【私の最新論文解説】安定狭心症に対するPCIの適応、今のじゃ不完全

PCIガイダンスにFFRだけだとだめかも。

これがもはや自分の中で大きなテーマになっています。

他の指標をプラスすることで、PCIをより効率的に選択できるんでないかと思っています。

これを直接的に示した初めての観察研究です。

 

安定狭心症に対するPCIの適応、FFRじゃ足りないかも

安定狭心症に対するPCIの適応、FFRじゃ足りないかも

結論から言うと、

FFRだけより、FFR+CFC(という指標)の方が良い!

FFR+CFCというのを、新しいPCIの適応基準にしたい!

これを示した研究です(Eurointervention 2020 10.4244/EIJ-D-20-00401)。

*注)リンク先はどアップの私の顔写真付きです

 

いままでもブログで紹介してきていますが、安定狭心症に対するPCIは、その意味合いが問われています

ガイドラインでは、そもそも狭心症症状緩和のためという適応基準です。予後を良くするためではありません。

一方、最近のメタ解析では、遠隔期の心筋梗塞を予防する可能性が示唆されています。

おそらく安定狭心症でも、PCIをやったほうがよい病変があるんですが、それが何なのか、はっきりわかっていませんでした。

 

現在PCIの適応を決めるスタンダードはFFR(fractional flow reserve)です

FFRは「対象病変の狭窄度」を示す指標で、1以下の値を取るものですが、0.8以下の場合「冠動脈の太い枝に有意狭窄あり」とされる事が多いです。

→有意狭窄とは、冠動脈がしっかり狭いことを意味します

→よって、PCI(冠動脈の狭窄部分を拡張する)の適応としてreasonableと考えられます。

 

今までのいくつかのtrialで、FFR-guided PCI(FFRが低ければPCIの適応とする)の有効性(心事故を減らす)が示されてきました(参照こちら)。

しかし!

・比較はFFR-guide vs. angio-guide(見た目の狭窄度でPCIの適応を判断する)というものが多く、

→そもそもangio-guide PCIは内科的治療(薬のみ)に対する優位性はありません。

→FFR-guideが内科的治療にまさる、という強いエビデンスはありません。

→よって、FFRのみでPCIの適応を決めるのが完全に良いとは言えません。

 

やってれば分かりますが、FFR-guideでは、おそらく治療すべきでない病変も含まれてしまいます。

そこで!

CFC (coronary flow capacity)という指標を加えることで、よりPCIをうまくガイドできるかも!

と思っているのです。

 

 

CFCとは?

CFCが低い状態というのは、

CFRが低い状態+負荷時の血流が低い状態」

のことを言います。

*CFRとは「負荷時の冠動脈血流÷安静時の冠動脈血流」です。

この記事でわかりやすく解説しています

 

CFRが低い状態とは、冠動脈が負荷に応じて適切に血液量を増やせない状態を意味し、いわゆる「虚血」の概念に近いです。

CFRが低いと予後が悪いことがたくさんの研究で言われています。

しかし「CFRが低い!」といっても色々で、

その中には、

・負荷時の血流が低いのでCFRが低い

・安静時の血流が高いのでCFRが低い

という機序があります。

(だって負荷時÷安静時なんだから)

 

CFCとは、低いCFRと低い負荷時の血流といいました。

・低いCFR=虚血状態=血流動態が悪い状態。直したい。

・負荷時の血流が低いというのは、何らかの要因により冠動脈血流が阻害されているということ。

→何らかの要因とは、冠動脈の太い部分(PCIで治療できる部分)か細い部分(微小血管)。

 

よって!

CFCが低い状態=何らかの要因により冠動脈血流が阻害されている!!

 

これと、

FFRが低い状態=冠動脈の太い部分に狭窄がある

ということを合わせると!!

 

低いCFC+低いFFR=冠動脈の太い部分に狭窄があるせいで冠動脈血流が阻害されている!!!!

という「まさにPCIで治療すべき病変」が抽出できる!!!!!!!

と考えているわけです。

 

*一方、FFRが低くでもCFCが低くないのは、「冠動脈の太い部分に狭窄があるが冠動脈血流が阻害されてない」状態なので、PCIでぜひ治療すべき、とは言えないわけです。

 

 

で、何を示したの?

で、何を示したの?

血管毎の予後(vessel failure)に対し、PCI(やったかどうか)とCFC(低いか低くないか)の間にinteractionがあることを示したのです。

*Interactionについてはこちらの記事で説明しています

 

「CFCが低い」という定義がいまいちはっきりしていないので、それを統計的に検討した上で、結果

・CFCが低い病変に対するPCI:ハザード比 0.278 (95% CI: 0.103–0751)

・CFCが低くない病変に対するPCI:ハザード比 1.393 (95% CI: 0.783–2.478)

Interaction p<0.001

となりました。

*PCIはFFR-guidedです

 

この意味は、

・PCIはCFCが低い病変に対しては血管予後を良くする

・CFCが低くない病変に対しては予後を良くしないし、むしろちょっと悪くするかも

PCIの予後に対する効果は、CFCの状態に応じて有意に異なる

ということです。

ちなみにFFRガイドと比較しFFR+CFCガイドとすることで、なんと64%のPCIを減らすことができます!!

(すごいでしょ)

 

 

解釈は?

FFRだけより、CFCを加えて考えたほうが、より効果的なPCIを選択できる。

FFRが低くてもCFCが低くない病変はPCIしないほうがよいかも。

というメッセージです。

 

重要なlimitationは、この研究が観察研究だということです。

結局RCTをやらないとわかりません。

また、データをtrainingとtestに分けてないので、観察研究としても不十分です。

「こういうコンセプト面白くないですか」と提示した程度の研究、という感じです。

 

今後の発展の余地があるので、とても楽しみです。

最終的には、大規模RCTでこれを示したいです。

 

お付き合いいただき有難うございました。

ではまた。

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