皆ココア飲むべし!?【最新ランダム化試験の解説】

ココアやチョコレートは健康に良い、と以前から言われています。

しかし実は、それが直接的に示されたことはありませんでした。

今回紹介するCOSMOS Trialという大規模ランダム化試験にて、それが明らかになりました。

この詳細を紹介します。

 

 

皆ココア飲むべし!?

皆ココア飲むべし!?

ココアやチョコレートはカカオから作られますが、それが含むポリフェノール、メチルキサンチン、カフェインなどは健康への良い影響が示唆せれてきました。

「示唆されてきた」というのは、観察研究によりその関連性を示したものがある、ということです。関連性なしと結論した観察研究もあります。

 

観察研究の大きなlimitationとして、大きく二つあります:

・実際の摂取量が正確に判別できない:多くの研究ではアンケートにより食事、栄養摂取量を測定しますが、それには多大な誤差が生じ得ます(詳細こちら)。

・観察研究なので因果関係を直接言うことができない(詳細こちら

 

そこで行われたのが大規模ランダム化試験、COSMOS Trialなのでした(The American Journal of Clinical Nutrition, 2022;, nqac055)。

 

 

どういう研究?

アメリカに住む60歳以上の健常者21442人を2*2 factorialにランダム化して長期予後をみた研究です。

・ココアパウダー(ココアフラバノール+エピカテキン) vs プラセボ

・マルチビタミン vs プラセボ

という2つの比較をみています。

 

*この論文を読むと、いかにrecruitから試験開始が大変だったかがわかります。300万人近くに手紙でスクリーニングを行い、12万人にinformed consentを行い、その後除外が行われ最終的に2万人なのです。気が滅入ります。

 

参加者は中央値で3.6年フォローされました。

 

primary outcomeはcomposite CVD eventです:MI, stroke, 冠動脈治療、心血管死亡、内頸動脈治療、末梢血管治療、不安定狭心症

これはかなり広くとられていますが、COVIDによりMIやstrokeが少なくなった影響を反映したそうです。

*一方、内頸動脈や末梢血管などはあまりココアの影響は出なさそうで、むしろココアの効果を希釈しているような気もします

 

per-protocol analysisでCOX modelにて判定しました。

 

 

結果は?

primary outcomeについてはHR 0.90 (95%CI: 0.78, 1.02)でした。

有意差なしでしたが、Kaplan-Meier curveをみると、

・1年まで一緒

・1年後からココア群よし

という感じなので、明らかにproportional hazard assumptionは成り立っていません(詳細こちら)。

 

*この1年間一緒というのが、絶妙に「確からしいココアの効果」を示しているように見えます。なぜなら、食事による心血管病予防効果がすぐ反映されるわけがないからです。

 

secondary analysisとしての「心血管病による死亡」についてはHR 0.73 (95%CI: 0.54, 0.98)でした。

これもK-M curveみるとわかりますが、ココアの効果はかなりはっきりとしています。

 

Lost follow-upは1%未満とかなり少なかったですが、complianceは3年目で82-3%でした。これ実はdietary intervention trialとしては結構良いのですが、薬のRCTと比較してはやや低いかもしれません。

このcomplianceをIPWで調整したper-protocol analysisでは、primary outcomeには有意差がありました。

*per-protocol analysisってIVを使うのが一般的ですが(詳細こちら)、ここではIPWによりselection biasを調整する方法がとられています(詳細こちら)。

 

癌への影響はありませんでした(HR 1.1 [95%CI: 0.97, 1.24])

*これをむしろ有害のサインとして捉える見方もあるかもしれません

 

副作用については、

・吐き気が6%だけココア群で多かった

・風邪症状が5%だけココア群で少なかった

・頭痛が15%もココア群で少なかった

という結果でした。

 

 

解釈は?

ココアの抽出物は長く飲むと心血管病予防に有効かも、ということです。

そして実は頭痛予防にかなり効果的かもしれません。

 

いくつか考えるポイントがあります。

1) primary outcomeには有意差がなかった点

こんなツイートをしました。

 

NEJMなどはこれを持って「因果関係は認められなかった」と結論することを強要します。

ただ、COSMOSのようなphase-3ではないcommunity trialの場合は、そのstringentさはむしろマイナスな気がします。

 

2) 癌のリスクを上昇させる傾向にあった

これは病態生理的にはあまり説明がつかないので(むしろ癌予防のメカニズムの方が強そう)、おそらく確率的なものだと思いますが、、

これを「確率的」として、primary outcomeの方を「power不足」とするのは、一貫性がない気がします。

これは自分的にCOSMOSの一番残念だったところかと思っています。

 

3) この規模のRCTは今後行われることはないでしょう

上述した通り、この手のcommunity trialには半端でないコストがかかります(100~1000億単位)。

そして薬の新規承認といった大きなビジネスが動くわけでもない。

よってココアに関しては、今後はCOSMOSのエビデンスが最上位として位置付けられ、観察研究で補完される感じになるかと思います。

つまりこのRCTから何かしらの結論が欲しいわけです。

 

そしたらやはり、心血管死亡が低下したというのは目を見張る結果なわけです。

よって、健康なアメリカ人高齢者に関しては、(特に心血管病リスクが高い場合)、ある程度ココアを勧める根拠となりそう、ということになると思います

この辺はかなりexpert opinionなので、はっきりしたことは言えませんが)

 

 

結論

ココアパウダー、毎日1年間以上摂取すれば心血管死亡・頭痛の予防に効果的かも。

なお(アメリカ人)高齢者の場合です。

ではまた。

-論文解説

Copyright© Riklog , 2022 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.