肥満。悩んでいる方、世界中に数億人以上います。
色んな病気の原因にもなる、皆が解決すべき問題です。
しかし、自分の意思一つではなかなか減量できない。
ではどのような介入なら減量できるのか。
最新論文を紹介します。
Contents
どうやったら減量できるか
まさに数えきれないほどの研究で「肥満は健康に悪い」ことが示されてきました。
今この瞬間も、そんなエビデンスが蓄積してきています。
でも実は、「どうやったら減量できるか」という介入法については、発展途上なのです。
減量は本当に難しいです。
なぜなら:
・肥満というのは今の生活習慣の結果であり
・減量するには生活習慣自体を変える必要がある
からです。
一過性の減量は、健康というアウトカムを考えた時に、意味ありません。
減量⇒維持が必要。
つまりクエッションは、「どうやって生活習慣を変えられるか」。
生活習慣は、自分の嗜好や意思だけでなく、周りの環境は社会によって決まっています。
その下流にある生活習慣を直接的に変えるというのは、かなりチャレンジングなのです。
そんな背景の下、今回紹介する研究は、診療所に通院してもらう介入 VS. 電話による介入、という比較です()。
どういう研究?
アメリカのカンサス州とアイオワ州の田舎で行われた、cluster randomized controlled trialです。
*cluster RCTとは、ランダム化される対象が患者単位でなく、そのが属する集団単位だ、ということです。
36の診療所が以下の3群にランダム化されました:
・診療所へのgroup visit
・診療所へのindividual visit
・電話でのgroup visit
対象となった1407名の肥満患者(今まで大きな病気のない、BMI 30-45で18ヶ月以内に一度以上診療所受診した方)は、その人が通う診療所の方針(上3つ)に従って、生活習慣指導を受けます。
だいたい2ヶ月に1度。
なお、指導内容はそれぞれのグループで違いがありません。
*例えばindividual visitでは、1人の医者が1人の患者に対し3時間かけて生活指導をしたようです。すごいリソースを使っています。
介入法の詳細は論文をご覧ください。
アウトカムは2年後の体重。
結果は・・?
患者背景の特徴は:
・Baselineでだいたい平均で103kg、BMI 37くらい
・平均55歳で、低〜中所得者の白人がほとんど
・女性が70%以上と多い
2年後。
診療所へのgroup visit群:-4.4 kg (95%CI: -5.5, -3.4)
診療所へのindividual visit群:-2.6 kg (95%CI: -3.6, -1.5)
電話でのgroup visit群:-3.9 kg (95%CI: -5.0, -2.9)
でした。
統計的には、診療所へのgroup visit群と診療所へのindividual visit群に差がありました(-1.9kg, p=0.01)。
なお、セッションへの参加率はそれぞれ以下のようでした:
診療所へのgroup visit群:71.6%
診療所へのindividual visit群:86.4%
電話でのgroup visit群:66.2%
解釈は?
診療所へのgroup visitの方が、診療所へのindividual visitに比べ、減量に効果があった、という結果でした。
これの解釈は注意が必要ですが、それにも増してこの研究は面白いポイントをいくつか含んでいます。
✔︎金銭的なインセンティブはなかった
患者に謝礼は払われていません。つまりセッションにいくかいかないかは、痩せたいという自分の意思のみが源泉です。
55歳で平均103kgというのがちょうど良い設定で、健康についてかなり現実味をもって考え出すけど、なかなか長年染み付いた生活習慣を変えるのは難しい人達でしょう。
セッション参加率はindividual visitが一番高かったが、これは予定を組みやすかったから+one-to-one interactionでその人のニーズを把握しやすかったからだろう、と考察されています。
しかし参加率の低かったgroup visitの方が効果があったのは興味深い点ですね。
⇒これはpeer supportの効果だろう、と考察されています。
✔︎1.9kg程度の差は、clinicalにそんなに大した差でない
clinicalに意味のある差、とは体重5%以上の減量、とすることが多いです。
baselineが103kgだと、これは5kg程度の減量を意味します。
特にある程度長期的なアウトカムとして(例えば2年)これを達成するのはなかなか難しいですが、このTrialでは約40%の人がこれを達成できており、効果的な方法だっただろうと考えられます。
一方、3群の効果の比較となると、そんなに差はなかったよね、という結論となってしまいます。
これはauthorも論文で強調している点です。
✔︎generealizabilityの問題は大きい
いうまでもないですが、アメリカ中部在住の50代で体重が100kgくらいの白人女性が多かったわけです。
日本には到底当てはまらないsettingです。
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メッセージは何か。
考えさせられますが、おそらく:
どういう方法であれbehavioral therapyはある程度効果的だ
という事になるかと思います。
individualよりgroupの方が良いかもしれないが、大した差ではないから、予定がつきやすいindividual visitとしてもよい。
診療所まで通うのが大変な場合など、電話をベースにしたgroup visitでも、ほぼ同等の効果が得られそう。
こういう事を主張している論文に感じました。
結論
どういう方法であれ、診療所を主体としたbehavioral therapyはある程度有用そう。
ではまた。