新コロにヒドロキシクロロキン効かない?【この論文は撤回されました】

新型コロナに対してヒドロキシクロロキンが治療薬として期待されています。

5/22、重要な研究がLancetに発表されました。

世界最大のレジストリー研究です。

結果は・・・大変興味深いことになっています。

解釈も含めて、解説します。

 

****この論文は撤回されました(6/5)****

 

新コロ、ヒドロキシクロロキン:最大のレジストリー研究

新コロ、ヒドロキシクロロキン:最大のレジストリー研究

ヒドロキシクロロキン、新型コロナ治療薬として注目されていますね。

最近はトランプが感染してもいないのに服用していることが話題になりました。

 

そんな中5/22、Lancetに96000患者の世界最大のレジストリー研究(ランダム化試験でない)が発表されました。

結果は・・・興味深いことになっています。

この中身を見ていきましょう。

 

 

世界最大のレジストリー研究

世界中の671病院の患者データを集めたレジストリー研究です(Lancet 2020 10.1016/ S0140-6736(20)31180-6)。

COVID-19とPCRで確定診断された入院患者が対象です。計96032名(すごい)。

14888人がヒドロキシクロロキンにより治療され、81144人がヒドロキシクロロキンを用いられませんでした。

 

*レジストリーなので、ヒドロキシクロロキンを使うかどうかは、治療した医者の判断によります。

よって、「〇〇の患者はヒドロキシクロロキンが使われている確率が高い」という現象が起きるので、これを統計モデルで調整して判断します(詳細こちら)。

これがランダム化試験と異なる所。

*実際は「ヒドロキシクロロキンもしくはクロロキンを用いた治療レジュメ」と「それらを用いていない治療」の比較です。

 

レミデシビルを投与されている人、ヒドロキシクロロキン投与時に人工呼吸器に乗っている人、診断後48以内に投与されなかった人が除外されています。

 

主要なアウトカムは院内死亡。他にも致死性不整脈(ヒドロキシクロロキンの有名な副作用ですね)なども比較されています。

 

 

ヒドロキシクロロキンで治療された人は(当然)より重症な人が多かった

当然かもしれませんが、ヒドロキシクロロキンで治療された方は、よりハイリスクな方が多かったです。

 

ヒドロキシクロロキン vs コントロール で差がある主なポイントは、

年齢:55歳くらい vs 53.6歳

男性:55%くらい vs 53.5%

冠動脈疾患:14%くらい vs 12.4%

高血圧:29.5%くらい vs 26.4%

現在喫煙者:11%くらい vs 9.7%

qSOFA score≥1点:19%くらい vs 17%

SpO2<94%:11%くらい vs 9.5%

といった感じでした。

 

*実際はヒドロキシクロロキン使用群が4群にわけられています。

 

これを調整して(両群で同じだと仮定して)、ヒドロキシクロロキンの使用のみが違うと仮定して、死亡率や不整脈発生率の違いを比較しました(詳細こちら)。

 

*調整しない状態でのアウトカムは、ヒドロキシクロロキン vs コントロール で

心室性不整脈:4.3% vs 0.3%

死亡率:16.4% vs 9.3%

人工呼吸器:21.6% vs 7.7%

でした

(全体の死亡率は11.7%)

 

 

ヒドロキシクロロキンが(なんと)死亡リスク上昇と関連した!

COX比例ハザードモデルで、色々な交絡因子を調整して比較しています。

結果はこちら

ヒドロキシクロロキンが(なんと)死亡リスク上昇と関連した

この表に含まれている因子で調整されています。

下4つの「クロロキンのみ、ヒドロキシクロロキンのみ、クロロキン+マクロライド、ヒドロキシクロロキン+マクロライド」という因子が、それぞれコントロールと比較されています。

どれもハザード比1.3~1.4くらいで、死亡率上昇と関連していることがわかります。

 

*この他、傾向スコアマッチング解析など色々な感度分析が行われていますが、結果は一貫していました。

*致死性不整脈というアウトカムについても、ヒドロキシクロロキンの使用で有意にリスクが上がりました(ハザード比2.5~5くらい)。これは当然ですね。

 

 

解釈は?

このレジストリー研究では、ヒドロキシクロロキンの使用はむしろ死亡率を増やす可能性が示唆されました。

いくつか疑問なポイントがありますが、このデータを用いる限りは結果は大きく変わらないだろうと思います。

 

私が思ったことはこんな感じです(少し専門的ですが、重要なツッコミどころです):

ヒドロキシクロロキンを使う患者は重症な人が絶対に多いから、それを調整できるかが肝。この点で調整しきれていない部分がありそう。

SpO2<94%、qSOFA≤1点(3点満点)というのは大きなポイント。酸素化が低い、qSOFAが高いというのは死亡に直結します。可能なら、SpO2をより細分化し、qSOFAを点数として調整するとより正確です(residual confoundingということ)

→深読みすると、この項目におそらく欠損値が多かったんだと思います。Methodでimputationが行われておらず、欠損値は「欠損値」というカテゴリカル変数として扱われているようです。つまりSpO2という連続変数として使うと欠損値が多すぎたから、「SpO2<94%, SpO2≥94%, 欠損値」という3つのカテゴリカル変数として扱った(qSOFAも同様)ということです。

→どれくらい欠損値があったか。さらに深読みするとSpO2<94%で10%弱の患者群で死亡率が11%以上というのはちょっと高いかな、と思います。「欠損値」に分類された患者がたくさんいたら、辻褄が合いそうです。

 

・(レミデシビル以外の)抗ウイルス薬が、生存者で41.2%, 死亡者で34.9%使用されています。これは大きな差ですね。しかし死亡率のモデルでは調整されていません。なぜ????

 

・おそらく病院ごとにかなり治療方法が異なるから、病院ごとのメタアナリシスにすべきでないか?病院が無理なら国ごとでも。

 

・治療群、4.3%に致死性不整脈とは頻度高い。管理(心電図をこまめに取ってQT延長をモニターする)がしっかり行われていなそう。状況によってはしょうがないけど。

 

こんな所がツッコミどころで、どれもヒドロキシクロロキンの効果が過小評価される要因です。

しかしきっとreviewerも指摘しているだろうし、実際それを勘案しても結果はあまり変わりないと思います。

 

でもやっぱり因果関係を言うのは(質の高い)ランダム化試験なので、この研究から結論は出ません。そういうものです。

 

でもでも、(エビデンスが無いのに)今ヒドロキシクロロキンが世界中で使われまくっている現状に対し、釘を刺す重要な報告でした。

 

****追記!!!(6/3)

この研究は、用いられたデータやreviewのプロセスについて不正が行われた可能性があります!!

現在調査中ですが、かなり怪しい部分があることがわかってきています。

この報告後、ヒドロキシクロロキンのランダム化試験がいくつも中止されており、かなり影響力のあるものだったのですが、とても残念なことになりそうです。

→論文撤回されました(6/5)

 

 

結論

ヒドロキシクロロキンは効かないかもしれない、ということを示唆した論文でした。

ではまた。

-COVID, 論文解説

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