FFRの予後の情報とは?「中間因子解析」で調べた【自分の論文解説】

FFRをご存知の循環器の方向けの記事です。

PCI前のFFRの予後情報って、PCIされたらどうなるん??という疑問を解決します。

疫学のやや発展的な手法を用いて解析してみました。

 

 

PCI前と後のFFR、その予後への影響を「中間因子解析」で調べた

PCI前と後のFFR、その予後への影響を「中間因子解析」で調べた

ざっくりいって、

PCI前のFFR、低いほど動脈硬化が進んでることを意味します。

PCI後のその病変のFFR、低い=治療できていない箇所があることを意味します。

なので、特にPCI後のFFRが、その後のイベントに関わる(予後が悪いことを意味する)のはreasonableです。

 

ではPCI前のFFRは??

やっぱり低いのは悪そうですよね。

でも低いといっても、

・diffuse lesionで低い

→PCIしても治りきらなそう

・focal lesionで低い

→その病変だけ治せばよい?

と違いそう。

 

そこで、最近発表された私の研究(JAMA Netw Open. 2020;3(9):e2018162.)では、やや発展的な疫学的手法(causal mediation analysis)で解析をしてみました。

 

 

中間因子解析とは?

PCI前のFFRの予後への影響を、どの程度「PCI後のFFR」という情報が仲介するか

ということをみる解析です。

 

例えば、普通の多変量解析で

「Outcome ~ PCI前FFR + PCI後FFR + 交絡因子」

と、「PCI後FFR」で調整する方法があります。

このモデルの、「PCI前FFRのβ係数」の解釈は、

「もしPCI後FFR(と交絡因子)が同じだったとした時の、PCI前FFRによるOutcomeへの影響」

を意味します。

 

でも、当然、PCI後FFRはある程度PCI前FFRによって決まりますよね。

それが考慮されません。

そこで、counterfactualという概念を使った、causal mediation analysisを行いました。

これを説明してみます。

 

 

Causal mediation analysisの説明!

データを使って、

・もし仮にPCI前FFRが低くてPCI後FFRも低かったら(A)

・もし仮にPCI前FFRが低くてPCI後FFRは高かったら(B)

・もし仮にPCI前FFRが高くてPCI後FFRは低かったら(C)

・もし仮にPCI前FFRが高くてPCI後FFRも高かったら(D)

アウトカムはどうだったか。

という4つのシナリオを、それぞれの患者で想定します。

*「もし・・・」なので、仮想現実=counterfactual、と言います。A-Dのうち、実際に観測されているのは1つだけ。他の3つはモデルを使って求めます。

 

そして、

・Cの期待値とAの期待値の差

・Dの期待値とBの期待値の差

の平均を計算します。

これは、「PCI前FFRの違いだけによる(PCI後FFRという情報を介さない)アウトカムへの影響」=direct effect、と考えられます。

*どちらも、「もしPCI後FFRが〇〇だったら」という事が固定されていますよね。だから、PCI後FFRという情報を介さない、ということです。

 

一方、

・Dの期待値とAの期待値の差

・Cの期待値とBの期待値の差

の平均もできます。

これは、「PCI後FFRという情報を介した、PCI前FFRのアウトカムへの影響」=indirect effect、と考えられます。

 

これらを、色々な「FFRが低い」というカットオフの組み合わせを使って、計算してみました。

 

*中間因子解析の詳細はこの記事にまとめています。

 

 

結果

Direct effectがほとんどでした。

つまり、PCI前FFRの予後への影響は、PCI後FFRという情報をほとんど介さない、ということがわかりました。

 

 

解釈は?

これは解釈が面白いです。

 

まず前提として、PCI後FFRというのは、予後をよく反映する指標です。それに反論するデータではありません。

この研究は「PCI前FFRの予後情報」がどうなのか、ということをみています。

 

さて、PCI前FFRが低いと予後が悪いのですが、それはPCI後FFRという情報を介さない。

つまり、「PCI前FFRが低いと予後が悪い」というのは、PCI後FFRがどうなるかということと、ほとんど関係しない。

つまりPCIをやる前に決まっている!!!!!、ということになります。

*PCIをした方がよいかmedicationか、ということとは別です。この解析対象は全員PCIを行った方です(当然ですが)。

 

これを踏み込んで解釈すると、次のようなことになりそうです。

・diffuse diseaseは、PCI前FFRが低ければ低いほど予後が悪い。この場合PCI後FFRは概して低い傾向にあるので、PCI後FFRという情報は介さない。実際、diffuse diseaseはglobal atherosclerotic burdenが多いとも捉えられるので、reasonableである。

・focal diseaseは、PCI前FFRが低くても予後が悪くない。PCI後、概してFFRは高くなるので、この「focal diseaseの場合PCI前FFRが低くても予後が良い」というのは、PCI後FFRとは関係ない。

・PCI後FFRというのは、diffuseで低く、focalで高い傾向にあるので、予後と密接に関係する。

 

お!辻褄が合う!面白いやん!!!ということでした。

もちろん病変の性状を分析しているわけでないですが、FFRという一つの数値から、このような(壮大な)ストーリーが想像できるのは面白くない。。。

ということでした。

 

 

結論

PCI前FFRの予後への影響は、ほとんどPCI後FFRの情報を介さない。

ではまた。

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