全粒穀物(茶色)は健康に良く精製穀物(白色)は健康に悪い、とよく言われます。
極端な人は、「白米を食べるなんて砂糖をそのまま食べるようなものだ!」とか発言したりします。
科学的には、実際の健康効果はどれくらい違うのでしょうか?
また、全粒穀物(オーガニック食品等)、どうやって生活に取り入れていくべきか。
この記事では、精製穀物と全粒穀物の健康効果についての科学的根拠を説明し、更にその健康効果を最大化するための方法を提案します。
毎日食べる炭水化物の源です。この際に考え直してみましょう。
精製穀物とは

精製穀物とは、白米、パスタ、(白い)パン、うどん、餅など白い穀物を指します。
茶色の全粒穀物と比較し、精製穀物は血糖値を上げやすく健康に悪い、とよく言われています。
でも、日本人はみんな白米を食べてきて、世界一の長寿を達成しているわけです。精製穀物が健康に悪いと言われても、実感できないのではないでしょうか。
欧米人より日本人の体型は随分スリムです。本当に白米は健康に悪いのか?
全粒穀物(whole grain)とは?

栄養学的に、穀物は「炭水化物源」として考えることが多いです。肉、豆などの「タンパク質源」と区別します。
炭水化物は主食となりますので、食事においてとても大切な要素です。
炭水化物の中でも全粒穀物と精製穀物に分けて解析することが多く、全粒穀物とは、穀物を精製(精白など)していないものを言います。
具体的には、玄米、全粒粉の小麦、そば、オートミールなどを指します。
{POINT}
全粒穀物と精製穀物の違いは、全粒穀物の方が大事な栄養素を色々含んでいることにあります。食物繊維、ビタミン、ミネラルなど。
ざっくり言うと、全粒穀物は色々たくさんよい栄養素を含むので、精製穀物より健康によいとされます。
より詳細なメカニズムは、例えばLDLコレステロールの制御・血糖上昇の抑制・腸内細菌叢の改善などにあると考えられています(Nutr Rev. 2020;78(Suppl 1):13-20.)。
また全粒穀物は、様々な経路を介して炎症を抑制することが健康に良い、ということも示されてきています(Nutr Rev. 2020;78(Suppl 1):21-28.)
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栄養素としては、全粒穀物のほうが、精製穀物より健康に良い。
でも実際どれくらい違うのか?
科学的根拠を見ていきましょう。
全粒穀物・精製穀物の健康効果【エビデンス】
まず、全粒穀物・精製穀物に関する検討を紹介します。
これらの研究は、全粒穀物を食べれば精製穀物の消費量は低いだろう(消費量を置換できる)というのが前提となっています。
✔現時点で最も信頼性が高いものはLancetに2019年に出版されたメタ解析です(Lancet. 2019;393(10170):434–445.)。
・WHO主導の200以上の研究の解析です。
・観察研究のメタ解析によると、全粒穀物摂取が多いことが死亡、心血管疾患、脳卒中、糖尿病、大腸癌の低いリスクと関連した(*観察研究なので因果関係ではないです)
・ランダム化研究のメタ解析結果によると、全粒穀物消費により体重減少、LDLコレステロール低下、収縮期血圧の低下が得られる(*RCTなので因果関係です)
・結論は:精製穀物を全粒穀物に置換することで、公衆衛生的に良い効果が得られるだろう
→これは科学的に非常に強い根拠です。
✔全粒穀物を「精製」すると精製穀物となるのですが、同じ穀物で精製したほうが良いか、しないほうがよいか
→2型糖尿病患者を対象としたあるRCTでは、やはり精製しないほうが血糖や体重のコントロールに寄与するとの報告(Diabetes Care. 2020 Aug;43(8):1717-1723.)
→やはりなるべく精製しないほうがよい。
✔やや古いですが、2016年の全粒穀物に関するメタ解析です(BMJ. 2016;353:i2716.)。
・全粒穀物摂取量を90g/日増やすたび、19%の冠動脈疾患リスク低下、12%の脳卒中リスク低下、15%の癌死亡率低下が得られました。
・だいたい210-225g/日の全粒穀物摂取により、これらの恩恵が得られるかもしれません。
以上のエビデンスより、
・精製穀物を食べるよりは全粒穀物(なるべく精製していない穀物)を食べたほうが健康によい
・精製穀物を全粒穀物に置換することで、糖尿病、高血圧、肥満などの予防を介して、心血管病や死亡率を減らす事が期待される
と言うことができそうです。
米!
次に、白米・玄米に関する研究を紹介します。
・白米と糖尿病についての最新のindividual-level メタ解析です(Diabetes Care. 2020 Nov;43(11):2643-2650.)。
→21国、13万人全体で見た時には、1日450g以上 vs. 150g未満で比較した時に、ハザード比1.2と有意に高リスクでした。
→しかしこの関連性は南アジアで最も強く(HR=1.6)、他の国では弱い or 関連性なしでした。
・日本の大規模コホート研究では、白米の摂取量と死亡率の関連は認められませんでした(Am J Clin Nutr. 2014;100(1):199-207.)。
✔食後血糖上昇効果を検討したランダム化研究も多数あり、そのメタ解析です(Am J Clin Nutr. 2018;108(4):759–774.)。
→玄米は白米と比較し、食後血糖上昇を抑える効果がありそうです。
白米→糖尿病という因果関係には多くの交絡因子があり、簡単には結論付きません。
現時点では:
・食後血糖は白米だと上がりやすい
・糖尿病発症は白米だとリスクが高いかもしれないが、すごく高いわけではなさそう
くらいが言えるかと思います。
全粒穀物を選ぶ注意点

実は、全粒穀物の定義について、大きな問題があります。
全粒穀物に関しては「何が全粒穀物か」というのが、研究間でも一貫していないのです(Adv Nutr. 2020 Oct 17:nmaa122.)。
多くの商品は「全粒穀物○% + 精製穀物□%」というものです。
国の基準をみてみると、「51%以上が全粒穀物のもの」としているものが多いですが、全然一貫性がありません(Nutr Rev. 2020;78(Suppl 1):98-106.)
全粒穀物が良いことが分かっても、正しく選ぶのが難しいという問題があるのです。
では実際、どのように全粒穀物を選べば良いのでしょうか?
スーパーに行けば、玄米、オートミール、胚芽パン、など色々みられ、それらは全粒穀物を含むものです。
でも何%が全粒穀物はわからない。
頑張って調べればわかるかもしれませんが、中々そんな努力、できないですよね。
お勧めは、「まず全粒穀物を食べる習慣を作る」事です。
何%とか考えなくて良いです。
そもそも、疫学研究(の観察研究)は「1年間平均して週何回以上(全粒穀物を)食べているか」というアンケート調査を基にしたものが多いです。
ここには一定の曖昧さがあります。
よって、厳密に○%というより、「1年間平均して週何回以上食べているか」という質問に、毎日!とか1日2回!とか答えられるようにする事が大事だと思います。
そもそも食事の健康への効果はそこまで強力なものでないので、それを習慣化してずっと食べ続けないと意味ありません。
如何に習慣化するか=自分の好みに合う形で全粒穀物を普段の生活に入れていくか。
これが課題です。
白米でなく玄米を食べるべきか
そこでお勧めは、普段自炊する米を玄米にしてみることです。
最初から100%玄米だと慣れないかもしれないので、50%玄米50%白米でも良いです。
*もし外食するときは、玄米や雑穀米のオプションがあったら、必ずそちらを選ぶ、と決めるのが良いと思われます。
白米が砂糖と同じ!というのは明らかに言い過ぎだし、一方玄米にしても意味ない!というのも言い過ぎです。
精製穀物を減らして全粒穀物を増やし、それを継続できれば、ある程度の健康効果は見込まれます。
繰り返しますが、重要なのは継続する事=習慣化すること、です。
自分ならどう習慣化できるか、考えてみて下さい(私は上の方法でうまくいきました)。
玄米、食べてみれば美味しいですよ。
今や自分は、玄米の方が美味しいと感じることが多いです。白米だとtoo much感があります。
時々食べるお寿司は断然白米が良い。でも時々ですよね。
平均して毎日食べるもの=自分の健康を規定する食事、を是非見直してみて下さい。
結論
白米が超悪いというエビデンスはないが、なるべく全粒穀物を食べたほうが良いのも事実。
全粒穀物は好みで選んで継続的に食べましょう。
ではまた。