パラシュートが落下事故を防止するか。
防止するに決まってる、と思いますか。ではそのエビデンスは?
実は、このトピックに関するランダム化試験のメタ解析があります。
少し古い(2003年)文献ですが、これを紹介します。
示唆に富む研究です。
Contents
パラシュートは落下による事故を防止するか?!
紹介する研究は、2003年にBritish medical journalという権威ある医学誌に発表された、ランダム化試験のメタ解析です(BMJ 2003;327:1459–61)。
タイトルは
「Parachute use to prevent death and major trauma related to gravitational challenge: systematic review of randomised controlled trials」
日本語では、
「パラシュートにより落下による外傷を予防できるか」
パラシュートをしないことで重大な外傷につながることは、観察研究では示唆されています。
パラシュートなしで飛び降りて重大な外傷をおった症例は、多数いますね。
しかし、観察研究では因果関係は言えません。
→因果関係とは、「パラシュートをしなかったから・・・」ということ。
よってこの研究では、パラシュートの有無をランダム化した研究のメタ解析を行いました。
結果は?
Medline, Web of Science, Embase, Cochrane libraryといった主要な医学データベースを網羅的に検索しました。
結果、一つも文献が見当たりませんでした。
解釈は?
当然やろ!!
と怒る前に。
これはBMJという権威ある医学誌に発表された研究ですよ・・・
簡単にいうとこれは、「ランダム化試験が絶対のエビデンス」だとしている医学研究の状況に対するアンチテーゼです。
観察研究とランダム化試験の結果が一致しないことは度々みられ、それによりランダム化試験がエビデンスのスタンダードとなった経緯があります。
*例えばこちら参照。
しかし、観察研究が示唆することもある。
あと、ランダム化試験ができないものもある。
パラシュートが最たる例です。
だれも、パラシュートなしに飛び降りたくありません。
観察研究で重要なのは、如何にバイアスが排除できるかということ。
交絡はないか、selection biasはないか。
ランダム化試験が行われるのは、ランダム化により交絡を排除できるからです。
でももし効果が明らかなら、ランダム化を行う必要もありません。
当然。
そもそも、ランダム化試験は「controversialなもの」「効果が少ない〜中等度のもの」の白黒をはっきりさせる手段です。
パラシュートが外傷を防ぐ効果ははっきりしすぎていて、この意味からもRCTを行う対象となりません。
最後に。
論文の ”What this study adds” には、こう書かれています。
Individuals who insist that all interventions need to be validated by a randomised controlled trial need to come down to earth with a bump
笑
結論
ランダム化試験至上主義の人は、パラシュートなしでスカイダイビングしてみると良い。
ではまた。