ゾフルーザは、比較的新しいインフルエンザ薬です。タミフルは5日間の内服が必要ですが、ゾフルーザは1回内服でOK。
このゾフルーザによるインフルエンザの予防効果を検証した論文が発表されました。
日本発のランダム化試験です。
効果は・・・凄いことになりました。
ゾフルーザでインフルエンザ予防
コロナに目を奪われがちですが、インフルエンザが無くなったわけではありません。
むしろワクチンがあるのに、毎年流行って何万人も死者を出す、恐ろしい感染症とも言えます。
治療法はいくつかありますが、最近注目されているのはゾフルーザ(バロキサビルマルボキシル)。これは1日内服すればOKなのです。
タミフル(オセルタミビル)は5日間でした。
タミフルよりも抗ウイルス効果が強いことが示されています。
*治療薬としての効果は、発症後2日以内に投与すれば症状の期間が1日短くなる程度です。
そんなにぱっとしないですね。
そこで今回、「家族にインフル感染者がいる状況で家族内感染を防ぐことができないか」という疑問に対し、ランダム化試験が行われたのでした(NEJM 2020 10.1056/NEJMoa1915341)。
どういう試験?
対象条件は以下の通り:
・風邪症状がなく
・試験参加48時間以内に、インフルエンザと診断された同居している人がいる
彼らが1:1でゾフルーザかプラセボにランダム化されました。1回のむだけ。
Primary outcomeとしては、その日から10日間のインフルエンザ発症頻度(症状+PCR陽性)を比較しました。
power分析で748人必要でした。
→752人リクルートして、3人だけ脱落、749人が対象となりました。
*感染源となる家族内のインフルエンザ患者は545人でした。彼らは74%が12歳以下の子供でした。
この集団の重要な点としては、
・19%が12歳以下(平均年齢は33歳程度)
・66%がインフルエンザワクチンを受けていない(!)
・ゾフルーザ群の7%、プラセボ群の9.6%が最初の時点でインフルエンザPCR陽性であった
→彼らはイベント(インフル発症)からは除外されました
結果、すごい効果!
インフル発症は、
・ゾフルーザ群で7/374(1.9%)
・プラセボ群で51/375(13.6%)
→ハザード比0.14 [95%CI 0.06, 0.30]
という驚異的な予防効果が示されました。
プラセボ群はだいたい3-5日目に発症していました。
ゾフルーザ群は、8-10日目にポツポツと発症していました。
あまりに強い効果なので、あらゆるサブグループ解析にても一貫した効果が示されました。
例えば、
・最初からPCR陽性だった人を除外した解析
・12歳未満のみ、もしくは12歳以上のみ
・症状なし+PCR陽性、というアウトカム
などなど。
解釈は?
日本人、かつワクチンを受けていない若年者に対し、ゾフルーザはインフルエンザの家族内感染予防に有効ということです。
実はどんなインフルエンザ治療薬でも予防の有効性は言われています。
・タミフルでは68%
・リレンザでは82—84%
・イナビルでは46-78%
の予防効果があると示されてきています。
今回のハザード比0.14→86%の予防効果、は、その中でも凄いですね。
解釈の注意点は以下の通りです:
✔予防内服するなんて日本くらいかもしれません。
→少なくともアメリカでは考えられません。インフルエンザにかかっても、普通病院に行かない国です(そういう国の方が多いと思います)。
✔ゾフルーザは耐性ウイルスを生みます。
→本研究のゾフルーザ群でも、7人の患者にゾフルーザ耐性のインフルエンザ感染が認められています。
→うち5人はゾフルーザで治療された家族から、うち2人は家族以外の他の誰かから感染していると考えられました
→ゾフルーザ耐性ウイルスはウイルスを排出する期間や症状の持続期間が長いことが知られており、予防薬として広く用いてよいかは疑問が残ります。
✔更に言うと、コロナのため徹底して感染防御するようになったおかげで、インフルエンザ症例数が例年と比較しかなり減っていることが報告されています。
→この状況が続くと考えれば、ワクチン接種で予防には十分かもしれません
→少なくともワクチンを基本として、ゾフルーザ使用は補助として位置づけられるべきです。
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ということで、まずワクチンとスタンダードプレコーション。
その上で、インフルエンザが家族に出た時に、他の家族へ予防的に投与するオプションが有る、ということは知られてよいかと思います。
結論
ゾフルーザのインフルエンザ予防効果は強い。
でもまずはワクチンと手洗い。
ではまた。