心臓病って、本当は今どれだけ問題なの?

心臓病、命に関わる究極の生活習慣病です。5-60代から、恐れる人が多いでしょう。

でも、病態はかなりわかっているし、予防法・治療方法も進歩してきました。

実際「今」どれだけ問題なのでしょうか。

また、「心臓病」と一括にするのはちょっと乱暴ではないか。

この記事では、アメリカでの経年的な変化を心臓病ごとに分けて調べた研究を紹介します。

 

 

心臓病って、本当は今どれだけ問題なの?

心臓病って、本当は今どれだけ問題なの?

心臓病の年齢調整死亡率、年々下がってきています

・PCIやCABGなどの手技の完成

・薬物療法の標準化、良い薬の登場

・予防の発展。禁煙の徹底

これら全てが寄与しています。

 

でも、心臓病って色々あります。

おそらく虚血性心疾患(心筋梗塞など)による死亡は下がっているでしょう。

でも心不全は増えているとも聞きます。

例えば、虚血性心疾患で亡くなる方は減った=心臓に傷害を残したまま生きている方が増えた、ということで、心臓に傷害があると当然心不全を発症しやすくなります。

 

今回紹介するのは、アメリカにおいて経年的に「心臓病の年齢調整死亡率」がどう変化していっているか、調べた研究です(BMJ 2020;370:m2688)。

 

 

こんな結果

1999年から2018年までを調べました。この期間に心臓病でなくなった方は1290万人。

 

グラフをみてもらうのが一番早いです。

まず、「心臓病による死亡」の、それぞれの心臓病が占める割合がこちら:

「心臓病による死亡」の、それぞれの心臓病が占める割合

明らかに、虚血性心疾患による死亡は下がってきています。この20年で、73%から56%まで低下。

相対的に他の心疾患による死亡の寄与率が上昇していますが、特に上昇率が大きいのは高血圧性心疾患でした。

 

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続いて、心疾患の種類別の年齢調整死亡率がこちら。

*性別・人種で分けてプロットされています。

心疾患の種類別の年齢調整死亡率

心疾患全体による死亡率は、2018年で10万人につき260人。

これは1998年より減少傾向ですが、2011年よりプラトーとなっています。

それぞれ見てみると、

・虚血性心疾患は減少傾向

・心不全は2011年を境に上昇傾向

・高血圧性心疾患はちょっと増加傾向(白人では上昇傾向)

でした。

 

*論文では他にも色々な解析をしています。

 

 

解釈は?

一言でいうと、虚血性心疾患による死亡が減ったおかげで心疾患全体による死亡は減っているが、心不全(と高血圧性心疾患)による死亡は増えている、ということでした。

 

いくつかポイントがあります。

虚血性心疾患はすごい勢いで減ってきているが、減る加速度は減ってきている(=プラトーに近くなってきている)

・ほとんど心筋梗塞による死亡の事を言っていますが、おそらく今後break throughとなるような治療は開発されないでしょう。治療ストラテジーはほぼ完成されています

→死亡数を減らすポイントは、「予防」と「医療アクセス」にあります。コロナがどう影響してくるかわかりませんが、これらによる変化はかなりゆっくりです。

→すると、虚血性心疾患による死亡の寄与率が心疾患全体の50%を下回る、ということにはそうそうならないでしょう。

 

心不全が増えているが、その多くの原因は虚血性心疾患である

・虚血性心疾患を発症しても、治療により一命を取り留めることができるようになったということです

→でも結局心不全を発症してしまう方がある程度いるということ。

→今心不全に対する治療法が急速な勢いで発展しています。そのうち心不全による死亡数もプラトーになるでしょう。

 

予防は発展しているが、死亡率減少にどれくらい寄与しているか不明

・それほど反映されていないかもしれません。というのは、死亡数として反映されるには「政策レベル」の予防介入が必要だから

→今までのエビデンスで「どうすれば予防できるか」はわかってきているので、今後の問題は、それをどう「政策」として履行していくかにあります。

 

 

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心疾患の治療の研究にも予防の研究にも携わっている経験から、心疾患の死亡率を減らす次のbreak throughは、医学(治療法)の発展というより、政策やビジネス領域にあるんではないかと思っています。

そういう事に関われたら面白そうです。

 

 

結論

虚血性心疾患による死亡は減っているが、心不全は増えてきている。

今後は予防をどう「政策」として履行するかがポイントだと思う。

ではまた。

-心臓病, 論文解説

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