ハーバード公衆衛生大学院のワクチン開発プロジェクト

私の母校、ハーバード公衆衛生大学院が大きく動きました。

新型コロナだけにとどまらない、新しいワクチン開発プロジェクトが始まりました。

New England Journal of Medicineの記事に、公衆衛生大学院の学長(Michelle Williams)が発表しました。

 

 

ハーバード公衆衛生大学院のワクチン開発プロジェクト

ハーバード公衆衛生大学院のワクチン開発プロジェクト

コロナパンデミックの前は(今もですが)、感染しない生活習慣病などの疾患(non-communicable disease)の克服がかなり重要視されていました。

しかし今や感染症予防が最も注目されています。

コロナは勿論克服する必要があるとして、他のワクチン開発も視野に入れ、ハーバードが動きました。

これは重要だと認識され、NEJMに取り上げられました(N Engl J Med. 2020;10.1056/NEJMp2006761.)。

 

この論文著者かつハーバード学長のMichelle Williamsはかなり人望の厚い方、黒人女性です。

卒業式では「Just do right」とメッセージをくれました(policyがgoogleと同じですね)。

 

 

どういう背景?

新型コロナウイルスのワクチン開発に巨額の資本が投入されています。

死亡率が高いと言われている高齢者におけるワクチンの有効性は、極めて重要です。

しかしワクチン(や治療薬)への免疫反応は、分かっていない点が多くあります。

 

例えば、様々なワクチンの有効性は、高齢者程少ないことが知られています。

おそらく自然/獲得免疫の機能が年齢とともに悪くなることが原因だと考えられています。

一方、ワクチンによっては高齢者にもよく効くものがあります(帯状疱疹ワクチンは70歳以上の方のうち90%以上に有効とされています)

なぜ効く人と効かない人がいるのか。効くワクチンと効きにくいワクチンがあるのか。

明らかでありません。

 

更に、世界中の超高齢化に伴い、薬剤耐性菌も無視できない脅威となってきています。

2050年には薬剤耐性菌による死亡が1年で1000万人を超すと推算されおり、癌による死亡者数を超すかもしれません。

地球温暖化により、世界でプラス10億人の人が熱帯特有の感染症のリスクにさらされるでしょう。

 

どうやって高齢者から感染症を守っていくか。

これは大きな課題なのです。

 

 

ハーバード公衆衛生大学院✕Human Vaccine Project

この課題を克服するため、一つの大きなプロジェクトが動きました。

ビッグデータを用いて、ヒトの免疫系をより深く探求するプロジェクト

です。

 

具体的には、transcriptomic, proteomic, metabolomicといったOmicsというデータを使います。

これは非常にホットな研究領域で、例えばより詳細なヒトの中での免疫応答をトラックできます。

 

実際に、

omicsによってわかる免疫応答は人により大きく異なること

omicsのプロファイルによってワクチンの有効性を予測できること

などが明らかになってきています。

 

ハーバード公衆衛生大学院最大の強みである、生物統計、因果推論、AIの専門家と

Human Vaccine Project(というNPO団体)が持つビッグデータをコラボさせることにより、

ワクチンの謎(有効性が人によって異なること)に関する答えを得よう。

そして早く、有効なワクチン製造につなげよう。

これが本プロジェクトの概要なのです。

 

とても有望な気がしますね。

 

 

まとめ

新型コロナウイルスに対するワクチン開発が緊急の課題であることは誰も承知ですが、それにとどまることなく長期的に色々な疾患に対応すべく、ヒトの免疫系を深く理解する。

特に高齢者という「world’s most vulnerable population」を救う

このため、ハーバード公衆衛生大学院とHuman Vaccine Projectが手を組んだという報告でした。

 

最後にMichelleのコメントを引用します。

“The way we fight disease is broken—we launch into disease-specific battles without understanding the rules that affect our chances of success. The Human Vaccines Project set out to change that by decoding the human immunome.”

 

"decoding the human immunome"

このプロジェクトがどう人類に貢献していくか、注目です。

ではまた。

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