世界中、ものすごいスピードでワクチン開発が進んでいます。
本日紹介するのはイギリス発、ChAdOx1 nCoV-19というワクチン。
このワクチンがphase-1/2 trialをクリアしたという衝撃の報告。
これを解説します。
新しいCOVID-19ワクチン:phase-1/2クリア
ChAdOx1ってダサくないですか?
何の略かというと(おそらく)
Ch: Chimpanzee
Ad: Adenovirus-vectored
Ox: Oxford
です。
この研究グループは以前にChAdOx1 MERSというワクチンを開発しており、Phase-1 trialが終了しています。
→MERSもコロナウイルスの一つなので、これのSARS-CoV2版、と考えれば良いでしょう(ざっくり言えば)。
*抗原はSARS-CoV2の表面に出ているスパイク蛋白です
開発を急いでいるので、phase-1とphase-2を同時に検証した研究が行われました。
その結果が論文として公表されたので、これを解説していきます(Lancet 2020 10.1016/ S0140-6736(20)31604-4)。
どういう研究?
・健康な成人を対象;症状ある人やPCR陽性の人は除外
*全員スクリーニングしたわけでなく、すでに抗体をもっている人も一部含まれていました
→1:1にChAdOx1ワクチンかMenACWYワクチン(コントロール)にランダム化されました
*MenACWYとは髄膜炎菌ワクチンの一つです。
→なぜ生食でないかというと、打った時にChAdOx1ワクチンは痛みがあるから(らしい)です
→痛みの有無で、被験者がどちらの群かわかってしまうのを防止することが目的です
Primary outcomeは2つあって、
・症候性COVID-19の発症【有効性】
・ワクチンによるserious adverse event【安全性】
です。
Secondary outcomeとしてimmunogenicity(抗体できるか等)も当然検証しています。
*この論文はpreliminary reportなので、安全性とimmunogenicityの評価がメインです
結果
1077人がランダム化されました。
年齢の中央値は35歳、ほとんど白人でした。
以下、(ChAdOx1 vs. コントロール)とします。
<安全性>
ワクチン接種後の副反応の頻度です;
痛み:67% vs. 38%
腫脹:83% vs. 58%
疲労感:70% vs. 48%
頭痛:68% vs. 41%
38度以上の発熱:18% vs. <1%
*アセトアミノフェンを予防的に内服することでこれらの頻度は少し減りました。10%くらい。
*症状は、投与後翌日が一番頻度高く認められました。
接種後28日以内のChAdOx1に関連すると考えられる副反応はどれも軽い〜中等度のもので、自然軽快しました。
想定外の副反応として、1人だけ、ChAdOx1接種後9日目に溶血性貧血を発症しました。経過は良かったとのこと。
<Immunogenicity>
SARS-CoV2のスパイク蛋白に対する抗体価は、ChAdOx1投与後28日でピーク、56日目も高値を維持していました。
解釈は?
ChAdOx1は重大な副反応はなく、1回接種で十分なimmunogenicityが得られる。
という報告でした。
(かなり端折ってます)
重大な副反応はないとしても、副反応はかなりの高頻度でみられました。
アセトアミノフェンである程度は予防できそうな結果でしたが、それでも多い。
・高頻度の副反応をどう扱う(予防する)か
・長期的な抗体保持は可能か
・実際に感染予防できるか
・他の人種、高齢者や併存疾患のある方にも適用できるか
このあたりが課題です。
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Phase-2/3は1万人以上の規模とのこと。すでにenrollmentが開始されているそうです。
マジで早い
結果に期待しましょう。
結論
ChAdOx1ワクチンがPhase-1/2を通過して、すでにPhase-2/3が開始された。
ではまた。