ヘルスリテラシーとは?身につけるには?

現代、様々な健康(を謳う)情報が氾濫しています。時々ニュースになりますが、「トンデモ医療」に騙される方は、医療の宣伝方法がアップデートされるにつれ(SNSなど)、年々増えている印象です。怪しい情報を看破し、医学の恩恵を受けるためには「ヘルスリテラシー」が欠かせません。ヘルスリテラシーは、情報社会を生きていくために必須のスキルです。

この記事では、ヘルスリテラシーとは何か、どうすれば身につけることができるか説明します。

このブログは、読者の方のヘルスリテラシーを高めることを一番の目的としています。

 

 

ヘルスリテラシーとは

ヘルスリテラシーとは

 

リテラシーは「読み書きの能力」という意味から派生し、金融リテラシー、ITリテラシーなど〇〇リテラシーとしてよく使われます。〇〇のことが最低限わかっていること、という意味です。

ヘルスリテラシーは、健康に関する情報が最低限わかっている状態を指します。

今の時代、金融リテラシーやITリテラシーと並ぶ必須の能力です。

 

実はヘルスリテラシーは社会行動学的に様々研究されています。

アメリカのCDCでは以下のように定義しています(参照)。

<医療情報、サービスを受ける側のヘルスリテラシー>

・情報とサービスを見つけられる

・自身のニーズや嗜好を伝えられる。情報やサービスに反応できる

・その情報やサービスの意味を理解し有用性を評価できる

・その情報やサービスの背景、その選択についてやどういう結果が生じうるか、理解できる

・どの情報とサービスが自分のニーズや嗜好にマッチするのか決め、行動に移せる

<医療情報、サービスを提供する側のヘルスリテラシー>

・人々が情報とサービスを見つけられるよう助ける事ができる

・健康、ヘルスケアについて対話できる

・人々が表立って何を求めているか、心の中では何を求めているか、理解することができる

・有用な情報やサービスをどう提供できるか理解している

・人それぞれの状況で、どの情報やサービスが適切か決められ、行動に移せる

 

すなわち、ヘルスリテラシーとは「人々が適切な医療情報を理解し、医療サービスを受けるために必須のスキル」とされています。

インターネットの普及とともに、最初の「情報を見つける」事はできても「情報に反応し」「評価する」事が難しくなってきています。さらに悪いことに、ヘルスリテラシーを身に着けていない医療者が増えてきています(顕在化してきています)。

大変ですが、非医療者個人が自らの努力でヘルスリテラシーを向上させる必要があるのです。

 

 

ヘルスリテラシーを身につけている方は圧倒的に少ない

やや古いですが、2006年ではアメリカ成人の12%しか十分なヘルスリテラシーを持っていないと報告されています(JAMA. 2015;314(12):1225-6.)。

日本に関して調べた研究は見つけられませんでしたが、そこまで多くないと思います。

 

日本の現状・特徴は以下の通り。

✔日本の場合、医療サービスの内容が実質的に医師によって決められる場合が多いです。医師が高い権威を持っているのも背景にありますが、非医療従事者が十分なヘルスリテラシーを持ってないことも影響しています。

✔その医師が十分なヘルスリテラシーを持っていればよいのですが、残念ながらそうでない場合もあります。特に自由診療にはかなり気をつけた方が良いです。

✔食事・ダイエット・運動・瞑想などの健康法についても、たくさんの根拠ない情報が出回っています。

 

医療の利益を最大限に享受するために、一人ひとりがヘルスリテラシーを獲得することが重要なのです。

 

 

ヘルスリテラシーを身につけるには

一方、非医療従事者が医療のことを理解するのは、極めて難しくなってきています。

ヘルスリテラシーを獲得する方法は、この通り。

・最も信頼性の高い一つの方法は、その分野を専門にしている、信頼できる医師・専門家に聞くことです。

→誰しもできるわけではありません。

(Twitterはかなり使えます)

→自分の専門以外はあまり知らないことにも注意(それを専門とする医者の友達に聞くことはできます)。

 

どういう情報が信頼できるが、判断できるようになることが重要です。

→信頼できる情報は、「質の高い科学的根拠のある情報」だと考えられます。エビデンスは科学論文で検証され、その質も基準があります(詳細はこちら)。自分で情報を収集・判断できれば文句なしです。

→自分で情報収集できずとも、判断さえできれば最低限OKです。ほとんどのインターネットの情報は信頼できる情報ではありません。

→その上で、一次情報をわかりやすく公開しているソース(例えばこのブログ)を抑えておけば十分です。

 

次に、誤っている(正しいと言えない)健康情報、正しい健康情報の例を出します。

どのような表現が正しいと言えるか知り、情報を判断する参考としてください。

 

 

誤っている健康情報の例

誤っている健康情報の例

 

食事に関して、栄養素の観点で健康影響を判断している文章は怪しいです(詳細ここ)。

 

「ナッツはカロリーが高いから食べすぎないほうが良い」

太ることを気にしていますが、ナッツを食べることで他の食事量が減る影響を考慮していません。ナッツを多く食べる人は肥満が少ないという報告もあります(Am J Clin Nutr. 2013;97(6):1346–1355.)。一方、なんでも「食べすぎない方が良い」というのは当然そうです。ナッツに関しては詳細をここで解説しています。

 

「コーヒーは抗酸化作用があるから健康に良い」

抗酸化作用は健康に良さそうですが、それを証明することは非常に困難です。抗酸化作用を持つ薬剤とプラセボを用いたランダム化試験が必要となります。ビタミンEは強い抗酸化作用を持つので様々に検討されてきましたが、結果明らかな健康効果はなさそうです(詳細こちら)。コーヒーの健康への効果は、‘コーヒーを暴露因子とした’コホート研究で証明されています(例えばCirculation. 2014;129(6):643–659.)。コーヒーの詳細はこちら

 

・同様に、薬の効果を薬理学的に解説しているのも、それで健康に良いとは到底言えません。それを確かめるために臨床試験があります。薬理学的に良さそうと思われる薬剤は多量に開発され、臨床試験まで到達するのはごくわずか。すなわち、全ての薬は「健康に良さそう」と思われる機序を持っているわけです。しかし臨床試験で「効果がない」と判断され、販売に至らない薬がほとんどです。

 

※実は販売されているものでも、エビデンスに裏打ちされていないものがかなり多く存在します。例えば「風邪の鼻水に対する抗ヒスタミン剤」。抗ヒスタミン剤は花粉症に使われる、アレルギー性鼻炎に効果がある薬です。メカニズム的には効きそうですが、これは2016年のメタ解析で、風邪に対する効果はほとんどないだろうとされています(Cochrane Database Syst Rev. 2016;10(10):CD009612.)。しかし、風邪診療のエビデンスを十分に調べている医者は少なく、ルーチンに処方される(意味のない)薬となっています。

 

 

正しい健康情報の例

例えばこういう記述は信頼性が高いです。

・「ビタミンDをサプリとして利用することは、最近の大規模ランダム化試験で癌発症率が下がることが示されなかったので(N Engl J Med 2019;380:33-44.)、推奨されない」

…実はその後のメタ解析では効果がありそうだ、という結論に達していますが(J Steroid Biochem Mol Biol. 2019;198:105522.)、この大規模ランダム化試験の主要エンドポイントで有意差がなかったのは事実です。この試験を知っているだけ、この文章の著者はこの分野について新しい情報を知っているということです。なので、信頼できる情報の可能性が高いです。実は、ビタミンDのサプリに関しては、結局議論の余地がある点でもあります(詳細こちら)。

 

・「コーヒーを毎日飲むことは、全く飲まない人と比較し心血管病発症率が低いことが最近のメタ解析で示されたので、推奨される」

…そのメタ解析の引用していてくれればよりよいです(Circulation. 2014;129(6):643–659.)。が、引用先まで調べる人は中々いません。この文章をかけるということは、最低限そのメタ解析があったことをを知っているということでしょう。もしかしたら研究結果の解釈を自分でする能力はないかもしれませんが、それができる人を知っているということなので、信頼できる情報である可能性があります。コーヒーの健康効果について詳細はこちら

 

疫学研究、臨床研究を参照してなにかを結論している場合は、著者がその分野に詳しい可能性が高いので、その情報も正しい可能性が高いです。できれば良質なメタ解析やランダム化研究が引用されていることを見抜ければ一番良いですが。

なかなか研究の質を評価することは難しいので、せめて数本の研究論文を引用していれば、ある程度(他の情報より)信頼できる可能性が高い、といえるでしょう。

 

 

結論

紹介した観点でネットにある情報をみてみると、ほとんどが信頼できないことに気づくと思います。鵜呑みにしてはいけません。ヘルスリテラシー向上のためには、信頼できる情報をある程度自力で集める必要があります。

このブログには、執筆時点で信頼のおけるであろう医療情報を紹介しています。一つの参考としてご利用下さい。

ではまた。

-ヘルスリテラシー

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