新型コロナ:本当に黒人の死亡率が高いの?

黒人差別が世界的に問題となっていますが、そもそも黒人は色々な観点で医療の面でも不利だと言われています。

ニュースでも、コロナで黒人ばかり死亡している、と聞いたことがないでしょうか。

この問題に対して科学的に検討した研究が発表されました。

本当に「黒人だから」コロナの悪影響をうけやすいのでしょうか。

 

新型コロナ:本当に黒人の死亡率が高いの?

新型コロナ:本当に黒人の死亡率が高いの?

「実はコロナで重症化するのは(白人でなく)黒人ばかりだ」と巷で噂されています。

もちろん白人も感染するのですが、色んな条件で黒人が条件が悪いんだと。

 

*ここでいう条件とは、

・黒人という人種、とりまく生活環境がコロナ感染に弱い

・黒人がお金がなかったり保険に入れていなかったりするから、感染しても医療機関受診できない

・人種差別があり、病院での黒人に対する対応が悪い(スタンダードな医療を提供していない)

などなど、複合的なものです。

 

これに関する議論も、エビデンスなしでは想像に過ぎません。

「黒人が白人に対して不利だ」というには、その他の条件が同じだと仮定した時に人種だけが違う時、コロナ感染の転帰はどうなのか、という比較が必要です。

まさに疫学的検討。

実際、racial disparityというのは疫学の重要な一分野です。

 

黒人は白人に比べて本当に不利な状況にあるのか。

最新論文を紹介します(N Engl J Med 2020;382:2534-43.)。

 

 

どういう研究?

アメリカ、ルイジアナ州のOchsner Health facilityのデータを使いました。

ルイジアナ州は南部の州で比較的に低所得・黒人が多い所です。

 

Ochsner Health facilityはルイジアナ州で一番大きなヘルスシステムで、40病院や100クリニック等が登録されています。

 

3/1~4/11にPCR陽性となった患者のうち、ヒスパニック、アジア人、他人種を除いた集団が対象となりました。

→白人 vs 黒人の比較です。

 

具体的には、

・3481人のコロナ感染患者(70.4%が黒人)

・コロナで入院となった1382人(76.9%が黒人)

が解析対象で、

・院内死亡したのは326人(70.6%が黒人)でした。

 

*普段Ochsnerでみる患者の内黒人は31%のようです。黒人のコロナ感染は実際かなり多い

 

この母集団で、

・ヒスパニックでない黒人 vs. 白人 で

・3481人のコロナ陽性の患者の中で入院する確率

・1382人のコロナで入院した患者の中で院内死亡する確率

を比較しました。

 

 

結果

<入院となるか>

ロジスティック回帰が用いられました。

「年齢、性別、Charlsonスコア(これが高いとdisease burdenが高い)、低所得エリアに住んでいる、保険の種類、肥満」という因子で調整されると(=これらが同じで人種だけ異なった場合という比較では)

→オッズ比:1.92 (95%CI 1.62, 2.37)

黒人であることにより入院となる確率が増えた事がわかりました。

 

<入院中に死亡するか>

COX proportional regressionが用いられました。

「年齢、性別、Charlsonスコア、低所得エリアに住んでいる、肥満、呼吸数、リンパ球数、血小板数、クレアチニン、AST、ビリルビン、乳酸、プロカルシトニン、CRP」という因子で調整されると

→ハザード比:0.89 (95%CI 0.68, 1.17)

黒人であることと院内死亡は関連が有りませんでした

 

 

解釈は?

黒人は白人と比較し

コロナ感染は多い

コロナ感染すると入院になりやすい

入院した患者の中で比較すると院内死亡が高くなるとは言えない

ということを主張した論文です。

解釈には気をつけましょう。

 

まず黒人にコロナ感染が多い事について。

これは、黒人がコロナに感染しやすい状況に身をおいていることを意味します。

例えばサービス業とか。

しかしこの点に関しては、本論文からわかることはありません。

 

黒人がコロナ感染すると入院になりやすい事について。

論文中には入院した人の特徴を白人と黒人で比較していますが、黒人の方が悪いです。

すると以下のような仮説が立ちます:

・黒人は重症化してからようやく病院にかかるから入院率が高い

・黒人で軽症の人の多くは医療機関にかかっていない

・医療機関を受診した人でコロナ感染者は黒人に多いが、その背景で、医療機関受診していない人の中ではコロナ感染者がもっと黒人に多い

この点が、黒人がコロナ感染に弱いとするポイントです。

 

入院した患者の死亡率について。

これは今までの議論とは全然異なる話です。

同じ重症度なら、院内死亡率は変わらないという意味。

つまり、入院した患者は、おそらくほぼ平等に医療が施され、かつ治療への反応性に黒人と白人であまり差がないことを意味します。

 

よって、この論文は「(院内死亡リスクは変わらないかもしれないけど)racial disparityはある!」と主張しているのです。

 

大きなlimitationはgeneralizabilityでしょう。

ルイジアナ州の一つの医療機関団体のみのデータを用いているので、一般化するのは難しいです。

例えば同じアメリカでも、ボストンの状況はまるで異なります。国の違いくらいの差があります。

 

 

結論

ルイジアナ州では、黒人は白人と比較し、コロナ感染に不利な状況にある。

それは入院する前の段階の話。

ではまた。

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