肉が体に悪い、野菜が体にいいとか、
サプリはあんまり意味がないとか。
このブログで色々と紹介していますが、それら全てが疫学研究に基づいています。
でも、具体的にはどうやって「食事」を評価しているのでしょう?
この記事では、「研究の食事評価法」をざっくり簡単に紹介してみます。
Contents
食事とか栄養ってどうやって測定するの?
この記事で解説しているように、エビデンスと言われるものは
· ランダム科試験
· 観察研究(コホート研究がメイン)
をベースにします。
この記事では観察研究についてみていきます(食事をランダム化するのは難しいのでした)。
観察研究というのは、ざっくりと:
· 食事の情報をとる
· 交絡因子の情報をとる
· フォローアップして、疾患が発生するかみる
· 統計モデルで、「交絡因子で調整した上で、食事の情報は疾患発生と関連するか」評価する
という流れです。
さて、ここでの問題は、
どうやって食事の情報をとるか。
これが根本の根本です。
しかし、実は「これやれば完璧や」という方法はありません。
主たるものを3つほど紹介します。
Food Frequency Questionnaire(FFQ)
一番よく使われるのが、いわゆる質問票=アンケート。
略してFFQと言われます。
このアンケート、何でもいいわけではもちろんありません。
基本的には
「1年間平均して〇〇を週何回くらい食べましたか」
という項目を、たくさんマークシート方式で答えるというもの。
内容は、栄養学者が考えて考え抜いたアンケートを使う必要があります。
当然国や文化ごとに食習慣は異なるので、このアンケートを作成→立証するというのも、栄養疫学では大きな研究テーマとなります。
<重要ポイント>
質問項目は、当然食事の内容です。
サプリの服用の項目はありますが、栄養素の項目はありません。
1日カリウムをどれくらいとってるか?なんて誰も答えられませんよね。
でも研究では「栄養素」の評価も必要。。。
どうしているかというと、
FFQで評価した食事内容を栄養素に変換する式を使うのです!
この式は、研究室で、それぞれの食物が含む栄養素を解析して作ったもの。
有名なのはハーバードのものがあります(Harvard Food Composition Database)。
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さて、このFFQ、想像の通り一番簡単な方法で、何万人にも一気に行える、研究向きのもの。
ですので一番よく使われますが、ポイントがいくつかあります。
これらを知っていると、エビデンスの理解がより深まります。
強みと弱みにわけてみていきましょう。
<強み>
✅研究参加者にとって簡単(マークつけるだけ)
✅コスト低い
✅「1年の平均摂取量」が推定される
→これは大事。健康に関連するのは「今日の食事」でなく「平均してどんな食生活か=食習慣」です
<弱み>
✅ざっくりしすぎているので、「絶対的な摂取量」としては使えない
→他人と比較した「相対的な評価」として使います
→つまり、FFQで「あなたの塩分摂取量は1日平均6gでした」と計算されても、その6gは真実を反映していないということ。
→8g摂取の人と比較して摂取量は少ない(だろう)という示唆です。
✅その質問票があなたの食習慣を反映しないかもしれない!!
→アメリカのFFQには「納豆」「味噌汁」という項目がない!
→文化ごとに作る必要がある
✅ものによっては正確さに欠ける
→結局「だいたいの食習慣」がわかればよく、それはFFQがうまく機能するのですが、
→例えば「塩分」なんかは、実際とかなり誤差があることが有名です
✅最近の食習慣によるバイアス
→知りたいのは過去1年間の習慣ですが、1年前の食事なんてあまり覚えてませんよね
→例えば、ここ1ヶ月健康的な食事をしていると、それとして報告してしまいがちです
✅誤差がランダムでない可能性がある
→例えば「味噌汁」という項目のないFFQに日本人が答えたとします
→すると、日本人の「塩分摂取量」は、味噌汁摂取具合によって過小評価されます
→この誤差はランダムではありません
→この誤差を補正する方法がありません
*研究者用語で、「differential measurement error」といいます。
ざっくりまとめれば、「FFQは簡単でコストが低いが、ざっくりしすぎている」ということです。
7-day diet record (7DDR)
これはかなりきついやつです。
何か食べる/飲むたびに、「どういう調理法でつくられた」「何を」「どれくらい」食べたか、逐一記録します。
だいたい3-7日を2セットおこないます。
想像すればわかりますが、
·ちょっとコーヒーのんだ
·昼飯は色々ついてるセットだった
とか、、、かなりキツいことが容易に想像されますね。。
なんでまあこんなキツいことをやるかというと、これが一応「一番正確に食習慣を反映する」とされているからです。
強みと弱みをみていきましょう。
<強み>
✅定量的に食事、栄養素の摂取量が測定できる
→絶対評価として使える、ということです
✅記憶力が関係ない(その場で記録するから)
✅特に文化背景が異なる集団を調査するときに便利
→ある文化圏でしか食べられないものも含め、網羅的に情報をとれる
<弱み>
✅かなりキツい
→参加者のトレーニングが必要だし、モチベーションが高い人しかできない
✅日に日に疲れてくるので、7日が限界
✅記録するのが面倒で、普段の食習慣を反映しないかも
✅参加者の記録から摂取量を復元する作業が大変
以上から、7DDRは、
基本的には一番正確に反映するが、コストが高い+数日の調査が限界
という感じです。
思い出し法(24-hour recall)
最後に思い出し法。
昨日1日で食べたものを、翌朝インタビューで記録する、というもの。
1日の食事しか計測できない難点がありますが、これもよく使われます。
<強み>
✅低コスト
✅簡単
✅参加者が答えてくれやすい
✅詳細な食習慣を聞ける
✅この調査のために食習慣を変えるリスクが少ない
✅絶対量として調査できる
✅文化が異なっても使える
<弱み>
✅インタビュアーのトレーニングが必要
→中立的(主観を排除)で、文化背景をよく知っている必要がある
✅記憶力に依存する(特に摂取量)
✅食習慣を反映させるには、何回も行う必要がある
ざっくり言えば、体制を整えれば良い方法だが、食習慣を反映させるために何回も繰り返し行う必要ある、といった所でしょう。
まとめ
以上、FFQ, 7DDR, 24h recallを紹介しました。
とは言っても、やっぱりコストは重要な側面なので、ほとんどの研究はFFQをベースにしているのが現状です。
でもFFQは「ざっくり」なんですよ、という認識があるとgood。
ではまた。