BCAAというとプロテインを思い浮かべる方が多いでしょうか。
一昔前の「バリン、ロイシン、イソロイシン」というCMの覚えがある方もいるでしょう。
このBCAAが血液マーカーとして、今注目を浴びています。
これに関する、最近の私の研究の紹介です。
血中のBCAAってどんなマーカー?
BCAAというと「必須アミノ酸」、つまり体内で合成できないため食事からの摂取が必要なタンパク質です。
なので「高いとよさそう・・」と考える方が多いかもしれませんが、
実際は逆です。
血中のBCAA値は高いと悪いのです。
これは色々な説明がありますが、簡単に言えば「血中BCAAが高い=BCAA代謝がおかしい」ということになります。
では具体的に何が悪いかと言うと、
糖尿病の発症リスクが高くなります。それもかなり。
また、心筋梗塞リスクも高いのです。
ただ、血中BCAAというバイオマーカーは新しく、わかっていないことが多い。
今回の検証では、BCAAとその他の心血管バイオマーカーとの相関関係を調べました(Circ Genom Precis Med. 2021 Aug;14(4):e003330.)。
考察が面白いです。
どういう研究?
Women's Health Studyという大規模ランダム化試験のデータを使った、cross-sectional analysisです。
2万人程度、だいたいが白人女性。
baselineでBCAAを含め色々なdemographics, biomarkerを測定しており、そのデータを使いました。
具体的に相関関係を見たのは、
lipid: HDL, LDL, TG, LPIR score
inflammation: hsCRP, sICAM-1, GlycA, Fibrinogen
です。
univariateではSpearman correlation coefficient
multivariateではBCAAのleast square mean(共変量を調整した後の平均値)
を求めました。
結果は?
脂質のバイオマーカー、炎症のバイオマーカーそれぞれと、それなりの相関がありました。
詳細は論文にて。
解釈は?
結果通り、BCAAは心血管病リスクとなる様々なバイオマーカーとそれなりの相関がある、ということでした。
これがなぜ面白いかと言うと、BCAAが将来の糖尿病・心筋梗塞発症と強く関連するという背景があるからです。
糖尿病は心筋梗塞の確立したリスクなのですが、なぜそうなのかが疫学的にはっきりしていないのです。
メカニズム的には色々な説明が可能ですが、「どの糖尿病患者が将来心筋梗塞となるか」というのがわからない。
BCAAはどちらの発症とも関連するわけで、そこに有用なマーカーとなりうる。
そんな中、この研究で炎症と脂質と関連するということが、その大きな理由となる、ということです。
*特に、どちらもそこそこ相関する、というのがリアリティがあります。
それなりにシンプルなcross-sectional studyですが、科学的に面白い考察ができるものでした。
結論
BCAAは高いと悪い。
BCAAは脂質や炎症と関連し、糖尿病から心筋梗塞になるメカニズムの一部を説明しうる。
ではまた。