マスクはウイルス感染の予防効果があるか【科学的検証】

コロナウイルス感染が広まっています。普通のマスクは予防効果がない、とよく言われていますが、本当にそうなのでしょうか。予防効果がないなら、なぜ医療従事者はマスク着用が推奨されているのでしょうか?

この記事では、サージカルマスク(普通のマスク)にウイルス感染症の予防効果があるか、科学的に検証しました。

 

 

マスクはウイルス感染の予防効果があるか

マスクはウイルス感染の予防効果があるか

先に断っておきますが、私は感染症を専門としている者ではありません。主に生活習慣病の疫学を専門としている医師です。論文の検索法や読み方は熟知しているつもりですが、感染症の専門知識はあまりないので、その点ご容赦を。

 

この記事では、サージカルマスクをつけることにより、健常な人がウイルス感染にかからないという意味の予防効果があるかどうか、科学的に検証しました。

2つメタ解析を紹介します。マスクのインフルエンザ予防を検証した論文(Epidemics. 2017;20:1–20.)と、医療従事者でのマスクの効果を検証した論文(Clin Infect Dis. 2017;65(11):1934–1942.)です。

このトピックのメタ解析としては最新のものです。

 

 

マスクによるインフルエンザ予防効果はあったか?

2017年のメタ解析(Epidemics. 2017;20:1–20.)ですが、personal protective measureとして主に手洗いとマスクの2009年インフルエンザパンデミックでの予防効果を検証しています。手洗いの効果はあり、マスクの効果はなかった (オッズ比[OR] = 0.53; 95% CI 0.16–1.71; I2 = 48%) と結論しています。

 

結果を説明

・対象となった研究でランダム化研究は1つだけで、これはcluster RCTといって個人でなく集団をランダム化する試験です。マスクを使用する家族と使用しない家族の比較ですが、結果マスクによる予防効果はあったとしています(OR =0.16, 95% CI, 0.03-0.92)。

→しかしこれは個人の比較でないため、感染している人がマスクにより拡散を防いだのか、マスクにより感染予防効果があったのかはわかりません。サンプル数が少ない問題もありますが、effect sizeは大きく、家族全体でマスクをしていると家族内感染は予防できることを示唆しています。

 

・メタ解析の対象となったコホート研究は3つだけで、合わせると参加者は1371人、OR = 0.53; 95% CI 0.16–1.71 と有意な効果は認められませんでした。I2 = 48% とまあまあなheterogeneityが認められており、やや信頼性の低いメタ解析です。

→ちなみにランダム化研究、横断研究、コホート研究を全部併せてメタ解析もしておりOR = 0.41; 95% CI 0.18–0.92 と有意な予防効果を示していますが、試験デザインが異なるものをメタ解析するのは基本的にNGです。

 

 

解釈は?

✔ランダム化研究で検証されていない以上、「マスクをつけることで予防効果があるか」という因果関係は言えません。推察できるだけです。「マスクをつけている人の感染率が低いか」(相関関係)と「予防効果があるか」は別の話です(詳細はこちら)。

✔このメタ解析では「有意な予防効果は認められなかった」と結論しておりそれは間違っていませんが、「予防効果が認められないと結論する十分なデータがない」というのが正しい解釈だと思います。

→その上でコホート研究のメタ解析結果をみると、信頼区間が広いが効果量(オッズ比)は低い事は注目すべきです。

→私はこの結果をみて、今後の研究を追加することで有意な予防効果が示されるかもしれない、と考えました。

 

 

医療従事者でのマスクの効果はあるか?

医療従事者でのマスクの効果はあるか?

2017年のメタ解析で、医療従事者でのマスクの予防効果を検証しています(Clin Infect Dis. 2017;65(11):1934–1942.)。結果、N95またはサージカルマスクの着用によって上気道感染を予防することが示されました(リスク比 [RR] = 0.59; 95% CI:0.46–0.77)。

 

結果の説明

・2つのランダム化研究のメタ解析にて、N95またはサージカルマスクの着用によって上気道感染(RR= 0.59; 95%CI:0.46–0.77)、インフルエンザ様症状 (RR = 0.34; 95% CI: 0.14–0.82) を抑えると報告されました。また、N95はサージカルマスクより強い予防効果が認められました。

 

・サージカルマスクとマスク無しの比較はされていませんが、そのメタ解析も可能です。自分で計算してはいませんが、Figure 2を見る限り、少なくとも上気道感染予防については有意な予防効果が示されそうです。

 

・5つの観察研究のメタ解析ですが、サージカルマスクによってSARSの有意な予防効果がありました((OR = 0.13; 95% CI: 0.03–0.62)。インフルエンザpH1N1に対する有意な予防効果はありませんでした。

 

 

解釈は?

サージカルマスクでも有意な予防効果が示されそうですが、解釈には注意が必要です。

・メタ解析しても統計的なpowerが足りない

・質の高いランダム化研究が行われていない

・マスクをしっかりと着用できているかの検討が研究によってバラバラ

・どれだけ感染の危険性にある状態か異なる

 

よってはっきりした結論は出せません

ただし、感染予防効果はあるかもしれず、医療従事者はルーチンにマスクをつけることが推奨されています

 

 

サージカルマスクの疫学研究ついて私の解釈

2018年以降も「サージカルマスクvsマスクなし」の大規模なランダム化研究は行われていないようです。ちなみに「サージカルマスクvs N95マスク」の大きなcluster RCTが2019年に発表されて、病院でのインフルエンザ予防に効果なしと結論されています(JAMA. 2019;322(9):824–833.)。

 

十分なエビデンスがないため、予防効果があるかははっきりいえない、というのが正しい解釈でしょう。

→つまり予防効果が無いとする十分な根拠もありません。

 

その上でデータを深読みした個人的な解釈ですが、おそらくリスクの高い場所ではある程度マスクによる予防効果があるのではないかと思います。インフルエンザ予防効果を検証したメタ解析では、観察研究ですがかなりオッズ比が低かったこと、医療従事者ではRCTにて予防効果がありそうであったことからです。深読みですが。

 

 

これらの研究を踏まえてのアメリカCDCの推奨

CDCは感染予防に関する科学的根拠を網羅した上で声明を出すため、非常に信頼性が高いです。

コロナウイルス感染予防を目的にサージカルマスクをつけるべきか、という質問に対し、次のように回答しています(参照)。

Most often, spread of respiratory viruses from person-to-person happens among close contacts (within 6 feet). Recent studies indicate that people who are infected but do not have symptoms likely also play a role in the spread of COVID-19. CDC recommends everyday preventive actions to prevent the spread of respiratory viruses, such as avoiding people who are sick, avoiding touching your eyes or nose, and covering your cough or sneeze with a tissue. People who are sick should stay home and not go into crowded public places or visit people in hospitals. Workers who are sick should follow CDC guidelines and stay home when they are sick.

 

*マスクは予防に有効かはわからないが(おそらく有効な面もある)、今の状況で最大限の予防策を講じるという面から、CDCの推奨も日々変わっています。2020/4/3時点で「マスクつけろ」とは明言されていませんが、今後そういう推奨となっても不思議では有りません。

 

感染予防に重要な点は、少し補足してまとめるとこんな感じです↓

・具合悪い人との接触を避ける

・粘膜(目や鼻や口)を触るのを避ける;粘膜から感染します

・マスクをつけたならそれをずらさない;結構難しいですよ

・咳やくしゃみをティッシュで覆う

・手洗いをこまめにする;手に付着しているウイルスが粘膜を介して感染する可能性

・しっかり手洗いをする;60-95%アルコールを含むソープで20秒以上(医療従事者は手洗いのトレーニングを受けていますが、そうでない方は正しい手洗いの方法を学習すべきです)

 

※風邪っぽい症状の方、その家族の方についての指示はこちらにまとめてあります。

 

 

結論

マスクの感染予防効果に関するエビデンスは不足しているので、あるとも無いとも言えない。

データを深読みすると、リスクが高い所では予防効果があるかもしれない。

感染予防に大事なことは、マスク以外に沢山ある。

ではまた。

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