疫学とは?統計学との違いは?

疫学ってなんなんでしょう?

ヒトの研究に触れたことのある方はわかりますが、統計学の知識を多用します。疫学と統計学の違いは何なのでしょう?

また、疫学者(Epidemiologist)とは何をする仕事なのでしょうか?

この記事では、自分の経歴を紹介しつつ、「疫学とは?」という根本的な疑問に答えてみます。

 

疫学とは?自分の経歴を紹介する

疫学とは?自分の経歴を紹介する

日本疫学会は、疫学とは「明確に規定された人間集団の中で出現する健康関連のいろいろな事象の頻度と分布およびそれらに影響を与える要因を明らかにして、健康関連の諸問題に対する有効な対策樹立に役立てるための科学」と定義しています。

学生の頃はそういう感じなんだろうな、と思う程度で、全然興味がありませんでした。

 

医者になって、臨床をしながら研究をやろうと思うと、臨床研究に手を出すこととなります。

臨床研究は基礎研究と異なり、カルテや画像データを使って、臨床に意味のあることを定量的(統計的)に示すものです。

私はこれが面白くてのめり込みました。

 

10個くらい論文を書き、段々パターンが分かってきましたが、同時に統計手法や理論背景をよく知らずして応用が効かないことに限界も感じてきました。

また、病院の患者データでの解析だけでなく、健常者を対象とした一次予防に興味が出てきました。

調べると、自分の興味は「疫学」なのかもしれない・・・。

 

そのような理由でハーバード公衆衛生大学院の疫学修士コースに留学を決めました。

医者留学でよくあるのはMPHといって公衆衛生修士のコースですが、私は疫学修士(MSc)コースにしました。

行く前ははっきりと違いを分かっていませんでしたが、MPHは色々な必要科目があり、MScは疫学と生物統計のみを重点的に学ぶものでした。

 

疫学と統計はどう異なるのか。

中心極限定理、相関、回帰、生存分析など基本的なことは疫学でも統計でも必須です。

それ以上となると、ハーバードの疫学は因果推論に重点が置かれており、学んでいくうちに「疫学って因果推論のことなのか」と思ってきます。

統計は機械学習と相性がよく、学んでいくうちに「統計って(機械学習を用いた)予測モデルのことなのか」と思ってきます。

こうして段々よくわからなくなっていきました。

 

 

疫学者とは?

日本で疫学者はあまりメジャーな職種ではないと思います(疫学者の方すみません)。

疫学者は、水質汚濁を測定したり、喫煙者が何%いるか計算しているイメージがあるかもしれません。

もしくは国境なき医師団とかで感染症制御に従事している印象があるかもしれません。

 

欧米で疫学者(Epidemiologist)は非常に多方面で活躍しています。

例えば今私が所属しているBrigham and Women’s Hospitalの予防医学科では、Facultyの役職はEpidemiologistがほとんどで、一部StatisticianやClinician(医師)がいます。

FDAやNIHという国の研究機関にもEpidemiologistは必須だし、製薬会社にもEpidemiologistが必ずいます(よくヘッドハンターからオファーを受けます)。

 

Epidemiologistは具体的に何をしているのでしょうか。

 

 

私の考える疫学の定義

疫学とは何か、私の解釈は以下のとおりです。

 

疫学とは、健康に関する命題について、

・因果推論(原因と結果の関係を推論する)

・予測(機械学習を用いた予測モデルを構築して精度高く予測する)

・Description(今どういう状況か定量的に描く)

のいずれかの手法で推論するもの。

 

少し説明を追加します。

 

ほとんどの臨床研究と疫学研究は因果推論です。

コホート研究もランダム化試験も。

あまり意識していなくとも、例えば多変量解析をしているものは、根本には因果推論が目的にあります。

臨床医として臨床研究をしていた頃は、はっきりわかっていませんでした。

勉強すると非常に奥が深いのですが、あまり知らなくても論文は書けるのです。

 

予測はエンジニアの方が得意とする分野ですが、一部の臨床研究や疫学研究でも予測は重要になってきています。

予測と因果推論の違いについては別記事で解説します。

多くの疫学者は予測が不得手です。

 

Descriptiveな研究は、いわゆる疫学のイメージされる研究です。

でもこれはそこまでメジャーな研究手法でありません(大事ですが)。

 

 

統計学との違いは?

統計学は因果推論や予測の基礎になります。

なにが違うのか。

 

統計モデルを使った解析は疫学者であればできるので、統計学者は因果推論や予測に関する新しいモデルの開発を担っている印象があります。

コホート研究やランダム化試験のデザインをして、金を集め、人を巻き込んで実施して、データを解析して論文を書くのが疫学者の仕事。

統計学者は疫学者のコンサルタントとなったり、シミュレーションを行ってモデルの妥当性を検証したりモデルを作ったりします。

 

例えば、ハーバードの統計学博士課程からGoogleやAppleに就職するのはよくあるキャリアです。

疫学博士課程からIT企業への就職は稀で、だいたいアカデミアに残って教授職を目指すか、コンサルティング会社・製薬企業に行きます。

 

 

結論

疫学=因果推論、予測、Descriptive。

面白いので是非選択肢にどうぞ。

ではまた。

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