新型コロナに降圧薬は危険か

新型コロナウイルスに降圧薬(ARB, ACE阻害薬)が危険かも、と考えられてきました。

分子レベルでは「感染のリスクを増やす証拠」があるのです。

実際にはリスクが増えるのかどうか、大規模な臨床試験で検討されました。

この結果を解説します。

 

*自分の判断で降圧薬を中止しないでください。絶対だめです。その前にこの記事の研究を参照ください。そして主治医に確認してください。

 

 

新型コロナに降圧薬は危険か

新型コロナに降圧薬は危険か

新型コロナウイルスは、肺上皮細胞に発現しているACE2(という膜結合型のアミノペプチダーゼ)にくっつき、細胞内へ侵入する手がかりにすると考えられています。

そしてかなり一般的な降圧薬のARB、ACE阻害薬は、肺のACE2発現量を増やす事が知られています。

よって、ARB、ACE阻害薬はコロナ感染のリスクになるのではないか、と考えられてきました。

 

一方、実験系で正しいとされるような事象も、人間では確認されないことは山のようにあります

人間でも正しいとされる事象のほうが、遥かに少ないです。

 

*例えば薬の開発。開発される薬は、全て実験系では確実に効くと示されたものです。

でもその後人で臨床試験が行われ、実際の効果が証明されるものは1割以下と言われています。

 

 

ARBとACE阻害薬も本当に危険なのか、臨床研究が行われました。

今週のNew England Journal of Medicineという医学の一流雑誌に、なんと3本の研究結果が報告されました。同じ内容で3つの報告が同時に掲載されるのは異例です。

 

これらを簡潔にわかりやすく説明し、その解釈を考えてみます。

 

 

研究1:院内死亡のリスクを検証した大規模研究

アジア、ヨーロッパ、北米の169病院から8910人の患者を対象にし、新型コロナ感染症による院内死亡のリスクをみた観察研究です(N Engl J Med. DOI: 10.1056/NEJMoa2007621.)。

かなり信頼性が高い(結果の汎用性が高い)研究と考えられます。

この研究は非常に重要なので他の記事でも解説しますが、ARBとACE阻害薬については以下の通りです。

 

年齢、性別、基礎疾患、内服薬で調整したロジスティクモデルで、

・ARBは院内死亡と関連有りませんでした(OR 1.23, 95%CI 0.87-1.74)

・ACE阻害薬は低い院内死亡率と関連しました(OR 0.33, 95%CI 0.20-0.54)

 

少なくとも悪いことにはならなそうでした。

 

*この研究からACE阻害薬は飲んだほうが良い、とはならないことに注意しましょう。

それはランダム化試験で検証される必要があるし、そもそも分子的にreasonableではありません。

 

 

研究2:イタリアのケースコントロール研究

医療崩壊してCOVID-19の致死率がかなり高くなったイタリアでの研究です(N Engl J Med. DOI: 10.1056/NEJMoa2006923.)。

患者6272人と、年齢・性別・居住地をマッチさせたコントロール30759人を用いたケースコントロール研究です(ケースコントロール研究についてはこちら)。

つまりこの研究では、新型コロナウイルスの罹患するリスクを調べています。

 

結果、

・ARBはコロナ罹患リスクと関連有りませんでした(OR 0.95, 95%CI 0.86-1.05)

・ACE阻害薬はコロナ罹患リスクと関連有りませんでした(OR 0.96, 95%CI 0.87-1.07)

 

また、重症化に関しても関連なさそうでした。

 

 

研究3:ニューヨークの単施設大規模研究

ニューヨークも大変なことになりましたね。

この研究はなんと一つの病院での研究です(N Engl J Med. DOI: 10.1056/NEJMoa2008975.)。この病院では、コロナ検査をした12594名中5894名がPCRで陽性になりました。

何の薬がPCR陽性になる率と関連あるかを調べています。

 

結果、ARBもACE阻害薬も関連有りませんでした。

 

重症化についても関連有りませんでした。

 

 

解釈は?

ARBとACE阻害薬は、感染リスクや重症化のリスクには関連なさそう、ということで良いでしょう。

ランダム化試験でないので交絡因子が取りきれませんが(この記事を参照)、全然異なる集団を対象にした、比較的大規模な3つの研究で同様の結論になっているので、真実に近いかと思われます。

 

研究1でACE阻害薬はむしろ良さそうかも、という結果となっていますが、これは調整されていない交絡因子などによるものでしょう。ACE阻害薬飲んだほうが良いとは到底言えないです。

 

メッセージは:

高血圧や心不全に対し今ARBやACE阻害薬を飲んでいる方、休薬する必要はない(飲み続けたほうがよい)

ということです。

 

 

結論

分子的にリスクが疑われるような薬でも、人ではリスクとならない例となりました。

今内服されている方、半端な知識で、自主的に降圧薬を止めてしまうことのないようにお願いします。

ではまた。

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