アスピリンで心筋梗塞は予防できるのか【科学的根拠】

血をサラサラにすれば心筋梗塞が予防できそうなのは一般常識だと思います。

そして、アスピリン(バファリン)はおそらく一番有名な、血をサラサラにする薬です。

では誰しも心筋梗塞予防にアスピリンを飲むべきなのでしょうか?これは疫学的に重要なテーマで、今まで数々の研究が行われてきました。

この記事では今までの科学的根拠を紹介し、どういう人が予防としてアスピリンを飲んだほうが良さそうか考察しました。

 

アスピリンで心筋梗塞は予防できるのか

アスピリンで心筋梗塞は予防できるのか

血をサラサラにすると健康に良い、と思っている人が多いと思います。

それはあながち間違いでありません。

でもサラサラにすると出血するリスクも増えますね。

つまり誰でもサラサラにすれば良い、というわけでは無さそうです。

 

血をサラサラにする強力な方法は、納豆でなく、薬です。

作用機序の違いにより抗血小板薬と抗凝固薬に分けられるのですが、特にアスピリンに代表される抗血小板薬こそが心筋梗塞予防があると考えられています。

でも、「誰しも飲むべき」なんて聞いたことないと思います。

 

どんな人が飲むべきか、科学的根拠に基づき決められるべきです。

気になりませんか?

 

 

心血管病を経験した人はアスピリンを内服すべき

アスピリンによる心筋梗塞の予防効果

アスピリンによる出血のリスク

これらを天秤にかけて決めます。

つまり、(出血リスクが低くて)心筋梗塞リスクが高い人は、予防薬として飲むべき

 

どんな人が間違いなく心筋梗塞のリスクが高いと思いますか?

→一度心筋梗塞を経験した人です。

 

心血管病予防は一次予防と二次予防という観点で語られる場合が多いですが、

一次予防とは心血管病を罹患したことがない人を、二次予防とは一度罹患した人を対象とします。

 

二次予防にはアスピリンは有効です。

なので心筋梗塞を経験した人は、ほとんど皆さんがアスピリンを服用していることと思います。

ただこういう方は医者に薬剤管理されていることと思うので、飲むべきか迷うことはありませんね。

 

*抗血小板薬はアスピリンだけでないので、内服している薬がアスピリンとは限りません。

*心筋梗塞でなく狭心症の人も、アスピリン飲むことが多いです。それは狭心症=心血管病だからで、心筋梗塞の発症率が高いからです。

*勿論出血が起きた場合は、個別相談です。

 

 

心血管病を経験していない人はアスピリンを内服すべき?

心血管病を経験していない人はアスピリンを内服すべき?

ここからが本題です。

あなたは、心筋梗塞の一次予防としてアスピリンを飲むべきなのでしょうか。

欧米では自分でアスピリンを買って予防として飲むのが当たり前のように行われています。

日本ではあまりpopularでないと思いますが、popularでないからと言って意味ないわけではないですよね。予防効果があるなら勿論内服すべきなのです。

 

心血管病を経験していない人がアスピリンを飲むべきか?

2016年までいくつものランダム化試験が行われ、ある程度知見が得られていました。

そして2018年に大きなランダム化研究が3つ発表され、さらに知見が深まりました。

これを紹介します。

 

 

2016年までのエビデンス

アスピリンが良い悪いはかなり歴史の長い話です。

かいつまんででもその経緯を知っておく必要があります。

めちゃくちゃ簡略化してまとめてみました。

 

・最初の大規模ランダム化試験は1989年に発表されたUS Physician Health Studyで、なんと心筋梗塞のリスクを44%も減らしたのです(N Engl J Med 1989; 321:129-135)。

→しかし心血管病による死亡リスクは減らさず、なんでだろう?となりました。

 

その後沢山のランダム化試験が施行され、結果が出たり出なかったり。

そのうち脂質異常症に対するスタチンや高血圧に対する降圧薬の使用が当たり前となり、それらにより心筋梗塞のリスクはめざましく減少しました。

・日本人の研究は2014年に発表され、リスクの高い人の心筋梗塞発症は予防するが出血リスクは無視できないほど増えるという結論でした(JAMA. 2014;312(23):2510-2520.)。

 

・2016年までの研究をまとめたメタ解析では、一次予防目的のアスピリンは、心筋梗塞予防効果より出血リスクが高い、と結論されました(Arch Intern Med. 2012;172(3):209–216.)。

 

でもやっぱりリスクが高い人や他の人種では、benefitがriskを上回るだろう、と捨てきれない。

そして2018年、landmarkとなる3本の大規模ランダム化試験(数万人規模、数年のフォローアップ)が発表されました。

 

ASCEND trial

40歳以上の糖尿病患者15480人が対象となりました(N Engl J Med. 2018;379(16):1529–1539.)。アスピリン100mg vs プラセボで7.4年のフォロー。

アスピリンにより心血管病全体として12%のリスク低下、出血イベントの29%のリスク上昇という結果になりました。

死亡率は両群で変わりませんでした

 

ARRIVE trial

心血管病の低〜中程度リスク12456人を対象としたアメリカ・ヨーロッパでの研究です(Lancet. 2018;392(10152):1036–1046.)。アスピリン100mg vs プラセボで5年のフォロー。

主要エンドポイントである心血管病発症はアスピリンでリスク低下されませんでした(リスク低いので予想通り)。

出血リスクは倍になりました。

死亡率は変わりなし。

 

ASPREE trial

70歳以上のアメリカ人・オーストラリア人19114人が対象となったものです(N Engl J Med. 2018;379(16):1519–1528.)。アスピリン100mg vs プラセボで5年のフォロー。

なんとアスピリン群で全死亡率が高かったのです。死亡の主要な原因は癌による死亡でした。

→これは今までの研究と一致した結果でなく、解釈に注意が必要です(真実でないかもしれません)。

アスピリンによる心血管病予防効果は有意でありませんでした

 

 

結局・・・

こんなに研究が行われても結論ついていません。

でもちょっと見えてきました。

・高齢だからアスピリン!はよくない

・アスピリンの有効性は、他治療法の発達によりどんどん下がっている

・アスピリンによる出血リスクは無視できない

・リスクが高い人(特に糖尿病)にはアスピリンは心血管病予防するかもだが、飲んだほうが良いとは言えない

 

こんな感じにまとまりそうです。

 

特に日本人は出血リスクが高いことが以前から言われています。

以上より、日本人が自分で判断してアスピリンを買って飲むべき状況はほとんどないと言えるでしょう

 

表題の「アスピリンで心筋梗塞が予防できるか」の答えは、「ハイリスクの人は予防できそう」です。

でも「予防法としてアスピリンを飲むべきか」の答えは、「ほとんど飲むべきでないだろう」です。

 

 

結論

アスピリンの心血管病予防効果は目をみはる程ではありません。

心血管病を経験していない人が、自分から積極的に飲むべき状況はほとんどないと言えます。

ではまた。

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