、心血管疾患、あとインフルエンザを取り上げてみます。
ビタミンD摂取と骨・筋肉
これが問題になるのは高齢者、特に閉経後の女性です。なぜなら骨粗鬆症の頻度が多いから。
✔閉経後の女性はビタミンDを欠乏している可能性がとても高く、ビタミンDのサプリによる骨折予防効果がある程度立証されています(Arch Intern Med. 2009;169(6):551–561.)。800IUのサプリ摂取により、骨折のリスクが20%減りました。
※400IUのサプリでは効果がありませんでした。ある程度高濃度のビタミンDでないと効果が期待されないのです。
✔ビタミンDのサプリによる転倒予防効果もあります。健康な高齢者にとって転倒の主要な原因は筋肉量低下が原因と考えるので、ビタミンDは筋肉にも作用するということです。700-1000IUのサプリにより20%程度転倒リスクが減りました。
→この効果も、低用量では認められませんでした。
*Umbrella reviewではSuggestiveのカテゴリーですが、専門家の間ではビタミンDサプリの効果は間違いなくあるだろうと思われています。そのため、骨折リスクの高い人にビタミンDサプリを処方することは、様々なガイドラインで定められています。
*ちなみに、「1年1回高濃度のビタミンDのサプリを摂る」方法だと、逆に骨折と転倒リスクが増えると報告されています(JAMA. 2010;303(18):1815–1822.)。急に血中濃度を上げると、逆に悪いようです。
ビタミンD摂取と癌
日照時間の少ない場所=ビタミンDが合成されにくい場所では、くる病と同様大腸癌も多いという発見から(Ann N Y Acad Sci. 1999;889:107–119.)、様々な疫学研究が行われてきました。
・質の高いランダム化試験は2019年にはじめて出版されました(N Engl J Med 2019;380:33-44.)。
✔これは25000人に2000IUのビタミンDかプラセボを投与する試験(VITAL試験)で、5.3年フォローされています。
✔癌による死亡のハザード比は0.83 (95%CI: 0.67-1.02)でした。有意ではありませんでした。
✔この試験を含めた最新のメタ解析では、ビタミンDのサプリによりがん死亡率が16%低下すると報告しました(BMJ. 2019;366:l4673.)。
このトピックではcontroversialですが、ビタミンDが不足しがちなpopulationでは、サプリにより癌予防効果があるだろうと言えるでしょう。
ビタミンD摂取と心血管疾患
✔上述のVITAL試験(N Engl J Med 2019;380:33-44.)では、明らかな心血管疾患予防効果はみとめられませんでした。
✔VITAL試験を含めたメタ解析でも結果は同様でした(BMJ. 2019;366:l4673.)。
→2014年のUmbrella reviewは心血管疾患予防にsuggestiveでしたが、最新の科学的根拠では、おそらくビタミンDの摂取により心血管疾患の予防はできないと言えそうです。
ビタミンD摂取と風邪(上気道感染)
日本で興味深い研究が行われました(Am J Clin Nutr. 2010;91(5):1255–1260.)。350人くらいの子供に1200IUのビタミンDかプラセボを投与し、冬の4ヶ月でのインフルエンザ発症を比較するというものです。
→結果、ビタミンD投与群ではインフルエンザ罹患リスクが60%以上減りました。驚くべき結果です。
*注)インフルエンザ予防にはインフルエンザワクチンが最も有効です。
以前より、冬にインフルエンザが流行する一つの理由に、日照時間が少ないからビタミンDを血中濃度が下がることが言われていたのでした(Epidemiol Infect. 2006;134(6):1129–1140.)。ビタミンDは(免疫力を上げて)感染予防する効果があるかもしれません。
最近のreview記事ではこんな感じです。
✔25個のランダム化研究のindividual dataのメタ解析という、一番信頼性の高い研究です(Health Technol Assess. 2019;23(2):1–44.)。1万人以上を対象として、ビタミンDサプリvs プラセボで風邪(上気道炎)の罹患率を比較しています。
→全体でのオッズ比は0.88で有意な予防効果がありました
→毎日飲んでいる人でのオッズ比は0.81とより強い予防効果でした。一回高用量服用は効果なし
→ビタミンD血中濃度が低い人は、オッズ比0.30とかなり予防効果ありました
✔ビタミンDは血中濃度が低いと肺炎罹患率が増えるというメタ解析があります(Medicine (Baltimore). 2019;98(38):e17252.)。
信頼性高く、ビタミンDはサプリ摂取により上気道感染が予防できると言えそうです。
その効果は1日1000IU程度を継続的に飲むことで得られ、かつ血中濃度が低い(あまり日を浴びない)人により効果的。
新型コロナウイルスも上気道感染なので、ビタミンDサプリ摂取による予防効果が期待できるかもしれません。
(*新型コロナウイルス特異的な予防効果は実証されていません。出てきたばかりなので当たり前ですが)
ビタミンD、どれくらいどうやって摂取する?
ビタミンDは、1歳以上は600IU以上、70歳以上は800IU以上の摂取が推奨されています。
重要なポイントは次の通り。
・日光(に含まれる紫外線)による自分の皮膚での合成、もしくはサプリからの補給がメイン
・食事からの摂取は、なかなか難しい
逆に言うと、よく外出して日の光を浴びれば、それだけで十分なビタミンDが合成されます。
→日の光を浴びないデスクワークの人、皮膚でのビタミンD合成力が低下している高齢者や黒人、日照時間の短い場所(北緯40度より北など)に住む人は、ビタミンD欠乏の大きなリスクです。
少し詳細なエビデンスを紹介します。
日光
✔日光でどれくらいのビタミンDが合成されるのでしょうか?
→日の光が強い場所で15分くらい全身に日光を浴びると、1000IUのビタミンD摂取くらいの意味合いがあるかもしれません(J Am Acad Dermatol. 2010;62(6):929.e1–929.e9299.)。
✔日光をいくら浴びても、ビタミンD過剰症となることはありません。
→浴びすぎるとビタミンD合成を抑制する物質が合成されます(J Am Acad Dermatol. 2006;54(2):301–317.)。
✔ちなみにSPF10の日焼け止めを塗ると、90%くらいビタミンD合成が低下するといいます(Pediatrics. 2011;127(3):e791–e817.)。
✔ビタミンDとは全く別の観点ですが、紫外線を浴びすぎると皮膚がんの原因となります(J Am Acad Dermatol. 2006;54(2):301–317.)。
日光を浴びれば十分ですが、冬や生活習慣によっては十分な量の合成ができなそうですね。
食事
きのこ、魚介(かつお、いわし、さば、さけ、あんこうなど)、ビタミンD添加食品に含まれます。
→一概には言えませんが、一食50-150IU程度のビタミンDを含有していると思われます。
→なかなか1日600IU摂取することは困難です。
例えば国民健康栄養調査にて、日本人成人の平均摂取量は7.3μg = 292IUと低めです。が、これは食事からの摂取量。よく日光を浴びていれば問題ありません。実際、日本でくる病や骨軟化症をみることはほとんどありません。
摂取源は日光とサプリがメインなのです。
実際どうする?(お勧めサプリ紹介)
食事による摂取は難しいので、あまり考える必要ないです。
まずは定期的な日光浴、それができない人はサプリによる定期的な摂取をおすすめします。
「ビタミンDは脂溶性ビタミンだから副作用が心配で。。」という方は多いと思います。が、そもそも不足している人が多く、過剰摂取による問題はほとんど起きません。しかもサプリの効果は、ある程度高用量(800IU以上)のビタミンDサプリを使わないと認められなかったとする報告が多いのです。
晴れが少ない場所や季節、ずっと屋内で作業している方、高齢者は、ビタミンDのサプリにより健康効果が期待できます。
注意は:一回高用量は効かないこと+カルシウムサプリとの同時摂取は害があるかもしれないこと
日本では1000IU程度のサプリがたくさん販売されています。
例えばこれはGoodです。
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不足しているなと思った方は、1000IU程度のビタミンDサプリを定期的に摂取することで、様々な健康効果(がん予防・感染症予防・骨健康など)が期待できそうです。
結論
ビタミンDは日光かサプリから。
不足している人が多いので、リスクが高いと自己判断したらサプリを飲みましょう。
ではまた。