Apple watchでQT延長(コロナ治療の副作用)を診断する

Apple watch、かなりの可能性が示唆されてきています。

COVIDの治療に使われうる「ヒドロキシクロロキン」、副作用にQT延長という「突然死を引き起こしうる状態」があります。

これをApple watchで診断してみた、という報告です。

実際使えるのでしょうか?

 

Apple watchでQT延長(コロナ治療の副作用)を診断する

Apple watchでQT延長(コロナ治療の副作用)を診断する

Apple Heart Studyという研究で、Apple watchは医療デバイスとしてデビューしました。

Apple Heart Studyは、Apple watchで心房細動という不整脈を検知する、というものでした。

その検出感度・特異度はまだまだなのですが、一応FDAのclearanceを得ています

 

*approvalではありません。医療機器とは言えないが、その他市販されている医療機器もどきとは一線を画する、という意味です。

 

さて、新型コロナの治療薬はいくつも検討されていますが、一番有名なのはヒドロキシクロロキンかもしれません。

少し前、トランプが予防として内服していることが発覚し、話題になりました。

 

このヒドロキシクロロキン、重大な副作用が知られています。

QT延長です。

心電図上の、まったく無症候の所見なのですが、これが突然の心停止のリスクなのです。

ちなみに、ヒドロキシクロロキン投与によるQT延長についてもいくつか報告があり、このブログでも紹介しています(こちら参照)。

 

この重大な副作用を、Apple watchで検知できないか、と検証したのが、本日紹介する論文です(Circulation 2020 10.1161/CIRCULATIONAHA.120.048253)。

 

 

*ちなみに6/3現在、「ヒドロキシクロロキンは効かなそう」と結論した論文がLancetに載り(この記事で解説)、今色んなランダム化試験が中止されていますが、その論文のデータが信頼できないのではないか、とかなり問題になっています。

→つまり、「効かない」という報告が信頼できないものなのではないかと言われています。

 

 

どんな方法?

ERにきて洞調律だった、連続100患者を対象にしています。

(コロナやヒドロキシクロロキンとは無関係です)

 

彼らに以下の手段で「QT間隔(QTc)」を測定しました:

・通常の12誘導心電図

・Apple watchを使った通常の心電図測定(左手)

・Apple watchを使ったプラスアルファの心電図測定(左足首と左側胸部)

 

ハイリスク(QTc>480msec)の一致度を、循環器内科医が調べました

*自動測定ではありません。

 

*ERで一回の測定で行われたというのもポイントです。

→「自宅で」「連続的に」といった検討は行われていません。

 

 

結果・・・

15%の患者で、左手からQTcを計算することができませんでした

6%の患者は、Apple watchをどこにずらしてもQTcを計算することができませんでした。

 

8人の患者が12誘導心電図でQTc>480msecであり、Apple watchでもその8人はQTc>480msecとなりました。

(これがメインの主張です)

 

通常の12誘導に比べ、Apple watchでは絶対値で16-18msecほどずれる結果となりました。

12誘導と比べると

・左手で-5msec

・左足首で-9msec

・左側胸部で-11msec

であり、Apple watchではQTcが過大評価される結果となりました。

(QTcは長ければ悪いので、過大評価は悪くないことです)

 

 

解釈は?

現時点で実用化はほぼ無理でしょう

そりゃあ、Apple watchで心電図測れるというのが技術的に凄いんですが。

 

15%がQT測定できないのは仕方ない。

100人と小規模だけど、QTc>480msecの人を検知できたのは良い。

 

でも

・ERで測定している

・循環器内科医が測定している

・コロナでヒドロキシクロロキンを飲んだ患者が対象なわけではない

など、実用化を見据えた研究デザインではありません

 

 

論文のApple watchの心電図をみればわかりますが、波の起伏がなさすぎるんですよね。

まあ普通四肢で測定する所を左手一箇所で測定しようとしているから、当然なんですが。

一箇所に拘る限り、治療の一環として使うのは難しいでしょう。

 

*例えば付属機器でApple watchと同期した他のデバイスを、反対側の手につければ、おそらくかなり良い感じの波形になりそうです。

→でも当然こんな当たり前の事はApple社で検討されているわけで、それがないということはApple watch単独のポテンシャルを発展させていこうという方針なのでしょう。

 

あと、自動かつ連続で測定できないという時点で、Apple watchを使う意味がありません。

それだったら自宅で心電図取ればいいんです。

すなわち、この論文は「Apple watchでQTc測定してみた」以上の意味合いがあまり無いように感じられます。

 

 

結論

Apple watchでQT延長を自宅診断するのは難しい。

ではまた。

-心臓病, 論文解説

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