新型コロナが蔓延しだして心筋梗塞(含む心血管疾患)が減った、というのは界隈で有名な話です。
今までもそういった報告を紹介してきましたが、そのメカニズムは不明でした。
外に出歩かなくなって、心筋梗塞となるトリガーが減ったことが重要かと思っていましたが、
実は環境汚染が改善したことも関係あるかもしれない。
そんなコメンタリーです。
コロナで心筋梗塞が減ったのは、大気汚染が改善したから!?
コロナによる様々な悪影響がニュースになり、良い面がなかなか見えません。
そんな中、もしかしたら「心筋梗塞が少なくなった」というのは良い面の兆候かもしれません。
それが一時的な影響なら意味ないのですが(ERの混み具合を緩和するという効果はありますが)、
実は長期的な効果かもしれない。
それなら人類にとって良いことですね。
なんで長期的な効果かもしれないのか?
環境汚染がリバースされているから。
こういうopinionを紹介します(EHJ 2020 10.1093/eurheartj/ehaa411)。
どれくらい環境は良くなったの?
ロックダウン、工場閉鎖により、環境がよくなったのは時々ニュースになります。
ヴェネツィアの水路に魚が戻ったとか。
具体的にどのくらい環境は良くなったんでしょうか。
実はこんなに良くなっているそうです。
・武漢では大気中の二酸化窒素濃度は1/10になりました
・ヨーロッパでは、ロックダウン1ヶ月で二酸化窒素濃度は平均して半分になりました
*二酸化窒素は、自動車や工場で排出される大気汚染ガスです
またロックダウン後3週間で、PM2.5はこんなに減りました:
・ソウルで54%
・武漢で44%
・インド首都(ニューデリー)で60%
これすごいことなんですよ。
環境がよくなるとどれくらい良いの?
PM2.5濃度が10µg/m3増えると、
・循環器疾患で入院する人が11%増える(1日単位で)
・心血管疾患による死亡率が10%増える(長期的に)
と報告されています。
*癌の原因ともなります
ヨーロッパでは大気汚染による心血管疾患の影響は、平均2.2年の平均寿命が減ることに寄与している報告もあります。
なんでかというと、こんなメカニズムが考えられています。
・大気汚染が全身の炎症の原因となり動脈硬化を促進する
・血管内皮機能を低下したり凝固系に異常をきたす(=血管が詰まりやすくなる)
・自律神経系が不安定になる(=不整脈が起きやすくなる)
・DNAの安定性に影響し、細胞増殖をきたす(動脈硬化や癌の原因となる)
これらがある程度リバースされることが期待されます。
こんなに環境が良くなったのは信じされないくらいすごい!
ちょうどグレタさんとかが取り上げられ、皆環境汚染に関心を持ち始めてきた所でした。
が、人間主導ではこんなに劇的に変わることは有りえませんでした。
いま心筋梗塞が少なくなっているのが環境改善を原因としているかは全く不明ですが、その可能性もなくは無さそう。
これが長期的に持続すれば、地球の健康にも人の健康にもよい。
コロナには、こういうpositiveな側面があります。
はっきり言って、医者や研究者がいくら頑張っても、populationレベルで心筋梗塞なり生活習慣病を減らすことは殆どできません。
それほど、生活習慣を変えることは難しいのです。
そして市場原理に従うのみでは、世の中の仕組みは変わらない。
でもコロナにより、世界中の人の生活習慣が変わった。
運動が少なくなったりマイナスの側面はありますが、環境がよくなったというプラスの側面もしっかり認識されるべきでしょう。
公衆衛生に携わる者としては、この環境へのプラスの影響が長期的に続くことを期待するのみです。
そうしないと環境汚染が不可逆的になってしまう。
裏を返せば、今までのように手軽に観光に行けたり、大量生産・消費するシステムには戻ってはいけないということです。
コロナで悪影響を被っているのは人間だけですが、環境汚染で被害を被るのは地球です。
結論
コロナにも良い側面があり、それは人間だけでなく地球を救う大きな一歩かもしれない。
ではまた。