新型コロナの難しいのは無症候性感染です。
でも本当に完全に無症候性なのかというと、多くは検査の時に発症前だっただけ、という報告もあります。
実際どれくらいが無症候性なのか?
ダイヤモンド・プリンセス号の患者データを解析した研究が発表されました。
新型コロナの無症候性患者って実際どれくらいいるの?
新型コロナ検査で陽性となった症状がない患者。
完全に無症候性か単なる発症前なのか。
とても気になることですが、患者の追跡が難しかったりして、今まではっきりとした見解がありませんでした。
そんな中、この件に関して、今週のNew England Journal of Medicineに、ダイヤモンド・プリンセス号の患者データを解析した日本発の研究が発表されました(NEJM 2020 10.1056/NEJMc2013020)。
Correspondenceというletterのような小さくまとまった報告ですが、とても参考になります。中身をみてみましょう。
どういう研究?
ダイヤモンド・プリンセス号は3711人の乗客+クルーが全員検査され、712人がコロナに感染した、という事例でした。
712人のうち410人が検査時には症状がありませんでした。
この内、
・96人の無症候だけどPCR陽性の方
・32人のPCR陰性の方
が対象となり、その後の経過が追われました。
結果は?
年齢の中央値は59.5歳。
96人の無症候性PCR陽性例のうち、11人がその後症状出現しました。
つまり完全な無症候患者は89%。
高齢であるほど、完全な無症候患者は少ない傾向にありました。
32人のPCR陰性の方の内、8人がその後(72時間以内に)陽性になりました。
→が、全員無症候のままでした。
無症候患者のうち、PCR陽性からPCR陰性が2回連続で出るまで(感染が治るまで)の期間は、中央値で9日でした。
PCR陽性後、8日目では48%、15日目では90%が、PCR2回陰性となりました。
高齢であるほど、陰性となるまでの期間が長い傾向にありました。
*だいたい1日おきにPCR検査が行われていました。
解釈は?
意外に無症候性が多い!という報告でした。
以前のアメリカ介護施設での報告とはちょっと異なります(この記事で解説済)。
母集団の違いにより、無症候性の割合がかなり異なることが示唆されました。
プリンセス号の乗客は、だいたい60歳くらいの元気な方。
そしてプリンセス号に乗るほどお金持ちです。
そういうselection biasはあります。
また、知りたかったのはどういう人種が対象となっていたか。
これはかなり重要な情報です。
ダイヤモンド・プリンセスのコロナ感染は1/3くらいが日本人で、他は様々な国から参加していました。
今回対象となった100人の国籍がどんな分布だったか、非常に興味深い点でした。
年齢が高いほど無症候が少ない、ということは予想されたことです。
元気さが少ないほど、発症するリスクは高いわけです。
プラス、もしかしたらアメリカ人・元気さということが影響して、以前の報告ではほとんど無症候がなかったのかもしれません。
アメリカの報告との違いは、年齢だけでは説明できないでしょう。
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この解析対象が主に日本人であったと予想すると、元気な日本人は、無症候性+PCR陽性のpopulationのうち完全に無症候性が9割くらいあるという結果です。
症例数は少ないし上記のような強いselection biasはあるものの、9割はかなり多い。
よって「PCR陰性なら完全な無症候性患者は多いんだよ!」ということがそれなりに真実だと思われます。
無症候性+PCR陽性の方にとっては朗報となる結果でした。
結論
元気な人で無症候+PCR陽性であれば、症状でない確率はそれなりに期待できそう。
ではまた。