新型コロナウイルスに対するPCR検査はあまり信頼できない、とよく言われています。
それに代わるものとして抗体検査があります。
IgGとIgMが主な抗体ですが、それは感染後どのように経過するのでしょうか。
この記事では抗体に関する大事な報告を紹介します。
新型コロナウイルスに対する抗体について知ろう
PCRは限界があります。
感度が低すぎるのです。
→陰性でも感染していないと言えません。
注目されているのが抗体検査。
肝炎ウイルスの検査では当たり前のように行われているものです。
イムノグロブリンM(IgM)やIgGが感染の指標になります。
重要なのは、感染後どういうタイミングでIgGやIgMが上昇してくるか。
これを検証した初めての研究がNature Medicineに発表されたので、これを解説します(Nature Medicine 2020)。
中国からの報告です。
結果は・・・期待できそう
COVID-19患者285人が対象→そのうち70人が経時的に抗体を検査していたので、彼らの報告です。
結果はこの通り。
・IgGは発症17-19日後には100%陽性
・IgMは発症20-22日後に94%陽性
となりました。
どちらも陽性率は日を追うごとに上がっていきましたが、3週間後IgMの陽性率は少し下がる傾向が見えました。
✔重症患者は非重症患者に比べ、発症後8-14日のIgG陽性率が高い傾向にありました(図は割愛)。
✔最初IgG、IgMが陰性だった26人の患者においては、
・全員20日以内にはIgGかIgMが陽性となりました(セロコンバージョン)
・陽性となる期間の中央値は発症後13日でした
・IgGとIgMどちらが先に陽性になるかは、人によりました
抗体検査は使えるか?
続いて、この抗体検査が使えるか検証しました。
・COVID-19が疑われるがPCRが2回陰性だった52人に対し、抗体検査を行いました。
→そしたら、4人がIgGかIgMのどちらかが陽性でした。
・濃厚接触のある164名で、暴露後30日以上して採取した血液で検証しました(上図)。
16名はそもそもPCR陽性、彼らは抗体も陽性でした。
PCR陰性だった148人のうち、7人が抗体陽性でした。
164名中10人が、無症候かつ抗体陽性でした。
感想
かなり小規模の研究でselection biasが強いと思いました。
しかし、感染すればIgGかIgMは陽性にはなるようなので、既感染の判断には使えそうです。
・B型肝炎ウイルス等他のウイルスでは、まずIgMが増えてきて続いてIgG、という経過が多い印象ですが、新型コロナウイルスはそうでないのかもしれません。
→IgG又はIgMの陽性という方法で既感染のスクリーニングをしていくことになりそうです。
・PCRは感度が低く、陰性でも感染していないとは言えない、と指摘されてきました。
実際は発症後すぐでは、4/52 (8%)がPCR陰性+抗体陽性でした。
抗体検査で拾いきれてもいませんが、PCRよりよいのかもしれません。
いずれにせよ疫学研究としては小規模かつ不完全(システマティックに行われていない)ので確定的なことは言えませんが、なんとなく使えそう、という印象がもたれます。
ではまた。