疫学とは?統計学との違いは?臨床研究との関連は??

疫学ってなんなんでしょう?

ヒトの研究(例えば臨床研究)に触れたことのある方はわかりますが、統計学の知識を多用します。

疫学と統計学の違いは何なのでしょう?

また、疫学者(Epidemiologist)とは何をする仕事なのでしょうか?

この記事では、「疫学とは何か」を考え、疫学者という仕事を紹介したいと思います。

 

 

疫学とは?

疫学とは?自分の経歴を紹介する

いきなりですが。

日本疫学会は、疫学とは

「明確に規定された人間集団の中で出現する健康関連のいろいろな事象の頻度と分布およびそれらに影響を与える要因を明らかにして、健康関連の諸問題に対する有効な対策樹立に役立てるための科学」

と定義しています。

ちょっと難しそうですね。。

 

私が疫学を志したきっかけは、医者として臨床をしながら研究(臨床研究)をやっていたことでした。

医者が行う研究には2種類あり、

・基礎研究

・臨床研究

と大別されます。

 

基礎研究とは、いわゆる研究室で試験管をふったり動物実験をしたりして、「生理学・分子生物学的なメカニズム」をつきつめたり、新薬を作成したりするもの。

日本は歴史的に基礎研究に強く、多くの医学部の教授が基礎研究者だったりします。

一方、臨床研究とは、「患者のデータ」を使った、より実践的な研究を指します。

大きな目的は、臨床のプラクティスをより良いものとすること。

*後述しますが、臨床研究は疫学研究の一つです。

 

自分は治療より予防に関心があり、それは疫学だ!と思って大学院に進みました。

しかし、そもそも「疫学とはなにか」、学んでいくほどわからなくなりました。

生物統計学とも似ていると思う方も多くいます。

このコラムを読んで、違いをはっきりさせて頂ければ嬉しいです。

 

おそらくこれが「疫学」

いきなり結論ですが、自分はこう考えています:

 

疫学とは、健康に関する命題について、

・因果推論(原因と結果の関係を推論する)

・予測(機械学習を用いた予測モデルを構築して精度高く予測する)

・Description(今どういう状況か定量的に描く)

のいずれかの手法で推論するもの。

 

少し説明を追加します。

 

まず、臨床研究は疫学研究の一部です。

「患者を対象としている」点のみ異なります。

他の疫学研究は、

・環境の因子を考える

・社会因子を考える

・栄養の因子を考える

など「推論したい因果関係の組み合わせ」に基づき、色々あります。

 

つまり、ほとんどの臨床研究と疫学研究は因果推論です因果関係と相関関係の違いはこちら)。

コホート研究もランダム化試験も(研究デザインについてはこちら)。

あまり意識していなくとも、例えば多変量解析をしているものは、根本には因果推論が目的にあります。

*臨床医として臨床研究をしていた頃は、はっきりわかっていませんでした。

勉強すると非常に奥が深いのですが、あまり知らなくても論文は書けるのです。

 

予測はエンジニアの方が得意とする分野ですが、一部の臨床研究や疫学研究でも予測は重要になってきています。

疫学がカバーするのは、健康に関する命題。

なお、予測となると「医学・疫学に特殊な前提知識」があまり必要なくなるケースが多く、その場合分野外の方が参入することがあります。

 *予測の詳細な説明はこちら

なお、多くの(classicalな)疫学者は予測が不得手です。

 

Descriptiveな研究は、いわゆる疫学のイメージされる研究です。

「昨年何人の COVID-19患者がいたか」

「死亡率はどれくらいか」

などなど。

でも実は、これはそこまでメジャーな研究手法でありません(大事ですが)。

 

*疫学研究の参入障壁は、その方法論ではなく、医学的なbackgroundです。間違いなく。

医者が臨床研究をやる際、その研究が必要な理由は明らかですが、それは臨床をやらないと中々わからない。

さらに、評価基準も「臨床上の有用性」であり、方法論は二の次です。

一方、特に因果推論の理論の進展に伴い、方法論が複雑化してきており、これも専門的に習わずして習得が難しくなっています。

 

 

(生物)統計学との違いは?

統計学は因果推論や予測の基礎になります。

疫学とはなにが違うのでしょう?

 

疫学者の興味は「健康に関する科学的な命題」に答えることにあります。

ただし、その手段は統計手法であり、その理論的背景は統計学者が詳しい。

結果、仕事の内容はこんな感じに分かれます:

✅コホート研究やランダム化試験のデザインをして、金を集め、人を巻き込んで実施して、データを解析して論文を書くのが疫学者

✅因果推論や予測に関する新しい方法論の開発、解析の最適化、時に予測の実装を担うのが統計学者

*ただ、理論疫学者だったり、applicationに興味のある統計学者がいて、その境界は不明瞭です。

 

 

キャリアパスの違い

キャリアは学部によってかなり異なります。

 

自分が所属する大学院の博士課程に限った話ですが、

✅疫学の博士は、基本的にアカデミアに残る人が多いです(国は問わず)

→製薬会社、(特に製薬に関わる)コンサルティング会社への就職もあります

✅統計学の博士は、就職する人の方が多い印象です

→人気なのは大手IT企業(GAFAなど)

→当然アカデミアに残る人もいます

 

疫学者がアカデミアに残るのは、医学・疫学系に研究費が集まることが一つの原因かと思われます。

理論の研究一本で食っていくのは、名だたる大学卒だとしても、なかなか難しいのかもしれません。

ただ、統計学は非常に汎用性が高く、どの企業も欲しがるので、かなり良い給料が見込まれます。

 

 

疫学のキャリアパスは日本ではマイナーだが・・・・

はっきりいって、疫学者を目指す人は、日本ではマイナーだと思います。

それは歴史的に日本が疫学を軽視してきたことと関連があるでしょう。

ただし、世界では疫学並びに臨床研究は、基礎研究と同様もしくはそれ以上に重視されています。

 

特に臨床経験のある方、疫学研究の方法論をしっかり学べば(博士課程レベルで)、かなり強いです。

是非選択肢にどうぞ。

 

*公衆衛生修士(MPH)でも疫学研究の基礎は学べますが、専門家と名乗れるレベルに到達するには、なかなか難しいかもしれません。

特に、最近MPHが流行ってきているので、差別化にも繋がりにくくなってきています。

目指される方は注意ください

 

 

結論

疫学=因果推論、予測、Descriptive。

面白いので是非選択肢にどうぞ。

ではまた。

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