「詐欺医療」をどう減らせるか

詐欺医療は撲滅されるべきものです。

しかし、詐欺医療とは何なのか、はっきりさせることは意外に難しいかもしれません。

この記事では、法律の話は抜きに、詐欺医療をどう減らせるか、医師·疫学者の立場から考えてみました。

 

 

「詐欺医療」をどう減らせるか

先日こんなツイートをしました。

 

日本の医師免許については医師法改正が求められます。

(なかなか実現しないでしょうが)

なお、開業医を批判する意図があったわけではなかったのですが、開業医の方から多くの批判を受けました。

「構造的に」開業医が多くなる、といっているだけで、開業医がみんな・・という意図では当然ありません。

 

この記事では「詐欺医療」の本質について、医師・疫学者の立場から考えていき、このツイートの解説をしていきます。

 

 

詐欺医療とは何か

詐欺医療とは何か

刑法では、詐欺とは「人を欺く行為をして相手方を錯誤に陥らせ、相手方(もしくは第三者)に財産的処分をさせること」をいうようです。

しかし医療に際しては, 金銭的だけでなく身体的な悪影響もあるので、

詐欺医療とは

「(効くと言って)効果のない医療で人を騙して金を払わせること、もしくは健康への害を生じさせること」

となります。

 

・切らないで治す癌治療

・〇〇水

・高濃度ビタミンC点滴

・(効くと謳っている)ほとんどのサプリ

などは、明らかにこの定義に当てはまります。

 

サプリやビタミン注射などは健康に害が出ないのでまだ可愛いほうですが、それでも実施者が多額の収益を上げていることを考えると大変腹立たしいです。

癌に関わるものはより深刻で、そのせいで標準治療が遅れたり行われなかったりして癌が進行し、取り返しのつかない事態となりえます。最悪の詐欺です。

範囲が広すぎるので、ここでは「医者が行う診療行為としての詐欺医療」を考えます。

*それ以外の詐欺医療についてはいつかまとめます

 

まず、詐欺医療を考える上で、根本的な問題があります。

「その人に効果があったかなかったか」はわからない、ということです。

 

 

「標準医療」とは

現在の医療は疫学研究によるエビデンスに基づくべき、とされています。

これが西洋医学が多くの人を救ってきたベースです。

ここでエビデンスとは、「対象集団に対する平均的な効果」であることを理解することが肝要です。

他の条件が同じとしたとき、「薬Aで治療した集団」と「薬Aで治療していない集団」を比較して、平均的に治療した方が5年間の死亡率が低かった

など。

 

しかし実際は、薬Aで治療された人のなかでも、治療されて実際に死亡率がさがったであろう人と、そうでなかったであろう人がいると考えられます。

そして、ある患者が「治療されたから死亡しなかったかどうか」はわかりません。

それは「ある患者が治療されなかった場合どうなっていたか」わからないと比較しようがなく、それがわかることはないからです。

 

*これを個別因果効果といいます。理論的には色々推定する方法が研究されていますが、医療で実践はされていません。

 

*********

 

例えば、ステージ3の乳がん患者が、悪い医者に騙されて、標準治療(手術+化学療法など)を受けなかったとします。

代わりに「断食」などの食事療法を行った。

結果、数ヶ月後に遠隔転移が判明した。。。

 

真っ当な医師の目からみれば、これは明らかな「詐欺医療」です。

が、もしその患者が標準治療を受けていれば転移しなかったか、はわかりません。

それが、この類の詐欺医療を叩く障害となります。

 

では、この詐欺医療は何が問題なのでしょうか。

そもそもガイドライン通りの治療を行っていない事が問題なのでしょうか。

 

 

そもそもガイドライン通りの治療を行っていない事が問題?

これはその通りなのですが、、

実は「ガイドライン通りの治療」を行っていない医者・病院は多過ぎます。

そのため、これだけを理由に詐欺医療を叩くのは、やや無理があります。

 

「ガイドライン通りの診療を行わない」理由は多様で:

・日本のガイドラインの情報が古過ぎて、よりよい治療を患者に提供できない

という真っ当なものから、

・エビデンスについて無関心(≒自分の経験が全て)

・そもそもエビデンスについて無知

・エビデンスを知っていながら、自己研鑽のためにエビデンスに反する診療を行う(手術をやりたがる、など)

・エビデンスを知っていながら、金儲けのためにエビデンスに反する診療を行う

などなど。

 

すべて一括りに「詐欺医療」として語るのは少し難しそうです。

 

 

でも常識的におかしすぎる

切除可能な癌なのに切除しない、というのは、一般的に「常識的におかしすぎる」気がします。

確かにそうなのですが、「何を常識とするか」というまた別の問題がでてきます。

 

たとえば、風邪に抗菌薬を出すのは、多くの医師にとっては常識的におかしいわけです。

狭心症で冠動脈が狭いからカテーテル治療をやることも、今や常識的におかしいです(たくさん行われています)。

 

以上のように、明らかにおかしいと思われる詐欺医療があっても、それを叩く「理由」をはっきりと示すことは、なかなか難しいのです。

 

 

ではどうすればよい?

では詐欺医療はほっといてよいかというと、当然NOです。

どうすればよいのでしょう?

 

一つはTweetで触れたように、「医師免許の剥奪」をより厳格に行うことです。

日本の医師免許は一旦取ってしまえば、殺人でも起こさない限りなかなか剥奪されることのない、不思議な免許です。

法律上は「罰金以上の刑」や「不適切な医療を行なった場合」と明記されていますが、事例をみるとその程度では剥奪に至っていません。

実際、不適切な医療を行う診療所は、割と至る所にあります。

 

詳しくありませんが、おそらくこの辺りは政治的な力学が働いているのだと思います。

厚生労働省単独の頑張りでどうにかなる問題ではないかもしれません。

それをどう変えられるかはちょっとわかりませんが、明らかにおかしい事態です。

医師免許だって免許の一つに過ぎません。

*なおアメリカではより厳格で、不適切な医療を行なった場合は完全に剥奪対象です。それが普通だと思いますが。

 

 

二つ目は、詐欺医療に対する世間の目を厳しくすることです。

悪いことは悪い。「お医者さんだから」は言い訳にならないどころか、医者がやっているからこそ悪質です。

実際、詐欺医療に対する訴訟は、ほとんどが示談になり表沙汰になることがないようです。

これでは詐欺医療は減りません。

詐欺医療を行う医院に対して訴訟が頻繁に起き、週刊誌などで騒がれるようになれば、詐欺医療を減らすことが可能です

 

 

まとめ

「詐欺医療」には色々あるが、かなり悪質なものもある。

しかし「その医療行為が悪かったかどうか」は立証し得ない。

医師免許の剥奪をより厳格に行うか、世間の目を厳しくする事が、詐欺医療を減らす解決策となる。

ではまた。

-基本

Copyright© Riklog , 2022 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.