新型コロナにヒドロキシクロロキンは効かないかも

新型コロナウイルス感染症の治療薬が無い中、ヒドロキシクロロキンという抗マラリア薬が期待され、現場では使われています。

その根拠は非常に小規模な観察研究。

今週のNEJMに、そんな期待に異を唱える研究が発表されました。

 

新型コロナにヒドロキシクロロキンは効かないかも

新型コロナにヒドロキシクロロキンは効かないかも

ヒドロキシクロロキンが効くことはvitroの実験では確かめられております。

これを世界が使うきっかけになったのはフランスの研究(Int J Antimicrob Agents. 2020;105949.

この記事に詳細を解説しておりますが、小規模かつランダム化されていない、しかも交絡因子で調整されていない研究なのですが、効くかもという結論になったことで、世界から注目されました。

 

しかし、流石にエビデンスとはいえないレベルの(質の低い)研究。

これを確かめるべく、より大規模な研究がニューヨークの病院から報告されました(NEJM 2020 10.1056/NEJMoa2012410)。

これもランダム化試験では無いのですが、一般的な疫学研究のように交絡因子で調整された結果を示しており、前研究よりは参考になります。

 

研究デザインもお手本みたいな感じで参考になるので、是非みてみましょう。

 

 

1400名の観察研究

ニューヨークにあるCUIMCという病院からの報告です。

PCRで確定診断された連続1446名の大人の症例が対象です。

 

このうち、来院後24時間以内に

・挿管された

・死亡した

・他の病院に転送された

患者は除外され、結局1376人が解析対象となりました。

 

*この除外は重要です。24時間以内にこういった経過をたどる方は病勢が強く、薬剤でどうしようもない方です。

 

 

観察研究なので、ヒドロキシクロロキンを使うかどうかは臨床医の裁量によりました。

だいたい中等症〜重症(Room airでSpO2<94%)に使われておりました。

そして交絡因子で調整して、ヒドロキシクロロキン使用群と非使用群の「気管挿管 or 死亡」を比較しました。

 

*調整された交絡因子は以下の通りです:

年齢、性別、人種、保険の有無、最初のバイタルサイン、入院時のPa02/FIO2、BMI、血液検査結果、既往歴、喫煙、服用薬

さらなる詳細はSupplemental Appendixに掲載されているようですが、ファイルにアクセスできなかったので不明です。

 

解析方法は、因果推論の基本に沿って行われています。

・まずは多変量のCOX proportional regression。交絡因子で調整しています。

・次にIPWを用いてpseudo populationを作り、COX proportional regression。

・そしてPropensity score matchingの解析。

・最後にPropensity scoreで調整したCOXモデルでの解析。

 

同じ交絡因子、暴露因子、アウトカムを用いながら、4つの異なる解析をしています

それぞれの結果が一貫性があるかを検証しているのです。

これこそ「観察研究の因果推論」のあるべき姿。かもしれません

 

 

結果は・・・効果なし

22.5日追跡され、346人が挿管または死亡しました(アウトカム)。

1376人のうち、59%がヒドロキシクロロキンで治療されました。

 

ヒドロキシクロロキンで治療された方はより重症だったので、交絡因子で調整しないと、コントロールと比較しエンドポイント発生率が高い結果となりました(HR 2.37)。

 

交絡因子で調整したモデルでは、4つとも有意差なしとの結果となりました。

 

・多変量のCOX proportional regression: HR 1.0 (95%CI 0.76-1.32)

・IPW: HR 1.04 (95%CI 0.82-1.32)

・Propensity score matching: HR 0.98 (95%CI 0.73-1.31)

・Propensity scoreで調整: HR 0.97 (95%CI 0.74-1.28)

 

 

解釈は?

あまり効かなそう、という印象です。

 

結局観察研究なので因果関係は言えません(ランダム化試験が必要です)。

しかも95%信頼区間がやや広いためはっきりした結論は言えません。

→しかし、調整後のestimateが4つのモデルどれも1に近いことが、あまり効かなそうなことをsuggestします

 

交絡因子の調整もかなり強力かと思います。

ランダム化試験でない以上、如何に調整しても十分でないのですが、それはデザイン上しょうがないこと。

なのでこれ以上の結論はランダム化試験ではっきりさせるしかありません。

でも、結構「あまり効かなそう」と示唆する報告でした。

 

*ちなみに、調整する因子が多いほど

・estimateは真実に近づく

・95%信頼区間は広くなる

という現象があります。

“Bias-variance tradeoff”というものです。これについてはどこかで説明します。

 

 

結論

ランダム化試験の結果が出るまではっきり言えないが、ヒドロキシクロロキンはあまり効かなそう。

ではまた。

-COVID, 論文解説

Copyright© Riklog , 2020 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.