新型コロナ数理モデルの注意点:何が言えて何が言えない?

新型コロナ、様々な説が巷に溢れています。私達自身が情報を取捨選択する必要性に迫られています。

大事なことは、

・それがどんな数理モデルに基づいているか。

・そのモデルで何が言えて何が言えないか。

結局フィーチャーされるのは結論だけです。

それに惑わされないよう、この記事では感染症疫学モデルの基本を説明しました。

 

 

新型コロナ数理モデルの注意点:何が言えて何が言えない?

新型コロナ数理モデルの注意点:何が言えて何が言えない?

まともな議論は、まともな科学的根拠に基づいたものです。

その科学的根拠とは、COVID-19の場合、感染症の数理モデルを用いた疫学研究を指します。

これを解釈するには、

・モデルが言えること

・モデルが言えないこと

・モデルが前提としていること

をはっきりと認識することが必要です。

 

実は、全ての疫学モデルは間違っています(前提が成り立たない)。

しかし、使えるものもある。

”Wrong but useful” という、疫学界隈で有名な言葉があるほど。

 

この記事では、感染症の疫学モデルについて正しく解釈するための知識を、NEJMのcommentaryをベースにお話していきます(NEJM 2020 10.1056/NEJMp2016822)。

 

 

どっちの種類のモデル?:forecasting modelかmechanistic model

使うモデルは大きく分けてこの2つで、特徴や前提などがまるで異なります。

✔forecasting model

・Institute for Health Metrics and Evaluation (IHME)のモデルなど

・以前のデータを統計的に処理して、将来どうなっていくかを予測する

・「どうやって感染が伝播していくか」などのメカニズムは考えず、単純に統計的な予測

短期的な意思決定に役立つ。1~2週先とか。

→「2週間後の感染者数はどうなっているか」

・感染のダイナミクスを把握できないので、長期的な予測には向かない。

 

✔mechanistic model

・Susceptible-Exposed-Infectious-Recovered (SEIR) モデルなど

・どう感染が伝播していくかというメカニズムに基づいたモデル

多くの仮定に基づいたシミュレーション

長期的な疫学的アウトカムを推定する。数ヶ月〜数年後とか。

→「どういう介入をした時、1年後の死亡者数はどう違ってくるか」

・設定しているパラメータは、ほとんどが正しいか分からない

→例えば「今の感染者は何人か?」

→PCR検査で特定することはできませんね

 

☆mechanistic modelの重要なassumption 3つ

 

以下はモデルに必要となる、特に大事だけどわかっていない3つのassumptionです。

1) 抗体があると感染防御されるか

・かなり重要な事ですが、明らかになっていません。

・研究では、「モデルの期間中は、既感染者は再感染しない」というのを前提にしているものが多いです。

→これは「一定期間防御する」という考えですが、実際は感染防御力がないかもしれません。

 

2) 無症候感染者の影響はどの程度か

・新型コロナは無症候感染の存在がかなり重要です。

→これが分からないと、感染伝播のモデルは無理です。

・彼らがどの程他人に感染させる役割を持っているか、実際に今どの程度いるのか、不明です。

→たくさん研究が行われていますが、はっきりはしていません

 

3) どれくらい接触があるか

・どのくらいの割合で感染者と非感染者が接触するか、というのがモデルのコアな部分です

・しかし、social distancingが取られたり、逆に色々openしたり、状況は刻々と変わっていっています。

→正確にモデルすることは無理ですね。推定するのもかなり難しい。

(けどどの研究も仮定を置いて計算しています)

 

 

結局正しいモデルは構築できない

一般化して言うと、

・forecasting modelはいわゆる「予測モデル」なので、factual prediction

与えられたデータ内でのgeneralizabilityしかない

→予測できても短期間

+「もし…したら」というシナリオは検討できない

 

・mechanistic modelはcounterfactual prediction

→「もし…したら」のシナリオ、長期的な影響を予測できる

→しかしassumptionが多すぎて、正確なモデルは作れない

 

ということです。

*counterfactual predictionについてはこちらで説明しています。

 

つまり、知りたいのはmechanistic modelの結果だけど、そのモデル自体は正確となりえないのです。

でも、「そのモデルが何を前提としているか」を認識することで、結果の解釈ができます。

正確に解釈すれば、政策決定の役に立つ。

Evidence-based policy-making(EBPM)ということです。

Wrong but useful。

*研究の結論だけを基に政策を決定するのは、EBPMとは言えません。

 

「モデル間違ってるなら意味ないじゃん」

というのは一理ありますが、それなしでの意思決定は、適当に決めているのと変わりません。

今色んな有識者、有名人が「私の考えるコロナ仮説」を流布していますが、それはほぼ適当かと思われます。

エビデンスに基づいた議論をしたり仮説を立てたりするのは、専門でなければ難しいです。

 

 

結論

forecasting modelなのかmechanistic modelなのかはっきりさせる。

通常ほしいのはmechanistic modelだが、かなりのassumptionが必要。

どういうassumptionを置いているかも理解すると、本当の解釈につながる。

ではまた。

-COVID, 論文解説

Copyright© Riklog , 2020 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.