「〇〇は健康にいい」という情報を疑おう

巷でよく「〇〇は健康に良い、悪い」と言われています。が、それは本当ですか?

そういった発言の根拠、発言をした意味は何なのでしょう?

ヘルスリテラシーを獲得するためには、そういう情報を疑い、「これは正しいだろう」という情報を選択していかねばなりません。この記事では、めちゃくちゃ具体的なエピソードを使って、健康情報を疑うポイントを解説します。これを読むことで、情報の批判的吟味ができるようになり、自分で情報の質が評価できるようになります。健康情報を自分で取捨選択できるようになることこそ、高いヘルスリテラシーと言えます。

「〇〇は健康にいい」という情報を疑おう

「〇〇は健康にいい」という情報を疑おう

仕事中同僚が、「チョコは毎日食べたほうが良いよ。カカオが健康にいいんだから」と言って、チョコを勧めてきたとします。あなたは「ありがとう」と言って、チョコを受け取り、食べました。さあ、このチョコは健康に良かったのでしょうか?

そんなわけ無いじゃん、と思う方が多いと思います。1回チョコを食べただけで健康がよくなるならみんな食べますよ、と。では、その同僚のアドバイスに従い、その日から「おやつにチョコレートを1枚毎日食べる習慣」となったとします。これは健康に影響するでしょうか?

毎日甘いものをそんなに食べていたら糖尿病になるよ、とおっしゃるかもしれません。一理あります。では同僚の「カカオが健康に良いからチョコは毎日食べたほうが良い」発言は、全くの誤りだったのでしょうか?

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あなたは年末年始の休暇、実家に帰省しました。母親に普段何食べているの?と聞かれ、「コンビニ弁当だよ」と答えました。母が「そんなの健康に悪いじゃない。自炊しなさいよ」と言ってきたので、少し反論したくなり「自炊したって結局ご飯とおかずを食べることには変わりないでしょ」と言ってみました。すると母は「でも味噌汁が体にいいのよ。大豆がいいっていうでしょ」。確かに大豆は体に良いとよく聞きます。やっぱり味噌汁は飲んだほうが良いのかな?でも議論の余地がありそうにも思えます。

こういう話は日常会話でよくあります。でもほとんどの方は、それが本当に正しい情報か、調べようとしません。しかしよく考えると、これらはとても大事な情報で、自分の毎日の行動に関わります。本当はどうなのか?こう疑ってみる事が、ヘルスリテラシー獲得のために大事な一歩目のステップです。

巷にあふれる「健康にいい」根拠

気になったあなたは、Googleで「チョコ 健康」と調べてみました。すると、明治製菓のHPで「チョコを食べると血圧やコレステロールが低下した」という報告をみつけました。更に、「チョコが含有するポリフェノールは抗酸化作用があるから体に良い」という記述も見つけました。そして「チョコは低GI食品だから、食後急激に血糖値を上昇させない」ことも分かりました。なるほど、チョコは健康に良いんだな、と思いました。

次に「味噌汁 健康」と調べました。すると「味噌汁はそんなに塩分を含んでない」「発酵食品であるので、腸内環境を整える善玉菌をもつ」「出汁がミネラル豊富であり、栄養失調に効果的」であることがわかりました。母の言うことは正しかった、と思いました。

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しかしここで止まってはいけません。本当にそれらの根拠は信頼に足るのでしょうか。答えは、残念ながら、ノーです。全部、根拠になっていません。

健康にいい根拠とは?

健康にいい根拠とは

そもそも「健康に良い」とはどういう定義なのでしょうか?癌にならない、心筋梗塞にならない、死亡率が低下する、これらはまず健康に良いという定義に合致します。血圧が低下する、コレステロールが低下する、血糖値が低下する、これらも健康に良い気がします。腸内環境がよくなる、はどうでしょうか。よく実感できませんね。

「チョコが健康に良いか」「味噌汁が健康に良いか」ということは、誰もが知りたい、公衆衛生的に重要なトピックであり、実は世界中の栄養学者が研究しているのです。研究分野は「疫学」。例えば、味噌汁を毎日飲んでいる人とほとんど飲んでいない人を比較し、死亡率や癌の発生率などを比較しています。鋭い方はこうおっしゃります。「味噌汁の飲む人と飲まない人はそもそも全然違うから、フェアな比較にならない」と。そのとおり。実は味噌汁飲まない人の方が喫煙率が高いかもしれません。そうすると、喫煙のせいで、味噌汁を飲まない人は肺がんの発生率が高くなってしまいます。そういうことを避けるのが、疫学者の仕事なわけです。「その他が同じ条件であったと仮定したときに、味噌汁の違いが癌発生率に関係有るか」ということを調べています。

彼らの研究結果、エビデンス、というものが、健康に良い根拠です。エビデンスを鵜呑みにするのは良くないという指摘がありますが、そもそもエビデンスを知らずして健康を語るのはナンセンスなわけです。ですので、どういうエビデンスがあるのか知ることが、ヘルスリテラシー獲得のため重要な事項です。

こういう話は信じていけない

へーそういう事が調べられているんだ。すると、チョコの「カカオの抗酸化作用」「低GI食品」、味噌汁の「腸内環境を整える」「ミネラルが豊富」という記述は、エビデンスでは無いんですね?

そのとおりです。そして、こういう話は、もっともらしいけど信じていけない情報です。食事に関しては、「栄養素の健康効果を語る情報」は信じていけません。

では、明治製菓の実施した研究結果はどうでしょうか?エビデンスらしい記述です。が、これも信用するには足りない情報です。企業が提示する研究情報は、信頼性の低い情報の一つです。

なぜそう言えるのでしょうか?それは、実際の疫学研究をみてみれば一発でわかります。

チョコの本当の健康効果

チョコと健康効果の最新のメタ解析を紹介します(Nutrients. 2017;9(7):688. )。このメタ解析は、今までのコホート研究のまとめです。計50万人、5年〜16年の追跡期間で、冠動脈疾患、脳卒中、糖尿病の発症とチョコレートの摂取量の関係を検討しています。すると、チョコレートを最も多く食べている人は、最も食べていない人と比較し、冠動脈疾患が10%低下、脳卒中が16%低下、糖尿病が18%低下しました。しかし、チョコレートの量と糖尿病の発生率を比較すると、週2回食べる人が最も低い糖尿病発症率であり、それ以上食べると徐々に糖尿病リスクが上がりました。

よって、冠動脈疾患と脳卒中は、チョコを食べれば食べるほどリスクが減り、糖尿病は、チョコを食べすぎるとリスクが増えることが分かりました。

味噌汁の本当の健康効果

大豆と胃癌について検証した最新のメタ解析を紹介します(Medicine (Baltimore). 2017;96(33):e7802.)。計50万人の研究です。大豆の消費量が一番多い群は、最も少ない群と比較し、胃癌発症が22%低い結果となりました。が、味噌汁を1日1杯/3杯/5杯飲むと、胃癌発生がそれぞれ14%/ 29%/ 34%高い結果でした。味噌汁と他の大豆製品の違いは塩分含有量にあるので、味噌汁による胃癌発生は塩分摂取過多による可能性が高いと考えられました。

実はこの研究結果は、私は、「因果関係として解釈するに足る」結果ではないと思っています(詳細はこちら)。が、エビデンスとしては、味噌汁は胃癌のリスクを増やす可能性が示唆されているのです。

なぜ不確実な健康情報を流すか

現時点で信頼できる情報は、「チョコは心筋梗塞や脳卒中を減らすかもしれないが、食べ過ぎは糖尿病のリスクにつながるかもしれない」、「味噌汁はたくさん飲むと塩分摂取過多となり胃癌の発生率を増やすかもしれない」ということでした。最初に提示したどの情報も信頼性が低いことが分かったと思います。

栄養素の観点で考えても、これらの結論は絶対に出せません。栄養素は、食事の健康影響を説明する方法の一つであり、それ自体が直接健康影響を示すことはまれです。何十万人を対象とした疫学研究が必要なわけです。そして疫学研究の情報は、ほとんどの「栄養素を語る人」は知りません。だから、信じていけないわけです。

企業の研究は、HPにある通り300人程度、数週間のフォローアップの研究です。これでは健康効果はわかりません。上に紹介した研究はメタ解析ですが、メタ解析の元論文も数万〜数十万人を年々もフォローアップした研究です。ですから、300人程度の研究は信頼に足らないし、事実論文出版することは難しいレベルです(もし論文出版できたらそれを明記しています)。仮に論文出版できたとしても、その論文の質(ジャーナルの質)は概して低いです。

では、なぜ不確実な健康情報を流すのでしょうか?企業のモチベーションは明らかで、その商品(チョコ)を売りたいがためです。栄養素を語る方については、自分のプレゼンスを高めたいことがモチベーションになっていることが多いです。ただ、一番の理由は、本当の情報を知らないからでしょう。私はたまたま疫学や予防医学に詳しいので一次情報である論文を読めますが、普通読めません。

いずれにせよ、信頼できない情報を大々的に流す行為は、実際に食べる人の健康影響は全く配慮していません。無責任極まりないわけです。やめてください。

結論

こういう不確実な健康情報に騙されないことが、個人にとっては大事です。「栄養素の情報」「企業の研究結果」は信頼性に乏しいので、そもそもシャットアウトしても良いくらいです。シャットアウトしない場合は、その情報の信憑性を疑えるようになりましょう。

ではどこで信頼できる情報を得られるのでしょう?論文を読まねばならないのですが、多くの非専門の方は難しいです。このブログでは論文を紹介し、現時点で信頼できる健康情報を提供しますので、一つの参考にしていただけると嬉しいです。

ではまた。

-ヘルスリテラシー

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