ジゴキシンを見直す時か【論文解説】

心房細動のrate controlといったらまずβ遮断薬です。

ジゴキシンという選択肢があることをしっていつつ、「死亡率を上げた」結果となったRCTがあった記憶があり、あまり使われないのでは無いでしょうか?

(そのRCTを正確に覚えていなくても・・・)

今回解説するJAMAの論文は、そんなジゴキシン vs. ビソプロロール、というものです。

 

 

ジゴキシンを見直す時か

ジゴキシンを見直す時か

心房細動は増えています。

その管理法はとても重要。

主にrhythm control(洞調律に戻す)とrate control(頻脈にならないようにする)がありますが、ここではrate controlの話です。

しかも心不全を合併している場合。

 

心不全+AFの治療法として、まずぱっと浮かぶのはβ遮断薬です。

特にEFが低下している心不全の予後を良くするというデータがあるし、AFのrate controlとしても良い。

でも実は、心不全+AFの患者については、β遮断薬が予後を良くするという結論にはなっていないのです!!!(Lancet. 2014 Dec 20;384(9961):2235-43.

知らなかった!!

 

そこで出てくるのがジゴキシン。

昔めちゃくちゃ使われたけど、あまり良いRCTの結果とならず、今では時々使われる程度の薬。

でも文献を見直すと、実は、心不全に対し「予後を良くも悪くもしない」というのが信頼できるRCTの結果(N Engl J Med. 1997 Feb 20;336(8):525-33.)。

入院は減らすという結論(BMJ. 2015 Aug 30;351:h4451.)!!

観察研究で「ジゴキシンは危ない!」としているものが多々ありますが、よく見ると、具合が悪くて、βだけではコントロールできなくて・・・という不利な患者背景によるselection biasがかかっている!!!(BMJ. 2015 Aug 30;351:h4451.

 

ということで、特に「低用量ジゴキシン」とβ遮断薬は、どちらが良いかはっきりしてない!

これをみたRCTが最近発表されたのでした(JAMA. 2020;324(24):2497-2508.)。

 

 

どんな研究?

Open-labelのRCTです(患者や医療者は治療内容を知っている)。

βの絶対適応(半年以内のAMIなど)、徐脈やブロック、3ヶ月以内の大手術、などを除外し、160名を1:1にランダム化しました。

アウトカムは半年後のQOLです。

→SF-36 PCSというスケールで見ました:0~100で、数字が高いほうがよく、4.1~9.2くらい差があれば「QOLにclinicalな差があり」と結論されます

 

*このpower calculationはかなり怪しいです!!

まず直感的に、QOLの差を見る試験で片方80名って少なすぎると思いませんか!?

よく計算法を見てみると、

・2-sided alpha=0.05、10% lost follow-upを想定している(これは良い)

・17-22%のSF-36 PCSの改善を想定している

→ 実際の改善率は10%程度

→この差をdetectできているpowerではない

・SDの0.5倍をeffect sizeと考えて計算している!?

→こんな方法聞いたことありません。こんなのありですか?????

(詳しい方いたら、是非教えて下さい)

 

 

結果

ジゴキシンの平均用量は161 µg/day、ビソプロロールは3.2 mg/dayでした。

 

ジゴキシン群のスコア:28.5±12.0 → 31.5±12.0

ビソプロロール群のスコア:26.7±10.5 → 29.3±11.7

差は1.3 [95%CI: -1.2, 3.9]で有意差なし、でした。

 

その他、多くの項目で有意差なしでしたが、

バイタリティー、general health、physical functioning, role physicalという項目では、ジゴキシン群の方が良い傾向にありました(p<0.05)

→だいたいp=0.05近くですが。

→これはmultiple testingの問題から、有意な結果とは普通捉えません。

 

気になる副作用は、ジゴキシン群の方が少ない結果でした。

 

 

解釈は?

persistent AF+心不全の患者には、β遮断薬でも低用量ジゴキシンでもどちらでもよいかもよ、というメッセージです。

このメッセージには同感するとして、trialの方法論にはかなり疑問があります。

 

✔まずdouble-blindedでない

これはしょうがないですが、たった160人のRCTということは、研究者の手の届く範囲で行われた試験ということ。

明らかにこの論文を書いている人は、「ジゴキシンは実はいいんだぜ」と思っている人なので、治療においてかなりバイアスがかかっている可能性があります。

 

✔non-inferiorityの試験ではない

なぜnon-inferiorityのデザインにしなかったか?これは明らかに、より多くのサンプルが必要になるからでしょう。

だって疑問は「β遮断薬が一般的に処方されているが、ジゴキシンでもよくないか?」なんだから、普通はnon-inferiorityをテストすべき。

デザインの段階で明らかに間違いです。

 

✔power calculationが怪しすぎる

上記の通りですが、なぜこれがまかり通るかは謎です。

だって160人なんて明らかに少なすぎです。

結果を見ても、それぞれのSDや95%CIが広すぎる。

「差がない」ことを主張するにはpowerが適切に計算されていることが必須なのに、流石にこれはいただけません。

 

まあ、実際低用量ジゴキシンはそんなに悪くないだろう、というのは、なんとなくagreeです。

ジゴキシン=絶対悪、みたいなラベルがややあるので、そうではないんですよ、と一石投じているという意味では価値あるかもしれません。

でもこれを科学的なエビデンスとして用いるのは、やや疑問です。

あと、長期的なアウトカムも知りたいところです。

 

 

結論

やや怪しいRCTだが、メッセージには同感。

ではまた。

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