悪玉コレステロール、LDLコレステロールを下げるために、果てしない努力が行われます。
今回紹介するのは、その最も新しい治療法。
エビナクマブ。
このPhase-3 trialが発表されたので、みていきます。
脂質異常症の新しい治療法【超効く】
スタチンは凄い効果的。
PCSK-9阻害薬はさらに超効く。
これ以上、脂質異常症への治療薬って必要なのか?
と思いませんか。
「ホモ型家族性高コレステロール血症」という病気があります。
30万人に1人くらいの稀な疾患ですが、生まれたときからLDLが超高く、若くして心血管病を発症してしまいます。
この病気、肝臓のLDL受容体が機能しなくなるため、血中のLDLが肝臓に回収されないことが原因です。
なんと、スタチンとPCSK9阻害薬を用いても、十分にLDLを下げるのが難しいのです。
なぜなら、これらの治療法はLDL受容体の発現を増やすことで血中のLDLを減らす、という作用機序だから。
そもそもLDL受容体が機能しないこの病気では、ほとんど効果がないのです。
*LDL受容体機能がどれくらいあるかによって、病気が分類されます。
そこで新薬、エビナクマブ。
これはリポ蛋白と内皮のリパーゼを阻害するANGPTL3に対する阻害薬(モノクローナル抗体)です。
これによるLDL低下効果は、LDL受容体とは関係ない機序なのです。
ホモ型家族性高コレステロール血症に対するエビナクマブの治療について、Phase-3 tiralが発表されました(N Engl J Med 2020; 383:711-720)。これを解説していきます。
どういう研究?
11カ国30病院で行われました。
・ホモ型家族性高コレステロール血症で、マックスの脂質異常症治療が行われており、LDLコレステロールが70mg/dl以上の患者に対し、
・2:1でエビナクマブ(4週間に1回の点滴)かプラセボにランダム化し、
・24週間後のLDLコレステロール値を比較しました。
*ランダム化が2:1なのは、より多くの患者をエビナクマブで治療するためです。
単純にpowerが欲しい場合は、普通プラセボの割合を増やします。
結果・・・超効いた
結局65人がランダム化されました。
ベースラインのLDL値は250mg/dl程度。
94%がスタチン、77%がPCSK9阻害薬で治療されていました。
24週間後、
・エビナクマブ群ではLDL 47%の低下
・プラセボ群では1.9%の上昇
となりました。
時系列のグラフをみると、投与して2週間後からかなりLDLが下がっていることが分かります。
副作用は、エビナクマブ群の66%、プラセボ群の81%に認められました。
気になるのは、エビナクマブ群で
・1人の尿路感染症→敗血症
・1人の自殺企図
・5人のインフルエンザ様症状
があったことです。全員回復し、治療中断にも至りませんでした。
解釈は?
ホモ型家族性高コレステロール血症に対し、エビナクマブは非常に効果的でした。
PCSK9阻害薬が投与されていてもLDLが下がりにくいのがこの疾患の特徴。そこにエビナクマブの存在意義はありそうです。
一般的に、この疾患の患者さんには血漿浄化療法が行われてきました。が、これは侵襲的だし、コストがかかる。
エビナクマブの方が絶対に良いです。
これが効くことに異論は全然ありません。
むしろ、ホモ型家族性高コレステロール血症以外の高LDL血症に適応を拡大できるか、というのが今後の焦点になってくるでしょう。
まだPCSK9阻害薬も十分に認知されているとは言い難いですが、脂質異常症の効果的な治療法とそのメカニズムの違いを認識することは非常に重要です。
結論
エビナクマブはよく効く。
ではまた。