降圧薬がどんどん開発され、血圧管理の重要性が非常に強調されるようになってきました。
でも依然として高血圧の方は多い印象があります。
実際この20年で、どれくらい血圧コントロールがよくなったのでしょうか。
これをまとめた大事な報告を紹介します。
血圧コントロールはこの20年でどうなった?
食事、運動、喫煙、睡眠、ストレス。
血圧のリスクは日に日に明らかになり、高血圧の治療薬もたくさん開発されました。
血圧のスクリーニングはいたるところで行われ、治療介入の機会もたくさんあります。
なのに、、、血圧高い人、多くないですか。
今回紹介する研究は、1999-2000年と2017-2018年で、「血圧コントロールできている人」の割合を比較したものです(JAMA 2020 10.1001/jama.2020.14545)。
どういう研究?
いわゆるcross-sectional studyです。
NHANESというフリーのデータベースを使用しました。アメリカのrepresentative populationを反映していると言われています。
*NHANESは、アメリカの医学生や研修医がみんな論文を書くために使うデータベースとして有名です。
・高血圧患者を対象とし、
・血圧140/90未満の人の割合を(アウトカム)、
・年齢で調整して、
・年次ごとに(暴露因子)
比較しました。
結果
グラフ一発です。
血圧の良好なコントロールが得られていた高血圧患者の割合は、
・1999-2000年で31.8%だったのが
・2013-2014年で53.8%まで増え、
・2017-2018年で43.7%に減りました!!
保険がない人は特に血圧のコントロールが悪い傾向にありました。
人種も関連性がありました。
アメリカの特徴ですね。
解釈は?
血圧コントロールが良い方、だんだん良くなっていったといっても半分程度。
おそらくCOVID-19の影響で、今年はかなり悪い結果となりました。
医者として、高血圧患者の対応自体は、複雑な側面もありますが、そこまで大きな問題ではない。
例えば循環器内科医はかなりしっかり血圧コントロール傾向にあり、自分の外来でもほとんどの患者さんが130以下となっていました。
*もちろん高齢でADLが低下している方など、コントロールは弱めます。そこら辺は臨床医のさじ加減です。
でもこのデータをみて思うのは、populationを対象と考えた高血圧対策が如何に難しいか、ということ。
病院にちゃんと通ってくれる方なんて、ほんの一部なんです。
そりゃそうですよね。高血圧なんて大抵の場合症状ないし、アメリカでは医療を受けるのに多大なコストがかかります。
気持ちはすごいわかります。
なので、(高血圧患者の治療戦略という課題ではなく)構造的な問題=政策的な課題、なのです。
日本の状況はましだと思いますが、データとして見てみたい所です。
おそらくコントロール悪い人はそれなりにいると思います。
彼らに如何に医療を提供するか、これがchallengingな課題です。
*そのほかにも色んな問題が内包されている、考察しがいのある結果です。
結論
血圧コントロールが悪い患者はまだまだいっぱいいる。
ではまた。