トランプは正しかったか!?【ヒドロキシクロロキン予防内服】

ヒドロキシクロロキンという薬が新型コロナに効くんではないか、と様々な研究が行われてきました。

そんな中、トランプがヒドロキシクロロキンの予防内服を発表。

その時点でエビデンスはなく、かなりの非難を浴びました。

先週、ついにヒドロキシクロロキン予防内服の効果が発表されました。

トランプは正しかったか!?

 

 

トランプは正しかったか!?【ヒドロキシクロロキン予防内服】

トランプは正しかったか!?【ヒドロキシクロロキン予防内服】

ヒドロキシクロロキンという薬。

かなり初期に新型コロナの治療薬として注目され、様々な科学的検証が行われてきました。

データ捏造事件もあり、、

今の所、残念ながら疫学的に効果は証明されていません。

 

トランプがヒドロキシクロロキンの予防内服を発表したのは5月の事でした。

その時は当然エビデンスなし。

なぜそんな事をやったか?

 

実は、驚かれるかも知れませんが、「ウイルス治療薬を予防薬として用いる」ということは、科学的根拠のあるプラクティスなのです。

特にエビデンスが豊富なのは、インフルエンザ。

タミフルが従来使われてきましたが、最近ゾフルーザの有効性がNEJMに発表され(日本発!)、注目を浴びました(この記事参照)。

トランプが行ったのも、ヒドロキシクロロキンの効果を期待しての事でした。

おそらく

 

さて、先週。

ヒドロキシクロロキン予防内服の効果を検証した論文が発表されました(N Engl J Med 2020; 383:517-525)。

これを見てみましょう。

 

*ヒドロキシクロロキンの効果は今まで証明されていませんが、勿論対象によって効く効かないがありそうです。

例えば、今までの臨床研究は主に入院中の患者が対象。

より軽症者には効く可能性があるのかもしれません。

予防内服というセッティングは、もっとも軽症な患者への有効性、と考えることもできます。

 

 

どういう研究?

アメリカとカナダにて、PCRで確定診断したコロナ感染者に濃厚接触した方が対象です。

濃厚接触とは、家族内、医療従事者、その他仕事場で「2m, 10分以上の接触」と定義しています。マスクなしアイシールドなしがhigh risk、マスクありアイシールドなしがmoderate riskとして解析しています。

 

・濃厚接触後4日以内の方、当然症状なしの方が対象です

・ヒドロキシクロロキンまたはプラセボにランダム化、5日間の予防内服が行われました

・primary outcomeはCOVID-19様症状です(このtrial期間はPCRへのアクセスが限られていました)

 

*REDCapというシステムで、ほぼ完全にインターネット錠でリクルート、フォローアップが行われました。

 

 

結果、効果なしだが・・・・

821人がランダム化されました。

このうち88%がhigh riskでした(マスクなしアイシールドなしでの暴露)

 

暴露後14日間のフォローにて、症状発症したのは:

ヒドロキシクロロキン群11.8%(49/414)

プラセボ群14.3%(58/407)

差は–2.4%, p=0.35でした。

 

入院したのは、両群とも2人でした。

lost follow-upは11%、比率は両群で差がありませんでした

 

5日の治療期間での副作用の頻度は:

・ヒドロキシクロロキン群で40.1%

・プラセボ群で16.8%

p<0.001で有意差ありでした。

 

 

解釈は?

ヒドロキシクロロキンの予防効果ははっきりしませんでした。

 

が。

 

重要なlimitationがいくつか。

✔アウトカムがPCRで確定診断されていないという点

→patient visitもないので、症状は完全な自己申告ということです

→しかもrecruitが完全にネット上で行われているため、かなりのselection biasが発生している可能性があります

…例えば、アンチトランプの人。ヒドロキシクロロキンの効果を出したくないですね。

 

✔COVID-19でない「COVID-19様症状」が相当数含まれていることを考えると、どういうことになるか?

non-differential misclassificationです。

→簡単に言うと、アウトカムの差が希釈されてしまう、ということです

→よってp値が高くなってしまい、本当は差があるのに「有意差なし」となってしまいます

(詳細はこの記事参照

 

✔また、そもそも「本当に暴露しているのか」もわかりません。自己申告です。

ちゃんと内服しているかも不明ですね。アドヒアランスも調査していますが、これも自己申告結果に基づいています。

 

***

さて。

この研究で、「ヒドロキシクロロキンに予防効果がない」と言えるか。

そう言えるならどういう意味かというと、

世界中で40以上行われているヒドロキシクロロキンの予防効果に関するRCTが中断されるべき、という事です。

この論文で結論できるなら、絶対中止すべき。

結論できないなら、継続すべき。

どう思いますか?

おそらくほとんどの方が、他のRCTも継続すべき、と思うでしょう。

この観点では、予防効果がないとは言えない

 

じゃあこの研究の意味はなんだったのか?

「conclusion」だけが先走り、メディアによって「エビデンスのない情報」が拡散されるだけ、ではないか?

むしろマイナスしかないかもしれません。

こういう研究がNew England Journal of Medicineにのってしまったのは、批判されるべきかもしれません。

実際NEJMホームページの「コメント」をみると、批判が殺到してます(こちら

 

*効果がないという事を言うためには、効果がないと結論できるレベルのエビデンスが必要です。この研究はそのクオリティに達していません。

→「エビデンスがない」という解釈についてはこちら参照ください。

 

 

結論

ヒドロキシクロロキンは新型コロナに予防効果があるかないか、結局わからない。

「予防効果がない」とは言えないので注意。

トランプは正しかったか・・・・・・・まだわからない。

ではまた。

-COVID, 論文解説

Copyright© Riklog , 2020 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.