コロナのせいで脳梗塞の検査数が減ったぞ

コロナのせいで患者が減った、とはよく言われる話です。

感染するのが怖いので病院に行かなくなった。

一方、医療者側の感覚にも影響していることが指摘され始めています。

この記事で紹介する論文は、「コロナのせいで脳卒中の検査数が減った」というものです。

 

 

コロナのせいで脳梗塞の検査数が減ったぞ

コロナのせいで脳梗塞の検査数が減ったぞ

今週のNew England Journal of Medicineで興味深い報告がでました(NEJM 2020 10.1056/NEJMc2014816)。

コロナのせいで脳卒中の検査数が著明に減ったと。

この論文をみてみましょう。

 

iSchemaView社のRAPID software platformというデータベースを使った、アメリカからの報告です。

RAPIDはアメリカ全土に普及しているソフトウェアで、脳梗塞患者の緊急カテーテル治療の適応を判断するためのものです。

頭部MRIを撮ったら、リアルタイムにこのデータベースに反映されていきます(凄いですね)。

 

この研究は、RAPIDを導入している856病院にて、2019年7月から2020年4月に検査が行われた23万人のデータを参照しています。

1日1病院あたりの検査数を、時間軸プロットしたものが、このグラフになります。

脳梗塞検査数の推移

ブルーの箇所がパンデミックの前、黄色がパンデミック前期とされています。

その間くらいに、赤の文字で書いてあるのが、アメリカでnational emergencyが宣言された日です。

明らかに、青と黄色の期間の間で検査数が減少しているのがわかります。

具体的には、ブルーの期間と比較し黄色の期間では、検査数が39%減っていました

 

*論文では、

・州ごと

・患者の年齢や性別ごと

・脳梗塞の特徴ごと

などで層別化して比較していますが、いずれもだいたい40%くらい検査数が減っています。

 

この研究はassociationしかみていませんが、明らかにコロナウイルス感染症の蔓延を原因として脳梗塞に対する検査数が減った、と言えるでしょう。

 

*なぜならそれ以外の要素で検査数が減る理由がなさそうだからです。

 

 

解釈は?

コロナのせいで脳梗塞の検査数が減った、という主張は間違いなさそうです。

が、それ自体からは直接あまり示唆はなく、その解釈が重要です。

データから解釈できることはないので、想像となります。

 

おそらく著者には、

ERや外来がコロナに手一杯になって、脳梗塞患者に従来のケアができてないかもしれない

という主張が裏にあるんだと思います。

 

しかし、コロナ感染でsocial distancingの政策が取られてから、急性心筋梗塞の患者数が減ったという報告もあります。論文ではありませんが。

同様に脳梗塞の患者数自体が減ったから検査数が減ったかも、という可能性も十分あります。

 

私の臨床医としての感覚では、脳梗塞が疑われる方の頭部MRIを躊躇する、という事は、いくらパンデミック時だろうとない気がします。

*ただアメリカの状況やシステムは日本のものとかなり異なるので一概に言えませんが。

(ニューヨークのように)本当にERがパンクしたら、適切な対応は困難でしょう。

 

今後の検査数の推移とともに、脳梗塞のアウトカムがどう推移していくかにも注目されます。

 

 

結論

コロナのパンデミックのせいで脳梗塞に対する検査数は減った。

しかしその解釈は議論の余地あり。

ではまた。

 

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